分娩後1ヶ月の繁殖雌馬が疝痛を示して来院。
ひどく痛いわけではないが、寝る、前搔きする。
便がほとんど出ない。
血液検査所見は悪くない。PCV30%代。
超音波では著しい気張。右でも左でも。
直腸検査では、膨満がひどくて手が入っていかない。
-
分娩で腸間膜が裂けて、今になって小結腸が入り込んで閉塞したのか?と考えたが、
少しは硬めの便が出た。
入院して様子を観ることになった。
翌朝も状態は変わらず、開腹手術することになった。
-
開腹したら、まずガスが張った盲腸が出てきた。
チューブ付きの針(補液管だが)を刺してガスを抜く。
大結腸も腸紐の上から針を刺してガスを抜く。
このように腸管を刺すときは、漿膜を刺したあと針を斜めにして、少しずれた箇所で粘膜を貫くように刺す。
そのことで針を抜いたあとに腸内容が漏れてくるのを減らせる。
しかし、針穴からわずかに腸内容が漏れることがまれにあり、そのときはガーゼで拭いてしばらく穿刺部をつまんでいる。
それでも心配があるときは、糸で縫う。
-
この馬は、大結腸の右背側変位だった。
大結腸の血行障害はほとんどなく、結腸壁は肥厚していなかった。
大結腸が変位して、ガスが出なくなって、盲腸と大結腸がひどく膨満していたのだ。
変位を整復し、結腸骨盤曲を切開して内容を捨て、大結腸を正常な位置に戻して結腸固定術を行った。
-
このような経過と症状の馬で、体表から腸管を穿刺しようとする獣医師が居るが、私たちはまずやることはない。
1年に150頭以上の重症の疝痛馬を診て、120頭ほど開腹手術をするが、体表から腸管穿刺することはまずない。
目の前で腸管穿刺することで腸液が多少漏れることがあるのを知っているし、
ガスを抜くだけで治るような疝痛は、そんなことをしなくてもいずれガスは抜けるのを知っているし、
どうしてもガスが抜けないような疝痛は開腹手術して治すしかないことを知っていて、開腹手術できるからだ。
////////////////////
今週はオラの週です エッヘン