馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

重症のフレグモーネor血栓症→敗血症、トキセミア、頭部外傷

2016-02-29 | 馬内科学

5日ほどフレグモーネで治療していたが、痛みがひどく、患肢を下にすると立てなくなり、死んでしまった、との妊娠馬の剖検。

これは大腿部。

皮下織は出血性。

飛節周囲には皮膚が破れた部分もあった。

悪臭がした。

よほど性質(たち)の悪い病原菌に負けてしまったのか、と思いながら、

筋層まで切ってみたら、

内股の太い動脈が血栓で完全に閉塞していた。

フレグモーネの経過中にこうなったのか、あるいは最初から血栓ができて肢が壊死し始めたのか・・・

血栓をもみほぐしてみたが、円虫仔虫は見つからなかった。(円虫仔虫の好寄生部位である)前腸間間膜根部には血栓はなかった。

内股の筋肉は退色した部分があった。

血行が途絶えたためもあるだろうし、感染と熱によるのかもしれない。

起立不能でもがいたらしく、頭もぶつけた痕があった。

脳脊髄液は出血性だった。

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ゆうべは、日付が変わってから起こされた。

分娩後10日ほどの繁殖雌馬の開腹手術。

痛みはひどく、血液検査でもPCV上昇を認め、乳酸値も著増。

倒馬したら、結腸捻転のように腹壁を結腸が押し上げていた。

しかし、捻転もはっきりした変位もなかった。

それでも、開腹しないと手遅れになる可能性があった。

終わって午前2時45分。

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相棒を置いていった旅先で・・・・

おまえ、ここで何やってんだヨ!

 

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2月後半の日曜日は新生仔治療と骨折内固定と結腸捻転と・・・

2016-02-22 | 日常

日曜日、新生子馬の集中治療・管理の依頼。

早期胎盤剥離で生まれて虚弱で、起立介助して哺乳していたが、3日目の早朝から疝痛を起こしたとのこと。

来院したら、PCVは35%だが、眼球陥没、皮膚テント延長。ひからびている。

糖質、アミノ酸が入った輸液を持続点滴する。

そのための静脈カテーテル留置。そして、起立困難な新生子馬は尿道カテーテルも入れておかないと膀胱破裂の危険もある。

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すでに、中足骨骨折の新生子馬の依頼も受けていた。

その内固定手術もまた神経をすり減らす。

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夜、この春の実習生の迎え。

2人別々のバスで来たので、二度迎えに行く。

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夜、立てなかった子馬も起立介助すると立って、なんとか親の乳房から吸える。

しかし、母馬の方が乳があがり気味。

子馬に頑張って吸ってもらうしかない。

持続点滴を中止し、母馬と一緒にする。

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11時19分、分娩後10日ほどの繁殖雌馬の疝痛の依頼。

話を聞いただけで分娩後の結腸捻転のようだ。

来たばかりの実習生ももちろん起こす;笑

来院したら立っていられないほど痛い。

血液検査ではPCV56%、乳酸値6.9mol/l。

即、開腹したが、結腸は完全に捻れて絞扼されていて色調は悪い。

ダメかと思ったが、骨盤曲を切開して内容を抜いて、捻転を整復したら色調は回復した。

しかし、粘膜はかなり壊死の状態に近い。

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夜明け前4時過ぎに入院厩舎へ移す。

うっすら積もった湿った雪がザラザラとアスファルトの上で凍っていた。

危なっかしくヨロヨロと歩く。

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月曜日、

明け1歳の大腿骨軟骨下骨嚢胞。x線撮影と病巣内ステロイド注入。

当歳馬の感染性関節炎と聞いていたが、検査所見や馬の様子を観るとこれは違う。x線撮影したらひどい骨折だった。

午後、明け1歳の種子骨遠位部の骨片骨折の関節鏡手術。手こずるかと思ったが、1時間もかからずに終わった。

結腸捻転の馬は術後12時間で40リットル輸液し、3つ目の輸液バッグを吊るした。

臨床実習生に、心拍を数えてもらい、腸の蠕動音を聴いてもらう。

症例を観て、本で学んで、病馬に触れて、さてそれを一生の仕事にしたいと思うかどうかは君しだい。

 

 

 

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中足骨遠位成長板損傷の直し方

2016-02-21 | 整形外科

子馬では、骨がポッキリ折れたように思えても、実は成長板とか化骨線とか骨端板と呼ばれる骨が成長する部位で、骨幹と骨端が軟骨で結合している部分で折れていることがかなりある。

Salter-Harrisの成長板損傷と呼ばれ、その折れ方の形状によって分類されている。

これは?

成長板で折れているが、端に三角の骨幹端がくっついているので、Salter-HarrisⅡ型損傷と呼ばれる。

もっともよくあるタイプ。

折れ方の力学としては、成長板が引張られた側は素直に剥がれ、押しつぶされた側は骨幹端に三角が残るように割れる。

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成長板損傷はできれば、ふつうの骨幹部骨折のようにプレートで強固に固定したくない。

頑丈に圧迫固定して成長板が骨癒合してしまうと、もうその部分では成長しなくなり、そちら側が伸びないので肢が曲がってしまう。

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かつては成長板を貫くように2本のキルシュナーワイヤーを挿入してずれだけを防ぐ方法も行われていたが、

あまりに固定力がないので、最近はあまり使われないようだ。

現在、ケンタッキーのRuggles先生が推奨しているのは、成長板の近位・遠位にスクリューを入れて、それをワイヤーで結ぶことで牽引する方法。

上の写真は、Ⅰ型の成長板損傷で、三角のピースはなく、三角のピースを利用した固定はできないので、内外でスクリュー&ワイヤーで牽引することで固定している。

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そして、大きく切り開いて、骨折を整復し、内固定する方法(Open Reduction and Internal Fixation; ORIF)を躊躇するもう一つの理由は、

子馬はとても感染に弱いからだ。

とくに思い当たる原因がなくても感染性関節炎や細菌性骨髄炎が多発する新生子馬だ。

大きな外科侵襲を与えて、異物を埋め込む手術をして感染したらとても厳しいことになる。

スクリュー固定やスクリュー&ワイヤーなら穿刺切開で行うことができる。

さあ、頑張ろう!

