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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

当歳馬の尺骨骨折のDCP固定

2018-08-27 | 整形外科

当歳馬が尺骨骨折した。

骨折線が開いていないので様子を観ていたが、2回目のX線撮影をしたら開いてきた。

診療の予定がつまっているので、夕方に手術することにして来院してもらった。

発症して1週間になるというのに、子馬は左前肢をまったく着けない。前に出せない。

橈骨神経麻痺もあるのか?と疑ったが、手術してみないとわからない。

                -

一番近位に皮質骨スクリューを入れて、

完全には締めないでロードポジションにしておいて、

遠位から3番目のスクリューもロードポジションで入れた。

2本のスクリューを締めたら、骨折線はほとんど完全によった。

当歳馬の尺骨骨折では、強くコンプレッションをかけないほうが良いと経験から知っている。

内固定しているあいだに尺骨が成長できなくて、尺骨と橈骨でできた肘関節面がずれる。

骨折線の両側の残りのscrew holes に皮質骨スクリューを入れた。

遠位のスクリューは尺骨の対側皮質にも効かせるが、橈骨には刺さない。

7ヶ月齢未満の馬で尺骨と橈骨を固定してしまうと、肘関節にずれが生じる、とAOのHPにも書かれている。

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近位から3番目と4番目のholes にはわざと斜めに骨折線を貫くように入れた。

lag screwにはしなかった。

が、対側皮質にも効いているので、骨折線をしっかり固定してくれるだろう。

角度を変えてX線撮影し、近位の2本のスクリューが肘関節に到っていないことを確認した。

尺骨骨折内固定でやりがちな失敗なのだ。

私はやったことはないよ;笑

他人がやった失敗を術後のXrayで見たことがあるだけ。

頭-尾方向でも撮影して、スクリューが尺骨からはみ出していないことも確認した。

尺骨骨折内固定でやりがちな失敗なのだ。

私はやったことはないよ;笑

成書に注意が書かれているし、尺骨骨折内固定にLCPを使いにくい理由になっている。

                -

麻酔覚醒起立後、子馬はかなり左前肢を負重できるようになっていた。

痛みが取れたのだ。

自力で肢を前へ出すこともできる。

神経麻痺はなさそうだ。

来院時は、腕節の伸展を保つためのスプリントを着けて来たのだが、肢を使いにくかったのだろう。

立っている時間が長い成馬だと、橈骨神経麻痺や尺骨骨折で腕節の伸展を保ってやることは意味があるかもしれない。

しかし、子馬は寝ている時間が長いし、筋力がないので、尺骨骨折で肘から遠位の伸展をスプリントやキャストで保つ意味は少ないと思う。

おかしな倒れ方をしたら、橈骨や上腕骨を骨折する危険もある。

                 -

尺骨骨折のプレートは、6-8週間で抜去する。

それも肘関節面のずれを最小限にとどめるためだ。

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厳寒期や雨宿りのときに、玄関フードに入れてやっていた。

でも、夏は温室状態になってしまうので、家を設計するとき、北側に裏玄関を作って裏玄関フードをつけることにした。

基礎もちゃんとした方が良いです、と言われ、

断熱しないと結露します、ということで、

高さがあるのでウッドデッキも付いて、

で、考えたら7-80万かけたイヌ小屋ができたのでした;泣笑

 

 

 

 


狙い定めて 大腿骨内顆SCL

2018-08-23 | 整形外科

午後は、1歳馬の大腿骨内顆のSCLだった。

歩様検査したら”硬い”。

患肢を内側にして旋回させると、短縮するステップがある。

透視装置がうまく使えない。

DRで撮りながらドリリングする位置と方向を決める。

2.5mmドリルであけてみるが・・・・・よろしくない。

今度はどうだ。

どんぴしゃ??

シストを貫通し、スクリュー先を海綿骨にかませて、しかし関節面に貫かないように、というのはとても難しい。

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1日の診療は、午前と午後に1本ずつスクリューを入れただけだ;笑

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こどもが遊んだ跡、のような作品。

 

 

 


狙い定めて 第一趾骨近位関節面のSCL

2018-08-23 | 整形外科

3ヶ月も後肢の跛行が続いている1歳馬。

球節のFlex testが陽性なので、球節をXrayしたら第一趾骨近位関節面内側にSCLが見つかった。

Subchondral Cystic Lesion

(内側皮質に骨膜反応があることも確認しておきたい。DJD変形性関節症が始まっているのか、SCLへの特異的なコツ反応なのかわからない。)

