馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

当歳馬の球節のガングリオン

2024-08-30 | その他外科

当歳馬の球節の背側が大きく腫れて、超音波で観ると結合織の袋状組織ができている。

血腫からガングリオンができてしまったのだろう。

外科的に摘出しないと治らない。

当歳で、球節で、病巣は小さいし、ガングリオンそのものは大きいので摘出はたいへん。

腱を傷つけないように、関節へ破らないように、根気が要る作業だ。

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ブログの右上に、「ガングリオン」と記入し、その右の枠で「このブログ内で」を選択してもらうと、

今までのガングリオン類似症例の記事が出てくる。

1歳馬の腕節が多い

私がガングリオンや滑液腫にこだわる理由も書いてある;笑

競走馬の球節も手術したことがある。

成書の記載も紹介している。

1歳馬の後膝のガングリオン。

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自分でも忘れているのだけれど、いろいろたくさん診てきたものだ;笑

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まだ蒸し暑い日がある。

夏の台風が九州に停滞している。

ツリバナの実がなって、葉が色づき、秋を待っている。

 

 

 

 


盲腸結腸重積は葉状条虫症 予防するには葉状条虫対策をするしかない

2024-08-27 | 急性腹症

1歳馬の疝痛。

かなりひどくて、発見して2時間ほどで来院し、超音波で重積が確認され即開腹。

盲腸結腸重積だった。

発症してから早いので整復できるかと思ったが、1時間ほどがんばってもほとんど抜けてこなかった。

そのうち右背側結腸が破裂してしまいあきらめた。

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解剖場ではなんとか整復できた。

葉状条虫が大量に寄生している。

それも盲腸全体に。

それで、盲腸が肥厚し、動きがおかしくなって、反転し、結腸に飲み込まれるのだ。

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開腹手術中はあれほどがんばっても整復できなかったのに、死亡後には整復できたのは、麻酔中でも腸壁に収縮があるからかもしれない。

次回はブスコパン(ブチルスコポラミン)パドリン(プリフィニウム)

を投与してやってみよう。

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盲腸結腸重積を救命する外科手技はともかく、

発症させないようにするためには牧場の葉状条虫対策が必要だ。

この1歳馬は1.5ヶ月前にイベルメクチンとプラジクワンテルの合剤を投与していたそうだ。

その前にはイベルメクチンを投与している。

・葉状条虫はプラジクワンテルに耐性を示し始めているのかもしれない。

・濃厚汚染されていると、駆虫してもまたすぐ大量寄生するのかもしれない。

・きちんと駆虫剤を飲み下さなかった可能性もある。

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そして、もう駆虫薬だけに頼った寄生虫対策は無理がある。

放牧地とパドックが、葉状条虫に汚染されないよう対策する必要がある。

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私が退勤する道で側を通る牧場さんは、いつもその時刻に放牧地に軽トラックを止めて、馬糞を拾っている。

偉いな~ と感心して見ている。

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今日は、台風接近で雨と風のようだ。


毛球症の切開

2024-08-27 | その他外科

1歳馬の肩甲部に腫瘤がある、とのことで来院。

部位としては珍しいが、毛球症(毛巣洞)のようだ。

少しずつ大きくなってきたみたい。

超音波で観たが、毛球症がどのように見えるか知らなかった。

それでも、いかにも、という像だった。

で、やはりそのとおり。

鎮静

除毛、洗浄・消毒

局所麻酔

切開

一部内反している皮膚組織は切除

デブリド・洗浄

縫合

切開以降は、今年卒業した獣医さんにやってもらった。

獣医さんは覚えることが多くてたいへんだ。

ひとつずつ身につけていくしかない。

上達することを楽しみながらやっていけるとイイネ。

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う~ん、これはなんという花でしょう?

 

 


大結腸腸間膜欠損の畸形

2024-08-25 | 急性腹症

当歳馬の疝痛。

大結腸腸間膜が欠損していた。

このような大結腸の腸間膜に孔が開いているのは、繁殖牝馬で数頭、見たことがある。

何かの拍子に破れるのか?

と思っていたが、どうやら先天性、生まれつき、畸形のようだ。

この当歳馬の腸間膜欠損の程度はひどい。

こうなっていると捻れやすい。

捻転により傷んでしまっている部分もあったので、切除することになった。

その後の経過は良好だそうだ。

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先日は、北海道みなみ内部の研究発表会。

インターンシップの実習生も一緒に聴講。

私は、剖検しなければいけなかったので中座したが、いくつかの発表を聴けた。

みなさん熱心に自分の症例をまとめていて感心した。

ただ、内容、発表のまとめ方、はもう少し、かな。

それは普段の診療のレベルを現しているのだ。

そして、それは臨床獣医師としての生き方を現してもいるのだと思う。

 


放牧地の馬糞を拾い集める方法 Manure vacuum

2024-08-15 | 馬内科学

もう駆虫剤だけに頼って寄生虫対策をするのは無理だ。

馬回虫がイベルメクチンに耐性を示すことは確認されているし、

葉状条虫も、プラジクワンテルにも、ピランテルにも耐性が現われるらしい。

小円虫は、海外ではすでに駆虫するのが難しくなっている。

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放牧地の馬糞を拾わなければいけない時代になっている。

人手不足の昨今、そんなことできない、という声も聞く。

海外ではこんな機材も開発されている。

Greystone manure vacuum 

紹介され必要性が書かれているのはこちらのHP

HONDAのエンジンが使われている。

日本から手に入れる方法もあるはず。

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ハローがけして、糞便をちらかし、乾燥させて寄生虫卵を死滅させ、不食域を作らせない、という方法もある、と言う方がいるかもしれない。

しかし、これはとても乾燥した気候の地域で、かつ放牧密度が低い牧場なら一定の効果があるかもしれないが、日高の現状では寄生虫対策としては効果がないだろう。

多くの虫卵は乾燥に耐え、特に回虫卵は乾燥、低温・凍結に耐えることが知られている。

日高の気候では、72時間以内に感染能力を持つ仔虫になり、草と一緒に馬に採食されてしまう。

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やはりこれを輸入して普及させるのが良いと思う。

費用と手間がかかるが、馬1頭をダメにしたり、開腹手術が必要になったりすることに比べたら安い。

Steffen Peters talks about Greystone Maxi Vac