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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

犬の尾、馬の前搔き

2021-08-12 | 動物行動・心理学

獣医臨床には、自覚症状がないかどうかについて追記。

犬は嬉しいときに尻尾を振るが、その尻尾の振り方は飼主が見ているかどうかで違うのだそうだ。

つまり、犬が尻尾を振るのは、飼主や仲間への表現であって、嬉しいことそのものでいつも決まったように尻尾を振っているのではない。

そういうコミュニケーションをできる動物なのだ。

病気や怪我で具合が悪いとき、痛いとき、はどうだろう?

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馬は、いろいろな場面で前掻きする。

食べ物が欲しいときにもするし、イラついているときにもするし、疝痛のときも前掻きする。

そういうと、馬房の中で馬栓棒のところへ来て前掻きするのではないか?

あれは、腹が減っているとき、イラついたとき、腹が痛いとき、の純粋な行動ではなく、飼主が見ていることを認識した上でのアピールでもあるのではないだろうか?

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だとしたら、犬が尻尾を振るのは犬の表現であって、客観的なsign 徴候ではないし、

馬の前掻きは、本”人”による訴えであって、純粋なsign 徴候ではない。

獣医臨床には、”自覚”症状 symptom はありえない、というのはおかしいよ。

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言葉によらなくても動物と通じ合えると、多くの飼主が思っている。

それを獣医師や獣医学が否定してどうする。


サラブレッドが変なんだよ

2018-08-19 | 動物行動・心理学

セリが近くなって診療はすこし余裕が出てきた。

土曜日は、非サラブレッドの跛行診断4頭。

鎮静剤も投与せず、鼻捻子もとらず、後肢のX線撮影をすることができた。

飼い主さん、自分で削蹄。

実習生に馬の肢を挙げさせるのも、心配せずに済む。

本来、馬は牛以上に人になつき、人の指示に従う動物だ。

人を背に乗せたり、人と一緒に田畑を耕したり、山へ入って木材を引張り降ろす家畜として改良されてきた。

サラブレッドが特殊で、速く走ることだけを基準に選抜されてきた。

日本に居る馬は8万頭足らず。

そのほとんどがサラブレッドだ。

多くの外国ではそんなことはない。

サラブレッドが特殊な馬なのだ。

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う~んリアル。

どうしてこのおばさんなんだろうね。

そして、どうしてこの表情なんだろう?

けっして機嫌よさそうには見えない。

どうしてこのでかさなんだ??

何なんだ!?

 


動物園の事故

2015-08-27 | 動物行動・心理学

札幌の民間動物園からペリカンが逃げ出して、胆振地方に現れたそうだ。

捕獲を試みるようだが、なかなか難しいだろう。

札幌円山動物園ではマレーグマが事故で死に、業務改善命令を受けたと思ったら、今度はシマウマが輸送のストレスでショック死したという。

動物園に落ち度があったのか、避けられない事故だったのかは知る由もないが、大動物獣医師としては動物を扱う難しさは多少なりとも理解している。

ましてや家畜ではなく野生動物だ。

逃げちゃいました、死んじゃいました、では済まないのはわかるが、予想もしないことが起こる。

放馬させたことがない馬関係者はいないだろう。

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私のところでも信じられないようなことがおきたことがある。

私は検査室にいて、診療はしていなかったのだが、物音に驚いて診療室へ行ったら、繁殖雌馬が枠場で暴れていた。

そのうち、枠場から飛び出した。

飼い主さんも恐れおののいて曳き手を離してしまった。

私はサンダル履きのまま曳き手をつかまえたが、その馬はもう錯乱状態で、抑えきれるものではなかった。

ガラス窓から飛び出そうとして窓へ突っ込みそうになる。

どうしようもなくて曳き手を離したら、診療室の中を走り回ったあげく、診療室から飛び出してなんと廊下へ入っていった。

そのまま廊下を走って、曲がり角で転倒し、あわてて玄関を開けたら正面玄関から出て行った。

外へ出たらなんとか落ち着いてつかまえることができた。

とにかく外へ出たくてパニックを起こしていたのかもしれない。

人も馬も大きな怪我はなかったが、その馬は二度と枠場へ入らなかったそうだ。

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若い馬が馬運車へ乗ろうとしなかった。

「目隠しすればイイよ」とたまたま他所から来ていた獣医さんがアドバイスして、牧場の人がジャンバーを馬にかぶせたら・・・・

暴れ出して、放馬。

前が見えないままの馬はたまたまそばに止めてあった業者の人の乗用車のトランクに激突してのっかかり、車はベッコリへこんだ。

そのあとは・・・・よく覚えていない。

今でも馬を連れてくるのに、輸送用無口頭絡(ロープでつくってあり金具を使っていない)と数メートルある長曳き手を付けて来る牧場があるが、本当はそうするのが安全なのかもしれない。

