馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

カヌー犬ガクの生涯 ともにさすらいてあり

2014-08-09 | インポート

Photo野田知佑、おそらく日本で一番有名なカヌーイスト。

わがままな人なんだろうな、と思う。

やりたいことをする。

それが危険と苦難をともなうことであっても。

やりたくないことはしない。

それが孤独と世間との軋轢につながっていても。

その行動と生き方の潔さが、面白くてかっこよく見えるので、そのエッセイもとても人気がある。

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世界ではじめてカヌー犬と呼ばれたガク。

ペットではなく、相棒として暮らした犬の回想記だ。

「ガクはぼくのペットではなく生活の相棒なのだ。」

「可愛い」とは一度も表現されていないが、とても敬意をもって扱われ、大切にされた。

死んだあと毛皮はチョッキにされ、犬歯は育ての親、椎名誠にゆずられた。

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擬人化などされてないが、この本の中で何度かガクはしゃべっている。

アラスカの荒野で笑って、「文句ない。文句ない。」

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ガクは何度も行方不明になっている。

アラスカでも日本でも。

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ガクは人の手をくわえ気持ちを伝えた。

「椎名にとってガクの犬歯の感触がガクの象徴だったのだろう。」

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12歳になって老境に入ったガクをアラスカへ連れて行くにあたって。

「われわれは安楽に死ぬために生きているのではない。犬も同じではないか。」 

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ガクはすくなくとも3匹の雌犬とのあいだに19匹以上の子犬を残した。

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ガクは14歳になってフィラリアの症状が悪化して死ぬ。

決して短命ではないが、フィラリアの予防をしなかったのを野田さんが悔やんでいるのがわかる。

「わかれ」とされた最終章は、抑えられた悲しみに満ちている。

「お前の一生はなかなかのもんだ。」

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このエッセイの中には、西洋と日本、あるいはアジアでの、旅行中での犬の扱いや、変わったことをしている者への対処の差がところどころでてくる。

ひょっとするとそれは、農耕民族と狩猟民族のものの考え方の差なのかとも思う。

集団で農作業し、変わったことをされると村八分にしようとする農耕社会のしばりのきつさ。

一方、変わったことをする冒険者が新しい猟場を見つけたり、獲物をしとめるのを認めてきた狩猟民族。

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犬の幸福、犬を飼う人間の幸福とはなんだろう。飼い主が犬と一緒に何の拘束も受けず自由に暮らし、遊ぶことに尽きるのではないか。」P8066516

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別にアウトドアやカヌーに興味がなくても、犬を飼っている人には読んでみてもらいたい。

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午前中、飛節OCDの関節鏡手術。

午後、私は会議。

来週も続々と関節鏡手術。

飛節のOCDと競走馬の腕節のchip fracture 。

P7206438

 

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輸液の選択についての考察 説明と総論

2014-03-24 | インポート

さてPamela Wilkins先生の考察。

輸液についての概論としてもまとめられているし、この調査についての説明でもあるので、最初の部分も訳しておく。

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静脈内輸液は患畜にいくつかの目的で投与される。

失われた循環血液量(出血、感じられる、あるいは感じられない体液喪失)の補充、

全体液の欠乏(脱水)の補充、

電解質喪失の補充と電解質異常の 補正、

代謝上の酸-塩基平衡の異常(高乳酸血症、代謝性アシドーシス)、

非経腸栄養の供給 (ブドウ糖、アミノ酸としての蛋白、脂質、ヴィタミン、微量元素)

低浸透圧状態の補正(低蛋白血症)、

特異的な病態の治療

何を目的に、どの病態に、どの静脈輸液を投与するかを決めることは多くの総説と考察の課題とされてきた。

しかし、つまるところ、 馬の臨床においては直ちに治療を必要としている症例に投与できる静脈内投与剤を選ばなくてはならない。

内科専門医と緊急集中治療専門医が、彼らの急患治療の経験に基いて、最初の投与にどの輸液剤を使うか、についての情報を、馬臨床獣医師に提供することを目的としてこの調査を進行した。

送られた回答から、多くの専門医にとって血液学的検査の結果、診察所見、経過記録、がないことに不満があるのは明らかであった。しかし、この状態は、専門医たちが潜在する問題を最大限に推察しなければならないという、より現実的に往診での状況を創り出した。

 次のセクションでは、専門医たちに評価されたそれぞれの臨床的状況を4つのグループに分ける;

胃腸系の障害、重篤な病態の新生子馬、中枢神経系(CNS)損傷、そして腎障害。

それぞれのカテゴリーで生理学を総括し、専門医たちの選択について検討する。

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私は血球計数装置(簡易にPCVも計れる)があるところで診療しているし、

急げば生化学検査もすぐに手に入る。

しかし、往診先で重症馬を診察しても血液検査所見は手に入らない。

心拍、皮膚テント、口粘膜の色調、CRT、尿量、尿比重などから病態を推察するしかない。

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はっきりと輸液が必要な状態では、輸液を「なおざり」にしては馬は助からないし、

「おざなり」な補液では順調な回復は望めない。

(「なおざり」と「おざなり」)

