馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

Tie forward for DDSP

2009-08-31 | 呼吸器外科

P8310788_2 調教すると咳き込んで、ゲロゲロ喉鳴りして止まってしまう2歳馬。

内視鏡検査すると、喉頭蓋が薄く弱く見える。

軟口蓋も盛り上がって見える。

高速運動中に喉頭がどうなっているかはトレッドミル検査をしてみないとわからないのだが、症状と安静時の内視鏡所見がP8310789 一致すればDDSPだと判断していいだろう。

鼻を手で塞ぐと、軟口蓋はさらに盛り上がり、ついには軟口蓋が喉頭蓋の上に覆いかぶさる。

すると、ブルブルゲロゲロ音がする。

(写真はDDSPを起こす寸前)

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P8310791 Tie forward手術をした。

あわせて胸骨甲状筋付着部切断。

軟口蓋の焼烙も行った。

軟口蓋の焼烙はレーザーで。

麻酔覚醒後、また内視鏡で観ると、

喉頭蓋は強く反って、正常な形状になっている。

ヨッシ!

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民主党大勝。

若い人たちは選挙に行ったのだろうか?

大衆迎合、ばら撒きじゃなく、オレ達に借金ばかり残さないでくれ。とハッキリ言わないと、

この国は破産する。


「倒」着

2009-08-28 | 急性腹症

この夏は少ない。などと書いたものだから?結腸捻転馬の来院。

到着時、痛みで立てない。

頭と前肢に平打縄をかけてトラックから引っ張り出したら立ち上がった。

(疝痛で立てなくなった馬を立たすのは、結局トラックから引っ張り出すのが良いようだ。

トラックから引っ張り出してしまえば、たいていの馬は立ち上がるし、そこで麻酔をかけてしまうことも可能だろう。)

急いで倒馬室まで走って連れて行く。そこでまた昏倒、七転八倒。P5250603

血液検査で脱水の進行と乳酸アシドーシスを確認してすぐ開腹手術。

大結腸を引っ張り出して、骨盤曲を切開して内容を洗い出す。

(写真は別症例)

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ケンタッキーのHDM診療所では、結腸捻転馬の結腸を腹腔外へ出さずに、ガス抜きをして腹腔内で整復し、閉腹しているそうだ。

そうできるのはすごい技術ではあるのだが・・・

結腸は多かれ少なかれ虚血性損傷を起こしているので、内容を抜いて減圧してやることは、回復のために重要なのではないかと私は考えている。

開腹手術創が20cmでも40cmでも、それほど負担は変わらないだろう。

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このあたりでも新型インフルエンザが出ているそうだ。

熱が出たら、家でおとなしく寝ていましょう。

この秋から冬へは、大流行に備えておいた方が良さそうだ。

エスプライン(インフルエンザ検査キット)はまだあったな・・・(笑)。

Photo


子馬の疝痛

2009-08-27 | 急性腹症

この夏はとくに北海道は天候不順で、野菜も採れず不足しているようだ。

7月から8月上旬までの長雨は異常だった。

牧草の伸びも良くなかったのだろう。

こんなに繁殖雌馬の結腸捻転が少ないのは珍しいくらい。

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が、8月後半になって、けっこう疝痛の開腹手術がある。

当歳馬や1歳馬、休養馬の疝痛もある。

当歳馬の場合、診断も、手術適否の判断もとくに慎重になる。

胃潰瘍、ロタ腸炎、回虫症など、成馬にはない疝痛の原因があるからだし、

手術すると癒着しやすいということもある。

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P8210850 疝痛子馬の腹部超音波画像。

円形に膨満し、内腔には液状内容を含み、まったく蠕動できなくなってしまった小腸が観える。

内容の中に白い点(輝点)があるのは、あとで思えば回虫の虫体だったかもしれない・・・・

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P8210849 右腎臓横での十二指腸。

腸壁が水腫性に肥厚し、

内容は半固形物。

蠕動に乏しい。

完全には収縮できない・・後から思えば回虫だった。

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小腸閉塞では、胃カテーテルを挿入してみた方が良い。

胃拡張の判断もできるし、胃を減圧しておくことで開腹手術もしやすくなる。

とくに、子馬は小腸閉塞の率が高いし、胃潰瘍を起こしやすいので、胃カテーテルを入れてみるべきだ。

十二指腸が閉塞あるいは膨満しているときは、さらに必須だ。

                        -P7260004

今年は昆布干しも3日しかできていないそうだ。

天気が悪かったり、波が高かったりらしい。

難しいもんだ。


「肩」跛行でなく肘跛行

2009-08-25 | 整形外科

「肩」跛行の当歳馬。

ひどい跛行ではない。

良化傾向がないので、骨折や捻挫などの外傷性の障害とも思えない。

関節炎や滑液嚢炎などの感染性・細菌性の障害の所見もない。

肩関節のOCD(離断性骨軟骨症)だとしてもおそらく病変は軽度なので、大型x線撮影による良好なx線画像が必要だろうと判断して、全身麻酔して肩関節を撮影した。

が、肩関節には異常を認めない。

16 肘関節をAP(Anterior-Posterior ; 前後方向)で撮影して、橈骨近位内側に骨嚢包を見つけた。

肘関節にできる骨嚢包はたいていこの部位だ。

おそらく、体重は内側関節面、すなわちこの骨嚢包がある側にかかっている。

たいした大きさでなくてもそれなりに症状を示す。

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Dsc_0091

今日はいい天気だった。

短かった夏が名残惜しい・・・


DR in operating room

2009-08-24 | 関節鏡手術

Right2before 第三手根骨の剥離骨折。

これはデモしてもらったDRで撮ってもらった。

よく見ると掌側にも骨片が飛んでいる。

ふつうに背側の関節腔の骨片を摘出して・・・

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Right3after

掌外側へ針を刺してDRで撮影する。

問題なく、目指している骨片がある関節腔へ針をさせているようだ。

関節腔を膨らませておいて関節鏡を刺入したいが、もともと腕節の腫れがあるし、背側の関節には手術した孔があるので、あまり関節腔を膨満させられない。

でも、なんとか掌外側からも関節鏡を入れて骨片を確認し、摘出した。

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Right6after DRで確認の撮影をしてもらう。

手術室のパソコンモニターで画像が見られるのは便利。

画像が見られるまでの時間も速い。

イメージボードがコード付で手で持たなければいけないのはマイナス。

本体ほかの準備や置場所はやや面倒。

レポジトリーのx線撮影では強力な武器になるのだろうけど。

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P8260784 今日は良い天気だったが、ザアザアとにわか雨が降った。

おかげで綺麗な虹が見れた。

ロタ腸炎の子馬が入院している隔離厩舎と、

堆肥場を結んでいたって、

虹は虹だ!(笑)。

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食道梗塞の1歳、ロタ腸炎の当歳、肢軸異常のスクリュー抜き、当歳馬の耳の中の!化膿性肉芽摘出、雄成馬の疝痛。