札幌の民間動物園からペリカンが逃げ出して、胆振地方に現れたそうだ。
捕獲を試みるようだが、なかなか難しいだろう。
札幌円山動物園ではマレーグマが事故で死に、業務改善命令を受けたと思ったら、今度はシマウマが輸送のストレスでショック死したという。
動物園に落ち度があったのか、避けられない事故だったのかは知る由もないが、大動物獣医師としては動物を扱う難しさは多少なりとも理解している。
ましてや家畜ではなく野生動物だ。
逃げちゃいました、死んじゃいました、では済まないのはわかるが、予想もしないことが起こる。
放馬させたことがない馬関係者はいないだろう。
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私のところでも信じられないようなことがおきたことがある。
私は検査室にいて、診療はしていなかったのだが、物音に驚いて診療室へ行ったら、繁殖雌馬が枠場で暴れていた。
そのうち、枠場から飛び出した。
飼い主さんも恐れおののいて曳き手を離してしまった。
私はサンダル履きのまま曳き手をつかまえたが、その馬はもう錯乱状態で、抑えきれるものではなかった。
ガラス窓から飛び出そうとして窓へ突っ込みそうになる。
どうしようもなくて曳き手を離したら、診療室の中を走り回ったあげく、診療室から飛び出してなんと廊下へ入っていった。
そのまま廊下を走って、曲がり角で転倒し、あわてて玄関を開けたら正面玄関から出て行った。
外へ出たらなんとか落ち着いてつかまえることができた。
とにかく外へ出たくてパニックを起こしていたのかもしれない。
人も馬も大きな怪我はなかったが、その馬は二度と枠場へ入らなかったそうだ。
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若い馬が馬運車へ乗ろうとしなかった。
「目隠しすればイイよ」とたまたま他所から来ていた獣医さんがアドバイスして、牧場の人がジャンバーを馬にかぶせたら・・・・
暴れ出して、放馬。
前が見えないままの馬はたまたまそばに止めてあった業者の人の乗用車のトランクに激突してのっかかり、車はベッコリへこんだ。
そのあとは・・・・よく覚えていない。
今でも馬を連れてくるのに、輸送用無口頭絡(ロープでつくってあり金具を使っていない)と数メートルある長曳き手を付けて来る牧場があるが、本当はそうするのが安全なのかもしれない。
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牛も抑えきれないで敷地内で暴走したことがある。
職員住宅の方まで走っていき、もう少しで私の新車につっこむところだった。
暴走する牛を無口頭絡で止めるのは難しい。
力だけでなくテクニックがいる。
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育成牛が診療室兼手術室を駆け回ったこともある。
私は関節鏡手術の準備をしていたのだが、枠場では牛の手術もしようとしていて、その牛が手をかけていない牛だった。
農家の人は診療室へ引張って歩く自信がないため、診療室へトラックを後付けにして牛を降ろしたらしい。
案の定、トラックから飛び降りたその黒毛の育成牛は飼い主を振り切って、診療室を走り回り、関節鏡手術器械を載せた台をひっくり返し、
ステンレスのシンクをへこませた。
「バカヤロー!誰が牛を入れてイイって言った!器械が壊れてたらお前らの給料から引いとくからな!!」
と怒鳴ったことはよく覚えている;笑。
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馬が逃げ出して国道へ走り出たこともある。
交通事故につながらないかハラハラした。
しかし、どんなに走っても馬に追いつけるわけもない。
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動物を扱う人にとってはそれは日常なんだけれど、動物はその中でときおり信じられないような行動をする。
相手がクマやトラやライオンならもっと別なレベルの注意が必要なのだろうけど、馬や牛でさえ扱いきれなくなることがある。
動物とは・・・そういうものだ、と私は思う。
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きょうは、
2歳馬の球節のchip fracture の関節鏡手術。
午後は血液検査業務のあと、
2歳馬の種子骨軸外部骨折の関節鏡手術。
外側からスコープを入れて、内側種子骨の関節面の反軸側を観たところ。
骨片はいくつかに粉砕していた。