日曜日、午前中は2歳馬の喉頭形成・声帯切除の予定。
そこへ、1歳馬の外傷の依頼。
肘部の皮膚の裂創で、大怪我ではない。
「喉の手術が昼ちかくまでかかるし、午後は骨折の手術予定が入っているので、そっちでやれば?」
と訊くが、馬が凶暴で縫合できなかった、とのこと。
喉の手術の麻酔覚醒を待つ間になんとか縫合できるかと来院時刻を指定した。
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喉の手術が始まる頃、繁殖雌馬の疝痛の依頼。
「鎮静剤も効かず、手がつけられないのですぐ行かせる」とのこと。
喉の手術が終わった2歳馬は覚醒室へ出した。
怪我の馬はレントゲン室へ入れてすぐに全身麻酔した。
処置時間は20分ほど。
獣医師は付いていられない。
幸い牧場から2人来ているので覚醒起立を見てもらう。
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疝痛の繁殖雌馬はPCV57%、乳酸値10mmol/l。
来院したときは馬運車で前搔きしていたが、あちこち擦りむいてひどく痛い。
もう超音波検査も直腸検査もしない、できない。
すぐに開腹する。
麻酔モニターでも血圧が低く、昇圧剤や大量輸液にも反応しない。
内容を棄てて、捻転を整復しても色調は変わらず、結腸動脈の拍動も弱い。
これでは、大結腸を温存しては助からない。
結腸動脈を3重に止血し、大結腸を盲腸結腸ヒダ付着部で亜全摘する。
切除部分でも粘膜は暗黒赤色だったが、筋層までは壊死していなかった。
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午後に予定していた骨折馬は時間をずらして午後3時半に来院してもらった。
3歳競走馬の中手骨外顆の骨折。別な日にというわけにはいかない。
今年一番暑い日だった。
手術室だけにはエアコンがある。
ドアを開けておくと、覚醒室もいくらか冷える。
骨折の手術は一人でやる。
スクリューを2本入れてしっかり固定できた。
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結腸切除した馬の状態が良くない。
立つ意欲はあるが伏臥することもできない。
頭を挙げて、体を起こせず、頭を打ち付けるように倒れる。
手術中に20リットル、手術後も覚醒室で持続点滴するが、手術中も術後も排尿がない。
大量に発汗する。まわりの床がぬれるほど。
朝、8時半に疝痛を発見し、11時半から手術し、2時に手術終了し、それから3時間になるが座ることもできない。
もう苦しむだけなのであきらめることにした。
重症の結腸捻転は、結腸切除しても助けられないことはしばしばある。
忙しい日曜日だった。
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金曜日は、十勝へ馬の「疾病と対策」の講義に行ってきた。
北海道から沖縄まで、全国から集まった経験5年以内の獣医さん達。
ほとんど全員が馬に触れたことはあり、かなりの人が馬に乗ったこともある。
半数は診療区域内に馬が居て、診る可能性はある。
もうこの講習に呼んでもらうのは7年目?なのだが、気がついた。
私の話す内容はレベルが高すぎる;笑
内容をしぼって、もっと基本をていねいに、各地の獣医さんができる範囲を教えた方が好い。
外傷管理も、
馬の疝痛への対処も、
馬の分娩事故への対応も、
牛と馬の骨折治療も、
それぞれが半日から数日かかる話だ。
めん羊、山羊、ダチョウ、の話と並べて聴かされても、ね~