馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

でまんどばるぶ

2017-10-30 | 麻酔学

馬の麻酔をしている診療施設では当たり前のように使われているのだけれど、意外に知らない獣医さんも居るので書いておこう。

デマンドバルブ、は酸素の配管や酸素ボンベから気管チューブへつなげると、自発呼吸で酸素を吸えるし、息を吐くこともできる。

そして、ボタンを押すと、酸素を押し込むこともできる。その場合もボタンを離せば、馬は息を吐くことになる。

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単純なつくりになっていて、

酸素の圧で膜が押し付けられて、排気できないようになっている。

呼気や吸気の圧で、その膜が開放されて、息を吐ける。

ボタンを押すと、酸素の圧がそのまま肺を膨らませる。

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人医療用で多くの機種が販売されている。

しかし、成馬には人用では流量が十分ではない。

それで、USAで販売されている馬用の流量を増やした機種を取り寄せている。

仔馬、子牛なら人用で大丈夫だろう。

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酸素ボンベ、気管チューブ、デマンドバルブ、を用意しておけば、麻酔中の馬に人工呼吸を簡単にできる。

むか~しは、麻酔器には大きな風船が付いていて、それを圧迫して換気させる、ということになっていた。

しかし、丈夫なゴム風船ではないので、馬の肺を膨らませるほど圧迫すると破裂するだろうし、

とても大きいので、人力で圧迫しようとすると抱きかかえるようにして圧迫しないとならず、現実的ではなかった。

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気管チューブ (気道確保) と

デマンドバルブ (換気方法) には、何度も危ない場面を助けてもらってきた。

吸入麻酔後でなくて静脈麻酔中でも、新生仔蘇生でも、すぐには何が原因かわからない気道閉塞や呼吸停止でも。

麻酔や緊急事態や救急蘇生の必須の器具であり、必須の手技だ。

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単純な構造だが、壊れたり、不調だったりすることもある。

吸えるけど吐けない、などという壊れ方をすることもあるらしい。

そうなると肺が膨らみすぎて危ないので、安心して目を離せるということではない。

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モミジの赤やオレンジは目を惹くが、カシワ林の赤茶色も美しい。

このカシワは妙に赤いね。

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人が動物の中では珍しく色の視認に優れているのは、色づいた果物や木の実を食べていたせいだ、という説があるらしい。

しかし、他の猿よりも色に敏感なことの説明にはならない。

社会性が発達し、他者の顔色を判断できる者だけが生き残った、という説もあるそうだ。

顔を赤らめて怒っている権力者や、青ざめて襲ってくる奴に鈍感だと生き残れなかったとしたら厳しい選抜淘汰だ。

医療者は、色に鈍感だとまずい。

貧血、チアノーゼ、黄疸、を見逃すようじゃ、ね。

 

 

 

 

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帯広畜産大学 産業動物臨床施設見学

2017-10-30 | How to 馬医者修行

休みの日に、紅葉まっさかりの峠を越えて、十勝までドライヴ。

帯広畜産大学の産業動物臨床施設群を見学してきた。

オープンの時もお披露目の案内状をもらったのだけど、”えらいさん”達とピカピカの施設を観ることには興味がなかった。

私は臨床家だ。

どのように使われているのか、どのように使えるのかを観たい。

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私には35年前の記憶があるので、「ここには何があったんだっけ?」とつい昔を思い出してしまう。

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階段教室。

学生たちに牛や馬を見せながら講義ができるようになっている。

(ホントに患畜を入れて診せながら?講義したことはないらしい)

これは難産介助の練習をさせるための牛の模型。

本物の牛の10倍以上の値段がする;笑

私が学生の頃も、直腸検査を練習させるための牛の模型が置いてあった。

壊れていたし、誰も使っていなかったけど。

馬もある。

ちゃんと妊娠子宮が作ってあって、中に子馬が入っていた。

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倒馬室。スイングドアもある。

そこから手術室とCT室へホイストで運べる。

CTを撮ってから手術するなら、途中でホイストを架け替える。

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手術室。

隣の階段教室から見下ろせるようになっているし、無影灯の横についたCCDカメラで撮影して手術室内や階段教室のモニターで映すことができる。

録画したヴィデオはこれからe-learning用のライブラリーになっていくそうだ。

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枠場。

CT。

このドーナツがスライドして撮影するので、馬はしっかり固定しておけば良い。

撮影は1分ほどで終わる。

MRI。

この部屋は、磁石にくっつく金属は入れられない。

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牛用の枠場は幅を変えられるようになっていた。

牛用手術台。

子牛を載せるならこうだし、成牛を載せるなら同じ台を横に連結して載せるのだそうだ。

それはとても面白い。

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入院厩舎。

入院馬房。

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病理解剖室。

大動物もガンガンやれるゼっていう部屋なのは素晴らしい。

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すごい施設だ。

よく考えられて設計され、造られている。

私は、海外も含めてあちこちの馬診療施設も観てきた。

Davis california, Gainsville Florida, Oklahoma S.U., Hong-Kong Jocky club, そして日本のあちこち。

