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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

アブ対策 アブキャップ

2017-07-31 | 馬内科学

今年はアブが出てくるのが遅かったが、けっきょく例年どおりにやってきた。

診療室にも馬と一緒に入ってくる。

ハエよりドン臭くて、殺虫剤で退治するのは簡単だが、

馬にまとわり付いて、馬も落ち着かなくなる。

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きのうは、そとで跛行診断や神経ブロックをする症例もあったのが、落ち着いてやっていられない。

疝痛の馬も来たのだが、曳き運動しているとアブにたかられるので早々に厩舎へ入れて様子を観た。

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こういうのも市販されている。

アブキャップ。

発熱体に寄ってくるアブの習性を利用しているらしい。

けっこうな値段だが、試してみたいな。

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そういうと、相棒にはアブは寄ってこない。

夏でもセーター着てるから熱が洩れてないからか?

それが毛皮を脱がない理由か?

 

 


盲腸便秘開腹の翌朝

2017-07-30 | labo work

3日前から軽い疝痛をしていた繁殖雌馬を直腸検査したら便秘のようで、下剤をかけようとしたら胃液が逆流した、との連絡で来院。

右腹が膨満している。

超音波では、結腸の肥厚はない。

直腸検査で、盲腸がつまめないほど膨満している。

PCV44%、乳酸値1.8mmol/l。

便秘を想定しても、胃拡張があるなら経口電解質や下剤を投与することはできず、輸液だけで便秘が解消するとは思えない。

ひどい疝痛ではないが、「開腹した方が良いです」。

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重度の盲腸便秘だった。

60cmくらい開腹したが、とても盲腸を創外へひっぱり出せない。

ガス抜きの針を刺しても固形の内容なので減圧できない。

盲腸はひどく膨満しているので、針穴から液が漏れてくる。

ビニルシートを縫い付けて、その一部を3cmほど切開し、太いシリコンチューブを差し込んで吸引した。

いくらか粥状の内容と液を抜くことができて、ようやっと盲腸を術創外へ出すことができた。

それで切開創を広げ、ホースを入れて内容を洗い出した。

腹腔を生理食塩液で洗浄して閉腹。

もう一頭疝痛馬が来て、全部終わったのは夜9時。

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翌朝5時半。入院厩舎へ診察に行く。

体温39.3度。

蹄葉炎と裂蹄がある馬だが歩いてはいる。

採血して血液検査する。

それで輸液計画を立てるのだ。

PCV54%、白血球2,600/μl。

腹膜炎だ・・・・もちろん想定内だ。

急患でも、入院畜でも、すぐ血液検査できる意義は大きい。

診断にも、治療でも、予後判定にもだ。

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おいしょっ!

 


1歳馬の尺骨骨折のLCP固定

2017-07-25 | 整形外科

尺骨を折って、ひどく変位してしまった1歳馬。

もう300kgをゆうに超えている。

強大な上腕三頭筋の牽引に耐える内固定をしなければならない。が、

尺骨は薄い骨で、ブロードLCPは使えない。

プッシュプルデヴァイスでLCPを尺骨頭側に押し付けた。

LHS2本で尺骨頭側にLCPを固定した。

遠位に捨ネジをうって、

それにテンションデヴァイスをつけて、LCPを遠位へ牽引した。

ほとんど完全な整復ができた。

5.5mmスクリューをlag fasionで挿入した。

あとは、LHSを残りの穴に入れて、

5.5mmスクリューの遠位のプレート孔には、5.5mmスクリューに当たらないように4.5mmスクリューを角度を変えて入れた。

数週間、馬鹿なことをしなければ良好な骨癒合が期待でき、プレート・スクリューも抜かずに調教を開始できる、はず、と期待している。

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暑い日は川へ涼みに行きたいね~

 


1歳馬の尺骨骨折

2017-07-24 | 馬内科学

警告

いつもにも増して;笑 恐ろしい画像が出てきます。耐えられない人は見てはいけません。

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ことし2月、金沢で開かれた日本獣医師会年次学会で、サラブレッドの完全骨折のLCP固定について発表した。

