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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

大晦日の難産

2010-12-31 | 日常

ことしも、今日で終わりという今朝、難産の連絡で診療所へ向かう。

まだ予定日まで3週間ほどある胎仔だったので、全身麻酔して失位を整復したら引き出せた。

と、思ったら子宮まで出てきた。

もう一度、後肢を吊り上げて子宮を押し戻した。

年に20頭前後、難産の馬が運ばれてくる。

10年で200頭、15年では300頭にはなるだろう。

それ以上になると記憶している自信がない。

娩出させるとそのまま牧場に帰しているが、その後子宮脱した馬は1頭しか記憶していない。

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難産は、血や羊水や潤滑剤で、あちこち汚れる。

「大掃除も終わっているのに、大晦日にすまんかったね。」

「元旦よりましですね。;笑」

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来年が、皆さんにとって良い年になりますように。


養豚家に見習って

2010-12-30 | 日常

朝、口蹄疫が発生した養豚家のその後がTVで報道されていた。

「援助や義援金ももらった。犠牲になった豚たちのためにも養豚を辞めてしまうわけにはいかない。」と話しておられた。

「埋却地はお墓だと思っている。供養に行きたいがウィルスが怖いので行けない。心で、今度は守ってくれ。と祈っている。」と話していた肉牛農家もいらっしゃった。

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Pc300768_3  引き続き大掃除。

この馬房で・・・・

退院していった馬もいた。

苦しんで死んでいった馬もいた。

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畜産の中で豚ほど衛生的に飼われている家畜はいないのかもしれない。

オールイン・オールアウトといって、豚舎を完全に消毒してから豚を入れ、途中で新たな豚を加えたりせず、全部出してからまた新たに豚を入れる。という方式で運営されている養豚場も多い。

また、シャワーインといって、服を脱いで、シャワーを浴びて、消毒された服を着ないと入れない方式で管理されている豚舎もある。

(そういう養豚場を相手にしている獣医さんで「だから私、風邪ひきやすいんです」と言っていた人が居た)

SPF(Specific Pathogen Free)といって、特定の病原体は完全に居ない(フリー)であることを宣言して豚を飼っている養豚場もある。

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消毒するためには、掃除しなければならないし(有機物があるとほとんどの消毒薬は効かない)、掃除するためには片付けておかなければならない。

養豚家を見習わなければならない。と思いながら掃除していたのだが、外傷の馬が連れて来られて、途中で終わってしまった。

まあ、こんなもんだな。

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Map_act 日本列島を挟むように北東へ進む二つの低気圧。

二つ玉低気圧と呼ばれ、後ろに寒気があると、通過中、通過後、大荒れの天気になる。

この低気圧が来る前には完全に冬型の気圧配置がゆるむので、一時的に好天になるので、かえってだまされる。

危ない天気図のひとつのパターンだ。

年末年始、ご注意ください。


大掃除

2010-12-29 | 日常

手はかじかみ、厚着が必要で、日が短く、乾燥せず、etc. 悪条件がそろっている北海道でもこの時期には大掃除しないわけにはいかない。・・・・のかもしれない。

厩舎などはとっても汚れるのだが、馬が入っているときにはなかなか掃除できない。

生産牧場や乗馬施設や調教施設の皆さんはどうしてるんでしょう?

ホコリやワラくずの量はすさまじく、せめて年に一度掃除しないととんでもないことになる。

コンセントや電線周りにもホコリが溜まって、漏電や火事にもなりかねない。

Pc290772 天井Pc290773

掃除前(左)

掃除後(右)

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Pc290770_3 枠場Pc290771

掃除前(左)

掃除後(右)

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Pc290774_2 戸棚の上Pc290775_2

掃除前(左)

掃除後(右)

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数年越しの汚れが溜まっているということだけ無いようにして、

もっと良い季節に掃除することにしよう;笑。


Call it a year

2010-12-28 | 日常

1:51に電話で起こされる。

難産で、どうしよう。とのこと。「連れてくるかい?」と話して一旦切る。

2:13再度の電話。

「何とか出せました。」とのこと。それは結構。

目が醒めてしまったので、3時からしばらく起きている。

もう一度、眠れるかなと布団に入る。

6:23今度は別件。「繁殖雌馬のひどい疝痛でフルニキシン無効。」とのこと。

こりゃかなりの確率で手術だなと思い、着替えて診療所に向かい、手術準備もする。

が、来て診たらなんとなく落ち着いていた。

手術せずに済むに越したことはない。私も、馬も、牧場も。

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午前中、当歳馬の「肩」跛行。

これはたしかに「肩」跛行のようだと思い、神経ブロックはせず全身麻酔下での肩・肘の大型X線撮影。

ただし、稟告とは逆の肢だ。

X線で肘関節の骨嚢包が判明した。

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午後、黒毛和種繁殖雌の中足骨の骨柩症。

嘔吐しての誤嚥防止に気管挿管しておいて、TIVA(Total Intra Venous Anesthesia)下で腐骨の摘出手術。

もっとも私は助手を務めただけ。

ただし、手早くやらないと第一胃がガスで膨満すると厄介だ。

11・12月でサラブレッドの骨柩を2頭手術した。牛は久々かな。

牛と馬では骨反応や皮膚の余裕や、外観の重要度が違う。

牛の方が傷を寄せにくい。術後管理をしにくい。しかし、外貌にはそれほどこだわらない。傷の治癒能力は高い。

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夕方、腰萎の1歳馬のX線撮影。

これで、年内の予定の患畜は終了。

まだ急患はあるような気がするが、

Call it a year !!

これで1年としようじゃないか。

泣いても、笑っても、これで1年。

泣いたり、笑ったから、これで1年。

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流産の難産

2010-12-26 | 繁殖学・産科学

正常なお産でなく、流産でも難産になることがある。

胎児が先に死んでしまっているので、まともな姿勢で産道に入ってこなくて難産になるのだ。

胎児がまだ小さいのでたいていはひどい難産にはならずに済む。

ただ、流産の原因が気になるので、神経を使う。

Pc190748_2以前に、難産になって運ばれてきた流産がERV(馬鼻肺炎ウィルス)による流産だったこともあった。

いつも馬がいるわけではないし、妊娠馬はそうそう来院しないので、診療室も器具も、消毒と洗浄を繰り返せば、診療所閉鎖までしなくても大丈夫なのだが。

牧場でも流産があったら、流産した母馬や胎児や胎盤や羊水で周囲が汚染されないように注意し、

流産した馬とほかの馬ができるだけ接触しないようにする必要がある。

診療室は洗浄と消毒をし易いが、一般の厩舎ではなかなか難しいだろうと思う。

しかし、大切なことだ。