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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

出勤日は小春日和 開腹2頭と腕節関節鏡×2と大腿骨骨嚢胞と上腕骨骨折と

2024-11-28 | 急性腹症

ひさしぶりに出勤したら覚醒室で死んでいる馬を運び出すところだった。

昨夜、結腸捻転であきらめたのだそうだ。

しかし、トラクターはパンクしているし、バッテリーがあがっている・・・・ 

            ー

疝痛の馬も来院するらしい。

来たら前日からの疝痛。

超音波検査で、盲腸が腫れ上がっている。重積?

開腹したら原因不明の盲腸壊死だった。

盲腸体を切除したが・・・・

            ー

午後、私はたのまれて腕節の関節鏡手術。

対側肢もXrayしたら割れている。

左右腕節を関節鏡手術する。

            ー

続いて1歳馬の大腿骨骨嚢胞のscrew固定。

            ー

さらに疝痛の繁殖牝馬と骨折を疑う当歳馬も来院するとのこと。

「春のようにいそがしいですね」

 まったく。

            ー

繁殖牝馬は、来たらPCV54、乳酸値2.6 mmol/l、WBC 7,700 /μl 。

朝からの疝痛。

開腹したら、この馬も盲腸が腫れ上がっている。

小腸も素直に出てこない。色調も良くない。

            ー

そのうち骨折を疑う当歳馬も来院した。

背中を超す高さの副木を付けたフルリムキャストを着けて来院した。

X線撮影して・・・・みごとな上腕骨骨折だった。

遠位より骨幹部の斜骨折。

もう300kg近くあるだろう。

牡馬、競走馬にしなければならない馬だ。

あきらめる。

(上腕骨骨折・大腿骨骨折は、副木を付けたフルリムキャストを着けても有効に固定はできません)

            ー

フルリムキャストを着けたままだと焼却するのにも困るので、解剖場で実習生にキャストの外し方を教える。

            ー

そこで私は引き上げた。

小春日和(初冬の春のように暖かい日)だったと、日記には書いておこう;笑

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すっかり葉を落としたニシキギ。

こんなオレンジの実をいっぱいつけている。

線香花火の、火球の、最後の、輝きのようでもある。

 

 


盲腸底のみの便秘

2024-11-17 | 急性腹症

その朝、私は競走馬の腕節の関節鏡手術。

入院馬は、まだ調子が悪い。

間欠的なのだが痛くなり、横臥する。

夜中には滾転したとのこと。

POI 術後イレウスかと考えリドカインの点滴もしている。

超音波検査で明瞭な異常なし、

胃内視鏡検査で重度の胃潰瘍なし、

直腸検査で異常な膨満や緊張部なし。

ときどき軟らかい便は出る。

ときどき胃液の逆流・・・・・

           ー

夕方まで様子を観たが、再開腹の決断もつかない。

しかし、このままでは回復の見込みはない。

hig先生にやってみて欲しい、と言われたので;笑

開腹することにした。

           ー

開腹したら脾臓の位置がおかしい。腹部正中、腹底にある。

大結腸が脾臓の外側にある。しかし、結腸左背側変位というわけではない。

小腸は内容に乏しい。色調は良くもないが、悪いわけではない。

前腸間膜根部の動脈の拍動はしっかりしている。

胃も大きくない。

それでも胃拡張もあったから、十二指腸も触っておかないと・・・・と腹腔右背側へ腕を伸ばすと・・

硬い塊に触れた。

盲腸底の便秘塊だ。

馬の盲腸は良く発達し、コンマ型をしている。

そのコンマの●部分にしっかり物が詰まっている。

           ー

馬を右へ傾け、盲腸尖をできるだけ外へ引き出し、切開する。

盲腸切開部に葉状条虫が1匹付着していた。

盲腸体は粥状の内容が少し入っているだけ。

ホースで水を盲腸へ送り込んでもらし、盲腸底をバスケットボールのドリブルの要領でもみほぐしながら軟らかくする。

ときどき掻き出すと、かなりの便秘内容が出せた。

           ー

馬は、翌日から好調だったそうだ。

盲腸全体の便秘なら、直腸検査でも、超音波検査でも、あるいは腹部の外貌でも判断がついただろうと思う。

しかし、盲腸底だけの便秘だったので術前診断できなかったし、術中も異常発見が難しかった。

盲腸底は腹腔右背側にある。それが十二指腸を圧迫することで術後の胃拡張を引き起こしたのだろう。

危うく2回目の開腹手術でも異常を見逃すところだった。

40年やってきたけど、まだ経験不足だな。

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マユミ

この辺りでは国道沿いにもけっこう自生していたりする。

秋に赤い実がなる植物は多いが、ピンクの実が愛らしい。

庭に植えてみたけど、自生している木の方が立派で実なりが良かったりする;笑

 

 


