馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

眼瞼、耳周囲、頬、などのEquine Sarcoid

2018-09-19 | その他外科

きのうは、

6ヶ月前に中足骨骨折をLCP固定した当歳馬のプレート除去。

黒毛和種子牛の肋骨骨折による気管狭窄の診断。後日手術する。

午後は、

1歳馬の大腿骨軟骨下嚢胞状病変 Subchondral Cystic Lesione のX線診断。後日手術する。

5歳競走馬の腕節の変形性関節症 Degenerative Joint Disease の関節鏡手術。

やれやれ、診療は忙しさが続いている。

                 -

これは先日来院した15歳繁殖雌馬の眼瞼の腫瘍。

依頼の話では、扁平上皮癌 SCC ? と思ったが、診たら馬類肉腫 Equine Sarcoid で間違いないだろう、とほぼ確信できた。

SCCはその名のとおり上皮性で瞬膜にできることが多く、たまに眼結膜などからも発生する。

この馬は眼瞼の皮下にできている。(結節型)

おまけに、耳の付け根にもEquine Sarcoid の特徴的な病変がある。(疣贅型)

頬の病変もSarcoid だ。(不顕性型)

Equine Sarcoid は牛パピローマウィルスによって引き起こされる、とされている。

外科的に切除や摘出をおこなっても、再発する率がひじょうに高い。

                 -

瞼の結節は、もう眼瞼結膜を破りそうだ。

そうなると角膜が傷つき始めるだろうから、もう放置はできない。

しかし、マージンをとった完全な摘出はできそうにないので、瞼の結節をできるだけ摘出して、それを凍結して頚側皮下に埋め込む免疫療法をすることにした。

                 -

立位でできなくはない。

5mm角に切った腫瘍塊を、凍結し、融解させてから頚側皮下に埋め込んだ。

                ---

この方法は日本では1例だけみごとな成功が報告されている;笑

この免疫療法は3-4ヶ月後に効果を現す。

期待して待ちたい。

              ////////////////

9月10日夕方、小雨が降って寒かったので薪ストーヴ初焚き。

さすがにちょっと早すぎたかも;笑

              

 

 

コメント (2)

1歳馬の腓腹筋断裂

2018-09-17 | その他外科

日曜日、

40日齢黒毛子牛の臍の膿瘍。

牡子牛で、種牛候補なのだそうだ。

超音波で観ると、「膿瘍はひょうたん型で腹腔内にも広がっていたが、膀胱へはつながっていない」、ということで、

切開することになった。

雄牛はペニスの先が臍に近いので、臍が化膿するとやっかいだ。

                 ---

つづいて1歳馬の剖検。

馴致、調教をはじめたら後肢がおかしくなって、4日ほどの経過で立てなくなった、とのこと。

右飛節内側。

左飛節内側。

塊状に触るものがある。

皮膚を開いてみると一部筋膜が破れている。

その深いところは血腫になっているようだ。

腓腹筋の近位付着部が大腿骨から剥がれてしまっている。

病名としては腓腹筋断裂 rupture of gastrocnemius 、ということになる。

左肢も、程度はましだが同じ損傷だった。

                 -

腓腹筋断裂は新生子馬で診ることがある。

おそらく出生時に産道で無理な力がかかることで、腓腹筋が伸ばされて大腿骨から剥がれてしまうのだ。

日本ではほとんど助かっていないが、ケンタッキーでの報告では数週間の看護でかなりの率が助かっている。

飛節を引きあげられなくなって、飛節が落ちた肢勢になる。

飛節は屈曲してしまうので、飛節が曲がらないように伸ばした状態でRobert-Jones Bandage を巻くと良い。

しかし、新生子馬ならともかく、1歳馬ではそれを支えにするのは無理だろう。

まして両肢だと、寝起きもできない。

成書にも、発生は in foals and young horses. とある。

子馬だけでなく、もっとあとに起こることもあるわけだ。

                 ---

この日は、ほかに、

13歳の乗馬の去勢。さすがに玉でかい。

当歳馬の後膝のX線撮影。

              ///////////////

今朝、未明も余震があった。

先日、会議で苫小牧に泊まったが、ホテルでは海外からの観光客はほとんど見かけなかった。

観光業は大打撃だろう。

秋の観光シーズンにこんなに北海道が空いていることはない。

どうぞ北海道においでください。

 

