馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

ダム、だむ、だむだむだ無駄

2006-09-29 | 日常

P9290030  どういうわけか、今週は腰痿のX線撮影が多い。今日だけでも3頭。

その予定に割り込んで牛の帝王切開。

きのうからの難産で双子で、気腫体になっていた。

午後は疝痛の馬が来たが、手術にはならなかった。

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P9240033 私の地域にあるとあるダムの展望台にある表示。

ダムのやくわりを書いてある。

「洪水から人々の命や生活を守ります。」

「いつも水の流れている気持ちの良い川にします。」

「ダムは硬いコンクリートでできています。」

「憩いの場。」 ダム湖を中心に町民の憩いの場となります。

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もと、そこにあった川は洪水になるような川ではなかったはずだ。

2年前の台風10号の豪雨で、訴訟問題になっているのはあの巨大な二風谷ダムより下流なのだ。

ダムを作って、いつも水の流れている気持ちの良い川にするというのはありえない。ダムって水をせきとめる物だよ。

ダムは硬いコンクリートでできています。これは、笑ってしまう。「やくわり」じゃないでしょ。

それとも、単に大量のコンクリートを消費するのが「やくわり」だったという告白だろうか?

「憩いの場」を作るなら、はるかに少ない税金で、本当に憩える場所を作る方法があるはずだ。

ダムのコンクリートは役場庁舎10杯分だそうだ。莫大な予算を使って何をしたんだ?

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日本にどれくらいの数のダムがあるかご存知でしょうか?

公共事業の見直しで、100以上のダムの計画が中止、見直しになっている。

ダムはいずれ土砂で埋まり、老朽化する。世界中にはダムの崩壊の事例もある。

「脱ダム宣言」した田中長野県知事は落選した。若いときとはいえ、「なんとなくクリスタル」のような小説を書いた者に知事が務まるか懸念していたが、長野県政に混乱と同時に、新しい風くらいは吹かせたのではないだろうか。

脱ダム宣言そのものは間違っていないと思う。

その長野の新しい知事は脱「脱ダム宣言」したそうだ。何をやってんだか・・・・・

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 私が獣医師になって往診に回っていた頃、往診先で小学生がおもちゃの釣り道具で釣ってきた魚を家の井戸に放そうとしていた。

見ると数匹のアメマスだった。

なんと豊かな地域かと感心したが、その川もこの20年河川改修を続け、今はコンクリートで固められてしまった。

「失くしたもの」はもどってこない。


初秋の診療

2006-09-28 | 日常

 きのうの朝、入厩寸前の育成馬の上腕骨骨折。乗ってる最中に異音がして動けなくなったそうだ。

サラブレッドとはそういう動物なのだ。速く走れるかわりに、自分の筋力や、わずかなねじれで上腕骨や骨盤を折ってしまうことがある。

 そのあと、1歳馬の飛節の離断性骨軟骨症の関節鏡手術。

 11時から、1歳馬の腰痿のX線撮影。

 午後は、雄馬の膀胱炎の診断。そのあと1歳馬の喉の内視鏡検査。

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 今日は、子馬の臍ヘルニアの手術。ゴムリングで治そうとしたが、痛がって駄目だったそうだ。

11時から腰痿の子馬のX線撮影。P9280020P9280013_1

午後は齰癖の矯正のための抜歯(右)。  

3時から2歳馬の去勢。

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 今週になって疝痛の開腹手術はない。研修に来ている先生に開腹手術を見せてあげたいのだが・・・・(笑)

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P9280022_1

 少しは暇になってきたようだ。

日暮れが早くなり、

そして、爽やかな季節は終わり、

たちまち寒くなるだろう。 

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P9280025  時間の余裕ができたら、やっておきたいことはいっぱいあるのだが・・・・・


