馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

輸液の選択についての考察 中枢神経系損傷

2014-03-31 | 馬内科学

うなじ部分を打つように後へ転倒して頭を怪我した2歳のサラブレッドの雌馬、鼻血は出ていない。は、中枢神経系損傷の症例である。

このタイプの損傷は臨床では珍しくなく、当歳馬が頭絡が壊してときなどに見られる。

このような症例では、底蝶形骨が損傷していないか、頭直筋断裂がないか、あるいは脳底からの断裂がないか、など損傷の重症度が懸念される。

この例では、鼻血は出ていないので、頭直筋剥離は起こっていないことが示唆される。

このような損傷では直撃損傷-反直撃側損傷もまた起こりうる。

そして、浮腫を最小限に抑え、脳へのさらなる損傷を防ぐことが輸液治療の目的である。

高張食塩液は通常、中枢神経系の損傷の治療に推奨される。とくに、脳が含まれている場合には。

回答者は明らかにこのことを知っていて、高張食塩液は多数に選択された。

数名の回答者はすぐには輸液を投与せず、一方、他の者は等張電解質液や0.9%食塩液を選んだ。

添加する物にはチアミンが挙げられた。

MgSO4もまたあとの輸液に、50%MgSO4を20ml、最大で50mg/kgまで加える。

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外傷性の脳損傷への対処など習ったこともない。

しかし、ときどき遭遇する症例ではある。

ひどいときは即死、あるいは立てないまま死んでしまう馬もいる。

平衡感覚障害や運動失調を示す馬もいて、良くなる症例と、良くならない症例があるように思う。

輸液治療が予後を左右することはさほど多くないようにも思うが、対処方法を知っておいた方が良いだろう。

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今日は、1歳馬の飛節OCDの関節鏡手術。

眼球破裂の当歳馬の診察。

昼に新生子馬の敗血症の来院。

が、入院厩舎がいっぱいで入れる馬房がない。

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P3315968冬も夜間放牧をしていた1歳馬の被毛。

外飼いのゴールデンなみだね;笑。

すごい適応力だ。

さあ、春だよ~

毛皮脱げよ~

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韓国からの見学者

2014-03-30 | 整形外科

きのうは、韓国の大学の先生が見学にこられた。

「忙しい時季なので、手術室で話をしなければならなくなったらゴメンナサイ」

と前もっての連絡でことわっておいたらそのとおりになってしまった。

夜は一緒に会食したが、とても真面目で熱心で礼儀正しい方たちだった。

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今朝は5時半に職場へ行ったら難産で帝王切開が始まるところだった。

「手伝おうか?」

と言って、朝飯前の手伝いをするつもりが、そこへ子馬の骨折の連絡。

午前中の予定手術を午後に回して、午前中は難易度の高い骨折内固定手術をすることにした。

その準備をしているところへ子馬の疝痛の連絡。

とても対応できない。

入院している馬も誰も診にいけない。

P3305965            -

3時間ほどでLCPを2枚使った手術は終わったが、帝王切開した馬は立てない。

(左)

P3305964それを横目でみながら午後は繁殖雌馬の下顎骨折のLCP固定。

これもなかなか難しかった。

(右)

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施設や器具器材があってもそれを使いこなす人をどうするのか、それが重要。と、韓国の先生に話したことであった。

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輸液の選択についての考察 重症の新生子馬

2014-03-29 | 新生児学・小児科

次のグループは子馬の重症例2頭。

1頭は難産で生まれて10分の子馬、APGARスコアは6。

輸液はしない(しっかり経過を観る)から500mlから1リットルの等張液を投与する。までいろいろな回答だった。

この状態では、血液喪失がなく、子宮内からの感染が重度でない限り、循環血液量の回復はすぐには必要ない。

APGARスコアは軽度から中程度の窒息状態であることを示していて、

回答者から示唆されたのは、早期の治療を狙ったものだった。

添加するものとしては、(回答が多かった順に)ブドウ糖(1-5%)、チアミン(1g/l)、ヴィタミンC、DMSO(1-2%)、そして50%MgSO4(25mL)だった。

ブドウ糖はエネルギーを補充する目的、チアミンは正常な細胞内エネルギー代謝を補助する、ヴィタミンCとDMSOは抗酸化治療として、そしてマグネシウムは神経保護作用があると考えて。

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回答している専門医たちの多くが開業者だからか?;笑。この新生仔には脱水はない。

難産で生まれたからといって輸液をする必要は私はないと思う。

それより早く初乳を飲めるようにしてやることだ。

酸素吸入は良い方法かもしれないが、母子の関係が生まれる大事な時間を邪魔しないように気をつけなければいけない。

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二つ目の子馬の症例は、反応が鈍く、低体温で最小限の反応しかない24時間齢の子馬。

