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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

球節真横からのx線撮影

2008-06-30 | その他外科

球節は完全な真横から撮影したい、しなければならないことが多い。Photo

(右のx線写真は微妙にずれていて美しくないでしょ?)

最近はセールのためのレポジトリーのx線検査もあるし、

仔馬、育成馬のOCD(離断性骨軟骨症)は中手・足骨の矢状稜に起こることが多い が、完全に真横から撮影しないと矢状稜は重なって見えない。

P6260224しかし、球節をきれいに真横から撮影するのは、慣れないとなかなか難しい。

これは後肢の球節だが、球節の中心の真横から見るとだいたいこのくらい、か?(左)。

内外の蹄球を結んだ線の延長上、を目安にすることはできる。

しかし、馬の立ち方や、内向・外向によってはずれてしまう。

P6260221                                            -

骨標本を真横から撮ると、こんな感じ(右)。

この骨の、中手・足骨の背側外側関節面と第一指・趾骨の近位関節面が作るラインを覚えておくと、球節自体を見て、真横がわかるようになる。

Photo 骨標本ではこの部分(左)。

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Photo_2 実際の馬の球節を見ているときは、私はこのラインを見ている。

P6260223 そして、

馬の球節の断面はこんな感じだから・・・・・

と、真横がわかれば、

斜めにずれることはなくなる。

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P1chip5_2球節の形から真横がどこかわかるようになれば、

蹄球を当てにできない、

屈曲させての球節の撮影や(左)、

手術中の撮影でも、Mc3_070412_up_exm_0040_lfc1_2

球節を完全な真横から撮影できるようになる(右)。

・・・・・・・たぶん。

そして、これは第一指骨・趾骨や中手骨・中足骨の手術をする上でも役に立つ

・・・・・・きっと。


新生仔馬の屈腱群の弛緩

2008-06-28 | 新生児学・小児科

P6210192 生まれたときから後肢の繋が緩い仔馬。

これでも2週間のうちに少しは良くなったようだ。

最初は球節が着地していたのが、球節はあまり着地しなくなった。

長年の経験を持つ「社長」が「放って置いても治る」と言ったそうだ。

しかし、もう右後肢は異常な腫脹を見せている。P6210191

x線撮影しても骨には異常がなかった。

右後球節の腫脹部を穿刺すると血様漿液で、関節液や腱鞘液ではなく、感染もないようだった。

球節を取り巻く輪状靭帯が裂けて血腫になったのだろう。

 こういう屈腱の緩い仔馬が生まれることはけっこう多い。

ほとんどの例は数日でだんだん良くなる。

しかし、こう程度がひどいと処置してやらないと、球節や蹄球が擦りむけてしまう。

P6250221_2                 -

  蹄尖部を削蹄して、後へながい出っ張りのついたプラスチック製の靴を履かせた(左)。

球節は屈曲させた状態でロバートジョーンズバンデージ風に包帯を巻いた。

立った状態がこれ(左・右)。P6210194

P6210193処置前よりは、はるかに良い。

球節がひどく腫れてしまう前に処置してやれたらよかったのにと思う。

                 


マイクロチップ挿入時の消毒

2008-06-27 | その他外科

以前、マイクロチップ挿入による膿瘍形成について書いた。

皮膚を完全に滅菌するのは無理だし、無菌操作でマイクロチップを挿入してもその後に針孔から感染することも考えられる。

しかし、手間や経費の点からも現実的な望ましい挿入方法を検討しておく必要はあるだろう。

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 剃毛するのが理想だ。という意見には私は異論がある。

何度かこのブログで書いてきたが、今は外科手術でも剃毛は必要がない、あるいは害の方が大きいと考える外科医が増えている。

カミソリで毛を剃ることで皮膚に傷をつける。

傷ついた皮膚には細菌が増殖する。

増殖した細菌は、皮膚に残った針孔から感染し易い。

 皮膚を消毒薬の入った洗剤で洗うことは意味があるだろう。

クロルヘキシジン(ヒビテン)系の消毒用洗剤で擦ると、汚れを落とすのと消毒を兼用できるだろう。P6230211

 そして、ヒビテンアルコールを浸したガーゼかコットンで拭いてから、

できれば滅菌ガーゼでアルコールや水分をふき取った方が良いだろう。

 挿入が終わったら・・・・

ノベクタンスプレー(右)をかけておくのが良いのではないか。

スプレーすると消毒薬の入った接着剤の皮膜ができて、針孔からの感染を防いでくれると思う。

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 ヨード系の消毒薬には過敏さを示す馬がいることが報告されている。

皮膚炎を起こすと、そこには細菌が増殖しやすいので、ポピドンヨードやイソジンスクラブは避けた方が良いかもしれない。

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今日は競走馬の腕節の剥離骨折の関節鏡手術。

繁殖雌馬の声嚢のポリープの内視鏡検査。

繁殖雌馬のsarcoidの診察。

2歳馬の肩跛行(診断つかず!)。

来週3日の帯広での講義の準備をしているが・・・・・

馬の臨床に関心のない学生の興味を惹き起こす方法を教えてください(笑)。

P6230210


疝痛の診断 超音波画像3

2008-06-26 | 急性腹症

P6140153正常な成馬では、腹部正中には盲腸と腹側結腸しかない(左)。

しかし、閉塞して膨満した腸管は重いので、腹側へ沈んでくる。

だから腹部の正中近くの超音波画像の観察は大事だと思っている。

が! 実際にはあまり正中部を熱心に見ていないように思う。

観にくいのは確かだ。

腹腔穿刺が必要になった場合でも、正中部の様子を把握しておくことは役に立つ。

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P5010037_2 膨満した小腸が何本も見える。P9040010

液体で満たされて、真ん丸に膨らんで、もう蠕動もないのは、完全な閉塞状態だ。

こういう症例で開腹手術すると、小腸はボンボンのポンポコリンで、内容を推送したり、場合によっては切開したりすることになる(右)。

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P7130470 膨満した小腸の中に、重積像が見つかることもある。

fish eye (魚の眼) とかbull's eye (雄牛の眼)と呼ばれる像だ。

(どうして魚や雄牛なんだろう??)

