馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

AOVET Course - Advances in Equine Fracture Management 2日目午前

2015-03-30 | 整形外科

橈骨と脛骨骨折の治療 by Dr.Ruggles

私は子馬の橈骨骨折をダブルプレート固定で治したことがあるし脛骨骨折をブロードLCPで治したこともある

が、これからもいつもうまくいくという自信も確信もない。

脛骨の近位成長板損傷はTプレートを使って子馬でも子牛でも治してきたが、Dr.Ricahrdsonには、

「Tプレートなんか捨てろ!」

と言われた;笑

では、Dr.Rugglesはどうしているのか。

とても興味深い。

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上腕骨と大腿骨の治療 by Nixon

つい20年ほど前の成書には上腕骨骨折や大腿骨骨折は内固定手術をするのが良いかどうかわからない、というようなことが書かれていた。

しかし、今やきちんと術前評価し、手術計画を立て、それを実行できるようになっている。

とんでもなく筋層が深いのだが・・・・・

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予定にあった「インターロッキングネイルによる髄内固定の使用」はあまりに先進的だということで省略。

代わりに、

難しい内固定を易しくする方法(CTによる”ごまかしcheating”) by Dr.Richardson

CTは複雑な骨折”面”を3次元で把握できる。

そのことで、内固定手術の術前評価、手術計画、術中評価が容易になる。

ポータブルCTがあればとくに。

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コーヒーブレイクの後、

第三中手骨が3つに割れた骨折のプレート固定実習

(ドリルしているのは私の香港での相棒、インドのDr.、指導しているのはDr.Auer)

まずlag法で3.5mm皮質骨スクリューを入れて3つの骨体を1本に仮止めする。

それからLCPで固定する。

LCPはまずpushing and pulling deviceと呼ばれるLCPを骨に押し付けることができる器具を使って骨に押し付けてからLHSを挿入していく。

まあ、最初の2本は皮質骨スクリューを使って骨に押し付けてもいいのだけれど。

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この日は香港城市大学構内の中華レストランで昼食。

香港城市大学 City University of Hong-Kong はCornell University の協力を得て獣医学部を創ろうとしている。

さまざまな問題があって(中国政府の許可が下りないetc.;学生達がデモしたことへの嫌がらせ?)学部教育創設は遅れていて、まずは大学院からスタートするのだそうだ。

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私は香港へ行くと頭の上がいつも気になる。

ビル工事の足場は竹。

ビルの壁にバラバラにつけられたエアコンの室外機。そして勝手に付けられたひさしやベランダや棚?

壁が剝がれた痕もある。

リスクがあっても前へ進むことで発展する。保証はない。う~ん、外科の世界だな;笑。

  

                 

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香港で学んだことを生かす機会がいつあるのだろうかと、私でさえ思っていた。

今日、1ヶ月齢の子馬「上腕骨骨折」だとの連絡。

開腹手術を始めるところだったので、4時間後に来院してもらうことにする。

1歳馬の回盲部重積の開腹手術を終わって、子馬の肢軸異常の成長板阻害のスクリュー抜きを終えて、

上腕骨へのアプローチを本で調べ、香港のテキストをプリントアウトして読む・・・・・

ところが来院したら橈骨骨折だ!

もっと長いプレートが要る!あわてて滅菌物を追加する。

さてどうなりますやら・・・・

 

 

 

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香港AO advances in equine fracture management 1日目午後

2015-03-30 | 整形外科

1日目の昼食は廊下で中華のカフェテリア方式のバイキング。

午後は、

腕節の関節内骨折での関節鏡の使用 by Dr.Nixon。

Nixon先生はあのEquine Fracture repairの著者だ。

Equine Fracture Repair, 1e
Alan J. Nixon BVSc MS Diplomate ACVS
Saunders

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基節骨の多片骨折の診断と治療 by Dr.Richardson。

Dr.Richardsonは講義が上手。テンション高く、笑いを取りながら、しかし要点は強調しつつ、そして紹介する症例もまたすごい。

基節骨とは第一指骨・趾骨。

粉砕骨折であっても、球節と指節間関節をつなぐ骨片さえあればスクリュー固定できる。

ただし、関節面を見ながらギャップなく固定するために球節を脱臼させるので、競走馬復帰は無理で生存させるための手術になる。

優駿の門アスミ6に登場したhik先生はぎりぎり競走馬復帰をめざす名医なわけだ;笑

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LCPの適応 by Dr.Auer。

Auer先生はLCPの開発過程のプレートについても説明し、どうしてLCPが今の形状に完成されたかも解説した。

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つづいて、長骨骨折の整復について by Dr.Auer。

