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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

もうひとつの寄生虫対策 パドッククリーナー

2012-11-29 | 感染症

海外でも日本でも、駆虫薬に耐性を示す寄生虫が見つかっている。

もう駆虫薬だけに頼って寄生虫対策をすることはできないようだ。

定期的に全頭一律に一斉に駆虫するやり方をしていると寄生虫の耐性を促進してしまうかもしれない。

駆虫薬に頼る以外にできることは、放牧地の糞を拾って、放牧地が寄生虫で汚染されるのを防ぐことだ。

昼夜放牧する牧場も増えているので、必要なことだろう。

しかし、これはとても時間がかかる重労働だ。

Maxi20vac20towed266x178 こういう楽しそうな道具も海外では売られている。

< width="560" height="315" src="http://www.youtube.com/embed/p6_ipuk4ZNo" frameborder="0" allowfullscreen></iframe>

補助事業の対象になっているようだから、日本でも販売されているのだろう。

paddock cleaner  で検索すると何社もの製品が出ているようだ。

http://paddockcleaners.com.au/

http://www.fresh-group.com/paddock-cleaner-poo-vac-paddock-vacuums.php

http://www.paddockcleaner.com.au/

糞を撒き散らして、乾燥させて虫卵を殺そうというのは湿潤な日本ではダメなようだ。

かえって虫卵を広げてしまうし、日本の気候では虫卵は死なないらしい。

なんらかの方法で放牧地の糞を拾う必要がある。

そのことで、馬が食べなくなる区域を減らすこともできる。

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昨夜からもけっこうな風が吹いた。

2時間ほど停電もした。

今はストーブも電気がないと消えてしまう。

厳寒期なら真っ暗な中、寒い思いをすることになる。

登別はまだ停電しているようだ。

ダメージを受けていた車庫も気になったが、なんとかトタンもめくれず済んだ。

しかし、自転車小屋が家の裏まで移動していた・・・自転車はもちろんそこに残ったまま。

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Pb223343 オラ、風が吹いても寒くても平気!

ハラ、減った。


寄生虫性血栓による腸管壊死

2012-11-28 | 急性腹症

2日前から40℃以上の発熱をしているという当歳馬。

ひどい疝痛になって来院した。

PCV44%、乳酸値4.6mmol/l。

開腹手術適応かと思うような症状と経過だが、超音波では小腸の肥厚と、大腸の液状内容のみが所見だった。

腸炎による疝痛か・・・・・・

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翌朝までそれなりに落ち着いた。

PCV64%、しかし乳酸値は0.8mmol/l未満。

変位疝なら乳酸値が下がることは考えにくい。

やはり腸炎か・・・下痢が始まれば楽になるか・・・と考えて輸液治療するが、

また疝痛がひどくなった。

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これ以上待っても回復すると思えず、消化管が破裂する恐れもあるtと考え、開腹手術することにした。

Pb263351 と、大結腸は骨盤曲側から壊死している。

結腸動脈には触れるほどの血栓があり閉塞している。

結腸を亜全摘し吻合すれば助けられるかと考えたが、

結腸の基部の動脈に触れても拍動が感じられない。

Pb263355 超音波ドップラーで血流を確認しようとしたが、まったく血は流れていなかった。

盲腸尖も変色し始めていた。

小腸の肥厚も血行障害によるものなのだろう。

これでは結腸を切除吻合しても助からない。

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Pb263360 剖検で、結腸動脈を開いて血栓をもみほぐしても円虫子虫の虫体は確認できなかった。

しかし、結腸動脈の内膜には糸状隆起線があった。

やはり普通円虫の子虫が動脈を傷つけて血栓を作ったのだろう。

そして、腸粘膜の壊死が始まって発熱し、数日の経過で動脈が完全閉塞し、ひどい疝痛になった。

それほど膨満している腸管はなかったので、あの痛みは腸が壊死していく虚血痛だったのかもしれない。

きちんと駆虫しているそうなのだが・・・・・

この秋、寄生虫性血栓による腸管壊死で死亡した馬はもう3頭目だ。

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Pb283364 Pb283362硬いゾ、冷たいゾ、味ねえゾ・・・・

とりあえず、ゴロスリしとけ!


面白くてちょっと為になる話し

2012-11-27 | 講習会

Pb263361 昨夜は岡田繁幸さんの講演会。

一般の方もどうぞ、と新聞広告まで入れたお知らせの効果か、

マイネル軍団総帥の話は聞き逃せないという馬関係者が多いからか、

急遽、会場を広げ、椅子を大量に追加するほどの人出だった。

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だから私は嫌われる。と何度かおっしゃっていたが、自由な発想で、システムを変えよう。と訴えかける内容は面白かった。

900頭馬を収容できる世界一美しいセリ会場を新冠の丘に創ろう。とか、

JRAの賞金や厩舎制度を変えよう。とか、

やっぱり夜間放牧しなきゃだめだ。とか、

いじめられっ子は思い切ってナイフ振り回してでも・・・・とか、

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私は自分が日頃思っていることに近いことを岡田さんが述べることに驚いた点もいくつかあった。

