馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

ロタ腸炎

2015-05-30 | 急性腹症

22:43に起こされる。

3月産まれの子馬が疝痛だとのこと。ひどく痛くはないがフルニキシンで治まらず、腹囲膨満していて寝たり起きたりするとのこと。

来るのに1時間半ほどかかるという。

準備して待つ。

手術台を準備し、輸液を温めるためのウォーターバスのスイッチを入れ輸液剤を補充し、超音波診断装置をコンセントにつなぎ、血球計数装置をonにする。

日付が変わったころに来院。

親馬と一緒に1人で連れてきているので、採血するのもたいへん。

ほとんど痛くない。

血液検査はPCV30%だが、乳酸値はひどく高い。

親馬を枠場に入れておいて、子馬を超音波診断装置で診る。

小腸はひどく攣縮しているが蠕動はある。

大腸の内容は水様で多い。

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下痢してない?と尋ねるが、していないとのこと。

でも、尻尾もお尻の周りも汚れている。

灰色の便で。

綿棒を持ってきて糞便を採って、ロタウィルスの検査をする。

イムノクロマト法と呼ばれるキットですぐに結果が出る。

陽性。

「ロタウィルスの腸炎で腹具合悪いんだね」

PCV30%なので輸液する必要もなさそうだ。

胃潰瘍の予防的治療のためにオメプラゾールのペースト剤を経口投与する。

あとは様子観てください。

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1時過ぎには帰ってフトンに入ったが、今度は眠れない。

やれやれ・・・・・

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父ちゃんは、昼間ログハウスで寝ぼけていられる君がうらやましいよ。

 

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横隔膜ヘルニア

2015-05-28 | 急性腹症

分娩約2週間の繁殖雌馬が疝痛で来院。

分娩後、不調で何度か疝痛症状を見せているとのこと。

呼吸もおかしいので、横隔膜ヘルニアが疑われるとのこと。

来院すると、呼吸数が多く、可視粘膜はうっすらとチアノーゼ。

超音波検査では胸腔域が拡大していて、胸水・腹水があり、胸腔の中に腸管らしきものが見える。

腹囲は張っておらず、直腸検査でもかえって空虚な印象とのこと。

横隔膜ヘルニアだとほぼ確信して開腹手術。

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いつもより頭よりを腕が入るだけ開腹する。

手を入れて横隔膜方向を探ると、「あ~デッカイ穴が開いて、結腸が入り込んでいる・・・」

胸骨柄まで開腹する。

胸腔へ入り込んだ大結腸を抜こうとするが、胸腔に入った部分に大量の内容があり、引っ張り出せそうにない。

胸の中で骨盤曲らしきものをつかんで出そうとするが、全体は出ない。

しかたがないので、できるだけ出しておいて骨盤曲を切開して内容を捨てる。

骨盤曲を閉じたあと胸腔へ戻して、また根部から引っ張り出そうとするが・・・・出せない。

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大結腸に補液管を刺して、生理食塩水を注入し、内容を柔らかくしておいて、少しずつ腹腔側へ搔き出す。

そして、また骨盤曲側から引張って・・・・・

危うく破裂しそうだったが、なんとか引張り出せた。

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あとは横隔膜を非吸収糸で縫合閉鎖する。

Y字型に破裂していて縫いづらいがなんとか縫えた。

横隔膜の縫合部から胸腔にチューブを入れておいて吸引機で吸引して胸腔をできるだけ陰圧にする。

でないと、自分で胸を広げても肺が膨らまず、呼吸ができない。

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なんとも疲れる大手術になったが、私は結腸も閉じなかったし、横隔膜も縫わなかったし、開腹手術創も閉じなかった。

しかし、結腸内容を胸腔から搔き出すだけでたいへんな作業だった。

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カンロ飴。

私、こどものときこれで死に掛けました。

家族で風呂屋へ行くとき、家を出たとたんに舐めていたカンロ飴がのどにつまった。

息ができなくなったが、声も出せない。

・・・・・っ、・・・・っと、なんとかはずれて死なずに済んだ。

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横隔膜ヘルニアは「呼吸器病」に分類されている。

消化器疾患ではない。

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メッケル憩室による空腸捻転

2015-05-28 | 急性腹症

1歳馬が疝痛で来院。

ひどい痛みではないが、3時間経っても治まらない。

直腸検査と体表からの超音波検査で完全に膨満した小腸があるのがわかった。

1歳馬のこういう疝痛では回盲部の重積や狭窄を疑う・・・が、きちんと駆虫している牧場だし・・・・

血液所見は悪くはないが、あとは待てば待つほど状態が悪くなるだろう。

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開腹手術して盲腸背側紐から回腸をたどると腸間膜を軸に捻れていて引っ張り出しにくい。

膨満している。

さらに引っ張り出すと・・・・なんだコリャ?

