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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

北海道産業動物獣医学会2018

2018-09-30 | 学会

北海道産業動物獣医学会だった。

その前日はプロダクションメディスン研究会だった。

3日間、座りっぱなしは体に悪い。

大勢の人に会って、刺激を大量にもらうので夜は眠れない。

安っぽいビジネスホテルだったが、部屋に馬の絵が飾られていたので気に入った;笑

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さて、あまりに多くの情報や刺激や知識を受けた3日間だったが・・・・・・

耐性菌の問題と、抗生物質の”慎重使用”は強調され、発表の中でも”慎重使用のために”とか、”慎重使用につながる”とか述べている発表者が多かった。

あんたがやっていることは慎重使用にならないだろ?と突っ込みたくなる部分もあった。

しかし、”慎重使用”が常識のように語られるのは良いことだ。

牛の肺炎を抗生物質で予防しようとか、

馬の輸送熱を抗生物質で予防しようとか、

そういう発表はし難くなるだろう。

私ひとりが手を挙げてインネンをつけているようにコメントせずに済む;笑

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ただ、畜産分野の抗生物質のもっとも多くは、豚や鶏に飼料添加されて与えられている。

それを規制しないと畜産分野の抗生物質を減らすことはできない。

獣医臨床で使われる抗生物質と混同しないようにしてもらいたい。

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若い獣医師たちが多くの良質な発表をしていたのに感心させられた。

発想と言い、遂行する努力と言い、発表のまとめ方と言い、素晴らしいものだった。

発表態度も格段に良くなったように思う。

以前は下を向いて原稿を読んでいる演者が多かったものだけど。

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私はこの17年間やってきた大結腸切除の症例について報告した。

馬は大結腸がなくても生きていける、と簡単に思われても困るし、

やっぱり大結腸がないと生きていけない、だから結腸切除なんてしてもダメなんだ、と思われても困る。

やるべきときにはやるべき手技だから、できるようになっておくべきだ。と述べたのだけど、

どうも信じてもらえなかったようだ;泣笑

術後について、もっと詳細に調べて、文献記述も含めて考察して、学術報告として学術誌に載せなきゃだめだね。

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仕事復帰は土曜日。

午前中、3歳競走馬の腕節骨折の関節鏡手術。私は執刀ではない。

昼、血液検査業務。私は溜まった労務管理ソフトの処理。

午後、1歳馬の飛節OCDの関節鏡手術。私は執刀ではない。

夕方、2歳競走馬の”肩”跛行の大型X線撮影。肩は異常なし。

神経ブロックすべき跛行なのだが、休み明けにうるさい2歳馬に神経ブロックする気がしなかったし、

夕方からじゃあ跛行診断しているうちに日が暮れる。

 

 

 


第三中手骨遠位のSCL  PRP療法はじめました

2018-09-24 | 整形外科

第三中手骨の遠位関節面に軟骨下嚢胞性病変 Subchondral Cystic Lesion が見つかった2歳馬。

関節内のブロックで跛行が消えたそうだ。

屈曲させて、外内方向でX線撮影した。

透過性が亢進した部分が病変だ。

この位置なら、屈曲させておけば関節鏡手術で開口部からデブリドできる。

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これらの撮影は、管電圧を60kvに落として撮影した。

80kvで撮影するよりコントラストが強い描出ができる。

DRのデジタル画像処理でコントラストを強くするより鮮明にSCLが見える。

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珍しく関節鏡手術を助手つきでやって、球節を屈曲させてもらっておいて病変をデブリドした。

灌流液をエアに切り替えて、関節液や灌流液を排出させて、病巣にPRP Platelet-Rich Plasma 多血小板血漿を注入した。

そう、大谷君が肘の靭帯損傷に受けた治療方法だ。

血小板には組織の治癒を促進させるサイトカインほかの生理活性物質が含まれている。

SCLが埋まるのを促進してくれることを期待している。

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『冷やし中華はじめました』 の季節じゃないけど、”PRP療法はじめました”。

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地元獣医師会では、帯広畜産大学産業動物臨床施設の見学と研修を企画しました。

10月31日です。

お隣の獣医師会会員諸氏にも案内が届くはず。

super な指導医も赴任されるらしい。

一度自分の目で観ておいても損はないはず。

 

 


