北獣誌の3月号が届いて拝読した。
巻頭には田村豊北海道獣医師会会長の「二次選択薬の慎重使用を考える ーーウェルカムショットと卵内接種ーー」なる論説が掲載されている。
2月号に掲載された子牛への”ウェルカムショット”への懸念を述べた論説の続編である。
田村先生がご自身で前回の論説を要約してくださっている。以下、改変引用。
・ウェルカムショットという用語に抗菌薬の使用を促進するニュアンスがあり、好ましくない
・農場の感染状況によって獣医師の判断で予防的な抗菌剤使用も選択肢になりうること
・しかし、二次選択薬の使用は理由はともあれ避けなければならない
・仮に投与が必要と考える場合は、連用にならないようにインフォームドコンセントを徹底すること
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そして今回の論説では、鶏卵へのセフチオフルの卵内接種が健康な肉用鶏の糞便から分離された大腸菌の第三世代セファロスポリンへの耐性率を急増させた事例を紹介してくださっている。
自動卵内ワクチン接種システムを使って卵内にワクチンを接種するのに、卵表面からの汚染による胎児の細菌感染を抑えるためにワクチン液の中にセフチオフルを混じていたのだそうだ。
養鶏関連の協会が自主規制によりセフチオフルの混入を止めたところ、この耐性は「想像を遙かに超えて」急激に低下した、とのこと。
養鶏関連の協会が自主規制したのは、鶏肉の半数から医療で重要視されるESBL(基質特異型拡張型β-ラクタマーゼ)産生大腸菌が分離されることが大々的に新聞報道され、消費者に関心をもたれることになったからだろう。
自主規制による抗菌剤使用中止が抗菌剤耐性を抑えた良い事例・・・・ではなく、農林水産省の指導に基づく生産者談代の第三世代セファロスポリン使用の自主規制と同時にカナマイシンの販売量が増加しており、肉用鶏由来大腸菌のカナマイシン耐性率が増加している。
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「効率性や利便性から抗菌薬を安易に適応外使用することにより、思いもしない急激な薬剤耐性菌の上昇を招いた」事例と述べられている。
(自動鶏卵内ワクチン接種システムにおいて、卵表面の汚染を除去・消毒して、抗菌剤をワクチン混入させる必要がないようにできないのだろうか?)
「獣医師は治療上やむを得ない状況になった場合、抗菌薬を適応外使用する認められている認められている。しかし、不適切な抗菌薬の使用が生み出す負の効果も、常に考えて治療することが重要である。」
「特に二次選択薬は医療に及ぼす影響は非常に大きいものであり、一次選択薬が無効な場合に限定して使用することとされている。」
そして、現在、医療でマイコプラズマ感染症の大流行が問題になっていること、2000年頃からマクロライド耐性マイコプラズマが増加していること。しかし、今もって一次選択薬はマクロライド系薬であること、を述べておられ、
「動物分野でのマクロライド系薬の使用は慎重になるべきと考える」とされている。
最後の一文は、
「牛におけるマクロライド系薬の使用量は、二次選択薬であるマクロライド系薬の承認された頃から上昇傾向にある」
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馬の獣医師は、セファロスポリン系抗菌剤はよく使うし、
カナマイシンも使う獣医師がいるし、
仔馬のR.equi感染症ではマクロライド系抗菌剤も使われる。
食肉になることがとても少ないサラブレッドでは食肉としての人への影響はとても少ないと思うが、抗菌剤耐性が進むことで治療効果がなくなることは多くの獣医師が実感している。
獣医師は抗菌剤の慎重で賢明な使用をこれからも心がけていかなければならない。
とても興味深い論説だ。
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ことしは3/20が春分の日。
今日は小雨が降った。
モクレンの花芽はまだまだ小さく固い
マグノリアのモケモケ蕾の安定感。春を確信してまだ静かですね。
雪の季節から雨の季節になったようです。厳冬期用の衣類や手袋や帽子ももうしまっても良いのでしょう。でも、北海道はまだ春じゃない。花の季節はひとつきは先ですね。