たまたま早めに職場に出ていたら、子馬の疝痛の依頼。
イベルメクチンで駆虫したら5分ほどで疝痛が始まった、とのこと。
来院したら、痛くて立っていられない。
血液はひどい所見ではないが・・・・
超音波で診たら、重積像が見えた。
これは手術だ。
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空腸が回腸に入り込んでいる。
そして、回腸を通り越して盲腸へも入り込んでいる。
小腸どうしの重積だと引き抜けなければ、丸ごと切除できなくはない。
しかし、盲腸へ入り込んだ小腸が抜けないとたいへんやっかいだ。
なんとか引抜こうとしていたら、重積部から回虫があふれ出した。
回腸が裂けたのだ。
吸引器とチューブを出してもらって、掃除機のように回虫をそこらから吸い取る。
抗生物質入り生理食塩液もかけてもらいながら、その辺りを吸引する。
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腸間膜の血管を止血して、腸間膜を切断する。
空腸壊死部を切開して内容を捨てる。
回腸を切断して盲端にする。
空腸壊死部を切断して、腱常部を盲腸へ端側吻合する。
腸間膜を縫って閉じる。
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投与して5分のイベルメクチンと疝痛が関係あったかどうかわからない。
あふれ出した回虫はウネウネと生きていた。
死んだり、動けなくなった回虫が詰まったわけではない。
真面目な牧場さんで、これまでも駆虫していたそうだ。
ただ、イベルメクチンばかり。
出てきた回虫は小さかったので、前回のイベルメクチンはひょっとすると効いたのかもしれない。
しかし、もう回虫の駆虫でイベルメクチンをあてにしないほうが良い。
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切除吻合している最中に、空腸の別な部分が重積を起こしているのを見つけた。
すぐに引き抜くことができた。
回虫が多数居ると蠕動がおかしくなって重積を起こしやすいのだろう。
衛生環境が悪かった昔は、寄生虫が具合の悪さにつながる経験がありふれていたので、言葉として残っているのだろう。
人でも腸捻転や腸重積が今より多かったのだろう。
現在では聞かないでしょう?
アニサキス症で腸重積を起こすことがあるくらいかな。
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子馬が麻酔から醒めて、落ち着いたのでフルモキサールで駆虫した。
翌日、もう一度フルモキサールを投与してもらう。
そして、60日齢を超えている他の子馬も駆虫した方がいい。
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満開になったハナカイドウ。
このあと雨と風でかなり散ってしまった。
花の命は短くて・・・・