そのどこより最新鋭だろう。

大型Xrayや核シンチはなくても大きな問題ではないと思う。

未来を見せてもらったような気になった。

うまく使ってもらいたいものだ。教育にも、研究にも、臨床にも。

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あちこちにラウンジがあり、学生達の部屋もあり、生活空間として快適に造られているのにも感心した。

しかし、土曜日、学生達はひとりもいなかった・・・・

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質量分析による細菌同定の方法を見せてもらって、

おいしいジンギスカンを楽しく食べて帰ってきた。

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次の日、

朝、繁殖雌馬が第一趾骨を亀裂骨折している、との連絡。

調教、競走している馬によく見られる縦骨折ではなく前後割れ、だとのこと。

第一指骨・指骨は複雑な割れ方をすることがある。

”CTを使え”、とRichardson教授はおっしゃった。

できることならCTを撮ってから手術したいね~;笑

そんなことで天皇賞秋は観られず。

キタサンブラック、おめでとう!!

 

 

 

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膝のお皿が・・・

2017-10-24 | 整形外科

10日前に、たぶん後膝を蹴られた当歳馬。

初診時に撮ったX線画像では骨に異常はなかったが、痛みがぶり返したので再度X線撮影したら、膝蓋骨が内外に割れていた、とのこと。

皮膚には傷がある。

膝蓋骨の骨折を疑ったら、必ず近位-遠位撮影もした方が良い。

いわゆる”膝のお皿”が割れている。

かなり骨折線は開いている。

圧迫固定できるかどうかわからないが、少なくともこれ以上開かないように固定した方が良いだろう。

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以前手術した症例では内外にも割れて、近位遠位でも割れていた。

だから十字にスクリューを入れて固定した。

たしか、透視装置がうまく働いたと思ったのだが・・・・・・

今回やってみたら、透視装置ではうまく後膝を近位遠位で挟めなかった。前回は、内外で挟んで描出したのだったか・・・・

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仕方がないので、DRでX線撮影してもらうが、それでもエアマットなどが邪魔になってうまく骨折線を描出しにくかった。

中足骨部を軸側にひっぱってもらって、ようやく良い方向で撮影できるようになった。

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後膝はかなり腫れていた。そのせいもあり、膝蓋骨の位置と形状が把握しづらい。

関節に留置針を刺したら関節液が噴出した。できるだけ抜いたら、腫れがとれて手術しやすくなった。

骨鉗子を内外にかけて骨折線を圧迫する。

良さそうな位置にaiming device をかけて狙いを定める。

当歳馬の膝蓋骨はとてもやわらかい。

スクリューヘッドがめり込んで圧迫スクリューlag screwが効かなくなる可能性があるので、ワッシャーを使った。

最初のx線画像より骨折線は圧迫されている。

内外方向からでもスクリューの位置は良さそうだ。

スクリューをもう一本入れるのは厳しいと判断した。

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patella

膝蓋骨。

いわゆる、膝のお皿だ。

「最大の種子骨」と表現している馬の本もある。

てっら   だよ。

てら  じゃないんだよね。

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きょうは、2歳競走馬の腕節骨折の関節鏡手術。

麻薬管理者免許の更新のための健康診断に行って、中毒患者ではない診断書をもらった;笑

4歳のあがり馬が下腿部に刺し傷を負って、治りが悪い症例を診察。

先に、予定の4歳競走馬の腕節骨折の関節鏡手術をやって、

そのあと、下腿部を切開。

入院厩舎に、盲腸重積の当歳馬が入院している。

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雪が積もるほど降ったところもあったそうだ。

凍ってない地面は今のうち。

 

 

