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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

2歳馬の結腸右背側変位

2023-04-30 | 急性腹症

朝、繁殖雌馬の臼歯摩滅異常。

全身麻酔して歯根間隙の拡張を行う。

        -

2歳馬の疝痛の急患。

朝飼いを食べてから痛い。

転がるほど痛かったが、激烈というほどではない。

フルニキシン効く。

来院して超音波検査で左腎臓描出できず。

右で結腸肥厚は確認できず。結腸動脈も見えない。

直腸検査で・・・・大きい馬で左の腎臓の尾側に指が届くが、腎脾間は十分には触れない。

結腸左背側変位ではなさそう、しかし完全否定はできない。

来院してからは疝痛を見せない。

一旦、帰って様子をみましょうか。

          ー

午後の診療が終わる頃、牧場へ戻ったらまた痛い、との連絡。

再来院してもらって、直腸検査と超音波所見が変わっていないのを確認して開腹。

腹囲はさほど膨満していない。

盲腸が出てこない。頭側へ行っている。

結腸も当たり前の位置ではない。

右側結腸の動脈が外側向いていて、結腸根部から尾側へ走っている。

右背側変位だ。

慎重に引っ張り出す。

もう一度腹腔へ戻して、今度は盲腸結腸ヒダから引っ張り出す。

それで右側結腸、横隔曲と胸骨曲、左側結腸、そして結腸動脈が内側、と整復できた。

          ー

この結腸右背側変位は、現役競走馬でときどきあるらしい。現役競走馬では比率的に多い?

生産地では繁殖雌馬でまれに起こる。

内科治療で治ることがあるとされているが・・・今回のような経過と開腹した印象では、保存療法で治るとは思えない。

        /////////////

モクレン・サンライズ。

たしかに、チューリップ的かも;笑

 

 

 

 


関節鏡手術、大型Xray、開腹(膀胱破裂・結腸捻転・術後盲腸拡張)、PRP・・・一番たいへんなのは検査業務だった

2023-04-27 | 日常

朝、距骨外側滑車が大きく欠けたOCDの関節鏡手術。

関節鏡手術と言えども、骨軟骨片が3cmあったら3cmは切開しないと取り出せない。

初心者の頃は当たり前のことができなかった。

         ー

1歳馬の前肢跛行。

もう半年も続いている。

しかし、放牧は続けている。

全身麻酔で肩関節の良好なX線画像を撮って、病変を把握して、ヒアルロン酸関節注入。

半年前から運動制限していたら、と悔やまれる。

         ー

NMS(新生仔不適応症候群)で長く入院していた15日齢の子馬が、膀胱破裂のようだ、ということで戻って来た。

腹腔穿刺して膀胱破裂をほぼ確定診断するが、腹腔尿は勢いよくは廃液できなかった。

時間が経てば、電解質も乱れ、このもともと弱い未熟仔は参ってしまうだろう。

開腹したら膀胱が臍側から壊死していた。

         ー

この日は、獣医師で検査業務をこなさなければならない。

血液検査91件!

手術室ではさらに急患の分娩翌日の繁殖雌馬の疝痛。

結腸捻転だ。

私は観ている暇もない。

         ー

予定していた浅屈腱炎の競走馬のPRP治療。

それは結腸捻転の手術が終わったらすぐやることにして・・・・・

2日前にやった結腸捻転馬がまた疝痛で戻って来ていた。

胃液逆流があり、盲腸が膨満していて・・・・もう一度開腹しなければならない。

開腹したら、盲腸内容は液状なのだが膨満していた。

colopexyの影響もあり、自分では動けなかったのかもしれない。

          ー

検査が終わって結果をFAXし始めたのは6時をまわっていた。

       /////////

冬眠から目覚めたか。

その模様には何の意味がある?

小型、軽量化、AI付き、全天候対応、自己修復能力、飛翔距離、甲殻付き、自己増殖、etc.

