馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

実習生2017春

2017-03-31 | How to 馬医者修行

最後の一人が帰って行って、この春の実習生は終わり。

春先のいそがしい時季にずいぶん診療を手伝ってくれた。

そして、生産地特有の出産シーズンの症例をたくさん観れたので、良い経験になっただろうと思う。

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最後に居たのは、韓国済州大学からのS君。

もう韓国の獣医師国家試験には合格していて、修士課程の大学院生だ。

どうだった?と尋ねたら、「長くて疲れた」とのこと。

ずいぶん夜中に起こされたので、きつかったらしい;笑

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この春は、韓国、ハンガリーをはじめ、国内では大阪、鳥取など、あちこちの大学からで、バラエティーに富んでいた。

「ハンガリーでは獣医学教育の1/3は馬です」から、

「私、馬に触ったことなかったんです」まで、実にさまざま。

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実習に来て、馬を取り囲んで観ているから私に注意される。

「馬を取り囲んで見るな!馬は人に取り囲まれると怖いんだ。」

指示されないと何もしないから、私に指示される。

「毛を刈れ、洗浄しろ、消毒しろ、etc.」

夜中起こされる。

「うちに実習に来て、留守電にしてたらダメだ!」

「朝は早く来て掃除しろ」

さて、良い経験になっただろうか。

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マニュアルを作ろうとは思わない。

最低限の注意だけしておいて、あとは個別に言葉で説明して指示したいと思っている。

児童、生徒、学生は、言われたことだけ、人と同じようにやるように教育されてきている。

社会に出たら、とくに臨床なんかやるなら、それじゃ駄目なんだ。

人があれやってるなら、自分はこれ。

そして、指示されないでも動けるようにならないと、半人前ですらない。

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きのう道央は大雪だった。

高速道路は閉鎖で、国道は除雪が間に合わず、おまけに重い雪で轍になっていた。

あちこちで車が路外逸脱していた。

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一夜明けた今朝。

すっかり雪景色。

北海道だね~

 

 

            

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仔馬の脛骨近位成長板S-H2型損傷のダブルLCP固定 2

2017-03-29 | 整形外科

皮膚を切る前になんとか整復しようとしたが無理だったので、膝の内側を大きく曲切開した。

脛骨近位成長板の内側は完全に剥がれ、内側の側副靭帯も切れていた。

骨幹近位端は内側後へ飛び出している。

それを外・頭よりへ押し戻すと、いくらか動く。

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脛骨近位骨端に5.5mmスクリューを入れることにした。

本当はLHSを使いたい。

しかし、LHSはLCPと角度が決まってしまうので、整復されていないと使いづらい。

そして、LCPを骨に押し当てておかないと、LHSはLCPにねじ込まれるだけで、LCPを骨へ押してはくれない。

脛骨骨幹近位が骨端部の内側へ飛び出しているので、LCPを骨端に押し当てておくことはできない。

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8穴のナローLCPの近位穴に通した5.5mmスクリューを締めていきながら、骨幹近位を外・頭側へ押すとズレを直すことができて、しかも固定されそうだ。

一番遠位の穴にプッシュ・プルデヴァイスを入れて、締めるとLCPの遠位を脛骨に押し当てることができた。

プッシュ・プル・デヴァイス。

これは新兵器。

プレートを骨に押し付けるのに使う。

だからプッシュはわかる。

プルはどうして?

と思ったら、プレートの下に沈み込んでいるピースを引張りあげるのにも使えるのだそうだ。

だからプッシュ&プル・デヴァイス。

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骨幹部に5.5mmスクリューを1本入れてLCPを骨に押し付けた。

それで、仮止めしていたプッシュプルデヴァイスははずせる。

後はLHSを入れて固定する。

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折れ方と変位がひどいので、骨端に1本のスクリューしか入っていないのは心配だ。

もう1ヶ所固定した方が良い。

5穴のLCPを使うことにした。

今度は骨端部にLHSを入れる。

またプッシュプルデヴァイスでLCPを骨に押し付けておいて、他の穴にLHSを入れて固定した。

骨折発見時。

手術台上で仰臥位にし、肢をぶら下げた状態。

内固定後。

麻酔時間は2時間49分。

切開してから縫い終わるまで(手術時間)は2時間あまりだったろう。

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まだ脛骨近位部は外反方向へ角状変形しているが、6-8週間は固定しておかなければいけないので、

その間、内側の成長が阻害されて外ばかりが成長し、外反は矯正されるはず。

しかし、成長板の軟骨がその成長機能を失うほど内固定していてはいけない。

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朝はまだ氷点下。

 

 

