地域外なのだが、ポニーが腕節を傷めて、腕節の関節固定の適応ではないか?ということで来院した。
長時間かかる手術で、術後も麻酔覚醒やキャストへの馴致状態をよく診たい。
牧場へのそれから帰った方が良いので、手術するなら午前中が良い。
遠方からなので、前日入りしてもらうことになった。
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来院したら、けっこう歩ける。

私たちがその飼主さんから直接話しを聞くのは初めて。
10日前に腕節を傷めて、負重できなくなった。

1年に1回か2回種付けすることがある。
この10日間でずいぶん痩せてしまった。(でも、やっぱりポニーだからガレては見えない)
放牧地には今も出している。
濃厚飼料も与えている。(蹄葉炎の心配があるときは濃厚飼料はやめた方が良い)
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腕節が内反してしまった。
第二手根骨が割れたことが大きな損傷のようだ。
橈側手根骨と第二中手骨も骨折している。

靱帯損傷も肢軸異常が起きている大きな要因のようだ。
手根骨近位列と遠位列がずれてしまっている。
骨片骨折があるが、骨片を摘出することに大きな意味はなさそうだ。
手根骨に骨増成があり、今回の事故以前から腕節に問題があったことを示している。
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関節固定手術するなら、手根間関節の軟骨を除去し、プレートを2本か3本入れて、手根間関節を固定することになる。
partial carpal arhrodesis
うまく行っても腕節は完全には曲がらなくなる。
しばらくは、かなり痛くなる。
リスクとしては、
・蹄葉炎 特にポニーはとても蹄葉炎になりやすい
・感染 プレートを複数入れる手術なので感染しやすいし、感染すると致命傷になりかねない
・内固定の崩壊や致命的な骨折 これは大丈夫だろうが、麻酔覚醒起立時や手根骨が術前のXrayで見える以上に崩れていたらしっかりした固定ができないかもしれない。術後はしばらくフルリムキャストを巻くことになるが・・・・・
遠隔地なので、サラブレッド生産地とちがって術後に馬の獣医師に毎日診てもらうわけにはいかない。
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話していて、飼主さんがこのポニーを大事にしていることが伝わってきた。
このままではダメになってしまうなら、手術してでも治してやりたい、という意向も理解できた。
ただ、ポニーの様子を観ていると、このままではいずれダメになる、とも断定できない。
今のところ蹄葉炎にはならずに済んでいる。
この10日で痛みはずいぶん軽減されたようだ。
腕節の内反はどんどんひどくなっているわけではなさそうだ。
靱帯が再生されたら、腕節もそれなりに固まるだろう。
蹄の外側に出っ張り extension を付けてやることで、内反を防ぐ方法もある。
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私は、近位指/趾節の関節固定は今まで11例?やってきた。
幸いなことにダメにならずに済んできた。
腕節は、partial carpal arthrodesis を1例やったことがあるが、もともと骨髄炎があった症例で、骨髄炎を抑えきれず諦めた。
関節固定手術は、うまく行かないとよりひどいことになってしまう手術だ。
やらないとどうしようもない症例では決断は難しくないが、ひどくない症例では決断が難しい。
今回のポニーは、手術をしないで経過を観てもらうことにした。
アクシデントでさらにひどく腕節を傷めたり、
青草が伸び出して蹄葉炎になったりしないことを願っている。
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クロフネ・ツツジを植えた。
花も好いが、葉色もあざやか。