獣医師講習会

2006-09-27 | 講習会

 きのうは獣医師むけの講習会だった。4つの演題で、それぞれ業者のプレゼンだった。

一つ目は、ニュージーランドの牛の初乳を粉末にした製剤のコマーシャル。

初乳はIgGをはじめ多くの免疫成分を含んでいる。しかし、それらの免疫成分のほとんどは、生まれて1日くらいしか吸収できない。それ以降になると消化してしまうからだ。

だから普通に考えれば生まれて1日以上経った馬に初乳を与えても効果は得られないのだが、吸収しなくても腸の粘膜をコーティングする効果はあるのではないかとか、免疫系を刺激して活性化させる働きがあるのではないかという考えはあるようだ。

いままでにも、類似の製品はあった。

しかし、あくまで薬ではなく、飼料添加物としての販売だ。

「効果があります」とは言ってはいけないことになっている。また、「効果があります」と言う根拠もないようだった。

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 二つ目の演題は海外での学会の馬の栄養に関する内容を紹介するもの。

これはスライドの誤字、脱字がひどかった。誤字脱字などというものではなく、読んでも意味がわからないほどなのだ。何十人もの聴衆を集めて話をするのに、自分が使うスライドを確認していないのか?

スライドと言っても、今はもう写真で作ったスライドではない。コンピューターで作ったプレゼンテーションなので、間違いに気づけば修正はいつでもできる。

研究者が集まる学会の講演要旨を、専門ではない者に紹介するには、その研究の背景や基礎知識を説明しないと理解してもらえない。

だれか、あの話を聞いて役に立った人がいたのだろうか?

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 3つ目はサーモグラフィーのコマーシャル。赤外線カメラで馬を見ると、温度が高い部分がわかる。P9270006

220万円だそうだ。10年前は1千万円以上したそうだ。「5-6年前でも500万円以上したし、今でも他社の同機能の製品はそのくらいします。」

あと10年待てば、50万円くらいになるだろうか?

以前、家庭用のヴィデオカメラに赤外線も感じるカメラがあった。しかし、服が透けて見えたり映ったりして、悪用される例があったので発売中止になった。

家庭用の汎用器になれば、技術的には値段は下げられるんじゃないだろうか・・・・・・

「あれば使う」かもしれないが、「無いと困る」わけではないのに200万円はね~

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 4つ目はデジタルのX線撮影装置。コードでパソコンとつながったプレートでX線撮影すると、現像することなくP9270007 パソコンで画像を見ることができる。

http://cweb.canon.jp/medical/x-ray/cxdi40ec/index.html

USAの馬獣医師のあいだでも、今、これと同様に往診先でX線画像を見ることができるシステムが注目を浴びている。

昨年のAAEPの展示でも、一番注目されていたようだった。

往診に回る先生達だけでなく、手術室で使っても、現像に行かなくても手術室のパソコンで画像を見られるので、透視装置のように使うことができる。

販売希望価格2千万円。

実勢価格7-800万円だそうだ。

しかし、馬の獣医師でx線撮影のカセットを蹴飛ばされたことがない人はいないだろう。

あのプレートは無償で修理してくれ・・・・・ないだろうな・・・・・・

 


停電

2006-09-25 | その他外科

P9040006 妙に暗い中で、ヘッドランプをつけて去勢。

実は、突然停電したのだ。

いつもはすぐに復旧するのだが、この日の停電は長かった。

いつか手術中に停電することがあるのではないかと恐れていた。

手術中に停電すると、灯りが消える。麻酔器が止まる。心電図他のモニターも消える。手術台が上げ下げできP9040009 なくなる。馬を吊り下げて運ぶホイストが動かせない。・・・・・