会場からは、ほとんど質問はなかった。

集まっている多くは牛と豚の臨床家と獣医科大学の産業動物の教員なのだが、興味も質問するための基礎知識もないのだろう。

遅れて出た質問は、

「尺骨は体重を支えている骨ではないから、一緒に扱うのはどうか?」

という指摘だった。

亀裂骨折ではなく、完全に骨が割れてしまったときに新しいLCP固定がどれだけ効果を示すか?という発表をしていて、

下顎骨折も含めているので、「尺骨は・・・」というのは的はずれだ。

そして、そういう疑問を持つのは、牛の尺骨が折れることがまずないからだろう。

私も牛が尺骨だけを折ったのを診たことはない。

(牛の尺骨は馬ほど退化していなくて、橈骨と並んで遠位;腕節まで続いている。だから、橈骨骨折のときに一緒に折れる。)

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尺骨を折ってしまった1歳馬。

夜間放牧中の雷による事故だったようだ。

肘から下肢までひどく腫れ、右前肢はまったく負重できない。

これだけ変位していると、数ヶ月経っても骨癒合は望めない。

尺骨はこの部位で折れることが最も多いのだが、肘関節も壊れて開いてしまっている。

わかるかい?

馬の尺骨は体重を受け止める骨ではない。

しかし、完全に折れたら、肘を上腕三頭筋で引きあげることができないため、腕節が屈曲してしまい、体重はまったくささえられなくなる。

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変位がひどく、内出血で腫れもひどく、「予後不良であきらめる方向で・・・」と連絡が来た。

「治せると思うよ」と答えたのだが・・・・

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この馬、いっぱいブツブツがついていた。

膨らんでいるのもある。

そう、ダニ。

耳、腋、乳房、その他、いたるところに”無数”にくっついていた。

最初、診せられた獣医さんは、ダニ寄生があまりにひどくて肘が腫れたのかと思ったそうだ。

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うちの相棒は、ダニにかまれすぎるとアレルギー性皮膚炎を起こすようだ。

あまりにたくさん外部寄生虫に吸血されると免疫が撹乱されるのだろう。

この馬だけでもダニを駆除してやらないと骨折の治療に影響すんじゃないかと考えた由縁だ。

なんとかしたくなるでしょ?

(尺骨骨折について、つづく)

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やまへいくときは、とうちゃんがダニよけしてくれる

それでもダニにかまれてかゆくなる

けさは疥癬のたぬきにかみついた

 

 

 

 


上腕骨亀裂骨折の痕

2017-07-22 | 整形外科

3ヶ月近く前から歩様が悪く、育成場を移されて来たという2歳馬。

来院して、速歩させてみるがはっきりした跛行はない。

しかし、後退させようとすると、右後肢をうまく使えず、後退できない。

騎乗調教できたり、跛行したりを何度か繰り返している、たぶん左前か右後とのこと。

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可能性の高い部位からX線撮影する。

左右大腿骨内顆の軟骨下骨嚢胞は否定。

右後球節、第一趾骨への種子骨靭帯の付着部に小さな骨片骨折が見つかった。

右後球節が軽度の腫れを起こすのはそのせいかもしれない。

両腕節が腫れているが、x線画像で異常なし。

寝起きがへたでぶつけたり、こすったりするのかもしれない。皮膚と皮下織の腫れのようだ。

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さて、これで怪しい部位の検査でx線撮影できる部位は終わった・・・・と思ったが、肩や上腕骨も調べて欲しい、とのこと。

前の育成牧場から、そう申し送られている。

「立ったままでは上腕骨は撮れないんでしょ?」と訊かれて、

「撮れるよ」

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で、

なんと、左の上腕骨遠位頭側に、骨増勢がみつかった。

強い調教をしている競走馬では、疲労骨折がみつかることがある部位だ。

しかし、この馬はそういう状況ではない。

転倒して、その後跛行するようになった、ということなので、おそらくそのときに亀裂骨折したのだ。

右の上腕骨は異常なし。

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右後の不調も骨盤の亀裂骨折かもしれない。

後にまわってしげしげと臀筋を観ると、右の方が筋肉の量が少ない。

「あ~そのとき骨盤も傷めたんだね」

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前の育成場からの申し送りは正しかった。

肩か上腕骨の異常をしっかり疑うというのはなかなか難しいことだ。

たいしたもんだ。

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7月前半は雨が降らず、記録的に暑くて、

そのあとぐずついた天気が続いた。

きのうはまた暑かった。

今朝は雷雨だ。