長骨が折れると筋肉の収縮により骨は騎乗変位し骨折端同士を合わせる整復が難しくなる。

Auer先生は器具を使った整復方法も紹介していた。

私が昨年Dr.Richardsonに以前に質問したときには、「できるだけ大きな骨鉗子を使う。それしかない。」という返事だった。

私は大腿骨骨折や上腕骨骨折で安楽殺された馬が運ばれてくるとなんとか整復してみようとやってみるのだが、

騎乗変位してしまったこれらの骨は、その肢だけで馬をぶら下げても騎乗変位を直せなかったりする。

整復は大きな課題なのだ。

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第一指骨が複数の骨片に割れた骨折のスクリュー固定の実習。

なかなか難しい。

骨片に4.5mmグラインドホールを先に開け、そこに3.2mmドリルガイドを挿入して、それをハンドルに関節面にずれがないように整復して仮止めする。

Nixon先生によると、先に向こうに突き抜けるまで3.2mmドリリングしておいて、骨折線までの手前部分を4.5mmする逆順も”あり”のようだった。

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第三中手・足骨骨折の治療 by Dr.Nixon。

いくつかのタイプの管骨骨折の治療法について。

背側皮質の疲労骨折も含まれていた。

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肢軸矯正のための骨切り術 by Dr.Auer。

くさび、ドーム、ステップ、ステップその2、の四つの方法がある。

あとでDr.RichardsonとDr.Rugglesに、

「肢軸矯正のための骨切り術をやることがありますか?」と聞いたら、

「ほとんどない。災難のようなものだ。」という返事だった。

Dr.Auerに、「競走馬としての予後はどうですか?」と聞いたら、

「難しい。ひどい肢軸異常では別な問題が起こってしまっているから。」という返事だった。

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夜は洋食レストランで食事。

お腹も頭もいっぱいいっぱい。

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分娩後の疝痛症例が続いている。

分娩3日目の結腸右背側変位に、

分娩直後からの結腸捻転に、

分娩5日目の空腸壊死に

分娩9日目の結腸捻転・・・

子馬がお母さんを失わないようにがんばらねばならない。

感傷だけではなく、100万ちかくかかる乳母馬代あるいはミルク代という現実的経済問題でもある。

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サッカーのハーフタイムに入院馬をチェックに行って、後半戦が終わる前に別な疝痛馬の依頼が来て、

腸管吻合手術が終わって、へばっている馬もなんとか立って、午前3時に寝たと思ったら6時過ぎに起こされて、

入院馬の治療と手術の準備をあわててやっているうちに疝痛馬が来院し、そのまま開腹手術して・・・

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「香港って大阪だよね」ってニュアンスわかるだろうか?

韓国人のおばちゃんは大阪のおばちゃんと共通点があるとも思う;笑

 

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AOVET Course - Advances in Equine Fracture Management 1日目午前

2015-03-29 | 講習会

実際のコースはAuer先生のLC-DCP(DCPを改良したチタン製プレート)、DHS/DCS(Dynamic Hip Screw/Dynamic Condylar Screw)の講義で始まった。

しかし、LCP(Locking Compression Plate)が開発された今となってはLC-DCPを使う理由はほとんどない。

LC-DCPの利点はLCPにも生かされているからだ。

そして、DCSはとても複雑で、高価で、かつ骨にあまりに大きな穴を開けるシステムだ。

もともと人の大腿骨骨頭骨折用に開発されたもので、骨端部の骨折を強固に固定することができるが、世界的にも馬の骨折治療に普及しているとは言い難い。

Auer先生も、高価な器具は業者から借りることもできる。と言っていたが、たいていの骨折は緊急手術だ。

必要になってから借りる手配をしていたのでは使えない。

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今回の実習でもっとも時間をかけたのは成馬の橈骨斜骨折あるいは3piece骨折を5.5LCPとDCSで固定する方法だったが、

Dr.Richadsonに「DCSを使いますか?」と聞いたら、「まず使うことはない。LCP2枚での固定を選択する。」という返事だった。

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そのあと、とくにどこというわけではないプラスチック模擬骨での内固定の実技練習

