馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

セリ期間中診療はヒマ

2014-08-28 | その他外科

今日は、競走馬の腕節剥離骨折の関節鏡手術。

朝、診療時間の確認の電話があり、「間に合いますか?」と尋ねて、「大丈夫」との返事だったのだが、どういうわけか30分以上遅れてきた。

おまけに、トラックが入ってきたと思ったら、手前で角を曲がってあさっての方向へ行ってしまった。

しばらくして戻ってきたが、今度は持ってくるはずのX線写真は持ってきていない。

まあ、たいしたことじゃない。

左右の腕節をX線検査して骨片を確かめる。

右前の球節も関節液が増量しているので、X線撮影する。

結局、片側の橈骨関節面外側の骨片を摘出した。

完璧にやりましたとも。

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ついで、1歳馬の「肘」跛行。

超音波検査とx線撮影で診断つかず。

午後、私は血液検査と細菌検査。

そのあと、1歳馬の脛骨外果骨折の摘出手術。Pb240006

(右写真は別症例)

6月にも診察して、「骨片は変位していないので温存しましょう」と言った馬。

結局、変位して骨癒合まで待てそうにないので摘出することにした。

ホントはサマーセールへ出したかったそうだ。

手術せずに治るなら手術を勧めずに治してあげたい。といつも思っているが、裏目に出てしまった。

あとはできるだけ小さい傷で、あとあとの見た目も悪くなく治してあげたい。

切り方にも、摘出の仕方にも、縫合方法にもこだわるが、何もなかったようにとは行かない。

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夕方、1歳馬の腕節の外傷。

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P8286579今日は爽やかな晴天だった。

日差しの強さは夏のなごり

風の涼しさは秋の気配

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-P8286584

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朝はとうちゃんと1kmジョギング

オラは坦々と走るのは好きじゃない

何かを追いかけてダッシュするのは好きだけど・・・・

だってハラヘルだけだもん

P8286587

 


慢性蹄葉炎の治療としての深屈腱切断35症例

2014-08-26 | 蹄病学

これは1999年にアメリカ獣医師会雑誌に載った蹄葉炎馬での深屈腱切断術35症例についての報告。

Texas A&M 大学からのリポートだが、9年間で35症例だからさほど多くない。

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Deep digital flexor tenotomy as a treatment for chronic laminitis in horses: 35 cases (1988-1997)

馬の慢性蹄葉炎に対する深屈腱切断:35症例(1988-1997)

JAVMA,214,4,517-519

目的-深屈腱切断により治療された蹄葉炎馬の長期的予後を調べ、外科手技の成功に影響する因子を明らかにすること。

デザイン-回顧的調査。

動物-1988年から1997年に深屈腱切断により治療された蹄葉炎馬35頭。

方法-情報は個々の診療記録と畜主と担当獣医師への電話インタヴューにより得られた。

切腱術後6ヶ月と2年間生存した馬の累積頭数を調査した。

跛行のObelグレードが6ヶ月後と2年後の生存に与える影響と、蹄骨のローテーションが生存と将来のパフォーマンスに与える影響をχ二乗検定により検証した。

2年以上生存した馬の体重を2年未満しか生存しなかった馬の体重とANOVAにより比較した。

結果-35頭中27頭(77%)が6ヶ月以上生存し、32頭中19頭(59%)が2年以上生存した。

手術時のObelグレードや体重は、6ヶ月あるいは2年間の生存に影響していなかった。

蹄骨のローテーションは2年間の生存あるいは軽い騎乗運動に使えるという点で影響していなかった。

30頭中22頭(73%)の畜主がインタヴューにより、彼らの馬が同じ状態になったらこの治療をまたやってもらうということが示唆された。

臨床的重要性-深屈腱切断は伝統的な内科治療に反応しない蹄葉炎馬にとっても積極的な代替療法である。

数例では、馬を軽い運動使役に復帰させる点でも効果的であった。

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これらの馬は13頭はクウォーターホース、8頭はアラブ、5頭はサラブレッド、4頭はペイントホース、残りの5頭はそれ以外の種だった。

私も数例、クウォーターホースやドサンコやポニーの蹄葉炎で深屈腱切断をやってきたが、蹄壁や蹄底が厚くて硬くてしっかりしていて、サラブレッドのようにすぐ蹄底が割れてしまったり、蹄壁がもろくなって装蹄できなかったりはしなかった。

