馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

Cornell大学での腱鞘鏡・滑液嚢鏡手術研修

2015-04-30 | 講習会

Cornell大学で行われる馬の腱鞘鏡・滑液嚢鏡手術の研修。

講師は、香港にも来られていたProf.Nixon、あのMcIlwraith先生、などそうそうたる面々。

舠嚢、指屈腱鞘(球節)、手根腱鞘(腕節)、足根腱鞘(飛節)、上腕二頭筋滑液嚢を対象として、実習と講義とディスカッション。

実習は死体肢で行う。

参加費は2日間で$1,550、だから20万円弱。

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腱鞘鏡・滑液嚢鏡といっても特殊なものではなく、関節鏡を差し込む部位によって呼び名を変えている。

関節と同じく、滑液と呼ばれる潤滑液が入った腔で、感染を起こしたり、癒着したり、フィブリンや線維や塊状物ができたりするので、スコープを入れて、癒着を剥がしたり、切開したり、洗浄する。

腱鞘の中から腱や靭帯を切る手技もある。

関節鏡ほどよく行われる手術ではないのだが、それぞれの部位で特有の構造があり、それに精通していなければならない。

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この1,2年こういう研修会の企画が目立つ。

専門分野が確立されてきたこと、卒後教育、それも専門医の継続教育の需要があること、などが理由だろうか。

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今日は、当歳馬の肢軸異常ALDのsingle screw 矯正手術。

続いてscrew抜去。

午後は1歳馬の飛節OCDの関節鏡手術。

今日で、忙しかった4月も終わり。

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ずいぶん成績の良いひと月だった気がする。

腸管手術も、帝王切開も、新生仔脳症も、骨折内固定も、ほとんどが助かって帰っていった。

(君が威張るんじゃない!)

 

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新生子馬の中足骨亀裂骨折

2015-04-29 | 整形外科

生後2週間の子馬。

おかあさん馬が分娩後に疝痛をして、それは産道損傷の痛みだったようなのだが、そのときから子馬が跛行していたそうだ。

おそらく、痛がっている母馬に蹴られるか、踏まれたのだ。

そのうち、中足骨部が腫れて、肢も曲がってきたのでX線撮影したら亀裂骨折していた。

ひどくなければ保存的治療で管理できるかもしれない。

しかし、肢が曲がってきたとなるともう危ない。

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中足骨が外反している。生まれつきではない。

骨幹部で斜骨折しそうに見える。

さらに近位へも骨折線が伸びている。

斜骨折するなら遠位の骨折端は中足骨の内背側へ突き出しそうであること。

中足骨は外反しつつあるのでテンションサイドは内側であること。

これらのことからプレートは内背側に置くことにした。

整復reductionが必要ないので、minimally invasive surgery でいけるだろう。

もちろんLCPを使う。

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11穴ナローLCPを骨の形状に沿うようにcontour する。

外反した中足骨をまっすぐにする力が働くようなプレートの使い方は危険だろう。

それでも近位と遠位に1本ずつ皮質骨スクリューを入れてLCPを骨に押し付ける。それは、骨をプレートに引き寄せることにもなる。

あとは近位と遠位に順番にLHSを入れていく。

本当は近位方向へもう少し長いLCPが望ましかったかもしれない。が、手持ちの最も長いナローLCPは11穴だった。

骨折部の2つの穴はスクリューを入れなかった。そのことで、LCPの1箇所に負荷がかかるのを避けられるだろう。

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LCPが金属疲労で折れるのを防ぐための安全策として1週間でもハーフリムキャストを巻きたかったが、この子馬はこの肢だけ屈腱が弱く、蹄尖が浮いていた。

