X線画像で骨だけ見るとひどいが、皮膚の上からの外貌はそれほどでもないことには注意がいるかもしれない。
第一趾骨の足底側に骨片が見えるが、第二趾骨の足蹄側突起部から腱付着部が剥がれたものだろう。
どうしてこのような亜脱臼が起こるかは、以前に紹介した馬の下肢の腱と靭帯の構成を見ていただくと良い。
足底側(前肢では掌側)に付着している浅屈腱、種子骨直靭帯、近位趾骨関節軸側足底靭帯、軸外足底靭帯などが断裂すると、近位趾骨間関節を固定できなくなって、このような亜脱臼が起こるのだろうと思う。
-
これほどひどい亜脱臼が起こると馬はひどい跛行をして、ほとんど負重困難になる。
Dr.Richardsonに相談したところ、「すぐに近位趾骨間関節の固定術をした方が良い。手術をしないなら安楽殺することを勧める。でないと蹄葉炎などのひどい二次的障害が起こる。」とのことであった。
しかし事情で、手術できるとしても3ヶ月後ということになった。
-
しかし、徐々に痛みは軽くなって、体重をかけると痛いが、歩くこともできるようになった。
ただし、骨と関節はX線画像のような状態なので、このままではいずれ立てなくなったり、深屈腱まで切れてしまったりするだろう。
手術は腱と靭帯を切断し、完全に脱臼させ、関節を骨癒合させるために軟骨を削り取り、Locking Compression Plate と5.5mmスクリューで固定するという大掛かりなものになる。
感染や術後の痛みも心配なのだが、関節固定術しか治す方法はない。
-
近位趾骨間関節の側副靭帯を切って、屈曲方向へ脱臼させようとしたができなかった。
横方向は完全に切ったので、趾静脈も傷つけた。
これには注意が必要だろう。
内外の趾動脈まで切ってしまったら血行が途絶えてしまうかもしれない。
亜脱臼してから日数が経つと関節を完全脱臼させられなくなるのは、周囲の靭帯や関節包が固まってしまうからのようだ。
脱臼させないと、関節軟骨の除去がやりにくく、関節を貫くスクリューが関節面に出る部位を確認できないので、ドリルの角度を決めにくい。
-
Dr.RichardsonはLCPと5.5mmスクリュー3-4本で固定することを推奨している。
たいへん多くの経験を積んでいる先生だ。おそらく、術後にスクリューが折れた経験をしているからその本数を勧めるのだろう。
しかし、第二趾骨の遠位の幅はそれほど広くないので、スペースに余裕がない。
そしてこの手術のLCPは3穴を使うことが推奨されている。
第二趾骨は短いので、第二趾骨にプレートを留めるスクリューを2本入れることになる4穴や5穴のプレートを使うと、プレートの遠位の先が蹄関節に当たってしまうことがあるからだ。
-
内固定後のX線画像をDr.Richardsonに送って評価してもらった。
(つづく)
////////
今日は、現役競走馬の跛行診断とx線撮影。
入院中の子馬の関節炎の治療。
今週、私は検査当番。
午後、1歳馬の肩跛行のX線撮影。
-
Staphylococcus
複数形になってStaphylococci
左はStaphylococciのコアグラーゼを簡便に検査するキット。
凝集すると血漿を凝固させる能力があるコアグラーゼ陽性Staphylococciだということになる。
Staphylococciの多くは化膿性pyogenic。
コアグラーゼ陽性だと周囲に壁を作って膿瘍を形成し治りにくい。