去勢したら出血が止まらない、とのことで開業獣医さんから診療依頼。
術後出血は去勢手術の併発症の代表的なもののひとつ。
しかし、たいていは特別な処置をしなくても自然に止まる。
私もせいぜいガーゼを入れておくことしかしたことがないので、自分の経験からはどのくらいの出血が危険か知らない。
古い外科の教科書を見ると、
滴下している出血は自然に止まるが、線状につながっている出血は止血処置しなければならない、
というようなことが書かれている。
しかし、来院する頃には止まっているだろう・・・と考えながら待った。
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線状につながって出血してる・・・・・
フラッシュ撮影すると途切れているように写るが、人の目には紐状。
去勢してからすでに3時間。
口粘膜はやや貧血。PCV27%。これでは全身麻酔はしたくない。
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鎮静処置して、枠場に入れて、鉗子を術創へ入れて、精索らしきものをつかんで引っ張り出して、
さらに何本か鉗子をかけたら、なんとか血は外へは出てこなくなった。
創内で出血しているかどうかはわからない。
血腫が大きくなってこないように鉗子をかけなおして・・・・・
1 monocryl で精索を何度も貫いて、しっかり締めながら1本ずつ鉗子をはずした。
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Henderson式と呼ばれる捻転式去勢は、2005年にAAEPで発表された。
全身麻酔して、総鞘膜ごと、自然に捻り切れるまで回転させる、というのが大事な手技だ。
つい不安を感じて、結紮しておいたり、鉗子をかけてから捻転させたくなるが、
そんなことをすると結紮したり、鉗子をかけた部位で切れてしまいやすいだろう。
そして総鞘膜ごと捻ることで、総鞘膜に絞扼されて止血されるのだろう。
開放(総鞘膜も切開してしまう手技)でやると術後出血のリスクが高まるはずだ。
工夫してアレンジを加えることは悪いことではないが、その方法を間違うと危険だ。
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危なかったのだ。
貧血するほど出血した馬も、
育成馬の股に手を入れなければならなかった私も;笑
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家の裏の林で見つけた秋。
滴るような”赤”を観るなら、こっちの方がイイね。