馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

北海道NOSAI馬外科高度化研修 2

2018-10-05 | How to 馬医者修行

研修最終日。

朝は疝痛の来院。

落ち着いて、開腹手術にはならなかった。

顔のひどい外傷の当歳馬が来院。

立位で縫合。

腰萎のX線撮影。

午後は、2歳競走馬の腕節chip fracture の関節鏡手術。

動脈穿刺を実践してもらう。

牛地帯でもi-STAT(ポータブルのカートリッジ式血ガス測定装置)はけっこう普及している。

しかし、動脈穿刺が難しいので静脈血の測定しかしていないところも多いようだ。

夕方も、3歳競走馬の腕節chip fracture のX線診断。

これにて、研修終了。

                 ー

地元での日常の診療に何か生かせるものがあったのなら幸いだ。

それを観たり、学んだりするのに、どのような研修の形が良いか、これからの課題だろうと思う。

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朝はすっかり肌寒くなった。

朝露がつめたい。

そんなこと気にしないやつもいるけど。

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北海道NOSAI馬外科高度化臨床研修

2018-10-04 | How to 馬医者修行

今週は、北海道の外部のNOSAIから3名が研修に来ておられる。

オータムセールと重なってしまったので、診療はすっかり暇。

しかし、忙しいと説明したり、講義したりする余裕がないのも現実。

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初日は、午前中下顎に慢性的に化膿性の肉芽巣ができた繁殖雌馬の切開・切除手術。

静脈麻酔で倒馬室でやったのだが、もともと寝起きが良くない馬で、麻酔覚醒時におかしくなった。

一度、二度と立ち上がったのに、震えて、興奮して、また倒れこんだ。

発汗している。

PCV53%、乳酸値13mmol/l。

体温は41℃。

悪性高熱”様だった。

ホースで水をかけて体を冷やした。

酢酸リンゲルとヘタスターチを点滴した。

それで1時間ほどで落ち着いて、歩いて帰っていった。

麻酔の珍しい緊急事態を研修の先生たちに観てもらうことになった。

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午後は、子牛のプロポフォール麻酔の講義。

サラブレッド生産地の馬臨床の講義。

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2日目は、当歳馬の球節捻挫の骨片摘出。

関節鏡を入れたが、骨片は見えなかった。切開して摘出した。

午後は、子牛のプレート固定の練習会。

3名の先生にそれぞれが、脛骨骨折、大腿骨骨骨折、橈骨骨折、上腕骨骨折を練習してもらった。

練習用のドリルが切れなくて申し訳なく、苦労するが、プレート固定の可能性を感じていただけたと思う。

練習は、教えるほうにもとても勉強になる。

私たちもスキルアップしていかなければならないのだから。

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もう季節はずれになってしまったムクゲ。

来年はもっと早くから咲いてくれると良いのだが。

 

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実習生について思うこと そしてアドバイス たぶんその1

2018-09-03 | How to 馬医者修行

今日は、

早朝は結腸便秘の2歳の診察。

朝、2歳馬の肘腫の診察。手術はしないことになった。

当歳馬の臀部の蹴傷。

今週わたしは検査当番。

当歳馬の疝痛の依頼。

午後に予定していた6歳競走馬のTieback&cordectomyは予定どおりにやってしまうことにした。

手術予定がつまっていて、延期すると1週間以上先送りになってしまう。

Tieback&cordectomy を1時間で終わらせて、当歳馬の開腹手術。

案の定、手遅れだった。

剖検したら、手遅れでなくても助けられない小腸根部捻転だった。

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夏は実習生たちが来ている。

大学の単位になるので、評価書を書いてくれ、と持ってくる学生たちも居る。

(これは本当におかしいと思う。

大学は安からぬ授業料を学生から摂っている。

年間の授業料を1年50週で割ってみると良い。

学外実習に出して、単位を与えて、それを外部に負うなら、”金払え!”って言われる話だ。)

われわれの受け入れ元の北海道NOSAIにも、実習日誌に目を通してやってくれ、とか、

学生の評価表をつけてくれとか、

学生ひとりひとりへのアドバイスを書いてくれ、とか言われている。

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私は、学生たちにマニュアルを作って渡そうとは思わない。

最低限の注意をして、あとはひとりひとりとできるだけ話しながら、実習が何か役に立ってくれれば良いと思っている。

けっこう厳しいことも言う。

学生たちに好かれたいとは思わない。

実社会の厳しさ、臨床のたいへんさ、を体験して、それでも面白いと感じられるか、を考えてもらいたいと思っている。

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しかし、アドバイスするとしたら、どの学生にも共通のことがかなり多い。

