goo blog サービス終了のお知らせ 

馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

公営競馬獣医師協会研修 1

2009-01-31 | How to 馬医者修行

P1230347 福島空港、濃霧のため仙台か羽田に降りるかもしれない。と脅されたが何とか大丈夫だった。

前日から頼まれた疝痛馬の開腹手術はキャンセルになった。

結腸左背方変位を疑っているとのことだったが、どうなったか・・・・・

 研修から帰って診療を始めた日には、結腸背方変位の手術が緊急で入った。

切り始めてから、縫い終わるまで38分。

その馬は今日退院していった。

環境が整っていれば開腹手術そのものはそれほどのオオゴトではない。

                         -

P1240350 今回の研修の内容のひとつはレーザー手術だった。

レーザーを手術に用いると、

電気メスほど熱による焼け焦げを作らず切開・凝固ができる。

内視鏡を通せば、喉頭切開せずに声帯切除ができるので、これもやってみた。

去勢手術にもレーザーを使ってもらったが、たぶん日本初のレーザーメスによる馬の去勢手術だろう。

                         -

P1260359

プロポフォールで倒馬しての去勢手術。

プロポフォール麻酔は私は初めて見せてもらった。

倒馬後に激しい遊泳運動をすることがあるのが問題だが、覚醒はたいへん良いそうだ。

去勢手術はHenderson式。電動ドリルを用いた捻転式去勢。

もう多くの人が取り入れているようだが、初めての方には観る価値があったのではないだろうか。

                         -

P1270361 去勢手術翌日の鼠径部の様子。

まあ、こんなものでしょ。

私は正中をできるだけ小さく切開して、1ヶ所の傷から左右を去勢している。

その方が、傷は問題なく早く治ると考えている。

                         -

今回の研修中には、通常の去勢以外に、陰睾だと聞いていた馬を2頭去勢した。

残念ながら、2頭とも鼠径部陰睾だったようで、手術台で仰向けにした時には精巣をつかむことができた。

しかし、鼠径部陰睾の馬も精索を十分な長さ捻ることができない可能性があるので、Henderson式去勢は望ましくないかもしれない。

で、2頭の馬は去勢鉗子を用いて去勢した。

(つづく)


手術は料理に似ている

2009-01-22 | How to 馬医者修行

手術は料理に似ている。

何を作るか決断が必要。

決断のためには知識と経験とアイデアが必要。

下準備が重要。

やると決めたら、正しい技術で手早くやる。

しかし手抜きすると失敗するし、良い仕上がりにならない。

後片付けと反省が上達のために重要。

そして、もっとも大事なのは・・・・・愛。かな?(笑)

                        -

今日は橈骨遠位の骨軟骨腫 Osteochondroma かと思ったら、腕節腱鞘 carpal sheath の中からは突起は観察できず、外骨症 exostosis のようだった。

結局、外から切開して骨棘を摘出した。

午後は1歳馬の飛節の離断性骨軟骨症 OCD の関節鏡手術。

やれやれ、明日からの出張までの手術はこれで終了。

                        -

那須で会いましょう!

ブログ更新はしばらくお休みです。

(明朝は5時起きだ!)

Csc_0068


あの人ほどは・・・・ない

2009-01-22 | 日常

 休みをつぶして調べものをするのも今日で4日目。昨年末から続けてきた調査も、やっと結果を出すところまで来た。

データさえ整理してしまえば、抄録を書くのは簡単。自分が言いたいことはわかっている。

結局、正月以来休みはなくなったが、ひと仕事終えた気分ですっきりした。って、まだスライドを作らなければいけないんだけど(笑)。

それは、公獣協研修から帰ってからだ。

きのうはレポジトリーについて地元の牧場の方を対象に話をさせてもらった。

あさってからは公営競馬獣医師協会の実技研修に行く。

那須でも手術の予定が何頭も入っているようだ。

手術を見てもらうだけでは実技研修にならないので、合間に実習をやりましょ・・・・

できるのか?(笑)

                        -

 2月の予定を立てなければいけないが、

会議と研修と出張が一杯。

今シーズンは、スキーに行ける休みは取れないか・・・・・・

でも、「忙しい」って言うのは止めたんだ。

私よりはるかに忙しく、身を削るように、しかし優しく柔らかく生きている人のことを知ったから。

Dsc_0062


官僚主義

2009-01-20 | 日常

官僚主義について考えている。

(別に公務員や事務職の方を悪く言うつもりはないので悪しからず)