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survivors and repeaters

2017-10-23 | 急性腹症

10月初めに空腸盲腸吻合した1歳馬が、きのうから疝痛、とのこと。

配合飼料をやり始めたばかりだったらしい。

来院したら、血液検査では悪い状態ではないが、超音波で小腸の完全膨満像が見えた。

もう開腹手術の適応かもしれないが・・・・2回目だ。

状態がさらに悪くなるか、あるいは閉塞が解除されるか、経過を観ることにした。

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曳き運動はできるが、馬房へ入れると横臥する。

これ以上痛みが強くなるようなら、開腹しなければならない。

2時間様子を観た。

蠕動はある。

食べたい気持ちもある。

胃カテーテルを入れたが胃拡張はない。

まだ辛抱することにした。

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翌朝、痛みは消えた。

超音波でも小腸の膨満像はなくなった。

閉塞は解除されたのだ。

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そこへ、6日前に開腹手術された馬が疝痛なので診てほしいと連絡。

その繁殖雌馬は去年結腸捻転で開腹手術されていて、6日前にまた疝痛を起こし、手術が必要だったのだが、私たちが他の手術で手があかなかったので他所で開腹手術を受けた。

結腸骨盤曲の癒着だったそうだ。それが、6日前。

来院したら、疝痛は強くはなく、血液検査所見も悪くない。

直腸検査では、たしかに骨盤腔内に便秘した結腸骨盤曲に触れた。

電解質液を経鼻カテーテルで飲ませた。

20リットル分の電解質を10リットルの水に溶かした。

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開腹手術で助かる馬が増えるにつれ、開腹手術歴がある馬の疝痛も増えている。

再開腹が必要かどうかは、とても専門的な難しい判断になる。

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手術後の馬をどのくらいの日数をかけて元の飼養管理に戻していくかもなかなか難しい。

腸管吻合部位は2週間後に最も狭くなる、とされている。

糸で縫合されてつながっていたのが、糸が吸収され、瘢痕収縮し、それから徐々に広がっていくのだ。

だから、手術後3-4週間は油断できない。

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私は、青草がある季節には青草を推奨している。

それだけではカロリーが不足するので、植物オイルを使うことも薦めている。

蹄葉炎の心配もなく、固形物が詰まる心配もなく、便秘の心配もない。

オイル300mlでエンバク1kgのカロリーに相当する。

ただし、馬が嫌がらないかどうか、そして吸収できるかどうか注意する必要がある。

オイルを与えている馬は尻尾がリンスしたようにスベスベツルツルだったりする。

消化吸収されないで糞にオイルが含まれているようだと、その分はカロリーになっていない。

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乾草類は、長い物を時間をかけて食べているのが良いと思う。

切り草は、切ってあるのであまり噛まずに飲み込んでしまう。

長い草を良く噛んで、時間をかけて食べるのが良いと考えている。

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配合飼料は、粒があるものはよろしくない。

切り草と同じで、噛まずに飲み込みがちだし、磨り潰されない内容はそのまま腸管へ送られる。

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冷たい雨が降った。

 

 

 

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近位指節関節固定 9症例目

2017-10-21 | 整形外科

5歳のクウォーターホース系繁殖雌馬。

調教していたが、歩様が悪く、繁殖供用することにし、初産した。しかし、はっきりと跛行するようになった。

7月にX線撮影したら、3肢に近位指節・趾節関節の変形性関節症があった。

とくに左前が進行しており、痛いのも左前。

すでに内側関節は骨が崩れてきており、肢軸は繋で内反している。

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ペンシルヴァニア大学Richardson教授に、「3肢を関節固定したことがありますか?」と尋ねたら、

”2肢を関節固定したことはあるが、3肢はない。” との返事。

とりあえずは、一番良くない左前を手術することにした。

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この手術は9症例目

近位指節関節の背側にひどく骨増勢していて、関節を開けるのはあきらめた。

骨を削って、LCPを肢軸に平行に置けるようにした。

LHSで、P2に留める。完全には締めない。

LCPの両側に5.5mmスクリューを入れる。関節を貫いて、圧迫するようにlag techniqueで。

LCPの中央の穴に5.5mmスクリューを少しcompressionがかかるように入れた。

これまで入れた4本のスクリューを全部、めいっぱい締める。

LCPの近位の穴にLHSを入れた。

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傷を閉じるのもなかなかたいへんだ。

プレートとスクリューを入れた分、テンションが強くかかる。

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術後はhalf limb cast を巻く。

蹄葉炎や他の肢のDJDの悪化には注意が必要だ。

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今日は午後、疲れていた。

飛節OCDの関節鏡手術と、1歳馬の下顎の診察しかしていないのに・・・・・

! 午前中、「バスケットボール大」と言われた、顆粒膜細胞腫化した卵巣の摘出手術をしたのだった。

腕力と神経を使う2時間だった。そうか、そうか、そのせいだ。

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オラはこの秋、夜は玄関フードへ入れてもらってる。

あっ、帰ってきた!

 

 

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