高度免疫血漿投与で仔馬をR.equi肺炎から守れるか?予防できるか?
総括的文章が昨年Equine Veterinary Journal に掲載された。
Equine Vet J 2023 May;55(3):376-388
The bacterium Rhodococcus equi causes pneumonia in foals that is prevalent at breeding farms worldwide. In the absence of an effective vaccine, transfusion of commercial plasma from donor horses hyperimmunised against R. equi is used by many farms to reduce the incidence of pneumonia among foals at farms where the disease is endemic. The effectiveness of hyperimmune plasma for controlling R. equi pneumonia in foals has varied considerably among reports. The purposes of this narrative review are: (1) to review early studies that provided a foundational basis for the practice of transfusion of hyperimmune plasma that is widespread in the United States and in many other countries; (2) to summarise current knowledge of hyperimmune plasma for preventing R. equi pneumonia; (3) to provide an interpretive summary of probable explanations for the variable results among studies evaluating the effectiveness of transfusion of hyperimmune plasma for reducing the incidence of R. equi pneumonia; (4) to review mechanisms by which hyperimmune plasma might mediate protection; and (5) to consider risks of transfusing foals with hyperimmune plasma. Although the weight of evidence supports the practice of transfusing foals with hyperimmune plasma to prevent R. equi pneumonia, many important gaps in our knowledge of this topic remain including the volume/dose of hyperimmune plasma to be transfused, the timing(s) of transfusion, and the mechanism(s) by which hyperimmune plasma mediates protection. Transfusing foals with hyperimmune plasma is expensive, labour-intensive, and carries risks for foals; therefore, alternative approaches for passive and active immunisation to prevent R. equi pneumonia are greatly needed.
Rhodococcus equiという細菌は、世界中の生産牧場に蔓延し、子馬に肺炎を引き起こしている。
有効なワクチンがない状況で、R. equiに対して高度に免疫されたドナー馬からの市販の血漿輸血は、この病気が蔓延している多くの牧場で肺炎の発生を減らすために多くの牧場で行われている。
R.equi肺炎を抑制するための高度疫血漿の有効性は、報告によってかなり異なっている。
この記述総説の目的は、
(1)米国および他の多くの国で広く普及している過免疫血漿の輸血の実践の基礎を提供した初期の研究を総括すること。
(2)R.equi肺炎を予防するための高免疫血漿に関する現在の知識を要約すること。
(3)R.equi肺炎の発生率を減らすための高度免疫血漿の輸血の有効性を評価する研究間のさまざまな結果の考えうる説明の解釈的な要約を提供すること。
(4)高免疫血漿が防御を媒介する可能性のあるメカニズムを検討すること。
(5)子馬に高免疫血漿輸血するリスクを考慮すること。
R. equi肺炎を予防するために仔馬に高度免疫血漿を輸血する行為を支持する証拠の重みはあるが、輸血する高度免疫血漿の量/用量、輸血のタイミング、高度免疫血漿が防御を媒介するメカニズムなど、このトピックに関する知識には多くの重要なギャップが残っている。
仔馬に高免疫血漿を輸血することは、費用がかかり、労働集約的であり、子馬にリスクを伴う。
したがって、R. equi肺炎を予防するための受動的および能動的免疫の代替アプローチが非常に必要とされている。
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ワクチンがない現状では、高度免疫血漿投与による予防は多くの牧場で行われているし、それなりに成果をあげているのだろう。
しかし、あまりにも費用と手間がかかりすぎる。
そして、効果は投与すればほぼ発症しない、などというほど鮮明なものではない。
新生仔馬に相当量の血漿輸血を行うのはショックなどのリスクがある。
別な方法が欲しいものだ。
という結論。
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異論はない。
1990年代からかなり使われてきたR.equi高度免疫血漿投与。
効果はあるが、決定的なものではない。
R.equi肺炎を減らし、おそらく重症化も防ぐが、投与した仔馬でもかなり発症する。
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多くの仔馬に投与するのではなく、感染仔馬、発症仔馬に治療目的に選択的に使えないか?
おそらく期待できるほどの効果はない。
投与しないよりはした方が良いかも知れないが、潜伏期間があり、症状を現しにくいこの病気の性質から言って、感染の非常に初期に投与するのは難しいし、
発症した仔馬はかなりの免疫応答をしている。
そこへ高度免疫血漿を投与しても、治療効果はさほど期待できない。
これだけ高度免疫血漿についての調査・研究が行われているが、治療効果について云々した研究や調査報告はない。
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R.equi強毒株の病原性は、膿瘍を作り、膿瘍の中は血行がないので免疫成分も届かず、抗菌剤も届かないことが1つ。
膿瘍ができてからでは、免疫成分の血中濃度を上げても効果は出にくい。
もう1つの病原性は、免疫細胞に貪食されても殺されずに生き残ること。
これについても、高度免疫血漿と言えども、細胞内での殺菌力を改善する成分は含んでいないのだろう。
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だから、今は、多発牧場をなんとかしたいなら、多くの仔馬に生後できるだけ早く、予防的に高度免疫血漿を十分な量(おそらく2㍑)投与するという使い方をするしかない。
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よ~く考えよう
だいじなことです。