馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

Tieback&cordectomy とPIPjoint arthrodesis on 日曜日

2019-12-09 | 整形外科

58歳になる去年から手術執刀数は大幅に減らした。

それでも、神経を使う難しい手術を複数やらなければいけないこともある。日曜日に。

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午前中、3歳競走馬の喉頭形成・声帯切除 Tieback & Cordectomy 。

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午後、2歳競走馬(未出走)の近位指節の関節固定。

これは、私にとって10頭目

この2歳馬は、1ヶ月前に跛行し、球節以下が腫れて”球節捻挫”という診断を受けた。

その後のX線検査で近位指節関節の屈曲側への亜脱臼が診断された。

球節周囲と繋の掌側にもまだ腫脹があり、圧痛もある。

種子骨靭帯(繋靭帯の遠位部)が損傷したのだろう。

競走馬にするのはあきらめたが、繁殖供用するにも亜脱臼は徐々にひどくなり、跛行は慢性化する。

亜脱臼が長期化してから関節固定をしても、関節が硬直して亜脱臼を整復して固定することが難しい。

以前にやった症例では軽度の跛行が残った。

で、もう関節固定することにした。

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足元の手術なので術野準備には充分に気をつける。

蹄はどんなに消毒しても無菌化はできない。

覆ってさわらないように、水分がそこから流れ出ないようにする。

この関節を開けるのはもう慣れた。

この症例は変形性関節症を起こしていないので難しくはなかった。

軟骨除去は、ひたすら指の肉体労働。

BoneSawが欲しい。

P2に3孔LCPをLHSでとめる。

その状態で、関節を開けておいて、LCPに当たらない位置からscrew holeをP1遠位関節面の掌側部に出るように開ける。

この位置と角度が難しい。

X線透視装置が欲しい。

そのままLagscrewを入れて、関節掌側を固定してしまうのが標準の手順なのだが、今回はLCPを先に止めた。

5.5mm cortical screw をload position で入れてcompression をかけた。

それから、4本の5.5mm cortical screw をlag fascion で入れて掌側にcompression をかけた。

関節面は圧着される様子が観察された。

520kgある大型馬だったので、lag screw を4本入れることができた。

最後に、LCP近位のholeにLHSを入れた。

傷は慎重に丁寧に閉じる。

 

術後はhalf limb cast を装着。

6週間はキャストしておきたいので、蹄尖部はsuper fast で補強した。

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寒い!

これから「この冬一番の冷え込み」が何度か繰り返されるんだろうな。

                

 

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立位での下顎プレート除去

2019-12-08 | 整形外科

2ヶ月ほど前に下顎を骨折した1歳馬。

プレート固定し、餌も食べられるようになった。

手術前より体重も増えた。

下顎骨折はたいてい口の中への開放骨折なので、しばしば感染する。

この馬も術部から膿が出続けていて、プレート周囲の肉芽増勢もある。

立位でプレート除去できるだろうということで・・・

枠場で暴れ出すと危ないので枠場へ入れないでプレート除去することにした。

鎮静し、下顎孔でブロックし、浸潤麻酔もする。

しっかり鎮静しなければならないが、頭を持ち上げているのがたいへん。

結合織が厚く、化膿しているので、minimally invasive とは行かない。

全身麻酔するより時間がかかる。

人では要る。腕も腰も疲れる。

診療費は安く済む;笑

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五十から

ゴジュウカラ。

餌台に集まってくる小鳥たちも田舎の楽しみ。

 

 