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今日は、重度の気膣馬の陰部再建手術。

昼、繁殖雌馬の疝痛。

分娩3日後、PCV56%、乳酸3.1mmol/l。

直腸検査でも盲腸、結腸が気脹しているが、厚さは感じない。

輸液を7?していたら、馬がうるさくなってきて、すっかり疝痛もないので帰す。

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ところが、疝痛再発。

開腹したら、右腹側背側結腸の便秘と、そのことによる結腸変位だった。

併行して2歳馬の下顎切歯骨骨折のワイヤー固定。

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上顎の歯肉裂

2013-11-01 | インポート

きょうは午前中、中足骨骨折のスクリュー抜去。

Tieback&Cordectomyの再検査。

午後は3歳馬のTieback&Cordectomy。

飛び入りで当歳馬の外傷。

Pb015220
上顎の歯肉が剥がれて、鼻と唇が骨からめくれてしまった。

下顎ではときどきあるのだが、

こういう外傷を縫い代がないからと放置すると、肉芽が増勢してひどいことになる。

歯肉を顎骨に縫い付けることはできないので、ワイヤーを通して、顎の骨に貼り付ける。

しかし、その前に出血が止まっていなかった。

血が出てくる穴(切歯孔)に鉗子でガーゼを押し当てて止血した。

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この辺りの動脈の分布は解剖の教科書にもなかなか出ていない。

先日、研修医には血管の走行を確かめておくように言ったばかり。Pb015225
左図はPb015226

Atlas of topographical anatomy of the domestic animals

(右)

から。

この本でいくと、下顎動脈から分岐した切歯動脈が分布していることになっているが・・・・・・

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Pb015223
実際には、切歯孔と呼ばれる孔の中から動脈性の出血が続いていた。

口蓋動脈として切歯孔から出てきて、Pb015227

上唇動脈として左右に分かれている。

サク癖の予防法として切歯を抜くときに、うっかりこの動脈を傷つけると大出血するので、血管走行を確認しておくように言ったのだ。

この図はむか~しに日本中央競馬会からもらった本に載っていた。

数冊に分かれた本なのだが、たいへんよくできていて助かっている。

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Pb015228
ついでに、

左図は眼窩下孔の神経ブロックの方法。

これも馬の獣医さんでも手際よくできる人はかえって少ないだろうと思う。

しかし、できるようにしておけば、鼻、上唇、上顎切歯、などの外傷の処置にはたいへん役に立つ。

左図はEquine Anesthesia から。

今日も、全身麻酔で外傷処置したが、眼窩下孔で神経ブロックしておくと全身麻酔の濃度を下げることができ、麻酔も安定する。

これも研修の獣医さんにやってもらった。

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Pb015222
剥がれてしまった鼻を上顎骨にワイヤーで止めて、

歯肉も縫えるだけ縫って終了。

 

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Japan Derby Day

2013-05-26 | インポート

今日は大きな手術は予定せず、

繁殖雌馬の呼吸器の精密検査。

1歳馬の後膝のX線検査。

午後は、当歳馬の飛節の細菌性関節炎と、

後膝の細菌性関節炎の洗浄。

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キズナ!!

おめでとう!!

武豊ジョッキーの騎乗もすばらしかった。

さすがのキャリアを感じさせる計算されつくした騎乗に見えた。

それでも何が起こるかわからない。

周りは強力なライバルばかり。

しかし、結果は完璧。

お見事!!!

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Csc_2394 とても可愛いんだけど

巣が国道に近すぎる

さっそく渡っている子ギツネも見た

ギャッンと叫んで母ギツネが追っかけていった

危ないナ~

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鼻2例

2013-05-03 | インポート

P4304194 呼吸が苦しいドサンコ。

咽頭や喉頭の問題でもなく、

肺の問題でもないようだった。

どう やら鼻中隔の肥厚と変形で呼吸がしづらいらし。

珍しい症例だが、私は数例経験したことがあるし、

成書で同様の写真を見たことがある。

実習生、研修生にも本を見せて説明する。

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P5024195この1ヶ月で鼻の横が腫れてきた1歳馬。

「歯と直接関係があるかどうかわからない。

病理組織学的検査のためのバイオプシーをするのも良いが、正しい病理診断が得られるとは限らない。

それより摘出して、病理検査に回した方が良いだろう。」

牧場の海外の顧問獣医師の見解は私の考えと一致していた。

実習生、研修生に、成書の

「あ~あ、おんなじ」写真を見せて説明する。

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今日は、1歳馬の距骨外側滑車のOCDの関節鏡手術。

繁殖雌馬の子宮シストのlaserによる破砕。

新生仔脳症の仔馬の入院。

4歳競走馬の去勢。

当歳馬の両飛節の細菌性関節炎 septic arthritis 。

2歳馬の頚椎症の腰痿のX線診断。

昨夜の繁殖雌馬の結腸捻転の術後治療。術前PCV61%、手術後6時間で10?以上輸液した後、PCV70%。

それでも仔馬を一緒にすれば仔馬は乳を吸う。

まともに哺乳していれば15?以上泌乳する時期だ。

お母さんはたいへんだ。

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P5024198 きのうは好い天気だったけど・・・・・

(左)

今日は小雨がぱらつき、寒かった。

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