 

 

 

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脳神経障害by喉嚢リンパ節炎

2016-02-19 | 馬内科学

朝、今年産まれの子馬の肢軸異常の診察と蹄処置。

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つづいて、

顔面麻痺、舌麻痺、嚥下障害、眼瞼麻痺の2歳馬の診察。

神経症状の馬の診察は身構える。

診断が難しいし、診断できないと治療法の見当がつけようがないからだ。

耳の麻痺や平衡感覚の異常(前庭障害)はないようだ。

すると頭を出た後の脳神経基部の問題か・・・・・

鼻道から喉の内視鏡検査をすると、左喉嚢のフラップから黄色い粘液が流れ出しているのが見えた。

喉嚢炎による脳神経障害ならありうる。

喉嚢真菌症かと思ったら、左喉嚢の中には大きな異常な塊が見えた。

すでに自潰したのであろう部分も見える。

おそらく喉嚢壁近くのリンパ節が化膿して膨隆し、喉嚢の壁を走っている脳神経に圧迫と炎症の波及でダメージを与えたのだろう。

抗生物質で治療することを提案する。

生検鉗子についた膿を細菌検査へ回す。うまく行けば原因菌を同定し、抗生物質感受性試験もできるはず。

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午後は、私は血液検査業務と、3歳馬の腕節骨片骨折の関節鏡手術。

終わって、2歳馬の「喉鳴り」の喉頭内視鏡検査。

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きのうは、内部の発表会だった。

私たちの団体の獣医師がやっている仕事の幅のひろさをあらためて感じた。

そして、それぞれの分野がかつてより深く、専門的になり、とても難しくなっている。

予防獣医学、飼養管理指導、繁殖プログラム、眼科、整形外科、皮膚科、搾乳衛生、受精卵移植、etc.

とてもすべての分野を完全に把握することはできないだろう。

難しい時代になったものだ。

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きょうは、暖かかったけど、

夕方から雨が降り出した。

とうちゃんが玄関フードに入れてくれた。

 

 

 

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子宮動脈破裂は処置のしようがない

2016-02-17 | 急性腹症

夜、10時過ぎに起こされる。

その時間は私は熟睡中だ。

朝3時に分娩した繁殖雌馬が、夜8時から疝痛をしている。フルニキシン投与して軽減したが、まだ痛い、とのこと。

分娩後の結腸捻転の可能性もあるな、と寝ぼけた頭で考えて、急いで診察と手術の準備をする。

夜道を馬運車で急いで来れば、40分ほどで来るかもしれない。

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が、1時間経っても来ない。

電話で訊くと、離れたところへ馬運車を取りに行ってから出たとのこと。

よくある話なのだが、トラックに「箱」を積んでないとか、スノータイヤを履いてないとか、馬運車は借りに行ってからそっちへ向かうとか・・・・

こっちも何時に着けるのか訊けば良いのかもしれないが。

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来院すると疝痛はないが、不穏感。心拍66/分。

血液検査ではPCV43%(さほど高くない)が、乳酸値6.1mol/l(とても高い)。

直腸検査すると、子宮のむこうに腸管でも、子宮そのものでもない塊状物に触れた。

ほかに膨満したものや緊張したものはない。

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あらためて馬の年齢を訊くと14歳とのこと。

まだ子宮動脈破裂しやすい年齢ではないが・・・

超音波で体表から腹腔内を観ると、不整形、不均一な質感、内部で流動性がある大きな塊が見えた。

巨大な血腫だ。

腹水は多くないので、子宮の漿膜下と、子宮広間膜にできた血腫は破裂してはいないのだろう。

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馬はしきりにフレーメンを繰り返すようになった。

口粘膜はベージュ色。

子宮動脈破裂を止血する方法はない。

子馬を置いてきている牧場へ帰っても良いが、輸送するのもお勧めできない。

できるだけ安静にして血が止まるのを期待するしかない。

説明して入院厩舎へ入れる。「ゆっくり行ってね」

日付が変わる頃だった。

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朝、6時前の血液でPCV31%。

血小板も10万以上ある。

すこし口粘膜はピンクを感じられる。

心拍60/分。

前搔きは続いているのでフルニキシン投与する。

動脈の出血が続いていたらもう死んでいるだろうから、一旦は止まったのだろう。

再出血を防いでくれることを期待してトラネキサム酸を注射する。

「迎えに来てもらって帰りましょうか。」

「でも疝痛したり、突然死ぬかもしれないので、子馬を怪我させないように気をつけて。」

この2-3日を乗り越えれば生き延びるかもしれない。

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午後から様子がおかしくなり、夕方には死んだそうだ。

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分娩後の疝痛では、子宮動脈破裂も念頭において、口粘膜の貧血を評価する必要がある。

ただ、結腸捻転でも白っぽくなることがあるので、貧血が進むまで判断は難しい。

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