小腸に盲端になった枝が出ている。

あ~卵黄嚢の遺残とされているメッケル憩室そのものだ。

このメッケル憩室へいくはずの腸間膜だけが残っていて腸捻転の原因になっている症例に遭遇することはときどきある。

しかし、こんなにはっきり憩室そのものが残っているのは珍しい。

この憩室が重石になって腸捻転を起こしてしまったのだろう。

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小腸の内容を憩室部分を廃液ホースとして使って捨てて、憩室部分と腸間膜を切除した。

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リンゴのつぼみが膨らんで・・・

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脳腫瘍・・・・神経腫?

2015-05-25 | 馬内科学

繁殖雌馬が、角膜炎を起こし、嚥下障害もあって診察した。

顔つきをよく観ると、右顔面の麻痺があり、上唇も右側がすこし下がっていた。

この症状から疑ったのは・・・・側頭骨舌骨関節症

x線撮影を行うが、舌骨には骨折も腫大部もない。

側頭骨にも異常は見当たらない。

喉嚢に内視鏡を挿入したが、やはり茎状舌骨に肥厚はないし、側頭骨舌骨関節部の腫大もない。

容貌をよく観ると、側頭骨舌骨関節症による脳神経障害では麻痺は片側に現れるのに、この馬は左耳が垂れている。

片側の脳神経の障害ではなく、もっと中枢に障害が起きているのかもしれない。

脳梗塞か・・・あるいは脳腫瘍か・・・・

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それから数ヶ月、嚥下障害で痩せて、ふらついて立てないことも数度あり、安楽殺された。

右の咬筋はすっかり萎縮してしまっていた。

喉を見るが異常なし。

喉嚢を見るが、舌骨にも異常なし。

頭蓋骨を開けてみるが、大脳小脳ほかにとくに異常はなさそうで、脳を頭蓋骨から取り出したら・・・・

脳底部に大きな塊があった。

視神経交差と脳下垂体がはまっている孔の右脇で脳神経が出て行く孔から膨らんでいるようだ。

なんていう孔だっけ??

取り出した腫瘍塊はかなりの大きさ。

物も満足に食べられず、頭も痛く、辛い数ヶ月だっただろう。

CTがあれば診断できたかもしれないが・・・・・

いずれ馬でも脳手術も可能になるのだろうか・・・・

しかし、脳とは直接はつながっていないが脳神経を取り巻くように増殖しているので完全摘出するのは厳しそうだ。

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ひとり大物がいるな;笑

 

 

 

 

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CTLCって何さ?

2015-05-23 | 呼吸器外科

騎乗運動中の喉頭内視鏡検査 Over Ground dynamic Endoscopy が可能になって、以前は想像もつかなかった上部気道の問題がみつかるようになっている。

これは紹介する文献の写真。

これと同じだろうと思われる症例を相談されて手術したことがあるのでとても興味深い。

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Diagnosis and Treatment of Dynamic Collapse of the Cricotracheal Ligament in Thoroughbred Racehorses

サラブレッド競走馬における輪状気管靭帯の動的虚脱の診断と治療

Padraig G.Kelly, Patrick J.Pollock

Veterinary Surgery 44 (2015) 162-167

目的:(1)ある馬群での輪状気管靭帯の動的虚脱の診断と、(2)障害がある馬の治療と結果、について記載すること。

研究のデザイン:回顧的症例集。

動物:サラブレッド(n=8)。

方法:600頭のover ground dynamic endoscopic examinationを行ったうち、8頭のサラブレッドが輪状気管虚脱 cricotracheal collapse (CTLC)を示した;5頭は2歳馬で調教の初期段階であり、2頭は仕上がった競走馬であった。

CTLCは、輪状気管靭帯の一周する虚脱が運動中に確認されたときに診断した。

7頭は内視鏡検査を繰り返した。

2頭は保存的管理に反応せず、外科的に治療した。

結果:5頭の2歳馬すべてでCTLCと合わせて複数の上部気道の異常が確認され、上部気道の炎症の治療後にCTLCは改善した。

2頭の現役競走馬では併発する呼吸器の異常はなかった。

この2頭では輪状気管腔の外科的縫縮と輪状気管靭帯の重複処置によりCTLCの臨床症状は改善された。

結論:CTLCはサラブレッド競走馬でのまれな動的閉塞の原因である。

調教への適応と呼吸器の炎症の解決により治癒するかもしれない。しかし、CTLCが持続する馬では輪状気管腔の外科的縫縮と輪状気管靭帯の重複処置により臨床症状が治療できる。

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これがCTLCを示す馬のOver-Ground Endoscopy からの静止画。

これが治療後。

素晴らしい。

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私が経験した症例についてCornell大学教授で馬の上部気道の権威Dr.Ducharmeに、

「あの症例はCTLCも起こしていたのではないでしょうか?」

と質問した。

回答は、I don't think so. だった;笑。

う~ん、なかなか難しい・・・・

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リフティングの方が簡単サ!!

 

 

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