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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

公獣協研修2013 1日目

2013-01-31 | How to 馬医者修行

P1273661 日曜日、朝4時に起きて相棒と散歩する。

夜明けにはまだ遠い。

「とうちゃんしばらく居なくなるからな。

イイ子にしてるんだゾ」

無理なのはわかってるけど・・・・笑。

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余裕をもって家を出たが、なんとガソリンのemptyランプが点灯している。

やっちまった・・・と思ったが隣町まで行けばたしか24時間営業のスタンドがあるはず。

もし営業していなかったらタクシーで空港へ行って間に合うか?などと考えながら走って、たどり着いたら給油できた。

24時間営業、24時間対応、ありがたいことだ。

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厳寒期の移動になるこの研修。

天候が荒れて飛行機が欠航したら困ると毎年気になる。

貴重な時間を割いて、あるいは遠いところから参加してくださる方々に申し訳ないことになる。

P1273668そのこともあって前日の午前入りしたのだが、もう1つの理由はこのD-Jランチの持田さんの講習に半日でも参加したかったから。

馬に感じさせる。馬に自ら考えさせることで行動させる。とでもいうのだろうか、ナチュラルホースマンシップとも呼ばれる馬の扱い方はとても興味深いし、納得のいくものだった。

まだ騎乗馴致を始めたばかりの若馬が、今日初めて会ったばかりのはずの持田さんの後を追って歩き、体に触れるわけでもないのに後退したり、横方向へだって移動する。

 日高の馬もむかしよりずっと大人しくなった。

馬によく触るようになったからだろうが、まだ扱い方は統一されておらず、間違った扱いもずいぶんみかける。

ハミをつけるようになっても、ガチャガチャとハミをしゃくっているのを観るとこちらがイライラする。

競馬場でもナチュラルホースマンシップを取り入れて現役競走馬を扱う厩舎がある。

馬が子馬の頃から同じ考えで扱ってもらえれば、ずいぶん馬も人を理解しやすくなるだろうし、人と馬の関係もよくなるだろうと思う。

馬医者も仕事しやすくなるだろうし;笑。

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P1273671 夕方、立位での去勢を見せてもらう。

18歳と高齢なので立位でやることになったようだった。

まあ、私は馬を縛り付けて痛いことをするのは感心しないし、

去勢は引張りすぎてはいけないと考えているし、

出血や痛みを少なく済ませるためにも外科侵襲は小さいほうが良いと思っている。

人のやり方を観れるというのも、よそへ出かけていっての獣医修行ならではだ。

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夜、11時すぎまで楽しく会食。


牛の分娩と子牛の事故について

2013-01-25 | 牛、ウシ、丑

もう3週間あまり雪は降っていなかったのだが、きのうは夜から荒れ模様。

夜中に30cmほど積もっていた。

湿り気を帯びたひどく重い雪だった。

朝、懸命に除雪。

固まってしまうととんでもないことになりそうな予感がした。

                          -

きょうは1日、牛の分娩と子牛の事故についてのシンポジウム。

3名の講師の先生から、乳牛、黒毛和牛の分娩と子牛の状態、そして牛の感染性流産についての講演をしてもらい、たいへん勉強になった。

あとは牛を飼っている人たちにどう理解してもらい普及させていくかなのだが、

それは今日聴講した獣医師ひとりひとりの課題でもある。

「だれ先生がどういっていたから・・・」では農家は説得できない。

自分が納得したことを自分の経験にして自分の言葉で語れるようになる必要がある。

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人の産科医療のデータ、

血統的にバラつきが少なく、栄養管理が進んでいる乳牛の分娩と子牛の事故、

遺伝形質に差が大きく、栄養管理が忘れられがちな黒毛和牛の分娩と子牛の事故、

これらに共通することと、それぞれで差があること。

比較周産期学とか周生期学とでも呼ぶべき観点が湧いてきてとても興味深かった。

そして、では馬はどうか?という視点も馬医者としては持ち続けていたい。

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 Tawelectriccat1thumb                  きのうの続き。