本を読め

あまりに誤字脱字が多い。基本的な知識人としての教養が疑われる。パソコンばかりで文章作成していないで、自分の言葉で、手書きで漢字と文章を書けるようになれ。

そのために本を読め。アニメばかり見てないで。

社会人としての最低限のマナーと態度を身につけろ

目上の人が運転する車に乗せてもらうときは、乗るべきは助手席だ。あんたはお客さまじゃない。

よそへ行って好かれるのは明るく元気で活発な来客だ。邪魔にならないようジッとしているだけでは実習にならない。

日常生活の技術は診療技術と重なる

ほとんどの学生が掃除もできないし、ロープも結べないし、洗い物もできない。

こいつら普段の生活でどうしてるんだろうと思う。

そうか、今の日常生活ではロープを結んだりもしないし、掃除もしないし、洗い物もしないんだ。

勤勉でもなく、器用でもなく、機転も利かず、積極性もないヤツは診療でも役に立たない。

集団行動するくせを捨てろ

学校では「みんなと同じように行動しなさい」と習うのかもしれない。しかし、社会に出たらちがう。

人があれをやるなら、自分はこれ。人があっちを受け持つなら、じぶんはこっち。

一人でできる用を複数でやろうとするな、邪魔になるだけだ。

体を鍛えて使えるようにしておけ

今の日常では力任せに何かをする、などということはないのかもしれない。

しかし、すくなくとも大動物臨床では、体を上手に使わないとできないことが多い。

指先だけでは始まらない。

体格の問題もあるが、体の使い方もだいじ。

生まれて一度も風呂に入っていない患者さんを手術するんだ。優しくのんびりこすっていては消毒どころか洗浄にもならない。一生懸命ブラシでこするんだ。

われわれの何倍も体重がある患者さんを動かして診療するんだ。こっちも気合を入れて、力をあわせて全力を発揮しないとはかどらない。

大動物診療の何分の一かは肉体労働にかかっているんだよ。それができない人には無理だ。

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日本の将来は明るくないとつくづく思う。

私たち世代の責任なんだろうな・・・・・

 

 

 

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Chifney bit チフニー:便利あるいは危ない?

2018-07-21 | How to 馬医者修行

何度かチフニーばみによる舌の裂傷や口腔内の損傷を診てきた。

海外でも同じことは起きているようで、ネット上の記事になっているので紹介したい。

The Chifney bit: useful or dangerous?

チフニーばみ:役立つ、あるいは危険か?

Horse&Hound

曳くのに苦労する馬のためにデザインされたチフニービットは、間違った使い方をするときつ過ぎるというのが定評である。

Lottie Butlerが、チフニービットはいつ、どのように使うべきなのか検討する。

What is the Chifney bit and how does it work?

チフニービットとは何か?そしてどのように働くのか?

”チフニーは、使う人次第で、とてもキツくもなるし、とても有効でもあります。”

と、オリンピック金メダリストであるJane Holderness-Rddamは言う。

”私たちは雄馬や、間違った扱いをされてきた馬達だけにチフニーを使います。”

 チフニー、後引き防止ハミとしても知られているが、曳くのが難しい馬用にデザインされた取り扱い用のハミである。

口内にかませる部分があり、細い金属の輪でできていて、馬の舌の上と顎の下がつながるようになっており、頭の後にかける1本のストラップが付いているので簡単に付けはずしできる。

曳き綱は馬の顎の下の輪に着ける。

How should it be used?

チフニーをどのように使うか?

”チフニーはよく注意して、よく考えて使う必要があります。”

とTricia Nassau-Williams(Worshipful Company of Loriners の講師でプロジェクトマネージャー)は言う。

”チフニーは、舌を直接強く押さえることで機能します。

そのことは、もし間違った使い方をすればひどいダメージを引き起こし得る可能性が大きいことを意味します”

 と、Triciaは警告する。

”自分の腕にチフニーを付けて、馬を曳くときの力をかけてみなさい。

馬の舌と歯槽間の感触がわかるはずです。”

標準的なハミと同じように、幅広い選択の中からチフニーを選ぶことができる。

そして、同じように着けるべきで--歯に当たるように低く着けたり、口角にシワを作るほど高い位置に着けてはいけない。

 口の中の部分は2つのタイプがあり--まっすぐな棒とひとつは逆に反っている。

"口に入る部分のこの凹みは、舌が収まるようにデザインされているのではありません。

舌の中央にかかる圧を強くします。

そこは、馬がもっとも反応する部位です。"

The Horse Bit ShopのシニアアドバイザーであるEma Odlinは言う。

このように、チフニーはとてもきつく成り得る。

 

”口に入る部分は曲がっていて、横は口の歯槽間に当たります。”

