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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

Ganbaro Wareware メッケル憩室小腸捻転ほか

2020-04-30 | 日常

朝、難産の依頼。

産道に肢が3本入って来ている、とのこと。

来院してすぐ全身麻酔した。

頭が来ているが、両前肢は腕節が屈曲していて、後肢は2本とも産道へ入って来ている。

前肢を直し、牽引するが、肩以上は出ない。

胸部で切胎し、後肢に産科チェーンをかけて、下半身は反転させて娩出させる。

この場合も、下半身は尾位上胎向と同じように出した方が良い。

そのためには、180°回転させなければならない。

わかる?

             -

そのあと、予定の子馬の肢軸異常のsingle screw 。

             -

そのあと、予定の競走馬の第四中足骨骨折の摘出手術。

             -

子馬の疝痛が飛び入り。

超音波で膨満した小腸いっぱい。

開腹したらメッケル憩室に空腸が巻きついたことによる小腸捻転だった。

このタコの頭のような憩室を切り取って、腸壁を縫って閉じて終了

                 -

その手術が終わるのを繁殖雌馬のひどい疝痛が待っていた。

子馬を運び出してすぐ始める。

PCV55%だ。

間に合うかどうかわからない。

結腸はひどい色だったが、内容を捨てることで回復した。

結腸骨盤曲の粘膜も完全には壊死していない。

あっちで骨盤曲を閉じているあいだに、こっちで大網切除 omentectomy 。

向こうで先の子馬が寝ている。

                  -

次の喉頭片麻痺 Tieback&Cordectomy をやったら1日に全身麻酔6頭目、と思っていたら延期になった。

この時季、急患のために延期になるのは覚悟しておいてもらわないとしかたがない。

それが2回続くかもしれないし、へたすると3回目になることだってあるかもしれない。

                  -

前の晩?

獣医師全員で真夜中まで5時間以上にわたる骨折手術をした翌日がこれだ。

Ganbaro Wareware !!

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コブシ咲く~ ♪

春なのに~ ♪

 

 