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Weathermap00 夜中からすごい強風が吹いた。

北海道では、台風よりオホーツク海へ抜けて発達する低気圧で荒れることの方が多い。

今日のは何年かに1度の荒れ方だった。

私の周りでもシャッターがはずれた車庫、屋根が飛んだ車庫、そして我が家の車庫も危なかった。

                                      


岩波写真文庫「馬」

2012-11-25 | 図書室

Pb133274 なんとも懐かしさと興味をそそられる本を貸していただいた。

私も学生時代どこかの出版社の、写真でいろいろなものを紹介したシリーズの「馬」と題された1冊を買った。

その本の中でもセリの風景などは紹介されていたが、

この本はさらに古く、馬がまだ農作業や使役に使われていた時代が写真に収められている。

Pb133275 この農作業に使われている馬などはけっこう大きな馬だ。

ドサンコやその他の和種と呼ばれる馬ではなさそうだ。

トラクターが無かった時代、馬無しでは農作業の効率が上がらなかったのがよくわかる。

そして、馬を完全にてなづけていないと農作業はうまくいかなっただろう。

Pb133276 蒸気機関車がそばを走り抜けて行く牧場風景も興味深い。

それでも厩舎の屋根の形は今も使われている形をしている。

Pb133277 右は、もっと古い伝統的な馬飼養の形態と言って良いのだろう。

曲がり屋での生活の様子。

南部曲がり屋は岩手県遠野を訪れたとき見せてもらった。

馬房と人の居住スペースが土間をはさんで一つ屋根の下に収まった建築。

もう保存しないと消えて亡くなってしまうらしい。

Pb133278 馬と人との光景も興味深い。

馬は家族のように大事にされ、

働き手として扱われ、

財産でもあったのだろう。

Pb133279         -

馬の病院の光景も収められている。

これは競馬会か、あるいは大学の家畜病院だろう。

X線撮影装置はろくに写らなかっただろうな。と思うような代物だし、

吸入麻酔器は、たぶんカエルにクロロホルムを嗅がせるのと変わらないしくみなのだろうけど、

「原点」として見ると興味深い。

                       -

Pb133280 馬を倒す機械の写真も載っている。

私が大学受験した頃、大学の紹介に、家畜病院には「バンソー倒馬機」が備えられている。と書かれていた。

結局、入学してもどれがそれなのか見ずに終わった。

こういう物だったのかもしれない。

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馬は農作業や使役にも使われていたが、写真の下にあるように血清療法に使う抗血清を作らせる動物としても使われていた。

馬の血清も人にとっては異種蛋白なのだけれど、多くの血清量が採れる動物の中ではアナフィラキシーショックが起こる率が少なかったのだろう。

                       -Pb133283

なにも農村だけでなく、都会には荷運び用の馬が多く飼われていたようだ。

日本通運の厩舎は2階建てだったそうだから驚きだ。

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そして、この頃まで、獣医学とは馬の医学だったのだ。

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もう手に入らない本なのだろうと思ったら復刻版も出ているらしい。


繁殖雌馬にも蹄の手入れを!

2012-11-22 | 蹄病学

2009年に繁殖雌馬も蹄の手入れをしましょう!という記事を書いた。

まったく同じことを書くのは嫌なので、同じことはもう書かない;笑。

鼻孔に腫瘍ができた15歳の空胎馬。

以前から歯も悪い。

腫瘍は大雑把に切り落とすだけなら立位でできるし、歯の方も噛み出しは以前ほどひどくはない。

高齢馬なので、全身麻酔はリスクがある。

しかし、肉付き(Body Condition Score)もいまいちなので、来春受胎させるためにはできるだけのことをした方が良いだろうと判断した。

で、鼻の腫瘍摘出と、臼歯の鑢削は終わったのだが・・・・

あまりに蹄が伸びて変形しているので、削蹄した。

Pb203328 右後、削蹄中。

左後はまだ手を着けていない状態。

伸び過ぎて、蹄壁は剥がれつつある。

蹄踵部も伸びて巻き込んで潰れている。

蹄底は二重蹄底になっているのかとも思ったが・・・・

Pb203329 切ってみると、蹄支が伸びて、蹄底の蹄叉尖以上に達している。

あ~こんなになるまで伸びるんだな・・・・

と感心した。

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以前見たこの蹄(右写真)がどうしてこうなったのか今まで理解できなかった。

が、今回わかった。

P1010010

右の写真の馬は慢性蹄葉炎で削蹄できなかった(しなかった)のだそうだ。

そして蹄底はおかしな角質で覆われているが、実は蹄支がただ伸びたものだったのだ。

いや~勉強になったな~

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繁殖雌馬と言えどもこんなに蹄が伸びてしまうのは運動不足なんだろうと思う。

それは、例えば全身麻酔するときのリスク要因になるだろうし、

来春、受胎させるためにも、無事に分娩するためにも、そして子馬と一緒に駆け回るためにも望ましくない。

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繁殖雌馬にも蹄の手入れを!

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Pb193319オラの肉球は絶好調!

Pb193318 オラにしかできないこのボールテクニック。

とれるもんなら、とってみれ!

・・・・って、ほんとに取ったら、足噛むゾ

Pb193315