大腿骨SCLの関節鏡デブリドの1年後のスクリュー固定

2018-09-24 | 整形外科

1歳の秋に大腿骨SCL Subchondral Cystic Lesion を関節鏡でデブリドした育成馬。

それから半年以上休養して、調教を始めたらキャンターで患肢がついてこない。

X線撮影しなおしたら・・・

SCLの透過性はいくらか落ちている。が、埋まっているとは言えない。

開口部も狭くなっておらず、関節面の陥凹もある。

尾頭方向でも、同様。

SCLは深く、大きく、開口部も広い。

期待したようなSCLの治癒機転(周囲から埋まって、開口部が閉じること)は働かなかったのだ。

今度は、スクリュー固定することにした。

肢を屈曲させるとSCLの位置を確認しやすいが、尾頭方向で透視装置を使ってドリリングするためには、肢はかなり伸ばしておかなければならない。

スクリューの長さの選択が難しかったが、しっかり効いた。

SCLを貫通したのは、ドリリングしているときの感触でもわかった。

内側の半月板は超音波で観たが、異常はなかった。

今度は埋まって、跛行が再発しなければ良いのだが。

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尺取虫、だよね?

モクレンの葉を一匹でほとんど食べてしまった。

モクレンはだいじにしてるんだよ。許せない。

 

 

 

 


1.5ヶ月齢の黒毛和種子牛の気管狭窄

2018-09-23 | 牛、ウシ、丑

1.5カ月齢の黒毛和種子牛。

呼吸が苦しい。

お産は・・・・「逆子(尾位)だった」。

キシラジンを投与して、横臥にしてX線撮影。

あ~やっぱり肋骨骨折による気管狭窄だ。

胸腔の入り口で気管が狭くなっている。

第一肋骨が逆「く」の字型に曲がって、中央部は太くなっている。

しかし、右か左かわからない。

裏返して撮影してみる。

DRのフラットパネル(アナログXrayのカセットにあたる)から離れている側は拡大されて写るはず。

どうやら折れているのは左側のようだが、確信が持てない。

仰向けにして撮影してみる・・・・がわかりにくい。

気管に内視鏡を入れたら、左側で上下に潰れている部分があった。

脇を触診したら、左の第一肋骨当たりに塊状のものを触った。

X線画像では第二肋骨も折れているようだが、狭窄を起こしているのは第一肋骨だろうと思われる。

手術することにした。

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今日は、疝痛の繁殖雌馬の来院。21歳、空胎。あきらめた。

Tieback&Cordectomyのre-check。よい仕上がりだった。

2歳競走馬の去勢。

午後は、1歳馬の鼻骨陥没骨折のプレート固定。思った以上に陥没していた。

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実習生は居なくなった。

来週は北海道獣医師会の三学会。

再来週は、外部の獣医師が研修に来られる。

うちも新たな獣医さんが赴任する。

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夜明けが遅くなった。

朝は肌寒い。

そろそろ秋だ。

 

 

 

 


眼瞼、耳周囲、頬、などのEquine Sarcoid

2018-09-19 | その他外科

きのうは、

6ヶ月前に中足骨骨折をLCP固定した当歳馬のプレート除去。

黒毛和種子牛の肋骨骨折による気管狭窄の診断。後日手術する。

午後は、

1歳馬の大腿骨軟骨下嚢胞状病変 Subchondral Cystic Lesione のX線診断。後日手術する。

5歳競走馬の腕節の変形性関節症 Degenerative Joint Disease の関節鏡手術。

やれやれ、診療は忙しさが続いている。

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これは先日来院した15歳繁殖雌馬の眼瞼の腫瘍。

依頼の話では、扁平上皮癌 SCC ? と思ったが、診たら馬類肉腫 Equine Sarcoid で間違いないだろう、とほぼ確信できた。

SCCはその名のとおり上皮性で瞬膜にできることが多く、たまに眼結膜などからも発生する。

この馬は眼瞼の皮下にできている。(結節型)

おまけに、耳の付け根にもEquine Sarcoid の特徴的な病変がある。(疣贅型)

頬の病変もSarcoid だ。(不顕性型)

Equine Sarcoid は牛パピローマウィルスによって引き起こされる、とされている。

外科的に切除や摘出をおこなっても、再発する率がひじょうに高い。

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瞼の結節は、もう眼瞼結膜を破りそうだ。

そうなると角膜が傷つき始めるだろうから、もう放置はできない。

しかし、マージンをとった完全な摘出はできそうにないので、瞼の結節をできるだけ摘出して、それを凍結して頚側皮下に埋め込む免疫療法をすることにした。

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立位でできなくはない。

5mm角に切った腫瘍塊を、凍結し、融解させてから頚側皮下に埋め込んだ。

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この方法は日本では1例だけみごとな成功が報告されている;笑

この免疫療法は3-4ヶ月後に効果を現す。

期待して待ちたい。

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9月10日夕方、小雨が降って寒かったので薪ストーヴ初焚き。

さすがにちょっと早すぎたかも;笑