現在のヒト整形外科でどのような手技が行われているか、知るためには良い本だ。
その第一章、診断スキル。
病歴聴取に始まって、脊椎、肩、肘・前腕、手、股関節、膝関節、下腿・足、神経学的所見、
と部位ごとに解説されている。
その最期が、「救急外傷の診察の進め方」となっていて、実践的で面白い。
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まず、患者到着までの準備。
その最初が・・・・
「自分は外傷医であると心がまえする」
・自分の力量、病院の規模や施設、緊急手術対応可能か判断する。
・手順をふんだ診療を心がけ、早期に高次病院へ転送する。
となっている。
これは面白い。
笑っちゃいけないんだろうけど。
そして、現実だし、大事なことだ。
急患来ます!とか、重傷来ます!!とか言われたときに、
まず落ちついて、頭の中で整理して、そして判断すること。
うん、だいじ。
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②は「あらかじめ患者を迎える準備をする」
・standard precaution まず自分の身を守る
・外傷患者は血液や体液が付着している。自分が感染しないように十分注意する。
・忘れないように頭から揃える。帽子、ゴーグル、マスク、ガウン、グローブ、ブーツ。
・救急カート。加温した輸液(リンゲル液・生食)、酸素、マスク、モニターにエコーの準備、X線の手配もしておく。
これは自分と同種の動物を治療するヒト医師には特に重要。
HIV(ヒト後天性免疫不全症候群)や肝炎はもちろんだが、
インフルやコロナもある。
とりあえず、大動物臨床獣医師は人獣共通感染症を特別には警戒していないかも。
ただ、注意は必要だ。
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そして、大動物獣医師は、診療中に怪我をしないように注意が必要。
私もかつて「家畜診療」誌に、大動物臨床獣医師のための馬の取り扱いについて文章を書いた。
その中で、
まず自分の安全を守ること、を優先するよう述べた。
身勝手ではなく、自分の安全を守れないと、馬の治療も周りに居る人の保障もできないのだ。
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私の最後の夜間一番当番の朝に来たひどい外傷。
そのあと疝痛の依頼もあった。
予定の手術は延期してもらった。
先に疝痛が来院し、診察して入院厩舎で様子を観てもらうことにした。
そして、外傷の洗浄、デブリド、縫合。
3人がかり。
それから、入院厩舎の疝痛馬を開腹。
空腸捻転で切除・吻合することになった。
私は、自分に「外傷医」であると言い聞かすことはない。