子馬をキャスト固定しておくと屈腱がゆるんでそれが大きな問題になりかねない。

で、中足骨部だけにキャスト材を巻いた。どれくらいLCPに働く曲げ力を防いでくれるかはわからない。

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今日は、

1歳馬の飛節OCDの関節鏡手術。

当歳馬の軟口蓋裂の診断。

6歳競走馬の声帯切除。

重輓馬の非感染性関節炎。

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今日は霧が出て寒かった。

それでも辺りのサクラもピンクに膨らみ始めた。

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中手骨外顆骨折も螺旋骨折へと悪化することがある

2015-04-28 | 整形外科

まだ能検前の2歳馬が右前肢第三中手骨外顆を骨折した・・・・・

X線写真を見せられて、骨折線の走り方が嫌な感じはした。

話を聞くと、骨折してからすでに2週間経っているという;驚

外側関節面からの骨折では、悪くても外へ開いて変位するだけで致命的な骨折に悪化することはない。ほとんど・・・

キャストも巻かずに来院した。

跛行もひどくない。

注意しながら全身麻酔してx線撮影したら・・・

骨折線は近位へ伸び、危ない状態になっている。

骨幹部で斜骨折、螺旋骨折しかねない。

本当ならプレート固定すべき状態だが、馬はあまり痛がっていないし、プレートを入れることによるダメージと、治療費を考えて、骨端だけをスクリュー固定することにした。

骨折線は見えにくくなったが、完全には消失しなかった。

発症から2週間経っているので、骨折部で骨吸収が起きているのと、骨折線の中で再生組織ができはじめているからだろう。

もっと近位部までスクリュー固定が必要かもしれないが、角度を変えてX線撮影しても骨折面を3次元で確信できない。

骨折面に対してあまりに斜めにlag screwで圧迫するとかえって骨を割る力が働いてしまう。

それでこれ以上スクリューを入れるのはやめた。

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治療するかしないか、手術するかしないか、迅速に判断しないと危ないことになってしまう。

応急処置も重要だ。

骨折でも。

疝痛でも。

 

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ゆうべは結腸捻転、結腸変位で入院しているお母さん馬2頭の輸液管理。

今朝は血液検査、抗生物質投与、輸液継続の判断。

朝、2歳馬の喉頭形成・声帯切除・披裂喉頭蓋ヒダ切除手術。

不調の2歳馬の診察。

繁殖雌馬の歯科治療。

3歳競走馬の腕節DJDの関節鏡手術。

2歳馬の結腸便秘。

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今日も暖かかった。

サクラの樹がそろそろピンクになってきた。

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屈腱弛緩を放置すると蹄関節が亜脱臼する

2015-04-27 | 新生児学・小児科

腱拘縮と呼ばれる球節や腕節が伸びない子馬も多いのだが、

屈筋群が弱いと思われる蹄関節や球節が「ゆるい」子馬も多い。

パドックへ出して運動させるようになるとどんどんしっかりする、と言って気にしない関係者もいる。

が、1-2週間経ってもしっかりしてこないようなら処置が必要だ。

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残念ながらつま先(蹄尖)まで撮影できなかったが、蹄関節が亜脱臼している。

蹄球で負重している。

舠嚢骨が押しつぶされている。

これじゃ痛くないはずがない。

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スリッパのようなプラスチック製の靴を履かせた。

ちゃんと蹄底で負重できるようになった。

その状態で歩くことがリハビリになって蹄関節も形状と機能を取り戻すだろうと思う。

以前、同じような子馬が「予後不良」だと言われたとのことで来院した。

「大丈夫ですよ」と言って、今回と同じ処置をした。数週間かかったが良くなった。

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今日は暖かかった。

山ではコブシが満開。

サクラももうすぐ、かな?

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今日は、繁殖雌馬の結腸捻転。

昨夜からの疝痛。

危ない状態だった。

午後も繁殖雌馬の疝痛。

これも結腸捻転or変位。

どちらも分娩10~15日ほど。

 

 

 

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子馬の下顎骨折のダブルプレート固定

2015-04-26 | 整形外科

骨折は運動器疾患に分類されていることがあるが、頭や顎の骨折も多い。

顎を骨折した場合、物を食べられるか?が内固定までするかどうかの判断基準のひとつになる。

子馬だと哺乳できれば生活と成長に問題はでないし、子馬の骨は速く治るので、そのままで良いことも多い。

左右の骨でできている下顎骨の片側の骨折だと症状も軽いことが多い。

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この子馬の下顎も片側骨折のように見える。

しかし、左側は変位が大きく、骨折端がほとんど接していない。

これでは治癒に時間がかかるだろうし、顎に変形がのこりかねないので内固定した方がいいかな、くらいの判断だった。

が、来院してみると左右両側が腫れているし、毛を刈ってみると右側の皮膚に傷がある。

下顎切歯部を動かすと異常可動する。

口にDRボードを噛ませて撮影した。

口が小さいこともあって撮りにくいが、右側も折れている。 

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左右の下顎骨をプレート固定すると、皮膚が寄らなくなりかねない。

それで、正中1ヶ所の切開創から左右の骨折部にスモール1/3円プレートを入れて、4.0mm海綿骨スクリューで固定した。

右側は粉砕骨折だったので、破片をまたぐようにプレートを乗せて固定した。

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顎の骨折では口の中で歯をワイヤーで引張って固定することがあるが、子馬は歯が短いのでやりにくい。

キルシュナー鋼線を入れる方法も考えられるが、切歯部や口の中にワイヤーや鋼線が出ていると哺乳の妨げになりかねない。

母馬の股の間に顔を入れて乳を飲むので、創外固定も問題がある。

薄い1/3円プレートはそれなりに強度もあって、子馬の下顎骨折では良い方法だ。

ただし、値段は1/3円ではない;笑。

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日が長くなった。

昼夜放牧が増えて、朝に連れて来られる外傷が数頭。

 

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