そのためサラブレッドより慢性蹄葉炎の予後は良いのではないかと思う。

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蹄葉炎の馬で深屈腱切断するときに、跛行の程度や、蹄骨のローテーションの程度や、馬の体重は、予後との明確な関係はなかったようだ。

2年以上生存した馬は6割ほどなのだが、畜主の4人に3人は同じ状況になったら「またやってもらう」と答えたとのこと。

この病気の重篤度を考慮すれば、59%の成功は勇気付けられるものだ。

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 治療と管理に手間と費用をかけながら2年間生存したからと言って「成功」と呼べるかどうかはわからない。

繁殖雌馬に関して言えば、そのときお腹に居る子を産めた。とか、そのときの当歳を育てることができたなら、たとえ数ヶ月生きながらえただけでも成功かもしれない。

慢性蹄葉炎の馬はたいてい死ぬわけではなく、人があきらめて淘汰しているので、

畜主が何を求めているかが一番予後に影響を与えるように思う。

                         ---P8266573

サマーセールは売却率は良いようだ。

今日は爽やかな好天で、売り上げも伸びただろうか。

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P8256569ピオーネ。

NOSAIの獣医さんが創ったのだそうだ。

巨峰を上回るヴォリューム。

堪能しました。

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P8266574ずいぶん涼しくなったけど

君にはまだ暑いのね


雷の被害、ことしも・・・・

2014-08-24 | その他外科

夕べはひどい雷だった。

12時頃目が覚めた。

今朝は夜間放牧されていた馬の外傷。P8236565

別にも、他にも崖から落ちて死んでいた馬の報告。

夜間放牧が普及して、雷が鳴った夜の事故は毎年のようにある。

http://blog.goo.ne.jp/equinedoc/d/20081011

http://blog.goo.ne.jp/equinedoc/d/20111003

http://blog.goo.ne.jp/equinedoc/d/20121015

雷が鳴ることが予想されている夜は夜間放牧は止めた方が良いのではないか。

もちろん予測は難しいし、

事故があったら困ると言っていては夜間放牧などできないのだが。

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140816_12010001沈(転覆)を恐れていては

カヌーなど乗れない

良い子は川で遊んではいけません。

たくましさを育んでくれるかもしれませんけど・・・・


仙腸関節脱臼との遭遇2014夏

2014-08-23 | 日常

腕節の剥離骨折の関節鏡手術に来た現役競走馬、3歳、雌。

P8216564右の仙結節が高く飛び出ている。

仙腸関節を傷めたことがあるのだろう

左右の臀筋の量もアンバランスだ。

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左右の後肢の長さも違ってしまうだろう。

左右とも傷めた方がバランスが取れるのかもしれない。

右回り・左回りで有利不利があったりしないだろうか?

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この関節鏡手術のあと、当歳のときに鼻をぶつけて、1歳になって鼻が鳴る馬の内視鏡検査とx線撮影。

午後は、3歳競走馬の2回目のTieback。

そのあと、1歳馬の中手骨部の血腫の切開手術。

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翌日は、SHCカンファレンス。

症例から学ぶこと。

とても充実した楽しい時間だった。

このような機会をあたえてもらっていることに感謝。

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Photoまて

まてまてまて

う~~~~~~

よだれが・・・・・

 


鼻が鳴る馬の鼻翼ヒダ切除

2014-08-21 | 呼吸器外科

運動したときに、喉鳴りではなく、鼻が鳴る馬が居る。

馬の外鼻孔は、筋肉で大きく広がるのだが、内側にある鼻翼ヒダには筋肉がないので、受動的に広げられるだけだ。

それで、鼻翼ヒダを切除することで鼻が鳴らなくなり、呼吸が楽になる馬が居る。らしい。P8206562

Equine Surgery には第一版から第四版の最新版まで鼻翼ヒダ切除手技が書かれている。

(右図)

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鼻が鳴ると相談されたので、鼻翼ヒダを仮縫合してみることを勧めた。

仮縫合したら音も小さくなり楽そうだったとのこと。

それで手術することになった。

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P8206557けっこう出血がある手術なのだが、

laserでやってみた。

とても良い感じに切除できた。

laserで順調に切開切除できたし、出血もほとんどない。P8206560

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P8186544くんくんくんくんくん

よくこんなものに入って寝てるナ

この暑いのに

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「アンタみたいに毛皮着てませんから!」