周囲は硬化像があるが、シストは鮮明ではない。

時間が経っているせいかもしれない。

しかし、症状は治まってきてはおらず、「今朝は一番痛い」とのこと。

外内方向ではシストはほとんど描出できない。

DRでの画像で、わずかにここだ、と思われる箇所が推察できるだけ。

透視装置ではまったく見えない。

よくできる部位より底側にある。

この部位のSCLには背側からスクリューを入れるしかないので、遠いし、関節面の陥凹を避けなければならない。

針で狙いを定めておいて、透視装置で外内方向を観ながらまず2.5mmドリルで穿孔する。

Kwireに刺し替えてX線撮影する。

ダメだ、もっと内側へ入れないと。

今度は良いか?

外内方向でもOKか?

どうだ?

カウンターシンクして、デプスゲージで深さを測って、タップを切らずに、セルフタップスクリューを入れた。

スクリューヘッドが背側皮質に当たっていることを斜め像で確認する。

器具を素早く渡してくれる助手、適切な角度でX線撮影してくれる”不潔”助手。

---滅菌されていない、という意味です;笑---

のおかげでうまく行ったように思う。

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これは狙いさだめて突き刺してない;笑

 

 

 


サラブレッドが変なんだよ

2018-08-19 | 動物行動・心理学

セリが近くなって診療はすこし余裕が出てきた。

土曜日は、非サラブレッドの跛行診断4頭。

鎮静剤も投与せず、鼻捻子もとらず、後肢のX線撮影をすることができた。

飼い主さん、自分で削蹄。

実習生に馬の肢を挙げさせるのも、心配せずに済む。

本来、馬は牛以上に人になつき、人の指示に従う動物だ。

人を背に乗せたり、人と一緒に田畑を耕したり、山へ入って木材を引張り降ろす家畜として改良されてきた。

サラブレッドが特殊で、速く走ることだけを基準に選抜されてきた。

日本に居る馬は8万頭足らず。

そのほとんどがサラブレッドだ。

多くの外国ではそんなことはない。

サラブレッドが特殊な馬なのだ。

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う~んリアル。

どうしてこのおばさんなんだろうね。

そして、どうしてこの表情なんだろう?

けっして機嫌よさそうには見えない。

どうしてこのでかさなんだ??

何なんだ!?

 


バナミンペーストの功罪

2018-08-19 | 急性腹症

金曜日、2日続きのTieback&cordectomy。

昼、外傷縫合。

午後、2歳競走馬の腕節骨折の関節鏡手術。

夕方、繁殖雌馬の疝痛の来院。

あちこちぶつけ、ひどい顔をして馬運車から降りてきた。

PCV58%、乳酸値4.0mmol/l。

鎮静剤投与しても寝そうになる。

「ダメかもしれないけど手術してみますか?」

と訊くと、オーナーにもう一度確認を・・・と言ってる間に、右前腕節が腫れて、曲がってきた。

馬運車から降りて歩いてくるときも、跛行しているのは気になっていた。

「ダメだね。あきらめましょう。」

                -

剖検したら、結腸捻転で、大結腸は完全壊死。

腕節は手根骨が粉砕骨折していた。

肝臓は右葉がとくに小さくて、大腸による長年の圧迫を物語っていた。

いつか結腸捻転で死ぬ運命の馬だったのだろう。

                -

朝、8時に疝痛が始まって、バナミン(フルニキシン)ペーストを与えたらすっかり疝痛は落ちついたのだそうだ。

昼にまた疝痛が始まって、来院したのが4時。

午前中に来院していれば手遅れになることなく助かっただろう。

激痛で転がりまわる中で手根骨を粉砕骨折することもなかっただろう。

再発防止のcolopexyがうまく行けば、結腸捻転で死なずに寿命を全うできたかもしれない。

                -

馬の疝痛にフルニキシンは特異的に効く。

しかし、気軽にバナミンペーストをフルドーズ(最大用量)与えていると、変位疝の診断が遅れることにつながる。

獣医師が注射でフルニキシン製剤を投与するときも、「半量にすべきだ」と述べている海外の先生も居た。

そして、獣医師なら、超音波検査と直腸検査などで変位疝ではないか診断できる(べきだ;笑)。

バナミンペーストは便利なものだが、疝痛を手遅れにする危険もある。

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あっかるいね~

長年、馬のそばにいても、

こんな風に馬をとらえたり、

こんな馬の像をつくろうなんて思ったことはない。

だから芸術なんだろうな。