最新式ドローンよりよほど高性能にできている。

人智は自然にとうてい及ぶまい。

 

 

 


こんどは夜中から三頭

2023-04-25 | 急性腹症

日付が替わる前、起こされる。

分娩後20時間の繁殖雌馬が疝痛、治療しているうちに疝痛が強くなった。

直腸検査、超音波検査で異常所見不明とのこと。

          ー

日付が替わって来院。

まだ痛い。

PCV41、乳酸値1.7mmol/l。

超音波で診て、肥厚した結腸壁を確認。

もう1人当番を呼び出して、開腹。

結腸は予想以上に傷んでいた。

2人でさっさと終わらせる。

おかげで、朝、ひと眠りする時間があった。

          ー

朝食を食べようとしていたら、子馬の疝痛の依頼。

地元の牧場なのですぐに来るだろう。

3週齢、まだ小腸捻転を起こす月齢ではないが・・・・

下痢はしていない、腸炎の徴候もない、胃潰瘍になる要因もない、胃拡張の所見もない、親の糞は食べたかも知れない。

ほとんどの小腸は膨満していない。蠕動がある。

重積像も確認できない。

1箇所、膨満した小腸が見えたが、そこも収縮している。

子馬は、腸管手術すると癒着することが多い。できるだけ開腹したくない。

痙攣疝?

ブチルスコポラミンを投与する。

少し落ちついたがまだ痛い。

もう一度、フルニキシンを投与する。

入院厩舎へ入れて様子を観ることにした。

それでもまだ痛くなるようだと手術しなければならない。

腸管が紫色になったら切除・吻合手術になり、予後が危ぶまれる。

            ー

分娩後5日の繁殖雌馬の診察も頼まれた。

分娩後から調子が悪く、貧血と低タンパク血症、軽度の疝痛が続き、ここ数日は発熱もある。

食欲を見せることもあるが、排便が少ない。

超音波で腹水増量なし。

直腸検査したら、結腸骨盤曲が異常な気脹、右に血腫らしきものに触る。

奥で異常な腸の緊張も触るので、

開腹した方が良い。

 でも、先の子馬が厩舎でまた痛がりだした。そっちが先だな。

            ー

子馬は開腹したら空腸中位での纏絡だった。

珍しく回腸部は問題なし、

その上で空腸が浮腫、その吻側は縦に線状に点状出血、その上はリンパ性浮腫なのだろう白く浮腫。

内容を盲腸へ推送する。

できるだけしごかない、擦らないように、持ち上げてニギニギして。

癒着防止剤SCMC(そでぃうむ・かるぼきし・めちる・せるろーす)もかけている。

空腸は全域で蠕動があり、色調も回復した。

温存しても、機能も回復が期待できる。

            ー

続いて、後回しにした繁殖雌馬の開腹。

腹腔内には黒っぽい血様腹水が少量。培養検査へ回す。

大結腸は便秘様。まず引っ張り出して、骨盤曲を切開し、内容を洗い出す。

それで腹腔内がよく触われるようになった。

右の子宮広間膜に血腫があり、少し開口している。

手を入れて中の血餅を掻き出す。

5リットルほどだろうか。

小結腸も膨満しているので、直腸側へ辿ると壊死が始まっていて、少し癒着もある。

腸間膜は破れていない。

分娩で直接ダメージを受けたか、血腫ができる動脈損傷で血流を失ったか・・・・

浣腸してもらって、腸間膜を止血して、小結腸を切断して廃液ホースとして使って、内容を捨てて、

ホースを突っ込んで小結腸全体を空にして、

60cm切除して吻合した。

腹腔内に生理食塩液を入れて、シリコンチューブで吸引して、を繰り返し、腹腔を洗浄した。

トロッカーカテーテルを装着して閉腹。

           ー

夜中から三頭だった。

そういうと大谷君は外野を守ることもあるんだった。

三刀流だよね。

         ////////////

梅一輪 一輪ほどのあたたかさ

朝はまだ息が白い。

          ー

北海道の人は、本州ほど梅を好まないように思う。

開花がサクラと同時期になってしまうため、派手さで負けるのかな。

 

 

 

 

 

 

 

 


盲腸便秘の開腹は左へ傾けるのがコツ

2023-04-23 | 急性腹症

数日前から疝痛をしめしている繁殖雌馬。

分娩後1ヶ月以上経っている。

右で結腸動脈が長い範囲で見える。

結腸右背側変位?