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ニューヨーク獣医物語

2019-12-05 | 図書室

図書館の不要本配布のテーブルに置かれていたので、もらってきて読んだ。

ニューヨーク獣医物語―シティ・ベットの冒険
相原 真理子
平凡社

USAの大都会の獣医事情がわかるかなと思って。

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馬について書かれた章があったので、最初に読んだ;笑

ニューヨークの観光馬車の馬の扱いがひどいことを糾弾する内容になっている。

ニューヨークの観光馬車は廃止されてしまったはずだ。

結局そうやって馬はまた職場を失い、馬は人のまわりからいなくなる。

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シティヴェットの冒険、という原題はどうかなと思う。

全然Adventureではない。

地元の小動物病院で手伝いをしていた日々。

素敵な年上の女性獣医師に憧れ、獣医師になろうと決めた。

友との別れ。

ニューヨークの大病院の夜間診療。

ウサギ、ヘビ、ハトなども含めた診療。

貧しい人から、イランの王族まで、さまざまな飼い主たち。

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交通事故やガンショットで運び込まれる犬や、

高層ビルから飛び降りたネコの救命救急など、ニューヨークならではの診療内容を知ることもできる。

ただ、年代がかなり前なので、世界最高峰と言われるNewYork Animal Medical Center も最先端獣医療、という感じではない。

一般向けに読み物として書かれたためでもあるだろう。

診療技術の説明は私には物足りなかった。

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一人の若い獣医師の成長譚としては面白い。

ときどき職場を変りながら、生活の場を整えながら、恋をしながら、将来を考えながら、夢をもって生きている。

楽しく読めた。

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私は、大阪駅から一駅というところで育った。

大学時代をすごした帯広は人口15万だった。

大都市には住みたくなかった。

今は東京へ行ったりすると早く帰りたい。

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あちこちの若い獣医さんに職場を選んだ理由を訊くと、

「東京を離れたくなかったんで・・」とか、

「札幌で働きたかったので・・」とか聞くことがある。

私は、仕事は選んだが、住む場所については深く考えてはなかったな。

馬が居るなら、「好い場所」だ;笑

風は少し止んだか・・・

 

 

 

         

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第三度会陰裂傷

2019-12-04 | 繁殖学・産科学

この馬も初産だった。

お産のとき、肛門から子馬が出てこようとしたが、とても押し戻せなかったそうだ。

そのまま、生まれてしまうと膣と肛門がつながってしまう。

便が膣の中に落ちて排泄されるので、膣炎も起こす。

このままでは種付けしても受胎しないし、妊娠も維持できない。

このまま新鮮創にして縫合しようとしても癒合しない。

大事なのは上下に切り分けて、直腸は直腸として、膣は膣として縫合してから、左右の壁を張り合わせることだ。

この切り分けがかんじん。

そして、直腸は糞汁が漏れないように縫っていく。

腸管手術なのだ。

膣壁は頑丈に縫っていく。

産道損傷なのだ。

陰部裂傷などというのものではないのだ。

もうひとつ大切なことは、手術前から手術後数日、絶食し、下剤投与し、直腸が便で広げられないようにすることだ。

絶食と下剤投与をきちんとしないとせっかく縫合しても裂けてしまう。

結局、また可哀そうなことになる。

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最近、Veterinary Surgeryに、全身麻酔で行う新たな?方法が報告されているが、画期的な方法だとは思えない。

私は立位で縫えるし、きちんと絶食管理してくれれば治癒しなかったことはない。

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とうちゃん ひどいかぜだな~

 

            

 

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8ヶ月齢の尺骨頭骨折

2019-12-02 | 整形外科

8ヶ月齢の当歳馬を収牧したら馬房で大きな音がして、肢を着けなくなっていた、そうだ。

3日経ってかなり歩けるようになったが、歩き始めは重度の跛行。

普通の尺骨骨折以上に腫れている。

成長板損傷であり、粉砕もしているので出血が多かったのだろう。

手術の前夜にDr.Richardsonにメールを送ってコメントをもらっていた。

「尺骨頭の骨折がひどく難しいわけではないが、”この”症例は最も難しい。」

手術台で仰臥にして患部を切開したら、尺骨頭は斜めに割れて、内外にもずれ、骨片もある。

整復はうまく行き、骨鉗子も有効に働いた。折れ方が斜めに割れていたからだろう。

しっかり曲げた11孔narrowLCPを当ててみるが、これでは近位側に寄りすぎている。

このくらいの位置が良いところか?

近位から2番目の4.5mmcortical screwを入れ、遠位から4番目に4.5mmcortical screwをload positionに入れてcompressionをかけた。

一番遠位にもcortical screwを入れて、他はLHSを入れた。

外側には、Dr.Richardsonのアドバイスを生かして4 hole narrow LCPを当てた。

(この辺りの骨膜は靭帯と一緒になっていて、あまりに分厚いので、その下にLCPを入れた。

が、本当はこの厚い骨膜の上にLCPを置くべきだった、とRichardson教授から指摘された。)

一度立ち上がってまた倒れた。

二度目はしっかり立ったし、歩いて帰って行った。

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術者二人は休みを返上してこの準緊急手術を執刀した。

馬運車のバッテリーがあがったとのことで、手術は1時間遅れで始まった。

片付けして、記録をつけて、Richardson教授に報告とお礼のメールを送って、etc. 2時を過ぎてしまった。

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きのう開腹手術した馬が術後、軽度のPOI。

リドカインのbolus投与と点滴で良くなった。

確認のために胃カテーテル挿入。

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午前中は、

当歳馬の跛行診断。

かなり痛いが大腿骨Subchondral Cystic Lesion だった。

立位、超音波画像下でトリアムシノロン病巣内注入した。

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続いて、すでにX線診断されている当歳馬の大腿骨滑車のOsteochondrosis 。

超音波画像下でヒアルロン酸の関節内注入をしようかと考えていたが、

X線所見異常に超音波所見が悪かったので、関節鏡手術することにした。

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昼、きのうから疝痛の1歳馬の来院。

結腸左背側変位を整復しているところ。

 

          

 

 

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