私はインド人の参加者をbaddie(相棒)としてpractical exercise することになった。

私たちコンビは模擬骨を落として粉砕骨折にしてしまった。baddieがその骨片も押さえ込むことにこだわったので”内”固定はあまりうまく行かず時間切れ。

baddieの英語は私より格段上だ。インドは公用語は英語だ。が、くせが強くて私には聴き取りにくい。

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cofee breakのあとケンタッキーRoode and RiddleのDr.Rugglesの講義2つ。

Treatment principles of long bone fractures 長骨骨折の治療原則

Ruggles先生の講義は症例集のようなもので、その中で重要なポイントが箇条書きにされていてわかりやすい。

ただし、症例があまりに豊富で、次々に出てくるので理解が追いつかない。

もっとゆっくりと体重や年齢などの付随情報を提示して欲しかった。

それはこちらの英語力のせいもあり、Ruggles先生も早口で聴き取りにくい。

プレートはテンションサイド(引張られる側)に置く、とか、斜骨折では骨端を押さえるようにプレートを置きたい、とか、基本原則を聞いたのはたしかこの講義だった。

知ってはいるけどそれがいろいろな条件では難しいのが骨折手術なんだけど。

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もうひとつは、Diagnosis and treatment of complicated ulna fractures 難しい尺骨骨折の診断と治療

尺骨はプレート固定をもっとも使いやすい骨折なのだが、それもいろいろな条件で難しくなる。

尺骨頭部はプレートだけでは固定できないことがある。

粉砕骨折だったらどうするか?

子馬の尺骨骨折はスクリューを橈骨まで届かせると、尺骨が成長できなくなって関節面がずれてしまう。

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で、そのあとはまたプラスチック骨での尺骨骨折の実技練習

私は整形外科用のドリルの使用に不慣れだった。骨を固定する器具の使い方を知らなかった。プラスチック骨は”骨折面”が滑りやすいので骨整復鉗子でしっかり固定しようとするとかえって滑ってズレてしまう。

そんなこんなで、この実習方法そのものに慣れていないと難しい面があった。

そして、プラスチック模擬骨はとてもよくできているのだが、実際の手術では筋肉や皮膚をかぶっているのでプラスチック骨での練習のようにはいかない。

Dr.Richardsonを日高に呼んだときにやったように死体肢でやるほうが本格的な練習になる面もある。

この尺骨骨折のプレート固定の練習の出来上がりをAuer先生が採点して3チームに景品進呈。

AOのコースでは参加者2人に1台は練習台を用意して実技練習することが決められているのだそうだ。

また、期間中の昼食・夕食はすべて参加費に含まれていなければならないというのも決めごとなのだそうだ。

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ここで、昼食。

講義室の前にカフェテリア方式で食べ物が並べられて、各自立ったまま食べたり、講義室に戻って食べたり。

あまりに盛りだくさんなので

(つづく)

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夜中、難産で起こされる。

両前肢腕節屈曲、後肢も産道に入って来ているということで、すぐに帝王切開の決断をした。

子宮を切開して引っ張り出した胎仔。

腕節拘縮、脊椎側湾、後肢は飛節と球節で内反。

おそらくこれに近い格好で子宮に入っていたのだろう。

奇形によるひどい難産だったわけだ。

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Rogz (ログズ)・ファンシードレス・アームドレスポンス・犬用首輪 - XLサイズ Red Heart (並行輸入品)
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 相棒に首輪を注文したら配送予定よりずっと速く届いた。

南アフリカ製で、ハンガリーから届いたらしい。

これで2千円足らず。送料無料。

質感も上々だ。

消費者にとっては良い時代かもしれないが、業者にとってはとてつもないものと競争しなければならない。

それが良いことなんだろうか・・・・・?

オラ、首輪なしでもいいゾ

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香港から戻って

2015-03-29 | 急性腹症

27日、香港でのAO advance courseが終わって、深夜に香港を発った。

その晩、泊まらなければホテル代も1泊浮く。

0:55発の4時間ほどのフライトでも国際線は機内食が出るんだね~

いったい何食なんだ?夕食?夜食?朝食?