空腸上位腸間膜裂は結腸を空にすることで縫える

2024-10-08 | 急性腹症

朝、出勤したら手術室で開腹手術が始まるところだった。

血液(所見)は悪くないが、痛みが強い、とのこと。

6年前に小腸纏絡で8m切除・吻合している16歳の繁殖牝馬。

小腸が素直に出てこない。

私も手洗い(手指洗浄消毒と手術用手袋装着)して助手にはいることにする。

           ー

回腸から辿って、どこかへ入り込んでいた空腸は抜けたみたい。

腸間膜には、前回の手術のときに縫合閉鎖した腸間膜に孔が残っていたので縫って閉じる。

空腸の最上位の腸間膜にも孔が見つかった。

この繁殖牝馬、前回の手術後は疝痛もなく順調で、産駒も獲れている。

今年も受胎済み。

しかし、今年のお産後は4回ほど疝痛を起こしているとのこと。

今年の分娩で空腸上位の腸間膜が裂けたのだろう。

           ー

colon tray (結腸を切開するために載せる台)を用意してもらい、大結腸を馬の右へ引っ張り出す。

骨盤曲を切開して、腹腔内の大結腸まで完全に空にする。

この空腸最上位の腸間膜裂孔は、結腸を空にすることで縫合閉鎖できる。

もう1人助手に入ってもらって、腹腔内で大結腸を押しのける。

小腸はできるだけ術創外の尾側へ出しておいて、空腸最上位の腸間膜裂孔を・・・・

と思うが、裂孔の端を確認できない。

空腸が捻れている。

もう一度、回盲部から小腸を上位へ辿ると、まだ腸間膜裂孔をくぐっていたのだった。

それを整復することで腸間膜裂孔の端を確認できるようになった。

           ー

あとは縫って閉じるだけ。

腸間膜裂孔の端を通っている血管をひっかけて出血したが、指で押さえて止血し、縫合閉鎖を続ける。

縫い終わって確認すると血腫になっているが、出血は止まったようだ。

           ー

腸間膜にはもう一つ孔が開いていたので、それも縫って閉じた。

あとは閉腹だけ。

小腸そのものは腸間膜ヘルニアで絞められたダメージはほとんどない。

また生き延びるだろう。

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腐り始めていたウッドデッキの手すりと踏み板を除去した。

踏み板は、サイズがちょうどの板は売ってないので、丸鋸で切って幅を合わせて、塗装して、コーススレッドで留めた。

手すりは横木はスギの2バイ材を塗装してはめた。

接触部分はエポキシ剤で埋めておいた。

縦の柱は4バイ4材を切って、縦の荷重に耐えられるようにした。

接触部分は木工用ボンドで水が染みこまないないようにした。

傷んでたんだ。何もなかったようには治せない。

できるだけ長持ち(長生き)させる。

そのことがたいせつ。

 

 

 


盲腸結腸重積は葉状条虫症 予防するには葉状条虫対策をするしかない

2024-08-27 | 急性腹症

1歳馬の疝痛。

かなりひどくて、発見して2時間ほどで来院し、超音波で重積が確認され即開腹。

盲腸結腸重積だった。

発症してから早いので整復できるかと思ったが、1時間ほどがんばってもほとんど抜けてこなかった。

そのうち右背側結腸が破裂してしまいあきらめた。

          ー

解剖場ではなんとか整復できた。

葉状条虫が大量に寄生している。

それも盲腸全体に。

それで、盲腸が肥厚し、動きがおかしくなって、反転し、結腸に飲み込まれるのだ。

            ー

開腹手術中はあれほどがんばっても整復できなかったのに、死亡後には整復できたのは、麻酔中でも腸壁に収縮があるからかもしれない。

次回はブスコパン(ブチルスコポラミン)パドリン(プリフィニウム)

を投与してやってみよう。

            ー

盲腸結腸重積を救命する外科手技はともかく、

発症させないようにするためには牧場の葉状条虫対策が必要だ。

この1歳馬は1.5ヶ月前にイベルメクチンとプラジクワンテルの合剤を投与していたそうだ。

その前にはイベルメクチンを投与している。

・葉状条虫はプラジクワンテルに耐性を示し始めているのかもしれない。

・濃厚汚染されていると、駆虫してもまたすぐ大量寄生するのかもしれない。

・きちんと駆虫剤を飲み下さなかった可能性もある。

            ー

そして、もう駆虫薬だけに頼った寄生虫対策は無理がある。

放牧地とパドックが、葉状条虫に汚染されないよう対策する必要がある。

            ー

私が退勤する道で側を通る牧場さんは、いつもその時刻に放牧地に軽トラックを止めて、馬糞を拾っている。

偉いな~ と感心して見ている。

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今日は、台風接近で雨と風のようだ。


大結腸腸間膜欠損の畸形

2024-08-25 | 急性腹症

当歳馬の疝痛。

大結腸腸間膜が欠損していた。

このような大結腸の腸間膜に孔が開いているのは、繁殖牝馬で数頭、見たことがある。

何かの拍子に破れるのか?

と思っていたが、どうやら先天性、生まれつき、畸形のようだ。

この当歳馬の腸間膜欠損の程度はひどい。

こうなっていると捻れやすい。

捻転により傷んでしまっている部分もあったので、切除することになった。

その後の経過は良好だそうだ。

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先日は、北海道みなみ内部の研究発表会。

インターンシップの実習生も一緒に聴講。

私は、剖検しなければいけなかったので中座したが、いくつかの発表を聴けた。

みなさん熱心に自分の症例をまとめていて感心した。

ただ、内容、発表のまとめ方、はもう少し、かな。

それは普段の診療のレベルを現しているのだ。

そして、それは臨床獣医師としての生き方を現してもいるのだと思う。