重症の新生子馬の、ひどい感染から、低酸素虚血性疾患までの様々な状態を示している。

これらの子馬の初期治療はかなり決まりきったもので、安定させ、循環血液量を回復させ、加えてエネルギーを与えることだ。

全ての回答者が等張電解質液の急速投与(20mL/kg、20分以上かけて、必要なら繰り返す)を選んだが、多くの回答者はできるだけ早くエネルギー補充の必要性も認めた。

エネルギー補充は背中に背負わせる式のCRI(持続点滴装置で4mg/kg/min.、50kgの子馬で5%ブドウ糖液を~250mL/h)、

あるいは最初の電解質液に1%加えてCRIで投与する。

私は個人的には最初の輸液治療に抗生物質を加えるし、CRI投与の準備を始める間に1%のブドウ糖を投与する(ほとんどの子馬で1時間に5%ブドウ糖250mlの投与が効果をあげる)。

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新生子馬の治療は、輸液、酸素吸入、保温、排尿管理、感染対策、そして可能なら哺乳、できなければ人工哺乳、それも無理ならカテーテル投与、消化管が動かないなら与えない。と、パターンは決まっている。

それを24時間態勢でやらなければならない。

その中での輸液の重要性と方法をこうやってはっきり示してもらうと確信が持てる。

サラブレッドの子馬はだいたい50kg前後だから最初の1リットルを20分以上かけて与える。

ブドウ糖は最初の電解質液に4:1で入れておき、あとは1時間に250mlずつ投与されるようにする。

もちろん継続的に再評価を繰り返すことが必要だ。

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きのうは、1歳馬の飛節OCDの関節鏡手術。

繁殖雌馬の子宮内膜の多発性血管腫?の生検。

急患で、1歳馬の前日からの回盲部閉塞。

二次的に膨満した空腸が捻れ3時間を越す大・難手術になってしまった。

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P3255941オラは

手術を終えて帰ってきたとうちゃんの手をぺろぺろする

とうちゃんは

癒される~

と喜んでくれるけど

ホントは

ゴム手袋と血の匂いがちょっとめずらしいだけ

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輸液の選択についての考察 消化管障害2

2014-03-27 | 急性腹症

9症例のうち、消化管障害あるいは疝痛を示した5頭のうちの残り2頭についての考察。

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8歳のサラブレッド、妊娠338日でひどい疝痛を示し、腹囲膨満。

多くの回答者が、おそらく外科手術の対象だと考えた。

1人の回答者は答えた。

”なんてこった! 穿刺して、外科施設へ運ぶ間に急速投与する!”

この症例では循環血液量と組織灌流の回復が最も重要だと考えられ、

高張食塩液(1-2リットル)を投与してから等張電解質液を早いスピードで投与するのと、

等張電解質液の急速投与の両方がほとんど同じくらいに示唆された。

回答者たちは最終的な治療の前に循環を改善しなければと考えた。

確定診断と治療に要する時間にもよるが、20-40リットルの等張電解質液の投与が必要かもしれない。

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USAでは二次診療施設まで距離があることも多い。

二次診療施設も大学病院だとそれほど迅速に対応してはくれないだろう。

しかし、馬が腹部膨満していて、ひどい疝痛を示しているなら、たいていの場合、輸液によって循環や脱水を改善してから全身麻酔したり手術しようとするのは無理だ。

時間とともに馬の状態はどんどん悪くなるし、結腸捻転では結腸が壊死したら助けられなくなる。

開腹手術適応なら、少しでも早く開腹するしかない。

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最後の症例、分娩後3日の馬が子馬を連れて軽度から中程度の疝痛で来院した。

ショック状態で、心拍72、粘膜蒼白、CRT3秒、頚静脈充満遅延、末端冷感。

ほとんどの回答者は分娩後の出血を推定した。

しかし、消化管障害、腹膜炎、子宮穿孔、他の周産期障害も考えられる。

ほとんどの回答者は、ショック状態をなんとかするために高張食塩液(2リットル)を投与し、次いで等張電解質液を急速投与することを選んだ。

添加する薬剤としてはアミノカプロン酸、オキシトシン、カルシウムがあげられた。

ヘタスターチを使うとする人も居たが、これは全血を失ったことによる低蛋白血症に対応するためだろう。

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分娩後の繁殖雌馬は子宮動脈が破裂することがある。

ほとんどの症例は分娩後24時間以内に死亡してしまう。

それを乗り越えた症例が治療対象になるのだが、いまだに積極的に治療する派と温存する派に分かれている。

循環血液量を回復させるのは良いのだが、血圧が上がったことで再出血すると状態はさらに厳しくなる。

ただ、大量出血すると馬は疝痛を示すことが多いので・・・・・

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さて、これで消化管障害の症例についてのPamela Wilkins先生の考察は終わり。

