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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

動物種ごとの前十字靱帯断裂 比較外科学

2025-07-14 | 整形外科

さて長々と、とぎれとぎれに書いてきた動物種(ヒト、牛、犬)の前十字靱帯断裂。

発症の要因も、治療方法も、動物種と年齢によってかなり異なっている。

そして、外科的治療(手術)を考えるときには、その”患者”の体重、気性、生活、そして求めるQOLを考慮しなければならない。

さらに、術後管理とリハビリができるかどうかで、手術適応になるかどうかも左右される。

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獣医学は、ヒト以外の動物の医療を扱う実践学問で、私たちが習ったのは例えば家畜比較解剖学だった。

複数の動物種を扱い、比べることで、見えてくるものがあるはず、理解が深まるはず、というのが獣医学のアイデンティティーであろうと思う。

その点で、獣医外科学においても、「比較」外科学として知見を集め、検討してみることで、「今、そこにある」症例についても理解が深まり、より正しい判断ができる・・・・・・・かもね。

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天国のようなところを1泊2日で歩いてきた。

勤めていたときも、学生の頃でさえも、天気が好いときを狙って登山するなんてことはできなかった。

ありがたいことです;笑


TTA (Tibial Tuberosity Advancement) ワンコの前十字靱帯断裂のもう一つの手術方法

2025-06-17 | 整形外科

TPLOとは別の手術方法もある。

TTA (Tibial Tuberosity Advanement ; 脛骨粗面前進術?) と呼ばれる方法で、脛骨粗面(脛骨近位頭側の膝蓋靱帯付着部)を含んだ部分を骨切りして頭側へ変位させ、膝蓋靱帯の牽引力で大腿骨が尾側へ滑り落ちるのを防ぐ。

(私の力学的解釈は正しいだろうか?)

How to plan a TTA by Common Tangent in vPOP PRO ®

TPLOだと、大腿骨と脛骨の関節荷重部の位置関係が変わってしまうが、TTAだと大腿骨と脛骨の位置関係は少なくとも荷重部については変わらない。

TPLOとの比較では、一長一短あるようだ。

TTAも骨切りをして、特殊な金属インプラントを入れる大がかりな手術であることは違いない。

大動物の臨床家であった者としては、犬の整形外科の進歩に驚くばかりだ。

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宮之浦岳登頂は別行動になってしまったので、宮ノ浦港へ訪ねたのはIM先生。

南大阪でいちばん大きな小動物病院の院長先生だったが、引退された。

で、なんとヨットで屋久島までひとりで航海してきて、登山にも参加した。

すごい海の冒険だ。

実は山岳部の後輩だった。

友アリ遠方ヨリ来タル マタ楽シカラズヤ

 

 

 

 


Tibial Plateau Leveling Osteotomy (TPLO)の具体的手技と器材

2025-06-10 | 整形外科

ワンコの前十字靱帯損傷の外科治療でもっともよく行われていると思われるTPLOの具体的手技、そのための器材。

Tibial Plateau Leveling Osteotomy (TPLO)

               ー

CGやプラスチックbone、あるいは解剖体なら出血しないが、骨を切断するので相当出血するし、膝関節の尾側にある血管を傷つけての出血も止めようがないようだ。

たいへんな手術だと思う。

               ー

小動物外科医むけのTPLOの実習はとても人気があるらしい。

症例数が多いし、高額治療になるので小動物病院の収入源になるのだろう。

骨折とちがって緊急手術でもないので対応しやすいのかもしれない。

小動物病院は技術習得にとても熱心だ。

競争が激しいし、「あの病院ではできなかった」「あの病院ではうまくいかなかった」と言われたら経営にダメージがあるからだろう。

大動物獣医師はどうだ?

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ぜんぜん知らなかったのだが、日本のウミガメの8~9割が屋久島で、それもこの海岸で産卵するのだそうだ。

ちょうど産卵時期が始まったところで、この晩も4匹が産卵したそうだ。

観察会が行われていて、申し込んでおくと参加できる。

私はこどもの頃に一度観たことがあるが、こども達は観たかったようだ。また今度、だね。

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カメはどてもユニークな進化をした動物だ。

甲羅で身を守ることを選択した。

カメは獣医学の中でもほとんど習わない。

スッポンをはじめ、食用にもなるし、ペットとしても飼われているのにね。

カメの甲羅は、脊椎と肋骨でできているのだそうだ。

なるほど、と思いそうだが・・・・・

カメの腕も肩甲骨から始まっているんでしょ。

カメの腕は甲羅の中から出ているでしょ。

肋骨の中に肩甲骨がしまわれているなんて、とても不思議な進化だ。

そしてウミガメはほとんど一生を海の中ですごす。

たいへんな進化を選んだものだ。

この愛らしい優雅な、そして不器用な動物が末永く生き残れるように、人類が絶滅させてしまわないようにしたいものだ。

 