比較異食学。

これはニャンコ、18ヶ月齢。

電線を食べていた。

ネコもねエ・・・・・・・・


またつまらぬものを食ってしまった

2013-01-24 | ワンコ修行

以前、馬の異物による腸閉塞の症例を紹介したが、今回は、

このブログを見てくださっているワンコの飼い主さんのために、

おどすわけじゃないけど、

お互い気をつけましょうねという意味で、

紹介しておきます。

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Tawfishingpole3thumbまずは釣竿。

Tawfishingpole5thumb 食べたのは6ヶ月の黒ラブちゃん。

チャレンジャーだね~

鎮静して端っこをつかんで引張りだせたそうだ。

飼い主の一番高い釣竿だったそうな。

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Tawkongbone1thumb これはペット用のゴム製の骨のおもちゃ。

それと石もたくさん入っている。

食べたのは3ヶ月のブルマスチフ。

手術して取り出したそうだ。

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8インチというんだから、20cmあまりのレンチ。

Tawwrench1thumb食べたのは1歳のマスチフ。

手術で取り出された。

レンチの柄の部分と頭のラチェットの部分は胃の中ではずれている。

別々に食べたわけではないだろうから、胃の中ではずれたのだろう。

しかし、それ以上は消化できなかったんだな・・・・・

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Tawalien1thumb 9歳のブルマスチフ。

(この犬種は異物を食べ易いのか??)

X線画像を見たスタッフは、

エイリアン!と叫んだそうだが・・・

結局なんだったのか?どうやって取り出したのかは書かれていない。

                          -

Tawchockrocks1thumb 20週齢のラブラドール。

85個の石を飲み込んでいた。

手術で取り出した。

・・・・・・

ラブも危ないか・・・・・

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Tawpincushionpuppy1thumb 10ヶ月齢の雑種。

40本のピンを食べていた。

手術で取り出したが、すでに腸へ移行していたのもあった。

麻酔中に状態が悪くなったので、手術は中断した。

手術後に5本が自然排泄された。

                         -

Tawnerfarrow1thumb 食べたのはテリア。

おもちゃのゴム製の弓が一部は胃に、

端は食道に入っていた。

手術で取り出した。       

     -

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Tawwholerib1thumb 8歳のビション(毛の縮れた小型犬)。

おやつにもらった肋骨を丸呑みしてしまったらしい。

手術で取り出された。

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Tawtreblehook1thumb 8ヶ月のバセット。

釣り針を飲み込んだ。

口に引っかからずに胃まで飲み込むというのは、犬の飲み込む能力は魚以上なのかもしれない。

内視鏡で取り出された。

獣医さんってスゴイ!

(どうやれば食道にひっかけずに内視鏡で取り出せるんだ??)

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Tawscrewdriver1thumb Tawscrewdriver2thumb イングリッシュ・ブルドッグ。

ねじ回しを食べた。

開腹手術して胃切開して取り出したが、

麻酔から覚めるとすぐに静脈カテーテルの接続部を食べたそうだ。

                        -

Tawblackknight1thumbこれはチェスのナイト。

プラスチック製でもこれだけ鮮明に写るかな?

高級な石製のチェスの駒か?

木でできた将棋の駒だとこんなにはっきり写らないと思う。

それに、王将か飛車か形ではわからない・・・・

わかっても意味はない・・・・

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Tawnails1thumb  付け爪。

手術で100枚以上の爪を取り出したそうだが、

何枚かは腸へ移動していて残った。

しかし、自然に排泄された。

近所の子供がボウルの水に爪を入れたらしい・・・

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Tawtweezer1thumb 10歳のオーストラリアン・シェパード。

毛抜きを飲み込んだ。

内視鏡で取り出された。

若い犬が多いような気もするが・・

10歳になってもネ~・・・・・・

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Tawrockspuppies1thumb3歳のゴールデンレトリーバー!

妊娠しているが、石を飲み込んだ。

開腹手術して帝王切開もやった。

11頭の子犬と石が5つ入っていた。

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皆さん!気をつけましょう!!