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P3255931このところ、朝から霧か靄がかかっている。

春霞

なんてものじゃなく、

PM2.5なのかもしれないそうだ。

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NOSAI日高 獣医師募集中です。

 

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輸液の選択についての考察 消化管障害

2014-03-25 | 急性腹症

9症例のうち4症例が消化管の障害だった。もう1例は消化管障害あるいは失血のどちらかとして加えられた。

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22歳のモーガン種が軽度の疝痛を示し、骨盤曲の便秘を触知する症例では、ほとんどの獣医師がすぐには静脈輸液をせず、水分の経腸投与(しばしば流動パラフィン)、電解質を入れたり入れなかったり、を選んだ。

便秘がひどければ等張の多電解質液の静脈内投与を行う。

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USAの馬専門医たちは、結腸便秘の第一選択は経腸投与(水、電解質、流パラ、etc.)だと考えているようだ。

便秘の経腸投与については以前に書いた

硫酸ナトリウム500gを3?の水に溶かして・・・というのとは違う。

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下痢をしている6日齢の子馬については多くがさらなる情報が必要とした。

このような症例では下痢による重症度と体液喪失は実にさまざまだからである。

回答者の大半が等張の多電解質液を選んだが、塩化ナトリウム液(等張あるいは高張)を選んだ回答者も多かった。

この日齢の子馬では、重度の下痢と脱水により、予想できない重度の電解質異常に陥ることは珍しくない。

例えば、低ナトリウム血症、低クロール血症であり、食塩水の投与が必要と考える者もいるだろう。

多くにとっては、正常な血漿に近い等張多電解質液は電解質の異常をよりゆっくりと補正する点で優れていると考えられている。

低ナトリウム血症、低クロール血症のどちらもあまり速く補正しすぎることは、多くの動物で有害であると報告されている。

このような症例では、輸液による蘇生はまず体液を補充し、それから電解質の補正を目的とする。

そのうち検査結果が利用できるようになる。

この進め方が多くが等張の多電解質液を選択したことに反映されている。

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私は下痢の重篤度から輸液の必要性、必要量、そして使う輸液剤を選択すれば良いと思う。 

乳を順調に飲んでいるなら輸液は必要ないかもしれない。

 しかし、脱水が強いなら、少なくとも排尿が認められるまで脱水を改善しなければならない。

 下痢の回数と性状は、これからの欠乏量を予測するためにも重要だろう。

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水下痢を頻回に飛ばす4歳のクウォーターホース、沈鬱、おそらく8%の脱水、粘膜充血、心拍数80回/分。

回答者は高張食塩水(1-2?)を投与してから等張液を投与する者と、すぐに等張電解質液の急速投与をする者が、ほとんど同数であった。

このような症例での初期治療の目的は組織灌流を維持するための循環血液量の再生であり、どちらのアプローチも受け入れられる。

電解質異常の補正は次の治療過程に回せる。比較的少量の高張食塩水を投与し、低ナトリウム血症をあまりに急速に補正するべきではない。

この症例での大量の体液喪失は500kgの馬では40?と推測される。

さらに投与される量は、引き続く喪失と維持に必要とされる量である。

推奨する方法は、等張電解質液20?を2-4時間で急速投与し、その後、1時間に3-4?を投与する。

ポリミキシンBを抗エンドトキシン治療として最初の輸液に加える。

カルシウム(23%グルコン酸カルシウムとして)と塩化カリウム(20mEq/L)を追加の輸液剤に加える。

ヘタスターチを挙げた人もいた。推測される(おそらく)低蛋白血症があるので、最初の電解質液と一緒に投与する。

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突然の水様性下痢の症例は、生産地でも年に数頭発症がある。

往診車に積んでいるだけの補液をしておいて、二次診療施設に搬入すれば血液検査と大量輸液が可能になる。

その判断ができないまま死んでいる馬もいる。

蠕動が止まってしまい、腹囲膨満し、激しい疝痛を示す症例の予後は良くない。

8%の脱水でさえ、欠乏量だけで40?だ。

下痢が続くならこれからの予想喪失量と、これからの半日、あるいは1日の維持量も考えなければならない。

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(長くなったので、つづく)

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今日は、午前中2歳馬の飛節OCDの関節鏡手術。

午後は、1歳馬の飛節OCDの関節鏡手術。

その前に、高齢馬の鼠径ヘルニアの連絡。P3255942

来院して、ざっと診察して、厳しいことはわかっているが、手術することにした。

術前PCV74%。

何%の脱水だろう?

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P3255940きのうも、今日も、とうちゃん忙しくて

夕方のさんぽはナシだった

オラ、やけおこして木でも

かじってやる!

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