だとしたら内科的治療が成功することがある、とされているが、

この症例は開腹した方が良いだろう。

絶食し、下剤をかけ、待ったあげくに治らないと、それから開腹することになり、乳量も減り、子馬の成長にも影響する。

            ー

開腹したら盲腸便秘が本態で、その結果、結腸が変位していたようだ。

盲腸底が、球状に、固く便秘しているとのこと。

盲腸体を馬の左へ引き出し、盲腸尖を切開し、ホースを突っ込んで内容を軟化させながら排泄させるが、

このとき、馬を左へ傾けるのがコツ。

こうすることで、盲腸底(立っている馬では盲腸の背側部分)までダブダブに洗えるようになる。

この馬の盲腸便秘はとても固く、ほぐすのがたいへんだったようだ。

開腹手術しなければ、破裂して致命的になっただろう。

            ///////////

記録的に暖かかったのに、ここへきて肌寒い。

もう少し。あと少し。

 

 

 


ポニー種牡馬の腕節崩壊を関節固定すべきか

2023-04-17 | 整形外科

地域外なのだが、ポニーが腕節を傷めて、腕節の関節固定の適応ではないか?ということで来院した。

長時間かかる手術で、術後も麻酔覚醒やキャストへの馴致状態をよく診たい。

牧場へのそれから帰った方が良いので、手術するなら午前中が良い。

遠方からなので、前日入りしてもらうことになった。

            ー

来院したら、けっこう歩ける。

私たちがその飼主さんから直接話しを聞くのは初めて。

10日前に腕節を傷めて、負重できなくなった。

1年に1回か2回種付けすることがある。

この10日間でずいぶん痩せてしまった。(でも、やっぱりポニーだからガレては見えない)

放牧地には今も出している。

濃厚飼料も与えている。(蹄葉炎の心配があるときは濃厚飼料はやめた方が良い)

           ー

腕節が内反してしまった。

第二手根骨が割れたことが大きな損傷のようだ。

橈側手根骨と第二中手骨も骨折している。

靱帯損傷も肢軸異常が起きている大きな要因のようだ。

手根骨近位列と遠位列がずれてしまっている。

骨片骨折があるが、骨片を摘出することに大きな意味はなさそうだ。

手根骨に骨増成があり、今回の事故以前から腕節に問題があったことを示している。

            ー

関節固定手術するなら、手根間関節の軟骨を除去し、プレートを2本か3本入れて、手根間関節を固定することになる。

partial carpal arhrodesis

うまく行っても腕節は完全には曲がらなくなる。

しばらくは、かなり痛くなる。

リスクとしては、

・蹄葉炎 特にポニーはとても蹄葉炎になりやすい

・感染 プレートを複数入れる手術なので感染しやすいし、感染すると致命傷になりかねない

・内固定の崩壊や致命的な骨折 これは大丈夫だろうが、麻酔覚醒起立時や手根骨が術前のXrayで見える以上に崩れていたらしっかりした固定ができないかもしれない。術後はしばらくフルリムキャストを巻くことになるが・・・・・

遠隔地なので、サラブレッド生産地とちがって術後に馬の獣医師に毎日診てもらうわけにはいかない。

             ー

話していて、飼主さんがこのポニーを大事にしていることが伝わってきた。

このままではダメになってしまうなら、手術してでも治してやりたい、という意向も理解できた。

ただ、ポニーの様子を観ていると、このままではいずれダメになる、とも断定できない。

今のところ蹄葉炎にはならずに済んでいる。

この10日で痛みはずいぶん軽減されたようだ。

腕節の内反はどんどんひどくなっているわけではなさそうだ。

靱帯が再生されたら、腕節もそれなりに固まるだろう。

蹄の外側に出っ張り extension を付けてやることで、内反を防ぐ方法もある。

             ー

私は、近位指/趾節の関節固定は今まで11例?やってきた。

幸いなことにダメにならずに済んできた。

腕節は、partial carpal arthrodesis を1例やったことがあるが、もともと骨髄炎があった症例で、骨髄炎を抑えきれず諦めた。

関節固定手術は、うまく行かないとよりひどいことになってしまう手術だ。

やらないとどうしようもない症例では決断は難しくないが、ひどくない症例では決断が難しい。

今回のポニーは、手術をしないで経過を観てもらうことにした。

アクシデントでさらにひどく腕節を傷めたり、

青草が伸び出して蹄葉炎になったりしないことを願っている。

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クロフネ・ツツジを植えた。

花も好いが、葉色もあざやか。