真夜中の結腸捻転開腹

2020-04-27 | 急性腹症

土曜日、午前中は顆粒膜細胞腫の卵巣摘出手術の予定だったが、対側の卵巣が活動しているので延期になった。

その後、剖検の嵐。

予定されていた胸膜肺炎の剖検。ひどい。

突然死の1歳馬は腹壁からの腹腔内と筋間への出血死だった。

あと、子宮動脈破裂の繁殖雌馬と盲腸破裂の繁殖雌馬。どちらも分娩事故だ。

解体を手伝う。

馬の体のどこに大きな筋肉が付いていて、

どこが靱帯だけでつながっていて、

骨それぞれの大きさと頑丈さがどのようなものか、

知っていることは馬整形外科にも役立つ。

           ー

昼は、血液検査業務。

その間に、4日齢の子馬の膀胱破裂も来院。

腹水を抜いてから開腹手術。

途中、人手が要るところだけ手を貸す。

その後、飛節OCDの関節鏡手術。

           ー

その夜、1時過ぎ、繁殖雌馬の開腹手術に呼び出された。

朝から痛かったらしい。ひどくはなかったのだろう。

夜遅くなってひどくなり、真夜中に来院することになった。

結腸捻転だった。

が、結腸の虚血性損傷はひどくない。

Colopexyして閉腹して終了。

入院厩舎に輸液を吊って、家に帰って4時。

もう夜が明けるだろう。

すぐに寝付けるわけではないが、眠っておいた方が良い。

免疫を落とさないためには、睡眠と食事と運動、だそうだ。

もちろん過労は良くありません;笑

         //////////

5年使ったデジカメが壊れた。

このスマホの時代に、と思うが使っていたデジカメの新機種をポチした。

気に入ってたから・・・・というより取り扱い方法がまったく変ると慣れるのがたいへんだから;涙


long long long days

2020-04-23 | 急性腹症

入院厩舎に新生仔不適応症候群NMSの子馬が2頭居て、具合の悪い結腸捻転の繁殖も居て、夜は8時ころに診に行こうと思っていたら、

他の獣医師が診て連絡をくれたので、

じゃあもう少し後にしよう。と思ったら、疝痛馬を診て欲しいとの依頼。

診察して手術適応ではないと判断したころ、入院厩舎から「尿カテが抜けた」との連絡。

輸液を現場の先生に頼んで厩舎で尿カテを入れ直す。

            ー

一旦家に戻ったら、もう1頭の子馬の「酸素と輸液のラインが抜けた」との連絡。

入院厩舎へ行くと、その子馬は暴れる元気がある。

じゃあ、酸素も輸液も中止、ということにして取っ払う。

結腸捻転の術後の馬は状態厳しい。

            ー

朝、分娩後の繁殖雌馬が不調との依頼。

入院馬を診る暇もなく診察を始める。

一般状態はひどくはないが、腹膜炎を起こしている。

腹水の増量はひどくないが、4本目の腹腔穿刺針から腹水が取れた。

消化管破裂のようだ。

0wnerと話したら「開腹してみて欲しい」とのこと。

当番者を呼び出して開腹する。

小結腸の破裂だった。腹膜炎はまだひどくない。しかし・・・腹腔内には消化管内容がある。

諦めた。

            ー

手分けして入院馬の検査と治療をする。

午前中は、予定していた下顎骨折が癒合した子馬のプレート除去。

その間に難産も来たが、枠場で別チームが引っ張り出した。

続いて呼吸障害の繁殖雌馬。永続的気管切開。

私は午後は血液検査業務。

診療チームは去勢。

続いて右側の喉頭麻痺の手術予定だったが、繁殖雌馬の疝痛が来院したために延期。

その繁殖雌馬は数年前に永続的気管切開してある馬だった。開腹手術歴もある。

開腹したら癒着による小腸閉塞だった。大手術になる。

            ー

入院厩舎で結腸捻転の手術後の馬がいよいよ状態が悪い。

TV電話で廃用の手続きをするが、TV電話する機会は多くないので手間取る。

もう危なくて入院馬房へ入れなくなり、馬は倒れて死んだ。

トラクターで引っ張り出して剖検する。

結腸粘膜は広範に壊死していて、左側結腸は筋層も壊死が始まっていた。

大結腸亜全摘まで決断する状態ではないと判断したのだったが・・・・

            ー

癒着疝の手術中、2歳馬の眼を診てほしいとの連絡。

午後4時に予定する。

午後4時には別な繁殖雌馬の疝痛も来る予定になっている。

2歳の眼を先に診て、終わって繁殖雌馬の疝痛を診る。

これも開腹手術だ。

            ー

開腹手術が始まって、

3日連続の夜間当番が終わった私は引き上げた。

わりと元気;笑

昔はもっとひどい連続勤務をした。

それに比べればずっとましだ。

 