この日は、手術室をはさんだ反対側の覚醒室では、開腹手術をしなければいけない馬が、去勢手術が終わるのを待っていた。

停電は、なかなか復旧しなかった・・・・・・

何度か一瞬電気がついたが、すぐ切れてしまう・・・・・

 こんなときのために発電機を用意してある。

P9250004 全館の電気をまかなうわけにはいかないが、手術室の最低限の電力をまかなえるようになっている。

この発電機の電気で、去勢手術を終えた馬をホイストで吊り起こす用意をし、次の馬の開腹手術を始めた。

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 この日の停電は、まだ昼間だったので良かった。

夜中の手術中に停電したときのことを考えておかなければいけない。

非常灯は点くのだが、非常に暗くなる。その中で、冷静に迅速に対応しなければいけない。

 北電さん、停電しないように頼みますよ~


2006夏季実習生総括

2006-09-24 | How to 馬医者修行

 25日で最後の実習生が帰って、夏季臨床実習プログラムが終了する。P8050022

(といっても、これはNOSAI全国が音頭取りをしてやっていることで、個別に来る分にはいつでもかまわないのだけれど)

実習生の皆さんからの要望についていくつかコメントしておきたい。

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「宿泊費が高い!(学生素泊まり1660円、施設からすると確かに・・・・・)」

  畜産研修センターは町営なので、町へ施設の改修と料金値下げを要望します。

「実習期間、宿泊費、研修内容などの情報が欲しかった」

  北海道NOSAIから問われるままに受け入れ条件を連絡していますが、うまく伝わらないようです。連絡用のメールアドレスを公開するなど、何か方法を考えようと思います。

  実習に来る人も、先輩に聞くなり、問い合わせるなり、能動的に情報収集すべきでしょう。大学のプログラムではありません。

「学年にこだわらず3年生、4年生も受け入れて欲しい」

  3,4年生でもこちらは構いませんが、8,9月の2ヶ月間に30名以上の希望者がありました。全部受け入れるのは無理なので、優先順位をつけるとすれば、5年生以上優先になるのかなと思います。こちらの都合ではなく、本当に来たい人が来れるようにということで。

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 これから来ようかと考えている人のために、情報公開しておこう。

実習時季はいつでも構いません。混みあう8・9月より、4-7月をお勧めします。

とくに7月に来る人歓迎します!充実した過酷な実習になること保証します(笑)。

実習期間は、8・9月は2,3日だけの見学は基本的にお断りします。1週間以上、できれば2週間くらいは滞在して実習したい人を優先します。

2週間ずつ区切られているようですが、こちらはそれにこだわりません。2週間ごとに総とっかえされると、毎回何もかも説明するのはたいへんで・・・・

実習中の病気・怪我をカヴァーしてくれる保険に入っていることが望ましいと思います。こちらへ来てから入ることもできますが、掛け金と印鑑が必要です。煩雑なので、あらかじめ入ってくると良いと思います。

今のところ町畜産研修センターは食事なし、学生1泊1660円です。冬季は暖房費が割り増しになります(ほとんど暖房は効かず酷く寒いのに!)。先に書いたように、これは交渉します。

不便な所にあるので、できれば車、バイクで来るのが望ましいです。車があって、毎日のように温泉へ行っていたグループもあったようで・・・・・

持ち物は、長靴、聴診器、実習にふさわしい服装(白衣でも、スクラブウェアでも、ツナギでもかまいません)です。他は自分で考えてください。

実習前日に来ても、当日に来ても、終了日に帰っても、次の日に帰ってもかまいません。たぶん、泊まれます・・・・本当は、移動日は実習期間じゃないでしょう。

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 来る人の大半から電話やメールで問い合わせがあって、来る日時や迎えの連絡をして、実習の説明をして、記録を残して、報告を書いて。

 せっかく実習に来ているのだから充実した時間を過ごして、見られるものはできるだけ見て欲しいと思い、説明できることはしているつもりだが、こちらも忙しい。

 しかし、作業も診療もおおいに手伝ってもらって助かる。

そして、限られたメンバーで仕事をしているわれわれにとって、多くの若い人たちと交流できるのは喜びでもある。

最近の、獣医科大学の状況を聞けるのも面白い。

小動物の臨床をやっている講座の人から聞く小動物臨床の話も興味深く、たいへん勉強になった。

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 2006夏季臨床実習生の皆さん、お疲れ様。

           Thank you for coming !!

 皆さんが、獣医師になって活躍することを心より願う!!