 

 

 


Cranial Cruciate Ligament Rupture and TPLO for Dogs and Cats

2025-06-04 | 整形外科

犬の前十字靱帯断裂に対して行われている代表的な外科手術方法はTPLO

Tibial Plateau Levelling Osteotomy 

”脛骨高平部水平化骨切り術” とでも訳されるのだろうか、今はTPLOと呼ばれるようだ。

Cranial Cruciate Ligament Rupture and TPLO for Dogs and Cats

この動画が説明してくれているように、前十字靱帯が切れることで、脛骨に対して大腿骨が尾側へ滑り落ちがちになるのを、脛骨高平部の傾きを無くすことで滑り落ちないようにし、安定化させる。

1993年に考案された外科手術方法で、この30年あまりで急速に普及した。

大動物獣医師であった私から見ると、かなり大がかりな手術で、それなりのリスクも伴うと思うのだが、現在ではとても術後成績は良いらしい。

専用の器材の開発や、特化した講習会・実習の開催、小動物外科専門医の教育・育成態勢の充実、そして小動物の飼主が経済的負担をいとわないこと、などが背景にあるのだろうと思う。

             ー

片脚が前十字靱帯断裂と診断されたワンコ。

ン十万の手術費をかけて経過は良好。

突発事故ではなく、背景に発症要因があるので「反対脚もなるかもしれませんよ」と言われていたが、

案の定、後日反対脚も発症してまた手術。

経過は良かったけど、治療費は ン十万✖2 になった。という喜ばしい?話も聞く。

愛犬が脚をひきずって辛そうにしていたら、治す方法があるなら治してやりたいと思うのが(ワンコの)飼主だ。

獣医学の進歩は動物を飼う人の気持ちに支えられている。

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新高塚小屋の前でテント泊して、翌朝はゆっくり出発した。

1時間あまり下って・・・

 

縄文杉

「会いに行く」と表現されることもある巨木。

樹齢は見当もつかないらしい。

大枝が折れてしまって「かつての迫力はない」と言う島のお年寄りもいたが、

木、樹、という観念や概念からはみ出すのは間違いない。

屋久島は花崗岩でできた山岳地帯で、土壌に栄養も保水性もない。

本来、針葉樹である杉の寿命はさほど長くないが、屋久島の杉は成長が遅く、年輪が密で、硬くて丈夫。

そのため樹齢が1000年を越える巨木になっている屋久杉が存在するのだそうだ。

              ー

整備された木道が多いトレッキング道を下る。

これも有名なウィルソン株。

豊臣秀吉の命で切り倒されたのではないか、と言われているが・・・真偽のほどはどうなんだろう。

切り口がハート型に写るので「映える」らしいが、冠動脈が傷ついている私のハートには切れ込みが入る;笑

               ー

さらに下ってトロッコ道に出た

かつて木材の運搬に使われたトロッコ軌道。

現在はトイレの排泄物、登山道の整備資材、怪我人の運搬にだけ使われている。

観光客を次から次へ運ぶほどの運送能力はないのだろう。

トレッキング客には各自で歩いてもらった方が多くの人が通過できるということなのだと思う。

3時間ほどかかりますけど・・・・・

            ー

このトロッコ道もまた屋久島の名所のひとつではないか。

歩けるうちに、ぜひ!!

 

 

 


犬の膝の前十字靱帯断裂

2025-06-01 | ワンコ修行

今や獣医分野で前十字靱帯断裂と言えば、ワンコ。

犬の膝の前十字靱帯断裂について【獣医師執筆監修】症状・原因・好発品種・予防方法・治療方法

この動画はわかりやすく、短く、とても良くできていると思う。

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手術の内容についてはまた今度。

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屋久島へ登山に行ってきた。

これは最高峰 宮之浦岳へ登る途中で寄り道した黒味岳。

宮之浦岳は海岸線の里からは見えない。つまり宮之浦岳に登っても海岸線の多くの部分は見えない。

黒味岳に登ると、宮之浦岳も見えるし、海岸線の多くも見える、ということで眺望が良いのだそうだ。

山岳部OBの誘いで昔の中間と登るはずだったのだが、うちは家族登山になってしまった;笑

宮之浦岳(左)から下りて新高塚小屋へ向かう。