国も、地方自治体も、NPOも、民間企業でさえも、組織が大きくなると運営のための決まりごとと、書類による伝達・確認が必要になる。

組織運営を専門とする役職も必要となり、規則と書類と役職によって運営されるのが官僚制だろう。

大きい組織にとっては必要なことで、うまく運営されれば効率的ではあるのかもしれない。

システムとしての呼び名が官僚制だ。

                         -

官僚主義は、官僚制に伴う弊害を言う。

Wikipediaによれば、官僚制の弊害とは、

  • 規則万能(例:規則に無いから出来ないという杓子定規の対応)
  • 責任回避・自己保身
  • 秘密主義
  • 画一的傾向
  • 権威主義的傾向(例:役所窓口などでの冷淡で横柄な対応)
  • 繁文縟礼(はんぶんじょくれい)(例:膨大な処理済文書の保管を専門とする部署が存在すること)
  • セクショナリズム(例:縦割り政治や専門外の業務を避けようとするなどの閉鎖的傾向)

だそうだ。

それぞれしっかり思い当たる。

官僚制を官僚主義に陥らせないためには、民主主義による統制を働かせることだそうだ。

しかし、その前に、

官僚制の弊害である官僚主義が何かを知って、

それに陥らないように自らを戒めることが大切なんぢゃないのか!

                           -

今日は三石軽種馬振興会に招かれて、セリのレポジトリー、喉の内視鏡検査とx線検査の話をしに行った。

否応なく、海外にならってレポジトリーという形で上場馬の情報開示をするようになっていくのだろう。

買う側にも売る側にも、正しく有効に利用されるよう啓蒙・普及活動にも力をいれてもらいたいものだ。

そして、セリの規定とその運用を不備のないものにすることが必要だろう。

                           -

「海外にならって」という面があるのだから、レポジトリーの所見の評価と整理も海外標準を使ったほうが良いだろう。

例えば、喉頭片麻痺のグレード分けは、

1;左右披裂軟骨の動きが同調している。

2;左右は完全には同調していないが、左も完全な外転が可能。

3;左は開くが、完全な外転はしない(不全麻痺)。

4;左はまったく開かない(完全麻痺)。

が、世界標準だと思うのだが・・・・

Csc_0063


質問に答えること

2009-01-19 | How to 馬医者修行

 学生のとき、大学の家畜病院で診療の手伝いと言うか実習をしていて、病院の先生に質問したら、「この頃の学生はすぐに質問するけど自分で調べようとはしない」と叱られた。

 後に、USAの大学病院で実習を受けたら

「質問することが大切です。なんでも質問しなさい。」と言われた。

 USAで獣医学教育を受けた通訳の方も、

「こちらでは大学の先生は、そんなことは自分で調べろ。なんて言ってはいけないんです。

なんでも聞いてください。」

と教えてくれた。

                       -

 ある医学系の本に書かれていたことだが、

今まで質問を送ったら、忙しいと思われる著名な先生ほどすぐに返事をくれる傾向があったそうだ。

とある先生に、多忙の中でどうして無理をして返事をくれたのか話す機会があったそうで、

その先生は「あまりに忙しくて、連絡をもらったらすぐに対応しないと忘れてしまうから」とおっしゃっていたそうだ。

そのことを聞いてから、その本を書いた先生もできるだけすぐに返信を送るようにしている、と書かれていた。

私も見習いたいものだと思っている。

                       -

こんな言葉もある。

 ----人は教えることによって、もっともよく学ぶ-----セネカ(哲学者)

                       -

朝は先月喉の手術をした馬の調教師さん、馬主さん、厩務員さんが挨拶に来てくれた。

その後、術創ヘルニアの整復手術。2007年にAAEPで発表された方法。

午後は競走馬のTieback&Ventriculocordecomy。

                       -

Dsc_0049 気管チューブ。

新生仔馬から繁殖雌馬まで来るので、

細いのから太いのまでそろっている。

気管に入れて、空気が漏れないように膨らませるカフと呼ばれるものが付いているのだが、

けっこう破れてしまう。

それで予備も必要になる。

必要とされるものを、ズラリとそろえていること。

それがプロじゃないか。