 

 

コメント (2)

あの朝、そして2日間

2018-09-09 | 日常

早朝、ただならぬ揺れと、エリアメールのアラームで目が覚めた。

家が激しく揺れて、きしんでいるのを感じる。

建てた建設会社の社長の顔が浮かんだ;笑

家人が部屋をのぞいて「お父さんまだ寝てる」と言うが、飛び起きても危ないだけだ。

しばらくテレビの緊急速報を観ていたが、そのうち停電した。

電池式の「懐中電灯」(これは新しい呼び名が必要だね)があって助かった。

             -

明るくなってから、外に出て、相棒と散歩に行こうかと思ったが、まず家をぐるりと一周してみる。

屋根が剥がれたり、壁が落ちたり、基礎が割れたりはしていないようだ。

職場に戻ろうとして、その前にコンビニに寄った。セイコーマート。

まだ、暢気な様子だった。

「停電でもレジできるんだね~」

パンやカップラーメンを買い込んでいったん家に戻った。

あとで思えば、乾電池、携帯の充電コード、カセットボンベ、などを探すべきだったのだ。

             -

職場へ戻る道すがらガソリンスタンドを見るが、どこもロープが張られていて入れない、給油できない。

停電しているとポンプが使えないのだろう。

車にはいつもガソリンを多目に入れておくことだ

             -

予定の診療はすべて延期してもらった。

なんとか連絡はついた。

非常用電源装置はあるが、手術室の麻酔器用のコンセント、無影灯、ホイスト、だけにつながるようになっている。

手術中の停電に備えるためのものだ。

急ぎでない手術を予定どおり行うのはリスクが大きすぎる

             -

家の本棚が倒れているのではないか、畜産研修センターが崩れていないか、職場で物が散乱していないか、というのは杞憂だった。

私は、その日から十勝へ出張の予定だった。

しかし、北海道中が停電し、交差点の信号機が消えている。

ガソリンが手に入らない。

講演用のファイルを取り出せない。停電中ではパソコンが立ち上がらない。

昼過ぎ、講演先と連絡がついた。

「明日の様子ではいけないかも」と言うが、

「道中も危ないのでイイです」とのこと。

この時点で出張は取りやめた。

災害時は、予定の行動や、日常どおりの行動に執着しない方が良い

安全第一。さらなる事故や災害や怪我や病気にいつものようには対応できない、してもらえないのだから。

             -

電池でも使えるCDラジカセで聴くラジオが唯一の情報源になった。

             -

夕方、発電機を取り寄せてオープンしたガソリンスタンドで20リットル給油してもらった。

非常用発電装置用のガソリンタンクも満タンにしてもらった。

現金しか使えなかったようだ。

             -

停電中だが、家のガスコンロは使える。電子レンジは使えない。

家には電池のLEDライトがあった。

キャンプ用のヘッドライトも引っ張り出してきた。

             -

実習生たちには、カップラーメン、サンドウィッチ、ガスランタン、ヘッドライトを渡しておいた。

それで飢えずに夜をすごせるだろう。

             -

携帯がauもdocomoも”圏外”になった。

             -

一夜明けて、発電機を作動させることにした。

皆、携帯の充電をしたい。

2時間作動させて、タンクの1/4くらい燃料消費した。

ガソリン10リットルで8時間か・・・・

ガソリンを補給しながらもっと使う方法もあるが、電圧が安定しないので、つないだ器具が壊れる心配もある。

夜は当番ではなかったので、自宅に帰った。

             -

翌日、停電は相変わらず、「1週間続くかも」という情報も入ってくる。

「3日くらいと北電が言ってる」という話もある。

すべてキャンセルしてかえって穏やかな時間を過ごしていた午後、突然電気は復旧した。

電話はあいかわらずダメ。

auの携帯は使える。職場から支給されているdocomoはまだダメ(9/9昼前に復活)。

              -

実習生2人は江別へ送っていってもらった。

江別が停電していないか、食べ物があるか、電話が使えるか、そこへの道が悪くないか、わからない。

              -

小樽はまだ停電が続いてるという。金曜だし、小樽で働いている息子が、札幌で働いている娘を連れて帰ってくるという。

結局、夜中に帰ってきた。

