土曜日午前中、1歳馬の飛節OCDの関節鏡手術。
1歳馬の「肩」跛行のX線撮影。
黒毛和牛の子宮捻転整復後の難産。
2歳競走馬の中手骨骨折。
珍しい折れ方だった。
骨折線がきちんと閉じるか懸念したが、なんとか圧迫固定できたようだ。
その手術の麻酔を始めておいて、合間にセリに向かう馬の喉の検査。
忙しいので明日。と言ったら、
「明日は日曜日だからダメでショ(だから今日やってくれ)」との弁。
明日が日曜なら今日は土曜ダヨ!
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骨折手術が終わるのを待っていた繁殖雌馬の疝痛は症状と経過時間と血液検査結果で即手術決断。
結腸捻転だった。
盲腸と結腸が入れ替わるように捻れ、結腸自体は内容を抜いた後も浮腫性の肥厚で重く、整復するのに苦労する。
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馬の大結腸は3.5mほどの長さがあり、腹側結腸と背側結腸が行った道を戻るようにくっついている。
左図は馬の腹腔を右から視たCG。
この長く巨大な大結腸はほとんどその全長にわたって、腹壁のどこにも固定されていない。
基部で盲腸とヒダでつながっているだけ。
だから腹側結腸が下になり、背側結腸が上にあるのは、単に腹側結腸の方が太くて重いからそうなっているに過ぎない。
(右図は馬の腹腔を輪切りにして後から視ている図)
ところが、実は大結腸の最大径部分は、背側結腸の最後の部分である胃状膨大部で、これがもっとも背中側にある部分でもある。
馬が青草を飽食するとこの部分の容積はますます大きくなる。
そして・・・・・
重くなり、盲腸を押しのけるように下(腹側)へ下がってしまう。
背側にあるべき部分が腹側へ下がるので大結腸は根部から捻転する。
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これが大結腸が捻転する仕組みだろうと私は考えている。
馬の肝臓は右葉がもっとも大きいのだが、歳がいくと肝臓の右葉は小さくなる。
それは右側は巨大化した結腸に圧迫されるからだとされている。
「肝臓が押しつぶされるほど喰うなヨ」と思うが、馬というのはそういう動物なのだ。
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結腸捻転を起こす馬は、それまでにも疝痛を繰り返していた馬がかなりいる。
よく食べさせる牧場の、よく食べる馬が、よく食べる時季に結腸捻転を起こすことが多いのだが、
疝痛を何度がするようなら、結腸の胃状膨大部が拡張しすぎていることを疑って、
食べる量をコントロールしてやると結腸捻転を減らせるだろう。
胃状膨大部はまさに「異常・異状」膨大部になっているのだろうから。
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ロンドンオリンピック総合馬術競技のガイドはここにもある。
今はネット中継されるんだネ~
こちらは日本馬術連盟のHP。
人以外でオリンピックに出場する動物は馬だけ。
ガンバレ!!
もう2週間近く便秘様症状と発熱を示している繁殖雌馬。
超音波検査で腹水があり、
直腸検査で骨盤腔に異常な塊を触る。
治療するとしたら、開腹手術してみるしかない。
腹膜炎と腸閉塞の原因になっている「塊」を何とかできるか探り、なんとかできるならして、腹腔を大量の生理食塩水で洗浄する。
それをやらないなら、輸液も、解熱剤も、抗生物質も、いたずらに長引かせるだけだ。
開腹してみると塊は癒着した小結腸だった。
なんとか創外へ引き出せた。
(私が押さえているのが盲腸、むかって左が大結腸、手前が癒着して塊状になった小結腸)
癒着はフィブリンによるものだが、簡単には剥がれそうにない。
なんとか癒着部の上と下(吻側と反吻側)に腸鉗子をかけられたので、そのまま切除する。
腸間膜も癒着に巻き込まれているので、ちゃんと止血してから切除するというわけにはいかない。
小結腸の断端同士を吻合しておいて、腸間膜を縫合しながら血管も縫いこんで止血する。
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腹腔に大量の生理食塩水を入れて、吸引チューブで回収することを繰り返し、腹腔を洗浄する。
もう状態が悪くなってから日数が経っているのと、腸間膜からかなり出血したので血圧が保てない。
そのために筋変性を起こしてしまったらしく、手術後9時間ほど立てなかった。
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食欲も旺盛。
後肢は開脚気味だったので、開き過ぎないようにしばらく縛っていた。
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なんらかの原因で小結腸を損傷、おそらく小さな穿孔が起きて、発熱し、小結腸は癒着し、そこで不完全な腸閉塞を起こし、腹膜炎にもなり、それが症状だったのだろう。
癒着した小結腸の塊の一部は大きな膿瘍になっていて、ひどい匂いのする液状の膿が大量に入っていた。
癒着を剥がそうとせず、丸ごと切除して正解だった。
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きのうは蒸し暑かった。
レポジトリーの馬達も苛立っているのかうるさかったようだ。
午前中は1歳馬の第1趾骨翼の骨片骨折の関節鏡手術。
ロドコッカス肺炎と腹腔内膿瘍で死亡した子馬の剖検。
午後は肢軸異常のスクリュー抜去。
結腸捻転の入院馬は帰っていった。
繁殖雌馬の疝痛。
春から何度か疝痛を起こしていると言う。
腹囲膨満。しかし、血液検査ではPCV47%ほど。
痛みもひどくはない。
結腸捻転ではないだろう。
しかし、疝痛発見から8時間近く経ってもガスが抜けないので、開腹手術することにした。
やはり結腸は血行障害による浮腫性の肥厚はない。
しかし、著しい膨満。
ガスと、大量の青草の消化物と。
手術そのものは1時間ほどで終わった。
やれやれ二晩続いてしまった。
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あちらは夏は冷涼なのだ。
日本のように青草が急激に生い茂る盛夏にはならないようだ。
今年のロンドンも雨が続き寒いらしい。
いよいよオリンピックだ。
私が手術した馬も出場する。
頑張れ!!
5.5mmスクリュー用のスクリューラックを作ってもらった。
板金屋さんに頼んで作ってもらったので、
整形外科器具メーカーが販売している製品の1/10程度の値段でできた。
頼んだほうが、安くて早くて使い勝手が良いと考え直した。
なかなか良いできだ。
今まで治せなかったような骨折症例も治せるようになる。
きっと。
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今日は、
ポニーの当歳馬の食道梗塞。
内視鏡で詰まっているものを確認しておいて、カテーテルで水を入れながら押し込んだ。
来院時からチアノーゼがあり誤嚥性肺炎が心配。
1歳馬の飛節OCDの関節鏡手術。
今日から、サマーセールのレポジトリー検査。
午後は、競走馬の腕節剥離骨折の関節鏡手術。
そのあと、繁殖雌馬の疝痛。