このような特徴的な像は確定診断所見と言っていいかもしれない。

S S_2左も見事な重積の超音波画像。

手術を希望しなかったので、剖検したのが右。

重積ではなく回腸の肥厚による狭窄だった。

いずれにしても開腹手術以外に救うすべはないが・・・

この狭窄部位がどうして重積像に見えたのかはなかなか興味深い。

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Photo_2左も腹部正中の超音波画像。 腹腔に大量に腹水が貯P5130104まっている。

その中に小腸が何本か浮いている。

小腸壁は肥厚しているようだ。

この馬は空腸穿孔による腹膜炎だった(右)。

腹膜炎による小腸壁の炎症が小腸壁を厚くしていたのだろう。

小腸の病変部を切り取り、腹腔内を洗浄して、抗生物質治療を続けて・・・・生存した。

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夏の実習情報。

うちが受け入れ可能としていた人数がほぼ一杯になったので、北海道NOSAIのHPの実習受け入れ可能施設のリストには載っていない。のだそうだ。

しかし、まだ割り込めるところはある!(笑)

7月中は余裕あり。

8月11日までは1~2名ほど。

8月11日から25日までは1名。

8月25日から9月8日まではほとんど満杯。

残りの9月中はあと1~2名かな。

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実習予定前日に来ても構いませんし、当日来ても構いません。日にちと到着予定時間が決まって近くなったら、連絡してください。バス停や駅までは迎えに行きます。千歳空港からこちら方面へは交通の便が悪いので注意して便を選んでください。

実習中は白衣でもツナギでもスクラブでも構いません。洗濯はできます。聴診器、長靴もあれば持ってきてください。

学外実習をカヴァーする保険に入ってくることをお勧めします。こちらへ来てから入ることもできますが、来る途中の事故のことや、加入手続きが面倒なので、できれば加入してから来てください。

宿泊施設は、食事なし。自炊道具はあります。宿泊費・・・・町と交渉中。

印鑑と健康保険証を持ってきてください。

そのほか、実習についての問い合わせは HIG@COCOA.OCN.NE.JP (ほんとは全部小文字で打ってね)へどうぞ。


疝痛の診断 超音波画像2

2008-06-25 | 急性腹症

P6140161 左側で腹底(腹部正中)まで検査したら、右側へ移る。

右側で重要なのは十二指腸の観察。

十二指腸は右の腎臓の腹側を尾側背方へ走行している。

いつもは収縮してその径は細い(左下;腎臓の左の小さいのが十二指腸)。

胃から内容が運ばれている時は、蠕動しているのが観える。

P9130008

Photo 右のように十二指腸が膨満していると・・・・

当然、胃拡張も推察される。

胃破裂で死ぬ馬は多いので、胃カテーテルを挿入して胃を減圧してやらなければいけない。

「疝痛の診断 疫学的経験」で実際にどのような閉塞が多いかを書いたが、小腸閉塞は回盲部、すなわち小腸の最後の部分の閉塞が多い。

閉塞している部分より吻側(上位)が拡張するので、十二指腸まで膨満しているときは小腸は全域にわたって膨満していてたいへんな手術になることが多い。

                                -

腹腔の右側には正常でも巨大な盲腸がある。

P4080002盲腸はあまり捻転したり閉塞することは多くないので、Pc140095_2超音波検査でもしげしげとは観察しないことが多い。

しかし、まれに盲腸便秘(左)や盲腸重積に遭遇する。

盲腸重積の超音波画像(右)。

剖検図(右下;見たくない方はクリッ クしないでください)。

結腸に入り込んでいた盲腸を引っ張り出して切り開いたところ。盲腸尖部は既に変色し壊死している。P4280349_2

葉状条虫が多数寄生している。

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結腸捻転も超音波画像で診断できたとする報告もある。

しかし、たいへん難しいと感じている。

膨起(モコモコした膨らみ)が多い腹側結腸ではなく、膨起がない背側結腸が腹側にあれば180°の捻転があるというが、360°捻れていたらどうするの。

結腸壁が厚くなっていたら循環障害があるというが、たいていの場合、結腸壁と内容の境は明瞭ではないので結腸壁の厚さを正確には測れない。

そして、結腸捻転の早期、軽度の症例では、手術時に触ってみても、経験豊富な術者が指先でわずかに浮腫を感じたり、結腸動脈周囲にだけ膠様浸潤がある。

その程度の肥厚を超音波画像で判定するのは困難だろう。

超音波画像で結腸壁の厚さを測定してみて、正常だからといって結腸捻転の手術を先延ばしにしていては生存率が下がるかもしれない。

(腹底部へつづく)

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畜産研修センターは修繕して宿泊を受け入れることになった。P9150007

今日、とある大学の先生からも実習についての問い合わせをいただいた。

夏の学生実習の申し込みは北海道NOSAIへ。と返事して、

北海道NOSAIのHPを確認したら・・・・・・うちは実習受け入れ施設のリストに入ってなかった。

研修センターの利用が不確定だったのでこうなっているが、大丈夫。泊まれます。

申し込みは、北海道NOSAIを通してもらうか、直接受け入れることになるか。

近日中にこのブログにも書きます。