高速道路、日高自動車道は閉鎖。国道も地割れで路肩が崩れたり、危険な段差ができていたそうだ。

              -

地震から3日目には、もう通常業務ができた。

docomoの携帯は、地震から4日目の昼前に使えるようになった。

            //////////

停電や災害にはそれなりに備えてはいるつもりだったけど、まだまだ考えが甘かった。

震度5でこれで、震源に近いエリアでは震度7だったそうだから、もっとひどいことになる。

              -

オール電化にするなら、停電に対応して、電子レンジや電磁調理器の代わりになる調理用熱源が必須だ。

カセットコンロを用意しておくなら、カセットボンベは3日分は必要だ。

保存食と飲料水も3日分。

今回、このあたりは断水しなかったのでたいへん助かった。

携帯を充電する方法は準備しておきたい。

車はラジオも聴けるし、充電装置としても使える。それもガソリンと接続コードがあれば、だ。

車のガソリン、非常用タンクの燃料、ガスボンベ、など燃料は重要。

乾電池もエネルギー源。

無駄は必要経費と考えて備蓄しておくしかない。

非常用電源装置はときどき使って停電訓練しておこう。でないと、いざと言うとき使えない。

タンクに入れてあるガソリンは傷んでしまう。ときどき交換する必要がある。

現金は手元においておく必要がある。

キャンプ用品は役に立つ。

そして、テントで寝袋に寝て、電気がないところでゴハンを炊いて、ヘッドライトで生活できる、というアウトドア体験で培った気持ちがたいせつなのだろう。

携帯やスマホに依存しない方が良い。

無料の充電ステーションが開設されたが、3時間並んで30分充電、なんてところもあったようだ。

中毒患者のようだ。

一方でツイッターやラインの情報が役に立った面もある。

それも、通信が使えれば、だ。

              -

不幸中の幸い

暑くもなく寒くもない季節で良かった。

北海道全体で停電したのだ。

真冬だったら、少なからず凍死者が出ただろう。

保温できなくなって水道管が凍結して破損したり、

換気しないで火を炊いたりして酸欠やガス中毒になる二次被害も出ただろう。

北海道では災害時の防寒対策も考えておく必要がある。

               -

起きている人がほとんどいない午前3時過ぎだったのも幸いした。

火を使っている人が多い時間帯だったら火傷や火事が増えただろう。

夕方や夜だったら不安な長い夜を過ごすことになったはずだ。

               -

家屋が崩れる被害に遭われた方には言葉もないが、

都会の直下型だったらもっと被害は甚大だったろうと思う。

              ---

「地学的平和」と呼ばれる地震や火山活動が低調な半世紀はすでに終わったようだ

恐ろしいことだが、備えておくことで、被害を減らすしかない。

               -

亡くなった方、家族を亡くされた方にこころよりお悔やみ申し上げます。

大きな被害に遭われた方に、今はまず同情となぐさめを、

まだ停電や断水が続いている方には励ましを。

ガンバロー!!

 

 

 

 

 

コメント (18)

業務連絡

2018-09-08 | 日常

たいへんな地震でした。

さいわいこの地区は断水はせず、停電と電話が使えないこと。

ガソリンが入手できないこと、が主な不便でした。

               -

家畜高度医療センターは、9/7午後に停電が終わり、ホッとしました。

9/8は通常業務できそうです。

9/6・7の2日間に延期してもらった診療も順次予定を組みなおして行います。

検体回収と血液・細菌検査業務も再開します。

ただ、このあたりだけDocomoの携帯は使えないようです。

災害や緊急にもっと備えが必要だと考えさせられました。

               -

実習生たちも9/7にこちらを出て移動しました。

交通機関、電話も徐々に復旧しているので、それぞれ帰りついたり、友達と落ち合ったりできるでしょう。

               -

以上、業務連絡です。

              ---

今回の震災で被害に遭われた方々に心よりお見舞い申し上げます。

                -

災害はひとごとではなく、忘れた頃に誰にもやってくる・・・・・

いや・・・・まだ余震や二次災害に警戒が必要。

コメント (12)

