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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

2012年那須研修 その2

2012-01-31 | How to 馬医者修行

P1161684 3日目は香港でのAsian Equine Upper Airway Symposium で学んできたことの紹介を含めて、

馬の上部気道の障害の講義をし、

それから各手技のデモンストレーションを中心とした実習をし、

さらに、症例馬の副鼻腔蓄膿の手術をしてもらった。

喉の手術は、「さあ、観てきたからどんどん自分でもやってみよう」という性質の手術ではないが、喉の障害についてまず相談される先生方が、手術方法とその併発症について知識を持っていることはたいへん大切なことだと思う。

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P1271742 夜明け前。

雪が残る雑木林。

また研修の1日が始まる。

8時から1-2時間講義して、そのあと実習。

日常の診療や、生活の雑事から切り離してもらっていれば、丸一日研修するのはそんなにたいへんなことではない。

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横浜で、結婚式の前の時間、訪れた個展はこちら

幽霊を描くことで情念を想い、

解剖図や屍を見つめることが生きることへの執着なら、

その美しい人に、馬のまぎれもない命を見せてあげられると、誰か伝えてくれ。

P1281749


2012年那須研修

2012-01-30 | How to 馬医者修行

恒例の全国公営競馬獣医師協会の研修に行ってきた。

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P1251736今回は、この馬をなんとか治してやりたいと思っていた。

特殊な器具がいる大掛かりな手術で、出張先でやるのが良いかどうかわからないのだが、それ以外に方法はなかった。

Cアームが欲しい、

吊起帯を使いたい、

エアドリルか、複数の電動ドリルがあったほうが良い、

などと贅沢は言っていられない。

協力していただいた方々に感謝し、あとは私は天命を待つだけだ。

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1日目は後肢に焦点を当てた研修にしたかったのだが、

手術が長引いて中途半端になってしまったかもしれない。

P1251739それでも、日高で研修したのと同じく、キャスト固定の練習もしていただいた。

フーフキャストは上手に巻けた。

ハーフリムは・・・・・残念ながら球節の上で折れてしまった。

「ハーフリムキャストは割れるときは球節の上か下で割れます。」

と説明してはいたが、実際のところは経験で覚えてもらうしかない。

私が使っているキャスト材との違いも気になるところだったが、キャストライトⅹとキャストライトαはやはり多少の違いがあるようだ

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2日目は腸管手術実習。

盲腸背側紐をたどって回腸を引っ張り出すとか、

空腸を上位へたどっていく手さばきとか、

十二指腸の触感とか、

鼠径の位置や形状とか、

大結腸を引き出すときの指や腕の使い方やここまでやったら結腸が裂けるという感覚とか、

閉腹のときの指や把針器の使い方なども、実際にやってみて練習と経験を積み重ねるしかない。

(つづく)

                       /////////P1241734

今年は珍しく夕方の飛行機で福島行き。

空港では美しい人を見かけた。

隣に険しい顔をした、ゴッツイ腕の男が並んでいたけど;笑。

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you are so beatiful, beatiful to me・・・・・

Joe Cocker みたいなおじさんだって歌っていいんだな・・・

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YouTube: Joe Cocker - You are so beautiful (nearly unplugged)


香港 収支決算

2012-01-29 | 呼吸器外科

私は32歳のときに職場から海外研修に出してもらった。カリフォルニアDavisに2週間、フロリダに3週間。USAの馬医療は、私には何もかもが目新しく新鮮だった。

2000年にAAEPと日本の馬獣医師むけのセミナーに参加した。このときは打ち切り旅費で2/3が自費だった。

AAEPにはもっと早く行くべきだったと思った。もうUSAの馬医療の何もかもが知らないこと。という状態ではなくなっていた。注目されていること、新しいこと、知りたいことを学ぶにはAAEPやセミナーは良い場所だった。

2005年にまたAAEPへ行かせてもらった。自分の興味ある講演を集中的に聴くことができた。

学んで来たらそれを実践できる環境になっていた。

今回の香港でのシンポジウムは、そんなわけで7年ぶり4回目の海外修行だった。P1211718

シンポジウムそのものの参加費用は15,330香港ドル。

日本円で15万円ほど。

主催者にとっては海外から3名の講師を呼んで、あれだけの実習をやって、移動のためのバスを用意して、3日間の昼食と2夜のディナーも含めてだから、高いものではない。

Dr.Riggsは「香港は何もかも高くて・・・」ともおっしゃっていた。

20名ほどの参加者だったから主催者側は赤字だったかもしれない。

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4泊5日で香港へ行くのは、10万ちょっとの費用だった。

ツアーで4.98万円から!なんていう広告があるが、実際には日程が決められているとそんなに安いツアーはない。

ホテルはネットで安くて便利で最低限安全なところと思って予約して行った。

オリエンタルランダーホテルは失敗だった。

絵にあるような輝く新しいホテルではなく、4つ星などとんでもなく、

部屋もシャワーも、私でも狭かった。

(あれは太った大男なら無理!)