って無理だよね。

こんな物、食べるはずがないと思うようなものばかり。

Eklin社のHPから紹介しました。

                      ////////////

P1243643さて、抱えて人用ヘルスメーターに乗るのはたいへんな大型犬のために、

ご家庭に1台、大動物用体重計はいかがでしょう。

1000kgまでの馬や牛の体重も量れます!

って必要ない?


疝痛の夜と朝

2013-01-23 | 急性腹症

ゆうべは繁殖雌馬の疝痛。

発症して3時間ほどで来院。

発汗していて、立ってはいられるが身をよじり、前掻きを繰り返すほど痛い。

血液検査ではPCV45%、乳酸値1.6mmol/l、意外に悪くない・・・・

超音波で観ると大腸も十二指腸も蠕動している。

心拍は48、CRTも正常。

曳き運動してもらって様子を観ていたら・・・・なんとなく落ち着いた。

危なく開腹手術を決断するところだった。

日付が変わってから帰っていった。

                        -

今朝はまた別な繁殖雌馬の疝痛。

かなりの疝痛をしているのを朝5時に発見された。

来院すると痛みは強くないが・・・・

PCV57%、乳酸値4.7mmol/l、これはただ事ではない。

超音波で小腸の肥厚が確認されたので、手術決断。

空腸から回腸にかけての腸間膜を軸にした捻転で、膨満してしまっていて整復に手間取る。

7m切除し、空腸を盲腸へつなぎ終わったところで心停止して死んでしまった。

妊娠末期の繁殖雌馬の開腹手術は大きな子宮が操作を邪魔するし、

腹圧が大きくて全身の負担も大きい。

                       //////////

Photo 「狙った恋の落とし方」

BSでやっていて録画して観た。

中国で北海道ブームを起こしたという映画。

もっとロードムーヴィーなのかと思ったらそうでもない。

今の中国の世相をあちら側から見れた気がする。

男性主人公のキャラクターもなかなか興味深かった。


DODの季節

2013-01-22 | 整形外科

DOD。

Developmental Orthopedic Disease。

たぶん、成長期整形外科疾患、と訳すのだろう。

                         -

きのう午前中に来た1歳馬は以前から球節が腫れていて、後膝も関節液が増えて跛行したので後膝のX線撮影に連れてこられた。

子馬のときには肢軸異常の手術もしている。

X線撮影してみると、球節の腫脹は骨端症のなごりだし、

後膝の関節液増量は骨軟骨症によるもののようだった。

肢軸異常はすっかり良くなっている。

それぞれは大きな問題ではないのだが、重なり合ってしまうと難しくなってしまう・・・・

                         -

午後に来た1歳馬は、肩跛行。

ちゃんと肩関節のブロックで跛行が軽減するこ12とも確かめた上でX線撮影のために来院した。

推察どおり肩甲骨に骨軟骨症と思われる病変が見つかった。

ひどくはない。

(右)

しかし、この馬も後膝の関節液が増量していて、球節の関節液も増量したことがあるとのこと。

この馬もまたいくつかのDODを抱えているようだった。

                         -14

今日来た1歳馬は球節に骨嚢胞があった。

(右)

かなり大きいので副腎皮質ホルモンの1種トリアムシノロンの病巣内注入をすることにした。

                       -

今日、午後は飛節のOCDの関節鏡手術。

反対側の飛節もX線撮影をしたら、そちらにもOCDが見つかった。

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人でも成長期にはさまざまな整形外科的な障害が起こる。

少年野球のピッチャーの野球肘もそうだし、

膝が痛くなる子もいる。

やはり親や先生やコーチが、無理をしすぎないように注意してやらなければならない。

そうすれば、スポーツ選手としてのエリートコースから少し外れたり遅れたりしても、また活躍できるようになる選手はたくさんいる。

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Dsc_2414 オラもまだ成長期。

成長期には辛いこともあるゾ。

とうちゃん、エサもっとくれ!

「食べすぎもDODの要因になりますっ!

あんたもう30kg超えたんだヨッ!!」