馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

離乳直後の細菌性関節炎

2017-09-10 | 感染症

土曜日、夕方、入浴中、「当歳馬の橈骨遠位が腫れて負重できない」との連絡。

地元でX線撮影するには時間がかかるので、そのまま連れて行きたい、との依頼。

Robert-Jones Bandage を巻いて来院した。

橈骨遠位骨折の応急処置としてはほぼ完璧だ。

そのままX線撮影するが、橈骨は折れていない。亀裂もない。

成長板(骨端板)も異常なさそうだ。

バンデージと副木をはずしてもう一度X線撮影する。手根骨も、割れてない。

肢をよく見ると、たしかに腕節が腫れているし、触ると痛がる。

しかし、どうやら橈骨手根骨関節の滑液増量のようだ。

前腕手根関節は、尾側つまり副手根骨の基部までつながっている。その部分の腫れが強い。

毛刈して、関節穿刺したらマンゴージュースのような色の関節液が抜けてきた。

体温38.8℃。

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全身麻酔して関節洗浄して、もちろん抗生物質全身投与もして、関節内にも抗生物質投与することにした。

背側と掌側を穿刺して、交互に灌流させて洗浄した。

こうしないと、掌側を洗い残してしまう。

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末梢血と関節液の血球数をカウントした。

関節液は白血球数17万/μl超。

細菌培養もする。

直接培地に塗るだけでなく、増菌用の培地にも入れる。

PCRでも検査してもらう。

今のbroad range PCRではどんな細菌でもそこに居れば検出できるのだそうだ。

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大型と小型のオートクレーブいっぱいに滅菌したプレート、スクリュー、骨折内固定器具、は明日まで置いておくことにした。

明日、骨折の症例が来るかもしれないからね。

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この仔馬、離乳して2日目だそうだ。

離乳のストレスは、細菌が血行性に関節に到って増殖する要因になるだろう。

できるだけ負担がかからない離乳方法をすべきだ。

 

 

 

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Rhodococcus equi感染症仔馬3例

2016-08-05 | 感染症

2ヶ月齢の子馬が呼吸困難になり、翌朝には死亡したとのことで剖検。

突然、肺の充血鬱血を起こして呼吸速迫になるタイプの肺炎のようだが・・・・

よく観ると胸膜面にも横隔膜面にも膿瘍がある。

肝変化したことで呼吸困難になったのだが、

Rhodococcus equiに感染していたことと無関係ではないと思う。

腸管のリンパ節も数箇所で化膿していた。

もう数週間早く異常を発見して抗生物質治療を始めるしかこういう仔馬を助ける方法はない。

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4月初め生まれで7月初めから治療されていた仔馬も剖検に運ばれてきた。

左肺後葉下垂部にほとんどが化膿性肺炎病巣になっている。

尾側の縁には径10cmほどの膿瘍がある。

肺リンパ節は15×10cmほどの膿瘍になっている。

腸管のリンパ節は櫛団子状に膿瘍化している。

おそらく5月には病巣ができていたはずだ。

早く発見して治療を開始するしかこういう仔馬を助ける方法はない

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5月生まれで、もう数週間抗生物質で治療しているが解熱しないし、痩せてきている、という子馬が来院した。

体表からの超音波検査で肺にいくつもの膿瘍が見つかった。

腹腔内にも膿瘍が見つかった。

はじめの症状は気管がゴロゴロ鳴るのと発熱だったそうだ。

「肺はやられてなかった・・・・」は、間違い。

症状が出たときには肺に膿瘍ができている。そういう菌なのだ。

気管洗浄液を採って、細菌検査して、Rodococcus equiが分離されたら特別な治療と注意が必要だ。

しかし、それももっと早い日齢で見つけないと治療に順調に反応しない。

膿の塊ができたら、とくに腹腔内にできたら、簡単には治らない。

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暑さで、弱っている仔馬がさらに衰弱しているのだろう。

ただ、それは末期の病態でしかない。

無駄な抗生物質治療に手間と費用をかけるより、早期発見に努力した方が善い。

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この季節、海へ遊びに行ったら・・・

こうなるのはわかってるんだから・・・・・・

 

 

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ロドコッカス腹腔内膿瘍

2014-08-01 | 感染症

2月末生まれの子馬。

45日齢から発熱し治療。

治療中断したが再発。

ずっと呼吸器症状はなかったが、今度は飛節が腫れて跛行するとのこと。

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来院して超音波で肺をスキャンするが大きな肺膿瘍はない。

しかし、腹腔内には液を貯めた異常な塊が見えた。

腹腔内膿瘍だろう。P8016491

針を刺してみると膿が出てきた。

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今まで何頭もこういう子馬を診てきた。

経験が乏しかった頃は治療を続けたが、助かった子馬はいない。

いずれ痩せ衰えて死ぬ。

小腸を巻きこんだ癒着で疝痛を起こし、開腹手術して膿瘍を発見した子馬もいる。

しかし、腹腔内の大きな膿瘍を処置できたり、切除できたりしたことはない。

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可哀そうだが現実的には治す方法はない。

そして、こういう子馬は糞便中に大量のRhodococcus equi 強毒株を排泄する。

来年、生まれてくる子馬たちのためにもパドックや馬房を汚さない方が良いのだが・・・・

                       /////////////////

P8016501-

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はあ~はあ~はあ~

とうちゃん

きょうは、あついな~

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牛白血病フリーをめざさないのか?

