sutemaru先生の質問にお答えして Knottenbelt のEquine Neonatology から
発情下痢 Foal heat diarrhea
疫学
5-14日齢の子馬の非感染性の、軽度から重度の生理学的な下痢。
母馬の初回発情(foal heat)と同時に起こるので、発情に関係して乳の中のホルモンや成分の変化のためだと言われている。しかし、固形物の消化に関係した消化器の変化に関係しているらしく、自然な食糞行動と同時に起こる。
まれには初回発情時には泌乳量が落ちる母馬もいるし、安定しないで子馬が飲む乳の量が少なかったり多かったりする。このことは消化器の異常の原因になるかもしれない。
消化管の分泌の変化は考えうる原因として挙げられている。
臨床症状
・一時的な、1頭だけの、疝痛を伴わない、非病原性の下痢で、5-14日齢の子馬に見られる。
・通常の飲乳と行動。
・下痢はふつう軽度、しかしときにはより重く、長引く。
・二次的に、肛門の周りに毛が抜けてしまう皮膚炎がよく起こる。
診断
・他に臨床的な症状がないこと。
・たいていの場合子馬に影響なし。
・病原体は培養で分離されない。
類症鑑別
・感染性下痢(大腸菌、サルモネラ、クロストリジウム、他)
・新生児敗血症
・寄生虫症(乳頭糞線虫、馬回虫)
・クリプトスポリジウム下痢
・ロタウィルス下痢
・カンピロバクター下痢
・乳糖不耐症
・乳の飲みすぎ、飲乳量や乳の成分の急変(例えば、母馬の乳房炎)
・砂の採食
・間違った代用乳の使用(牛用あるいは人用ミルクの利用など)も下痢を起こすことがある。
治療
めったに治療は必要としない。経口の下痢止めやカオリン(吸着剤)は一時的に症状を抑える。もし、症状が重ければ、経口あるいは非経口の電解質投与が役に立つ。
1日か2日飲乳制限すると良いかもしれないが、脱水を防ぐケアをするべきだ。
お尻の周りの皮膚のケアが必要かもしれない。石油系のゼリーを肛門の下に塗ると良い。たまに皮膚が腫れて痛くなるので、クリームを塗ってやると良い。
予後
予後は良好で、ほとんどの子馬は2-7日で治る。ごく限られた子馬だけがより重度の反応をしめすが、それらの子馬は他の食餌性の、あるいは消化器に他の問題をもっているのかもしれない。
少数だが慢性下痢化することがあるので、より詳しい検査が必要となる。
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まあ、馬新生児学の教科書でもお尻の毛が抜けるのを心配しているくらいで、大きな問題ではないのかもしれない。
発情下痢を引き起こしているのが、母馬の乳の成分(発情ホルモン、プロスタグランジン、栄養成分)や乳量ならしようがないかもしれない。
しかし、そのころ感染する寄生虫(乳頭糞線虫、回虫)に関係しているなら、予防する必要がある。
子馬はその頃、盛んに母馬の糞を食べるので、母馬の糞の中に寄生虫の卵が入っていないように、母馬を駆虫してやる必要がある。
昔話で聞いたことがあるのだが、「サルモネラが発生した牧場で、消毒を徹底したら発情下痢もなくなった」そうだ。真偽のほどは知らない。
子馬は馬房の中でもそちこちをベロベロなめるので、消毒は意味があるかもしれない。
発情下痢の原因として、母馬の発情粘液をなめるせいではないかという説も聞いたことがある。発情粘液が下痢を起こすかどうか半信半疑だが。
ロタウィルスの下痢は、もっと日齢が遅くなってからが多い。生まれて1ヶ月は初乳から吸収した免疫成分に守られているためだと思う。
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つまるところ、発情下痢は病原によらない、子馬の消化器の発達に伴う生理学的な要因によるものと考えた方がいいかもしれない。
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今日は関節鏡手術、子馬の肢軸異常の手術、競走馬の蹄叉腐乱、繁殖雌馬の外傷。
有難う御座います。
人間の場合、母乳の子は便がゆるくて当たり前、ミルクを飲んで育つ子は便秘気味になったりする、そう言う事ですとすぐ判りますが、馬の場合ちょっと疑問でしたので、有難うございます。
繁殖に携わっていらっしゃる方たちには「発情下痢と同時に起こるのが特徴」と言う事で納得しておられるので、深い意味は判りませんでした。
乳に出てくるであろうホルモンでもあるかもしれないし、離乳食代わりの母親のボロを食べだすせいかも知れない、という事でもありそう。
自分としては消化管の分泌が変わってくることによる下痢というのが何となくスムーズに受け入れられそうな気がします。
親は時期が来れば発情は出て来る。それが子馬に悪い影響を与えるような事はあってはいけない、何となく自然の摂理に反しているような気がしたりして(^_^;)こういう考えは獣医師としては駄目かもしれませんね(*^_^*)すみません。
有難う御座いましたm(__)m
子馬の発情下痢は整理しておきたいと思っていました。
母馬の発情が子馬に下痢を引き起こすなら、2回目や3回目の発情はどうなんだろうとか、人工哺乳している子馬や、乳母馬につけた子馬はどうなんだろうなどと、馬獣医師1年生のころから考えていました。
生理的なもの。でしょうけど、こじれないように、寄生虫にも細菌にもウィルスにもやられないようにしてやることは大事だと思います。
まだまだ、赤ちゃんの時期ですから。
有難う御座います。
一発でここにたどり着けるのありがたすぎ。
ここ消えちゃったらどういましょ。
はてなブログやamebaブログへ引っ越しできるようなので、やってみようとは思っています。が、どうなりますやら