本州から側頭骨舌骨関節症の治療のために送られてきた17歳の乗馬サラブレッド。
平衡感覚障害は軽度
右の耳の麻痺も軽度
右眼瞼の麻痺は中程度
乾燥性角膜炎中程度
右顔面麻痺は重度。口は開いていて、下唇も麻痺。
舌の麻痺は軽度。
サク癖はひどい。たぶんTHOの要因になった。
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右の角舌骨を摘出した。
この馬、ひどくサク癖するせいで頚の筋肉が異常に発達していて、手術台で仰臥にしても頚が完全に伸びない。
それで、底舌骨と角舌骨の関節の位置が、ふつうより尾側にあった。
なるほど、サク癖は舌骨を胸の方向へ強く引張る行動でもあるので、無理な力が舌骨にかかるのだろう。
この馬の角舌骨は太くなり、両端の関節も腫大していた。
茎状舌骨も全体に太くなっていた。
左も側頭骨舌骨関節が大きくなっていた。
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この馬、「いんこう」で去勢も頼まれていた。
健康手帳には何の記載もない。
しかし、17歳の乗馬にしては”ウルサイ”馬で、雄行動もあったのだろう。
AMHも高いので精巣が残っているのは間違いなさそう、とのこと。
手術台上で仰臥にしたら、陰嚢があった辺りに手術痕らしきものがある。
左は間違いなさそう。右も??
北米馬外科専門医の先生が、右は腹腔内から停留精巣を、
左も腹腔内から精巣上体を探し出して摘出した。
おそらく左は以前に体外へ出せた精巣だけを切除したのだ。
獣医師でない人が去勢しようとしたか、完全な去勢でないので、健康手帳にも書かなかった。
獣医師でない人が自分の馬を去勢しても構わないが、健康手帳には記載できないし、
人の馬を去勢して料金をもらったら獣医師法違反だし、
記録を残しておかないと、たいへん面倒なことになる。
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「いんこう」は、「陰睾」だと思っていたら、古い外科の教科書には「隠睾」とある。
cryptorchid は「潜在睾丸」とステッドマン医学英和にはある。
retained testicle とも言う。これは、「停留精巣」かな。
もっとも「陰睾」も間違いではないらしい。けっこう使われているようだ。
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今年は、雑木林の色づきが美しいように思う。
夏は渇水の時期があったが、それ以降は雨が十分に降ったことや、
潮を含んだ風が吹かなかったおかげだろうか。