 

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仔馬の脛骨近位成長板S-H2型損傷のダブルLCP固定

2017-03-28 | 整形外科

私は、動物の健康について学ぶ獣医学は素晴らしいものだと思っているし、

動物を治療できる臨床獣医学は意義あるものだと考えている。

臨床獣医師は、今やっている以上の可能性も持っていると信じている。

難しい症例や技術にもチャレンジすることで、その可能性を広げていけるはずだし、そうでなければならないと思う。

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夕方、子馬が脛骨を骨折してます、と電話。

近位部だと言うので、成長板骨折じゃないの?と訊いたが、近位部1/4あたりだと言う。

成長板損傷なら夜の緊急手術でなくても良いと考えたのだが、骨幹部が折れているならすぐに手術しないとひどいことになりかねない。

器具を滅菌しなければならないので、1時間後をめざして連れて来るように指示した。

急いで器具やプレート・スクリューの滅菌を始めて、何かカロリー補給するために家に帰った。

数時間かかる指と腕の力が必要で、かつ精神的にも集中力の必要な手術になる。

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メールで画像を送ってもらったが、IT環境の切り替え中でもあり、届かない。

別なメールソフトの方へ画像を送ってもらった・・・・・成長板損傷だ。

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仔馬は抱えられるようにして歩いてはきたが、折れた肢はひどく外反していて、体重がかかるとさらにひどく曲がる。

これは緊急手術対応にして良かった。明日までおいたら開放骨折になりかねない。

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手術台に乗せる。

仰臥にするか、患肢を上にした半仰臥にするか、患肢を下にした半仰臥にするかは、とても大切。

肢を牽引しても外反は整復されない。

脛は主に外側に筋肉があるので、引張っても内側が伸びて外反するのだ。

飛節の外側に肩を当てて、両腕で膝の内側を思いっきり引張るが、外反は直らない。

膝に右腕を回して、その腕を左腕の肘で引張る。悪党の首を後から締める技だね;笑

それでも整復できない。

患肢を下ろして、膝を上から押し付ける。

これをするためには患肢が下になった半仰臥がいいわけだ。

私は、骨折内固定の手術は、整復して仮止めまでいければ、半分以上終わったも同然だと思う。

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手術後、ひどい外反は整復固定されていた。

(つづく)

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どこかヘルニア

2017-03-27 | 急性腹症

先の分娩後の腸間膜裂、空腸壊死、腹膜炎、の手術の最中に、

もう予定日を過ぎている繁殖雌馬が疝痛だという連絡。

夜8時。来院したら血液はさほど悪くないが、正常ではない。

子宮捻転はなさそう。

「開けましょうか・・・・」

開腹したら、空腸の一部がどこかへ入り込んでいた。

馬の右側に立っていたのを、左側へ移って引張ったら、すぐ抜けてきた。

こういう症例では抜けてしまうと、どこへ入り込んでいたかわからなくなる。

網嚢孔か、腸間膜か、あるいは・・・・・

まして妊娠末期の馬なので、腹腔内を隅から隅へ検査できない。

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締め付けられていた空腸は、しばらくすると色調は回復したが、肥厚はとれそうにない。

切除・吻合することを決断した。

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空腸と回腸で端端吻合した。

回腸を吻合に使ってはいけない、という馬外科医も居るようだが、私はあまり気にしない。

それに妊娠末期の馬では、回盲部を引き出せないので、空腸盲腸吻合は難しい。

翌日、朝から飲み食いできるようになり、夕方、退院していった。

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なんだ このちゃいろいのは

たぶん鯨の腰椎だな。

 

                      

 

 

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凍結・陥没土壌での外傷

2017-03-26 | その他外科

1歳馬が放牧地で、中足骨部に外傷を負って連れて来られた。

四肢とも泥だらけ、傷もひどく汚れていた。

連れて来た人たちの長靴も泥だらけ。

放牧地がグチャグチャなのだそうだ。

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次の日、同じ牧場が別の1歳馬をまた外傷で連れて来た。

今度は後肢の球節。

? と思ったら、放牧地が土壌凍結で持ち上がり、その下が空洞になり、そこに肢を落とすらしい。

氷と凍った泥の板を踏み抜くようなものなので、汚れて、削られたような傷になる。

よく洗浄して縫合するが、癒合することは望めまい。

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暖かい地域の人には信じられないようなことかもしれないが・・・・・

「黒ボク土」がそうなりやすいそうだ。

道路なら掘り返して砂利を入れて、重機で踏んでしまえばいいのかもしれないが、放牧地ではそうはいかない。

どうすればいいんだろう?

 

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