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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

蹄叉の肉芽

2015-10-30 | 蹄病学

1歳馬の後肢の蹄叉にできた肉芽。

当たると痛いらしくて、跛行する。

中心部は、こより状の異常な角質の増勢ではない。

しかし、こういう病変の組織を顕微鏡で見てもらうと、螺旋状菌が見えることがあるらしい。

蹄癌Cankerと同じ機序でできるのかもしれない。

しかし、蹄癌はパピローマウィルスの関与を疑う研究者もいて、未だによくわかっていない。

いずれにしても、外科的に切除して、再発しないようにしたい。

後肢だし、全身麻酔して肉芽を切除して、その奥の異常な組織も完全に取り除いた。

FRパスタを詰めて、包帯を巻く。

衛生的にしておかないと、また肉芽増勢してしまう。

肉芽が盛ってくるより速く角質でふさがれてくれることを目指さなければならない。


2人でこんだけこなすのはハードなんじゃないの?

2015-10-29 | 日常

今日は午前中、2歳競走馬の腕節剥離骨折の関節鏡手術。

つづいて当歳馬の細菌性関節炎の関節洗浄。

午後は、1歳馬の大腿骨軟骨下骨嚢胞Subchondral Bone Cyst のスクリュー固定手術。

左右両方でかなり大きい。

大きいほうがスクリューを命中させやすい。

X線透視装置はこの手術でも有効な武器になる。

この手術方法は搔爬するには大きすぎるSBCの治療法として有効なオプションになるかもしれない。

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つづいて繁殖雌馬のお尻の傷のこじれた症例。

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あいまに、韓国から馬病院施設の見学。

これから済州島に馬の病院が建つのだそうだ。

韓国には馬は3万頭ほどいて、その70%が済州島にいるとのこと。

韓国も獣医学教育の国際認証を取ろうとしていて、そのためには欧米なみの馬の臨床の環境を整え、学生に教える必要があるのだろう。

当たり前のことなのだが、臨床は患畜が居るところで、臨床ができる人しか教えられない。

日本も、韓国も、できるのか?

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今日も朝から休む間もなく、ちょっと疲れた。

 


外傷・外傷・腰痿・去勢・肩跛行・帝王切開

2015-10-27 | 日常

今日は、吸入麻酔をかける手術は予定していなかったので、少しのんびりした日になるかと思っていた。

12月の麻酔外科学会での講演の用意も進めなければいけないし、

1月締め切りの「家畜診療」誌の原稿も書かなければいけないし、

2月の公営競馬獣医師協会の実習の準備もはじめなければならない。

どれも骨折内固定がテーマなので、まとめて進めやすくてよろしい。

日本獣医師会雑誌に投稿していた関節固定の論文も1回目の審査が済んで戻ってきた。

その返答もきのう送り返した。

今年は骨折内固定・関節固定が私の課題だ。

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朝一は、1歳馬の飛節下の陳旧化外傷。

立位で抜糸と包帯処置できた。

そこへ放馬して怪我した1歳馬の急患。

大きくはないが、肋骨が折れているのがわかったので吸入麻酔して処置した。

その間に、当歳馬の腰痿のX線撮影。

午後は、3歳馬の去勢。

豆作式捻転去勢棒で!ディープインパクトの子を去勢!;笑

電動ドリルで回すより、抵抗を感じながら回転させるので丁寧な気がするな。

ついで、1歳馬の肩のX線撮影。

3時から黒毛和牛の帝王切開。

術者は初帝王切開だったらしいが、まあ順調にいった。

人の外科医は初手術したら周りにおごるそうだ

それくらい周りのサポートも必要だし、みんなでお祝いするという環境もあるのかもしれない。

良い習慣だな;笑

と言った一日でほとんど座っている時間はなく、進めなければならない準備は進まなかったと日記には書いておこう;笑

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オラにもタマはありません。

 

 


晩秋の一日

2015-10-26 | 日常

午前中、2歳馬の腕節剥離骨折の関節鏡手術。

昼、ロドコッカス・エクイ感染によると思われるひどく痩せてしまった子馬の安楽殺と剖検。

肺にも肝臓にも腸間膜にも膿瘍があった。

そのあとも飛び込みで、1歳馬の胸前の外傷。

2時に予定していたTieback&cordectomyは3時にずらしてもらった。

まあ、内視鏡検査して、超音波で背側披裂輪状筋の萎縮を確認して、手術して、覚醒起立後に内視鏡で出来上がりを確認して、2時間ほどで終わる。

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とうちゃん、あかるいうちに帰ってきたら、ボールであそんでやるゾ

 

 


子宮「平滑筋」腫

2015-10-24 | 繁殖学・産科学

先日の子宮「?」腫の病理組織検査の結果が帰ってきた。

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子宮平滑筋腫 leimomyoma of uterus

提出組織は腫瘍組織を認める子宮組織です。 (取り違えとかはない;笑)

子宮内膜下に平滑筋細胞由来の腫瘍組織を認めます。 (粘膜;子宮の場合は「内膜」と呼びます。の下の腫瘍で間違いない)

紡錘形の腫瘍細胞束が交差する所見を認めます。 (自潰するような腫瘍ではない)

腫瘍細胞は比較的均一な楕円形の核を有します。 (性質の悪い腫瘍ではなさそうだ)

腫瘍細胞の核分裂像は不明瞭です。 (極端に増殖が速い腫瘍ではない)

子宮内膜に細管構造を認めます。 (表面には内膜をかぶっていて、内膜の機能も残っていたのか?)

子宮内膜間質にリンパ球主体の炎症細胞浸潤を認めます。 (ふむふむ、炎症も起こしてたのね)

子宮組織に化膿性炎症所見ならびに悪性増殖所見を認めません。 (でも炎症はひどくないし、子宮腺癌の可能性もない)

 

注)子宮内膜下に平滑筋由来の良性腫瘍を認めます。子宮部~膣部の平滑筋腫の発生は性腺ホルモンの影響を受けると考えられており、局所コントロールには切除が有効ですが、多発性(多中心性)に発生する可能性が心配されます。

(予後は悪くないだろうけど、また出てくるかも)

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( )内は病理を真剣に勉強したことがない馬臨床家の印象です。

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手術して組織を取り出すと、必要を感じたら病理組織検査へ出すようにしている。

その組織がどういう性質のものか知っておくことは、

・今後の治療方針を立てるのに役立ち、

・予後判定につながることもあり、

・また同じような症例に遭遇した場合の参考にもなる。

・記録を残したり、さらには症例報告しておけば、他の獣医師への情報提供にもなる。

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ホルマリンに漬け、漏れないように梱包し、宛名書きして、臨床所見を書き、病理組織検査してくれるところへ発送する。

「生体組織学的検査」ということで家畜共済の保険点数が設定されているが、その点数で検査してくれる検査機関はない。

おまけに送料や資材費もかかるので、やればやるほど診療所の持ち出しになる。

まして、すでに死亡した患畜の病理組織検査だと保険給付されないので、丸っきり診療所の経費的負担になる。

それでも、きちんと必要な症例を判断して病理組織学的診断をしていかなければいけないと思っている。

その馬のためにも、今後のためにも。

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秋晴れの好天が続いている。

赤茶色の紅葉はすっかり里にも降りてきた。

ぼちぼち山では雪も降るだろう。

タイヤ交換もしなきゃ。