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牛も抑えきれないで敷地内で暴走したことがある。

職員住宅の方まで走っていき、もう少しで私の新車につっこむところだった。

暴走する牛を無口頭絡で止めるのは難しい。

力だけでなくテクニックがいる。

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育成牛が診療室兼手術室を駆け回ったこともある。

私は関節鏡手術の準備をしていたのだが、枠場では牛の手術もしようとしていて、その牛が手をかけていない牛だった。

農家の人は診療室へ引張って歩く自信がないため、診療室へトラックを後付けにして牛を降ろしたらしい。

案の定、トラックから飛び降りたその黒毛の育成牛は飼い主を振り切って、診療室を走り回り、関節鏡手術器械を載せた台をひっくり返し、

ステンレスのシンクをへこませた。

「バカヤロー!誰が牛を入れてイイって言った!器械が壊れてたらお前らの給料から引いとくからな!!」

と怒鳴ったことはよく覚えている;笑。

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馬が逃げ出して国道へ走り出たこともある。

交通事故につながらないかハラハラした。

しかし、どんなに走っても馬に追いつけるわけもない。

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動物を扱う人にとってはそれは日常なんだけれど、動物はその中でときおり信じられないような行動をする。

相手がクマやトラやライオンならもっと別なレベルの注意が必要なのだろうけど、馬や牛でさえ扱いきれなくなることがある。

動物とは・・・そういうものだ、と私は思う。

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きょうは、

2歳馬の球節のchip fracture の関節鏡手術。

午後は血液検査業務のあと、

2歳馬の種子骨軸外部骨折の関節鏡手術。

外側からスコープを入れて、内側種子骨の関節面の反軸側を観たところ。

骨片はいくつかに粉砕していた。

 

 


噛む奴

2014-06-27 | 動物行動・心理学

蹴る馬は危ない。

しかし、後に近づかないとか、

枠場に入れるとか、

後肢を触らなければいけないときには、前肢を持ち上げてもらうとか、

いろいろ方法がある。

後肢で蹴られてしまうのは、油断していたか、思わぬところまで後肢が届いたときではないだろうか。

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立ち上がる馬も扱いにくい。

しかし、立ち上がって困る馬には、立ち上がらないように鼻捻子するとか、

耳捻子するとか、

チェーンシャンクをかますとか、

頚の皮をつかむとか、

方法があるし、

前肢で叩かれないようにすれば危なくない。

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しかし、咬みつく馬は始末に悪い。

突然、ガブっと来るし、馬は保定するのに頭を扱っているので、口で噛みに来られると避けようがない。

分厚い長袖を着ていれば良いようなものだが、季節によってはそうもいかない。

素肌をかじられようものなら皮膚がちぎれかねない。

馬の噛む力は人を持ち上げられるほどだろう。

そして、馬の歯が人の頭に当たっただけでも大怪我になる。

唇をちぎられたとか、耳がとれてしまったとか、女性が胸をかまれたとか、恐ろしい話がいっぱいある。

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スアレスは本当に噛み付いたのか?

本当ならとても悪質だ・・・・馬医者は噛む奴は許せない。

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P7142524馬も

犬も

しつけが大切です。

・・・サッカー選手も。


ヒトが動物を飼い始めた起源 ウマ

2013-11-28 | 動物行動・心理学

 では、ヒトがウマを飼い始めたのは、いつころか?

それはどの地域で始まったのか?

それは、乗るため、食べるため、あるいは??

                        -

5500年前に、カザフスタン地方で、ウマが飼われていた。とする発見がされているらしい。

乗ってもいたし、食べてもいたし、馬の乳も利用されていたらしい。

「家畜」として利用されてきたのは、反芻獣、偶蹄類の方が先らしい。

ヒツジは紀元前9000-11000年頃、

ヤギは紀元前10000年頃、

ブタは紀元前9000年頃、

ウシは紀元前8000年頃、

ということらしい。

野生だとウシもヒツジもブタもかなり扱いにくいと思うが、ウマはもっと扱いにくかったのかもしれない。

ウマに乗っていた形跡はあっても狩につかったり、農耕につかったりするほど、ウマを扱う技術はなかなか発達しなかったのだろう。

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このごろ、難しい症例が多い。

疝痛、発熱、だった当歳馬が起立困難、歩様蹌踉となり、来院したら・・・・・・腎不全だった。

輸送熱、疝痛、の馬が、入院した。と思ったら・・・・・蹄葉炎になった。

鼻出血の当歳馬が検査に来院して・・・・・胸膜肺炎だった。

臨床は難しい。

教科書どおりにはいかない。

責任も重い。

できるだけ早くきちんと診断して意味のある治療を始められるかどうかは馬臨床医の「腕」にかかっている。

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明日から名著Equine Acute Abdomen で有名なN.A.White先生を迎えてのプログラムが始まる。

まず、あしたの夜は牧場生産者向けの講習会。

馬の疝痛の原因や予防の話です。

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Pb245350数日前、相棒の水入れに落ちていたトンボ。

助け出したがもう飛ぶ元気もない。

この世で思いは遂げたかい?

Pb275356
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初雪になりそうだ。