馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

大晦日2015

2015-12-31 | 日常

きょう大晦日は当番だったが、何もなく終わりそうだ。

いろいろあった1年だったが、その1年ももう締めくくり。

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夜の駐車場で、

おまえのブロンドの髪を引き寄せて、

おまえの吐息を首筋に感じながら、

この1年を振り返る・・・・・

・・・・こっち向かないでくれる。

ヒゲが顔に刺さるから。

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それでは皆さん、良いお年をお迎えください。


仕事納め2015

2015-12-31 | 日常

前日腸管手術した繁殖雌馬は順調で、昼過ぎに帰っていった。

診療センターは大掃除の総仕上げ。

と言っても、入院馬が居たので厩舎はほとんど手付かず。

ふだん見えない、触らない空調の吹き出しのフィルターや、天井近くの壁や、器具器械の天板は掃除しておきたいが・・・・

簡単には終わらない。

馬を運ぶホイストの上部。

3mの脚立に乗らないと見えないし、拭き掃除できない。

拭いときました。

天井近くの灯具。先日、LEDに替えた。

より明るくなった、かな?

オーヴァーヘッドスライダー。

どうだ?!

掃除するにも、注意力ほかのセンスと、体力と、気力が要る。

仕事納めでも衰えを感じた1年だった;笑。

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娘がクリスマス過ぎて帰ってきたので、クリスマス過ぎのクリスマスケーキ。

でも、取りにいってからデコレーションを仕上げるこだわりの店

プロだね。


FishでFinish

2015-12-29 | 急性腹症

きのう午前中に空腸盲腸吻合を受けた馬は、術前に13リットルの胃液を捨て、術中に30リットルの小腸内容を捨てたので、術後の脱水が予想された。

それで輸液スピードを上げていた。

夜8時に「伏臥して呼吸が苦しそう」とのことで診察。

それまでの術後8時間で20リットルの輸液を行った。

さらに次の20リットルを用意して付け替えた。

疝痛はないが、消炎効果、抗エンドトキシン効果を期待してフルニキシン・メグルミンも投与した。

しかし、口粘膜は紅潮で斑(まだら)。良い状態ではない。

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午前2時半に「発汗し、苦しそう」とのことで呼ばれた。

心拍は104、口粘膜は赤灰色で、「これは厳しいな」と思った。

痛がっているというよりは苦しい感じ。

メデトミジンとベトルファノールを投与して鎮静した。

胃カテーテルを入れるが、ガスも液も回収できない。

術後40リットルの輸液を入れ終え、次の20リットルバッグを吊る。

ショック状態なので、循環血液量を増やす目的で高張食塩液1リットルを急速投与した。

投与中に馬は苦しがった。

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朝5時、馬はぐるぐる歩き回って輸液チューブが捻れて輸液が止まった。

解こうとしている間に様子がおかしくなり、危ないので馬から離れるように指示した。

馬はそのまま倒れて、しばらくもがいて死んだ。

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剖検では胃破裂が確認された。胃にはまだ固形物が残っていた。

小腸は全体に色調がひどく悪かった。

術後イレウスから胃破裂したのだろうが、いつ胃破裂したかはわからない。

もっと輸液していれば、とか、

もっと早くに胃カテーテルをいれれば、とかも思うが、あの小腸の様子では厳しかっただろう。

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朝、6時過ぎに疝痛馬の診療依頼。

あわただしく受け入れ準備しておいて、朝食を食べに帰る。

7時過ぎに馬が来たが、まだ痛い。

PCV44%、乳酸値1.8mmol/l。

朝4時には疝痛だったというので、もう3時間以上経っている。

開腹手術する。

小腸の一部が腹腔奥に入り込んでいた。

もみほぐし引き抜いた。

その上位の小腸はひどく膨満していた。

切開して内容を20リットル近く捨てた。

成馬の小腸閉塞は一人では扱えない、ときのう書いたが・・・・ひとりでやる。

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閉腹にはfish を使った。

閉腹のときに、ウニュウニュと出てきて邪魔になる腸管を押さえておくのに使う。

ある程度閉腹したら、ワイヤーを引張って抜く。

正式名称はviscera retainer (臓器保持器)だが、通称fish。

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さあ、これで年内の手術はfinishとしようじゃないか!

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手術室の大掃除。

無影灯をきれいに拭く。

今年の血しぶき、今年のうちに ♪♪

 

 

 

 


年の暮れの小腸捻転

2015-12-28 | 急性腹症

学会、休み、会議、と続いて、ひさびさの執刀手術。

それも今年の締めくくりとあって、気合を入れて!と出勤したら、当番チームが開腹手術を始めるところだった。

繁殖雌馬の小腸捻転。

それで午前中の予定手術は結局、年明けへ延期。

疝痛馬は重症だった。

成馬の小腸がひどく膨満した症例はひとりでは手に負えない。

直径10cmを超えた、長さ10m以上にわたる腸管をひとりでは扱いきれない。

内容を捨てて、

纏絡を解いて、

切除する部分を決めて、

血管を結紮して、

腸間膜を切断して、

腸管を吻合しなければならない。

・愛護的に

・内容が漏れないように

・しかし狭窄させないように

・汚さずに

・血行が確保されるように

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術前に胃液が13リットル抜けたそうだ。

術中に小腸内容を30リットル捨てた。

腸間膜が破れて腹腔内に相当出血していた。(そのせいでPCVの上昇が抑えられていたのだろう)

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急に寒くなった。

入院厩舎はストーブをつけて暖かくし、輸液も温めておいた。

さて・・・・・

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い~ぬはよろこび

庭かけまわり

とうちゃんは血圧高くなる

 


practice!

2015-12-25 | How to 馬医者修行

practice ってどういう概念か?

AAEP American Association of Equine Practitioners は、「アメリカ馬臨床獣医師会」と訳すのが良いと思う。

ここでいうpractice は臨床、つまり実践だ。

Let's practice ! さあ、練習しましょう!

この場合のpractice は練習だ。

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練習と実践という、背反する概念を表すのに使われるのでとても把握しにくい。

どうも語源は「行う」という言葉から来ているらしい。

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さて、来年の全国公営競馬獣医師協会の研修では、2/8は骨折内固定のpracticeをやります。

講義は最小限にしてpracticeします。

内容は、

中手骨外顆骨折のスクリュー固定

第一指骨縦骨折のスクリュー固定

尺骨骨折のプレート固定

近位指節間関節の関節固定

下顎骨折のプレート固定

切歯骨骨折のワイヤー固定

子牛の脛骨、橈骨、大腿骨、上腕骨骨折のプレート固定

をpracticeします。

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ほんとにpracticeしなければいけなくなる立場なので、practiceしておきたい人もいれば、

practiceした経験があるだけで、practiceの中で遭遇したときに二次診療施設へ送るのに役立つというpractitionerもいるでしょう。

それぞれの立場とレベルにあわせてpracticeしてもらえば良いと思います。

翌2/9も引き続きpracticeしてもらえます。

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その中でpracticalな講義も少しだけしたいと考えています。

「あ~スクリュー入れる位置がまずいじゃない」

と思ったあなたは遅れてる。

という話もしたいと準備しています。

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牛の獣医さんには、子牛の骨折プレート固定をpracticeしてもらう機会にしましょう。

たぶん日本ではそんな機会は他にないでしょう。

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車乗るの大好き。

どうしてなんだかわからない。

外を眺めながら走るのが好きなのか?

すわり心地、寝心地が好いからか?

とうちゃんと長い時間いられるからか?

毎日家にいるのは退屈だからか?

なぜだ?!