食べないで寝ていても良いんだけど、空腹と貧乏性でそうもいかない;笑。

韓国ソウル仁川国際空港に5時過ぎに着き、5時間ほどフライト待ち。

千歳-香港は直行便もあるし、乗り継ぐにしても羽田でもセントレアでも関空でもよかったのが、大韓航空ソウル乗り継ぎのチケットが一番安かった。

袋入りナッツが出たときは笑ってしまいそうだったけど。

10:05発で2時間ほどのソウルー札幌便でも機内食が出た。

せわしなくて寝ていられなくて、映画を観ながら気を失いそうだった。

 ソウル仁川国際空港の夜明け。

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夕方、家について荷物の片づけをして、7時には布団に入って11時間寝た。

朝起きたら、携帯が開いたままで、i-modeでネットにつながったまま枕元に落ちていた。

私は寝落ちすることはめったにないのだが・・・笑。

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今日は、職場の机の上に溜まったカルテに目を通し、書類に(めくら)判を押し、封書を開けて処理し、e-mailをどんどんゴミ箱へ送り、

症例相談に片っ端から回答し、連絡が必要な案件には電話とe-mailで対応した。

午前中に外傷後の肉芽切除の手術を手伝い、午後は分娩後の疝痛馬の診察をし、つづいて来た分娩後の疝痛は開腹手術した。

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この1週間、骨折した馬をどうしたら助けられるようになるかばかり考えていた。

その一方で、開腹手術をどんどんこなして馬を助けたいとも思っていた。

骨折であろうと開腹手術であろうと、助かる命は同じ。

少なくとも今はボッキリ骨折より開腹手術の方が馬を助けられる率が高い。

しかし、かつては馬の腸捻転が助かるとは思われていなかった。

私自身も、「成馬は結腸捻転が多くて、結腸が傷んでしまっていると切り取るわけにもいかないし、ダメなんですよね」と説明していた。

それが今ではひどい状態だったり、特別な併発症がなければなんとかなる時代になっている。

致命的な骨折も、助けるための技術、器具器材が進歩し、子馬でも成馬でも可能性はひろがっている。

それを学んできたのだが、その内容については少しずつ、また今度。

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私は今年になって降圧剤を飲み始めた。

そんな状況でほとんど寝ないで香港から戻ったので、血圧が上がっているだろうと1週間ぶりに、夕べと今朝と血圧を測った・・・・

正常範囲内!

(WNLと書きます。within normal limit の意味で英文カルテによく使われます。覚えておいてね獣医科学生さん達)

研修で刺激を受けて興奮していようが、前の晩寝て居なかろうが、この1週間中華をたべて毎晩飲んでいようが、

仕事を離れているというのがどれだけ健康に良いか、思い知ったのでした;笑

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生まれて3日目。

具合が悪くて開腹手術になったかあちゃんを待つ子馬。

大丈夫。かあちゃんの手術は成功したゾ。

でもこのおかあさん、子馬を産んでしばらくは馬房へ入ってくる人を襲う。

愛情豊かなおかあさんなのだそうだ・・・・・笑

 

 

 

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Newmarket Equine Hospitalでの馬関節鏡course

2015-03-21 | 関節鏡手術

これはヨーロッパでの関節鏡手術の研修会の案内。

Basic 基礎と、Advanced 上級に分かれていて、

Basicは関節鏡手術に不可欠な技術を教え、腕節、球節、飛節の診断と処置に焦点を当てる。

Advancedは包括的な上級者コースであり、充分な経験を持っている馬外科医に適している。

指導者の先生は、あのWayne McIlwraith先生をはじめ著名な先生ばかり。

主催はNewmarket Equine Hospitalだ。

後援はKARL STORZ。

Advancedの参加費は2日間で2,160イギリスポンドだから・・・・・・・ひゃ~!40万円弱。

どうして馬病院がこういう講習会まで企画運営するのかわからないが社会貢献であり、経費は見合うものであり、実施することで業界内でのリーダーシップを発揮できるのだろう。

STORZにとっては新進馬外科医たちに自分達の器具器械をアピールできる良い機会なのだろう。

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私たちの関節鏡手術頭数も先日3,000頭を越えた。

私はカリフォルニア州立大デーヴィスで夜に死体置き場から肢を引張り出してきて、アルゼンチンから来ていたレジデントと関節鏡手術を練習した。

時代の進歩というものなのかもしれない。

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 1月から続いているこの春の実習生達の第・・・・何グループかが、帰っていった。

気管挿管や、尿カテーテル留置や、術野消毒や、その他いろいろに活躍してくれた。

何か得るところがあっただろうか?

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