全国の若い獣医さんが集まる講習会に今年も呼ばれて行ってきた。
ヒツジ、ヤギ、ダチョウ、シカ、と馬;笑
講師も臨床獣医師は私だけ。
今年は参加者はNOSAIの獣医師ばかりだった。1名だけ某軽種馬生産者団体から;笑
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馬を診る機会がある人に手を挙げてもらったが、北海道を除けばほとんどなし。
馬に乗ったことはほとんどの人があるようだった。
X線装置がある人は1/3くらい。
ケタミンを使える診療所はゼロ。
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例によって、サラブレッド生産地ではこんな病気や事故があって、こうやって対処してますけど、牛はどうなの?という話をさせてもらった。
馬の外科の話をするなら、全身麻酔ができないなら、ひどい外傷にも対応できないし、開腹手術はできない。
われわれ馬を日常的に扱っていて馬に慣れている獣医師なら立位でできる処置や手術も、不慣れだと立位でやるのは難しいこともある。
「牛はキシラジンでなんとかできちゃうんだけど、暴れる牛を縛り付けて、ホコリが舞う中でやってるのはどうなの?」と尋ねたら、うなづいている人も居た。
今年は子牛の脛骨、皮膚つき、肉つき、を持っていって、脛骨近位骨幹部斜骨折のDCP固定をデモした。
所要時間30分。
子牛の内固定は普及するだろうか・・・・? まずはX線撮影できるように環境を整えて欲しいし、それは若い獣医さんじゃなくて年配者が考えることだ。
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前置きがと~っても長くなった。
汚れた傷をどうやってきれいにするかも外傷管理の重要なポイントだという話もした。
牛も馬も、外傷を負って傷が汚れてしまうと簡単にはきれいにならない。
シリンジに細い針を付けて力強く生理食塩液を噴き付ければ洗浄に必要ないくらいくらの圧が達成できる、などと書かれた文献もあるがウソだ。
そんなことをしても、皮下織に張り付いた泥や毛は洗い落とせない。
イソジンやクロルヘキシジン入りの洗剤でブラシで洗っても汚れは落ちない。組織を変性させるだけ。
「スポンジで洗っている」という獣医さんもいてやってもらったが、スポンジのカスがこびりつくだけだった。
私たちがやっているのは、鉗子で汚れた皮下織をむしりとることだ。
ケンタッキーへ診療見学に行った獣医師も、あちらでもそうやっていると報告していた。
「何してるの?」と訊いたら、「傷の癒合を良くするため」だという答えだったそうだが、それは「こうしないと傷が癒合しない」という回答だったのだろう。
皮下織をつまんだり、むしって傷の癒合が良くなるわけではない。
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これから1ヶ月ほど、画期的な創傷デブリドメントの装置をデモしてもらう。
こんな汚れた傷も・・・・・・
こんなにきれいにできる。
それほど時間がかかるわけではない。
それほど大量の生理食塩液を使うわけではない。
周りもビチャビチャになったりしない。
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外傷を負ったために価値が下がったり、売るのをあきらめなければならない若い馬も多い。
一期癒合させられるなら、装置や消耗品がそれなりの値段しても「わりに合う」のではないかと考えるのだが。