long long Day

2020-04-21 | 急性腹症

夜中2時前に起こされる。

40日齢の子馬が激烈な疝痛とのこと。ひどいのでまっすぐ家畜高度医療センターへ来たい。

フルニキシン投与するが無効。

鎮静剤でおとなしくなったので、超音波検査。

膨満した小腸が見えた。

次の当番者を呼び出す。

そして、鎮痛剤投与後10分ほどでまた痛くなり始めたのを確認して3人目の当番者も呼び出す。

子馬は腸炎や痙攣疝でも一時的にひどい疝痛を見せることがあるので、慎重に、しかし緊急で開腹の判断をしたいのだ。

                  -

開腹したら空腸から回腸にかけてがいくつかのループで絡んでいた。

なんとか解けて、

回腸を盲端にする。

壊死した空回腸を廃液ホースに使って腸内容を捨てる。

空腸を健常部で切断する。

空腸を盲腸へ端側吻合する。

腸間膜を回腸盲腸ヒダ、回腸断端、空腸腸間膜に縫い付けて閉じる。

と、周囲を触っていると何か固まりに触れた。

腸間膜のリンパ節のひとつが5cmにほどに腫れ上がっている。

ロドコッカスによる腹腔内膿瘍だろう。

術前の白血球数が33800あったので、飼い主さんにはロド膿瘍による腸閉塞の可能性も警告してあった。

まだ初期なので、切除できるかもしれない。

大きな血管を切らないように(切ったら出血するだけでなく、その先の小腸が血行を失い壊死するかもしれない!)、

メッツゥエンバウム剪刀で剥離して摘出した。

破らずに済んだ。

                -

終わったらもう夜明け。

朝食を摂ってから、入院している2頭の子宮穿孔・腹膜炎の繁殖雌馬の腹腔洗浄をする。

2頭とも経過良好。

                -

午前中は、2歳馬の喉頭片麻痺のTieback&Cordectomy。

その手術前に繁殖雌馬の疝痛の依頼。ひどく痛くて手がつけられない。

Tieback&Cordectomyが終わってすぐに開腹手術。

結腸捻転だった。

結腸骨盤曲あたりは粘膜は完全に壊死していて、色調も完全には回復しないが範囲が限局しているので大丈夫だろうと判断した。

                -

終わって、片付けもほどほどに私は今週は検査業務。

67検体。

今シーズン最多。

顕微鏡を覗きながら天気を気にしていたら雨が降り出した。

相棒を玄関フードに入れてやりに家に走って戻って、フードもやる。

飼い主は昼食も食べる時間はないんだけど;笑。

               -

午後3時。

入院馬に抗生物質を投与して退院して良いと告げる。

あとになったら診察する暇もなくなるかもしれないから。

               -

午後は子馬の肢軸異常の手術があったが私は手伝う暇もない。

他に2歳馬の腰痿と、喉頭片麻痺の検査が来たのは観た。

夜中から働き続けているわりには元気;笑

               -

1歳馬の後肢の跛行。

股関節が疑われているが、後膝の関節炎だった。細菌性ではない? 血液検査で炎症像がまったくない。

               -

4時に、時間をずせてもらった6日齢子馬の飛節の細菌性関節炎。

ということだったが、ひどい。

後膝も関節炎を起こしていて、それよりも下腿部でフレグモーネが化膿している。

低IgG。

子馬が跛行したらまず細菌感染を疑わなければならない。

子馬の細菌性関節炎や骨髄炎は敗血症なのだ。

USAでは Septic Arthritis と呼ばれている。

               -

そこへさらに繁殖雌馬の疝痛の依頼。

きのうが分娩予定日だったが分娩徴候はない。

来院したらポンポコリンのおなか。呼吸が苦しい。

倒馬薬を投与しても倒れようとしない。

寝たらさらに苦しくなるのがわかっているから末期の馬は寝ないのだろう。

開腹したら結腸捻転だった。

手術は一人で終わらせる。

               -

新生仔不適応症候群の子馬も入院してきている。

前夜生まれて一度も立てていない。 

               -

夜中から働き続けた1日も終わり。

18時間労働でした。

           ///////////////////////

紫花玉咲きサクラ草。

 

 

 


腸石症

2020-04-18 | 急性腹症

もう分娩予定日の繁殖雌馬が朝から疝痛で、直腸検査すると腸石を触る、とのことで来院。

おなかはポンポコリン。

臨月の膨らみだけではなく、ガスも張っている。

小結腸へ直腸で閉塞が起こるとこうなる。

            ー

尾椎硬膜外麻酔をする。

ブスコパン(臭酸ブチルスコポラミン)も投与する。

そのことで直腸がゆるんで、指に触れる腸石をつかめるか、と思うがつかめない。

            ー

潤滑剤で浣腸してみる。

腸石に張り付いている粘膜が剥がれて、腸石が移動するかと思うが、直腸が拡張するだけで腸石は動かない。

しかたがないので、流動パラフィンを2リットルだけ経鼻投与する。

通過すればギトギトでわかるし、腸石の周りを通過するならまだ肛門から腸石が出てくる希望がある。

            ー

夜も疝痛が続いて呼ばれた。

フルニキシンを投与した。

            ー

早朝5時。

診療室へ連れてきて直腸検査してみる。

夕べと変らない。まったく同じ場所へ張り付いている。

このままだとどこか腸が破裂して予後不良になる可能性大。

しかし、開腹しても妊娠末期の馬だ。とても直腸へはアプローチできない。

ただ、大結腸を空にし、小結腸を上位から浣腸し、腸石を水様性の内容で押すことができるかもしれない。

            ー

開腹して小結腸をたどると直腸内の腸石を触れる。

それを直腸側へ固定しておいて、直腸側から掴もうとしてもらうが、できない。

大結腸骨盤曲を切開して内容を捨てて、大結腸から横行結腸に水を入れる。

予想に反して、固形物は多くなかった。

その水を直腸へ送るが腸石は動かない。

小結腸を切開して、そこから水を直腸へ送る。

それでも直腸の腸石は動かないし、水が腸石の周りを通過することもない。

しかし・・・・・腸石を掴むと術創から直腸が見えた。

これならもっと尾側まで切開すれば術創から腸石部を出せるかも。

乳房ぎりぎりまで術創を伸ばし、腸石ごとひっぱると術創から腸石が出せた。

楽々、じゃないよ。

そして3人目の術者に直腸を切開してもらい、腸石を取り出した。

あとは頑丈に縫合閉鎖する。

 

直腸切開部を慎重に二重閉鎖した。

      

                      ー

妊娠末期の馬でどうして直腸切開・閉鎖ができたのかわからない。

普通は分娩後の馬でも無理だ。

          ー

ツルツルでとても硬い。

肛門から器具を入れて直腸内で砕けるか?と考えたりもしたが、とても無理。

金属用の鋸で切ったのがこの図。

何か芯があって、そこに結晶のように放射線状に糞が付いて、その周りに少しずつカルシウム分が付いて、できたように見える。

北海道では珍しい。

私は症例としては初めて見た。

疝痛馬の診療も、手術も、解剖も、日本で最も多くやってきた私がだ。

                 -

腸石症は寒い地域では少ない、とされている。

濃厚飼料給与が不可欠で、それが大腸内のpHを下げるので、腸石ができにくいからだ、とされている。

しかし、北海道にもドサンコのように濃厚飼料はなしで飼われている馬も居るので、その説明だけでは無理がある。

本州の乗馬に腸石症があるのは、ルーサンの過給と関係すると思われる。

ルーサンは栄養価は豊富だが、バランスが取れた飼料ではない。

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建物の形になってきた。

コロナウィルス禍が収まらないと外部から研修を受け入れられないだろうが、

いつか、学びの場所になれば好いね。