実習生について思うこと そしてアドバイス たぶんその1

2018-09-03 | How to 馬医者修行

今日は、

早朝は結腸便秘の2歳の診察。

朝、2歳馬の肘腫の診察。手術はしないことになった。

当歳馬の臀部の蹴傷。

今週わたしは検査当番。

当歳馬の疝痛の依頼。

午後に予定していた6歳競走馬のTieback&cordectomyは予定どおりにやってしまうことにした。

手術予定がつまっていて、延期すると1週間以上先送りになってしまう。

Tiebackcorcectomyを1時間で終わらせて、当歳馬の開腹手術。

案の定、手遅れだった。

剖検したら、手遅れでなくても助けられない小腸根部捻転だった。

                 -

夏は実習生たちが来ている。

大学の単位になるので、評価書を書いてくれ、と持ってくる学生たちも居る。

(これは本当におかしいと思う。

大学は安からぬ授業料を学生から摂っている。

年間の授業料を1年50週で割ってみると良い。

学外実習に出して、単位を与えて、それを外部に負うなら、”金払え!”って言われる話だ。)

われわれの受け入れ元の北海道NOSAIにも、実習日誌に目を通してやってくれ、とか、

学生の評価表をつけてくれとか、

学生ひとりひとりへのアドバイスを書いてくれ、とか言われている。

                -

私は、学生たちにマニュアルを作って渡そうとは思わない。

最低限の注意をして、あとはひとりひとりとできるだけ話しながら、実習が何か役に立ってくれれば良いと思っている。

けっこう厳しいことも言う。

学生たちに好かれたいとは思わない。

実社会の厳しさ、臨床のたいへんさ、を体験して、それでも面白いと感じられるか、を考えてもらいたいと思っている。

                -

しかし、アドバイスするとしたら、どの学生にも共通のことがかなり多い。

本を読め

あまりに誤字脱字が多い。基本的にな知識人としての教養が疑われる。パソコンばかりで文章作成していないで、自分の言葉で、手書きで漢字と文章を書けるようになれ。

そのために本を読め。アニメばかり見てないで。

社会人としての最低限のマナーと態度を身につけろ

目上の人が運転する車に乗せてもらうときは、乗るべきは助手席だ。あんたはお客さまじゃない。

よそへ行って好かれるのは明るく元気で活発な来客だ。邪魔にならないようジッとしているだけでは実習にならない。

日常生活の技術は診療技術と重なる

ほとんどの学生が掃除もできないし、ロープも結べないし、洗い物もできない。

こいつら普段の生活でどうしてるんだろうと思う。

そうか、今の日常生活ではロープを結んだりもしないし、掃除もしないし、洗い物もしないんだ。

勤勉でもなく、器用でもなく、機転も利かず、積極性もないヤツは診療でも役に立たない。

集団行動するくせを捨てろ

学校では「みんなと同じように行動しなさい」と習うのかもしれない。しかし、社会に出たらちがう。

人があれをやるなら、自分はこれ。人があっちを受け持つなら、じぶんはこっち。

一人でできる用を複数でやろうとするな、邪魔になるだけだ。

体を鍛えて使えるようにしておけ

今の日常では力任せに何かをする、などということはないのかもしれない。

しかし、すくなくとも大動物臨床では、体を上手に使わないとできないことが多い。

指先だけでは始まらない。

体格の問題もあるが、体の使い方もだいじ。

生まれて一度も風呂に入っていない患者さんを手術するんだ。優しくのんびりこすっていては消毒どころか洗浄にもならない。一生懸命ブラシでこするんだ。

われわれの何倍も体重がある患者さんを動かして診療するんだ。こっちも気合を入れて、力をあわせて全力を発揮しないとはかどらない。

大動物診療の何分の一かは肉体労働にかかっているんだよ。それができない人には無理だ。

                 -

日本の将来は明るくないとつくづく思う。

私たち世代の責任なんだろうな・・・・・

 

 

 

コメント (14)