近位足根間関節へ落ち込んだ骨軟骨片の取り出し方について書いたと思ったら、
Vetrinary Surger, 2024;53; 999-1008 に
馬の足根下腿および近位足根間関節隔壁の脈管把握、そして2法の鏡視下切開手技の相対評価
なる論文が掲載されている。
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抄録
目的:足根下腿関節と近位足根間関節を分ける滑膜被覆隔壁の血管分布を調べ(part1)、2種の切開方法、電気メスあるいはFerris Smith rongeurを比較すること(part2)
研究デザイン:実験研究
供試検体数:part1、解剖検体から取り出された滑膜被覆隔壁はそれぞれ8つの部位に分けられ、検索検索用に処理され、血管同定のために抗αアクチン抗体で免疫染色された。
血管の密度はそれぞれの部位について計数された。
データは個体ごと、そして馬間で比較された。
part2では、6頭の馬に足根下腿関節の関節鏡手術を行った。
各肢は無作為に電気メスかFerris Smith rongeur 切開に割り付けられた。
滑膜被覆隔壁切開と総手術時間が記録された。
手術中の出血は点数化された。
データは2法間で比較された。
結果:滑膜被覆隔壁の血管分布には明らかな個体差があった(p=0.02)、しかし部位間では差は認められなかった。
電気メス(4.83±0.54分)とFerris Smith rongeur(4.33±0.67分)間には切開時間に差がなかった。
手技間で術中出血に差は認められなかった。
結論:滑膜被覆隔壁内の血管分布は馬により異なっていたが、部位内では差がなかった。
足根下腿関節鏡手術中、滑膜被覆隔壁内側の電気メスあるいはFerris Smith rongeur切開は迅速な手技で、近位足根間関節の背側腔へのアクセスを改善する。
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Synovial Membrane Septum 滑膜隔壁とはこのSMS部分。
飛節の中で足根下腿関節(距骨と脛骨の関節)と近位足根関節を不完全に分けている。
かならずポケットがあるので、そこからOCDの骨軟骨片が近位足根間関節へ落ちていることがある。
世界中の馬関節鏡外科医が身構えて手術したり、苦労したり、摘出をあきらめている。
滑膜隔壁を切開する方法はあるが、出血が多くなることがある。
それで今回の研究が行われたわけだ。
Canada Quebec州のMontreal大学からの報告。
私は、11番ブレードで切っているし、4分もかからない。
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上図が滑膜隔壁 SMS と、8部位への分け方。
上図の下は、αアクチン免疫染色により血管の平滑筋細胞がピンクに染まっている。
けっこう血行がある組織だ。
出血が多くなることはあるが、それはたまたまで血管分布を気にしても仕方がないようだ。
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関節鏡手術用のFerris Smith rongeurはとても高い。
たぶんすぐに切れ味が落ちるだろう。
電気的切開器具は、いろいろあるがFerris Smith rongeurよりさらに高額。
No11ブレードは100円くらい;笑
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ニセコの秋を歩いてきた
向こうは、アンヌプリと後方羊蹄山(マッカリヌプリ)