Janeは言う。

”チフニーは優しく扱う必要があります。

しっかりと、しかし急激にではなく。

手に負えない馬には役にたちます。

しかし、使う人が乱暴に扱うと、チフニーは損傷をあたえます。”

チフニーは騎手であったSamuel Chifney Snrによって発明され、1805年に特許取得されている。

Samuelはジョッキークラブが彼の発明に出資することを望んだ。

--’頭絡は馬が逃走するのを抑えるには軽すぎて優れていない。’

クラブが拒んだので、彼はLatchfordと呼ばれた鉄細工師に恩義を受けるようになり、

Fleet監獄に収監され、1年後に死んだ。

彼が作ったハミは普及したが、そう、特に競馬業界で普及したにとどまっている。

 

 ”British Horseracing Authority (BHA)は、競馬場に曳いていくときには、ハミを使うか、チフニーを付けた頭絡を使わなければならない、と定めています。”

と、競走馬の調教師Kerry Leeは言う。

”私たちはすべての馬にそれらを使います。

馬達はすべてとてもよくしつけられていて、まったく問題はありません。

しかし、チフニーはとても鋭いので注意深く扱わなければなりません。”

 

Not a replacement for a headcollar

頭絡のかわりではない

しかし、Triciaはこう指摘する。

競馬業界以外では、チフニーは頭絡の代わりとして使われるべきではない。

”想像してみてください。

もしあなたがあなたの馬をチフニーで曳いているとき、馬が驚いたりあるいはパニックを起こしたら、

--あなたが手綱にぶらさがったら、ひどい怪我をさせるかもしれず、

もしあなたが放しても、手綱が馬の肢に絡んで同様の問題を引き起こしうるのです。”と、Toriciaは言う。

 

”何人かの獣医師はチフニーによって舌が裂けた症例を報告しています

--チフニーは細心の注意をして使うべきです。

私なら頭絡との組み合わせでのみチフニーを使います。

頭絡の上にチフニーを着け、色の違う引き綱を着けます。

そうしておけば、チフニーだけに頼るのではなく、必要なときだけチフニーを使えます。”

 

強いハミと同様に、馬が一旦チフニーによる操作を覚えれば、チフニーに敬意を払うようになる。

”私はチフニーをうまく使ってきました。うるさい馬を扱ったり、曳くとき、馬運車に乗せようとするときもです。

しかし、いつもとても短い時間だけです。

何かさせるときや、曳いて放牧地へ出すときや入れるときなどです。”

Triciaはさらに言う。

”うまく使えれば、1回か2回です。それで充分です。

もしうまく行かないなら、チフニーは正解ではないのです。”

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チフニーを使う前に、他のタイプの矯正用頭絡を試してみるのは価値があるかもしれない。

dually halter などだ。

”私はいつも、違うタイプの頭絡を試すように示唆しています。

あるいは、sliphead をつけた標準的なハミです。”

と、Emaはアドバイスする。

”しかし、馬が手におえないままだったら、危険です。

馬に敬意を払われるようにする必要があります。

正しく使うなら、チフニーはやるべき価値ある手段です。”

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”私の経験では、馬はチフニーに反応します。”Janeは同意する。

”興奮しがちな雄馬を扱うなら、わけなどなく暴れるかもしれません。

教えてやる必要があるのです、’Hey, 私は準備できてるわ。’”

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生産地でとても普及したチフニーだが、馬の口腔内、とくに舌を傷つけてしまう恐れがあるものだ。

また、馬のハミ受けを壊しかねない。

使うなら、正しく、安全に使うべきだ。

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ハミで馬をしゃくる、なんて、じぇじぇじぇ~!

 

 

 

 

 

 

 

 

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fifty eight 58

2018-06-05 | How to 馬医者修行

58になった。

30になるときも、40になるときも、50になるときも、その数年前から身構えていた気がする。

60を前にして、充分に身構えているかというと、まだ心積もりが足らないような気がする。

55を超えて、はっきりと衰え、老化、退化、劣化を感じている。

これから、それは加速していくのだろう。

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もう、量をこなしたり、スピードを上げたり、画期的な新しいことに挑戦したり、はできないし、しない。

間違った判断をせず、いままでやってきたことを丁寧に慎重に間違いなくこなす。

それが、この年齢に求められることだろう。

いままでやってきたことは、他人にできないことに対応することだったし、新しい方法に取り組むことだったから、話はややこしいのだけれど;笑

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きのうは、2歳馬の喉頭片麻痺の喉頭形成・声帯切除。重症。

午後は、競走馬の腕節の骨折の関節鏡手術。重症。

そのあと、競走馬の中手骨外顆完全骨折の内固定手術。重症。

もう数をこなすことはできないし、したくないと・・・思っていますとも;笑

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クレマチス・モンタナ。

不思議な植物だ。

 

 

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