2013-07-25 | 感染症

きのうは札幌で会議。

かなりの時間は牛白血病の対策が必要だという提案を北海道獣医師大会ですることについて費やされた。

牛の地方病性、あるいは流行性は牛白血病ウィルス Bovine Leukemia Virus の感染によって起こる。

しかし、このウィルスは人には感染しないし、人にはなんの健康被害も起こさない。

が、白血病は人でもあるし、「白血病」という呼び名が恐ろしげなので、乳製品や牛肉の消費が減る風評被害が起きないか心配する関係者もいる。

一方で牛白血病ウィルスは日本の牛に蔓延しつつあり、感染率、抗体陽性率は増加し続けていると考えられている。

聞くところによれば肉用種で4割、乳用牛で3割が抗体陽性だろうと推測されているそうだ。

牛白血病ウィルスに感染してもすぐ白血病を発症するわけではなく、数年を経て一部の牛が発症する。

だから発症牛を淘汰しているだけではウィルスの蔓延は防げず、今のところ、抗体陽性牛から同居牛が感染するのを防ぐことと、抗体陽性牛のできるだけ速やかな淘汰が望ましい。

しかし、何の補助も支援策もない状況では、抗体検査も、抗体陽性牛の淘汰も、農家の負担で行うしかなく、積極的かつ有効な対策はほとんど取られていないのが現状だ。

だから、対策が必要であることを提案しようということなのだが・・・

今回集まった委員のみなさんからは、国として牛白血病の撲滅・清浄化を目指そう。それが必要なことを訴えようという意見はなかった。

家畜共済制度の中で廃用基準をどうするとか、

公的支援を求めることの是非とか、

農家ごとの対策も必要だとか、

具体的方策についてのあれこれについての意見のやりとりばかりだった。

どうして、イギリスやデンマークができたことを日本ではできないと端からあきらめてしまうのだろう。

国の財政が厳しいとか、畜産の位置づけが低いとか、どういう具体的方策を採るのが有効で、どれだけの経費がかかるとかいうことは獣医師会で考えることではなく、

今は牛白血病対策が必要とされていて、それには国が動くことが必要だ。ということを提言すべきではないかと、委員のひとりとして思ったことであった。

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かつて馬が今よりはるかに頭数が居て、輸送手段としても産業上も大切な存在でもあった時代から馬伝染性貧血(やはりウィルス感染で起こる)は対策として摘発淘汰が法律で行われてきた。

その感染馬の摘発は信頼性に乏しい方法であった時代もありながら、伝染性貧血馬は減少し、ついにほとんど撲滅されるに到っている。

清浄化すれば、摘発の検査も感染防止も大幅に手をゆるめることができる。

完全清浄化でなければ永遠に検査と感染防止対策を取り続けなければならない。

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ついでに言えば、牛の「白血病」は世界的に「白血病」と呼ばれてしまっているが、

本来「白血病」とは「骨髄を主な病変として血液系細胞が異常な増殖をする疾患」とされているので、

このウィルスによってリンパ節が腫瘍塊化する牛ウィルス性白血病は、「白血病」と呼ぶべきではない。

ただ、世界的に「牛白血病 Bovine Leukemia」という病名がいきわたってしまっているので、病名を変更するのは簡単ではないだろう。

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P7244653 札幌の街なかではJazzフェスティバルが行われていた。

夏の空の下、生で聴く音楽♪は好いものだった。

ゆっくりしてられなかったけど。

change the world

Baby if I could change the world ・・・・・・・

  

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橈骨遠位のLimb Perfusion

2013-07-22 | 感染症

日曜日、飛節のOCDと言われた馬のX線撮影をし直す。

異常はないようだ。

飛節軟腫(下腿足根関節の滑液増量;こういうとなんか違うネ)はあるのだが、どうも肢を捻ったらしい。

それもかなりひいてきているとのこと。

手術必要なし。と判断した。

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P7214636 Rhodococcus equi肺炎を1ヶ月近く治療し、治癒して夜間放牧もしていたら腕節が腫れて痛くなり、X線撮影で橈骨遠位成長板に骨髄炎と思われる透過像が見つかった当歳馬。

肘の遠位で駆血してlimb perfusion 肢灌流治療を行う。

静脈に抗生物質を押し込むと逆流して駆血部位より遠位が抗生物質漬けになる。

そのまま20分間待つ。

組織中の抗生物質濃度が、全身投与するより高くなる。はず。

骨の中には骨の血管孔からしか血液は行かない。

これで果たしてどれくらい病巣内の抗生物質濃度が上がっているか基礎実験データはみたことない。

それでも、やってみたほうがいいだろう。

細菌性骨髄炎はとても恐ろしい病気だ。まして原因菌がRhodococcus equi なら。

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午後は、肢軸異常のシングルスクリュー成長板阻害手術。

そして、1頭は肢軸異常のスクリュー抜去手術。

                     /////////

P7104588 北海道へ来て35年。

はじめて扇風機を買った。

もちろんエアコンは買ったことがない。

(車は別)

ためしに回してみたけど、今のところまだ使ってない。

やっぱり要らないかな。

朝夕は涼しいんだし。

あの大阪の寝苦しい夜、そして朝からうだるように暑い夏を思えば、避暑地にいるようなもんだ。

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