案内にも、ガイドブックにもレストランがある。となっているが、無かった。

夜中は廊下から聞こえる広東語がうるさかった。防音の悪さと廊下の狭さは日本のビジネスホテル以下だった。

でも、そういうホテルに泊まって勉強している自分が好き;笑。

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P1111618今回のシンポジウムに参加して良かった。

私にとって充分に価値があったし、楽しめた。

こういう機会はチャンスでもあるし、そしてチャンスを逃すというのはピンチでもある。

ふだんから教科書や文献を読んで勉強はしているつもりでも、最先端の現在進行形の話を聴けることはそれとは違った価値があった。

たとえばCornell大学へDr.Ducharmeに会いにいったからといって特別講義をしてくれるわけでないし、実習で手取り足取り教えてもらえるわけではない。

診療を観にいっても、そうそう毎日見たい手術があるわけではない。

香港ジョッキークラブとDr.Riggs、そして講師の先生たちに心から感謝する。

                     

P1291823


イギリス英語、そしていろいろな英語

2012-01-28 | How to 馬医者修行

今や飛行機の映画サーヴィスはヴィデオオンデマンドで、観たい映画を乗客それぞれのタイミングで観ることができる。

(どういう仕組みになってるんだろ?)

Money_ball私は行きは、ブラッピッのMoney ball を観て、アン・ハサウェイの One day を観て、ダニエル・クレイグのCowboy vs ailien を途中まで観たら香港に着いた。

帰りは、Cowboy vs ailien を途中から観て、ジェイソン・ステイサムKiller Elite を観て、なんだかわからないカーアクション物を途中まで観たら千歳に着いた。

Money ballは吹き替えで観たが、他は英語字幕で英語音声のままで観るしかなかった。

私は洋画は日本語字幕つき英語音声で観たいんだけど。

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Onedayアン・ハサウェイのOne dayは、1988年に一緒に大学を卒業した男女が、お互いに魅かれながら、20年間毎年7月15日だけを共に過ごす。というストーリー。

そのストーリーに魅かれたし、なかなか良い映画だった。

しかし、

イギリスが舞台で、登場人物はイギリス英語を話さなければならないのだが、アン・ハサウェイのイギリス英語がひどい。というのがイギリスでの映画そのものの評価になってしまったらしい。

イギリス人俳優は、アメリカ英語もこなすのに、どうしてUSAの女優はイギリス英語で演技できないんだ!となってしまったのだそうだ。

この状況は、関西人の私にはよくわかる。

標準語圏出身の俳優や女優がへたな関西弁で演技している映画やドラマはそれだけでも興ざめだし、

関西出身の俳優さんや女優さんは標準語で演技できるのに、他の地域出身の人の関西弁は、関西人にはすぐわかってしまう。

                       -Killerelite

ジェイソン・ステイサムのKiller elite も世界を舞台にイギリス特殊部隊とジェイソン・ステイサムが戦うストーリーだった。

この映画ではイギリス人役の俳優がイギリス英語をしゃべっているのかどうかわからなかった。

まあ、台詞より銃声とアクションが多い映画だし;笑。 

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さて、映画の話ではなく、香港での馬の上部気道シンポジウムでの英語での講演と英会話の話。

今回の講師はDr.Dixonはスコットランド人。早口で、私には一番聞き取れない話し方だった。

齢をとるときちんと丁寧に発音しなくなるように思う。とくに男性は。

Dr.Ducharmeはカナダ人。わりと聞きやすかった。

Dr.Cheethamはイギリス人。ゆっくり話してくれるのだが、やはり発音はイギリス式なのだろう。

香港ジョッキークラブのDr.Riggsもイギリス人。たぶん香港生活が長いせいだろう。あまりイギリス英語という感じはしなかったが、私には聞き取りやすくはなかった。

そもそも、私の英語能力に非常に問題があるのだけれど。

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中国人の英語、インド人の英語、タイ人の英語、マレーシア人の英語は、私の英語よりはるかに上なのだが、私にとってはヘンな難しさがあった。

オーストラリア人の英語は・・・・彼らは寡黙すぎる。英会話での日本人のように;笑。

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まあ、やっぱりこれからも練習するならUSA英語ということになるのだけれど、たまにはUSA以外の人の英語にも触れておいた方がいいな。と思った香港だった。


香港 喉嚢真菌症

2012-01-27 | 呼吸器外科

P1171664 どういうわけか日本というか北海道は喉嚢真菌症の馬が多くて、

今のところ、世界で最も症例数の多い喉嚢真菌症の症例報告を書いているのは私だと思う。

たくさん症例を診て来たつもりではいるが、学術的な探究ではDr.Ducharmeにかなわない。

Dr.Duchrameが示してくれた喉嚢内の脳神経の走行。

こういうのは、同じ施設に解剖学や病理学の先生や、あるいは医学部の神経病の専門家が一緒にいる大学の価値なのだろう。

これを見せられても、私は一生懸命、脳神経を数えながら思い出し、

え~っと、第Ⅹ神経は迷走神経か・・・・英語で・・・と、考え込まなければならない。

そして、どの神経が侵されてどのような症状が現われるかはさらに難しい。

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P1171668 喉嚢真菌症による動脈性の出血の止め方については今までも何度か書いてきたので、あらためては書かない。

ただ、Dr.Ducharmeは他の研究者の発表を紹介して、

緊急の出血を止めるには両側の総頚動脈を縛ることだ。と話していた。

脳への血流は減るが、そのことにより逆流による出血も止まりやすくなり、脳の血流は他の血管からかろうじて保たれる。

立位でやるのはたいへんだろうし、そこまで危ない状態になったら麻酔するのは危険だろうし、

どうせ全身麻酔するなら、私なら左右の内頚動脈と外頚動脈を縛るか・・・・・

それだと逆流による出血があるかもしれない・・・・・・

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まあ、100頭あまりの喉嚢真菌症の馬を診て来て、左右両方から出血し、さらに内頚動脈か外頚動脈か、まったく見当がつかなかった馬は、1・2頭しかいない。

だから、両側の総頚動脈を止めなければ!という状況は、今、ジャージャー出血していて、このまますぐに立位で手術してしまおう。という場合だけなのだろうと思う。