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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

長い冬

2018-02-28 | 日常

きのうは、

1歳馬の大腿滑車OCDの関節鏡手術。

1歳馬の飛節屈腱腱鞘炎thoroughpin の滑液吸引とトリアムシノロン注入。

1歳馬の大腿骨骨SBC; subchondral bone cyst の大型X線撮影とトリアムシノロン注入。

1歳馬のALD; angular limb deformity のスクリュー抜去。

1歳馬の腕節外傷後の腱鞘開放創の処置。

入院厩舎に、種雄馬1頭。

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朝は、マイナス17℃だった。

どうなってんの?

もう2月も終わりだよ。

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それでも、日中は雪が融けて水溜りができる。

このあたりでは見たことがないほど高く詰まれた雪山が、水が流れていくのをさえぎっている。

それで土木工事。

雪山をくぐって水が流れていくところまで、氷を割って溝を掘る。

こんなことしてる場合じゃないんだけど;笑

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夜明けは早くなったけど、日がさす前に散歩に出る時間が早くなっただけ;笑


哲学的問いにこたえるために

2018-02-25 | How to 馬医者修行

ピョンチャン・オリンピック前、遅い昼食のとき、何気にBSを点けたらシスパーレ登攀のようすが放送されていた。

銀嶺の空白地帯に挑む カラコルム・シスパーレ

生きて戻れて良かった~と涙を流すようなヒマラヤでの登攀。

北海道の山で死んでしまった仲間への想いを抱えた挑戦。

しかし、ルートを切り開いたとて、道にもならない雪と岩の壁をできるだけ垂直に登ることに何か意味があるのか?

それも命がけで、少なからぬ費用をかけて。

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ピョンチャン・オリンピックで、日本人選手の素晴らしい活躍を見せてもらった。

故障明けの羽生君は厳しいんじゃないかと思っていたが、ほぼ完璧だった。

怪我からの復帰、が妙な緊張やプレッシャーを減らしてくれたのではないかと思うほどに。

ノルディック複合の渡部選手の潔さにも感動した。

言い訳をせず、自分のできることだけにこれほど集中しようとするメンタルを持っているからこそ、ここまで来れたのだろうと教えられた。

女子スピードスケート500m・1000mの小平選手も素晴らしかった。

20代の選手とはちがうメンタルの完成度を感じた。

女子パシュートは、チームワークと準備の大切さを教えてくれた。

これからは他の国も、チームプレーに力を入れてくるだろう。

マス・スタートは痛快だった。

妹の「おねえちゃん」と言われることは減るだろう。

北見LSのカーリング3位決定戦は、弟9エンドまで観て、弟10エンドは観なかった。

メダルを獲ってもらいたかったけど、ダメでも良い気がしていた。結果によらず、大会をとおして立派な戦いぶりだった。

女子ホッケーも善戦した。

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冬のオリンピック競技はほとんどがマイナーな競技だと感じてしまう。

それでも何年もかけて、あるいは子供の頃から競技に人生をかけた選手たちの生きざまと想いを見せられる。

不人気競技だと、国を背負って、という感じは薄れる。そもそもさほど応援も支援もされてないし。

勝ったからといって、生活がいっぺんすることもなく、大きな報酬が約束されているわけでもない。

また4年後まで注目されることもない。

その間の生活さえ保証はないのだろう。

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では、なぜ?

好きだから?

達成感?

競争心?功名心?

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若いときはつらいだろう。自分が何ものかわからないからだ。

私はこの言葉に、中年になってから出逢った。

そして、若いときに知りたかったと思った。

そうさ、自分が何ものであるか知るために生きるんだ。

そのために打ち込むし、ときには命さえかける。

「おまえは何ものだ。なんのために生きている?」

それは哲学の永遠の命題だろう。

自分が何ものかであることを自分に問いかけながら、あるいはそれを証明するために、人は生きるんだ。

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私もあと少し、自分の存在証明をかけて馬の診療とそれにまつわるあれこれを続けようと思う。

 

 

 


日本の運命について語ろう

2018-02-23 | 図書室

書店で買って、休みの日の昼寝のお供に読んだ。

日本の「運命」について語ろう (幻冬舎文庫)
浅田 次郎
幻冬舎

私にとって浅田次郎氏は歴史作家ではないのだけど、その浅田次郎氏が歴史について語った講演録をまとめた本。

語り口調で書かれているので、とても読みやすい。

「なぜ歴史を学ぶのか」に始まって、

祖父・父から聞いた話と家族の体験を含めた「父の時代・祖父の時代」。

「蒼穹の昴」をはじめとする中国ものの背景の解説となる「中国大陸の近代史」。

「壬生義士伝」ほかの幕末ものの背景としての「明治維新がめざした未来とは」。

そして、参勤交代を描いた「一路」にまつわる「参勤交代から覗く『江戸時代のかたち』」。

で、あとがき「書くことと語ること」。

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なかなか面白かった。

ただの史実を語るのではなく、そのことを将来に生かそうと語るのはなかなか難しいことだし、

近代史を、さまざまなものを評価しながら語ることも難しいことだ。

しかし、氏の庶民感覚を根底においた歴史考察の大半は、現在に生きるわれわれが持っておくべき歴史認識のように思う。

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かつて自衛隊員であった氏の、戦争と軍に関する考察は興味深い。

第二次世界大戦終盤の北方領土でのソビエト連邦との闘いの様子は本当か?

歴史物のドラマや小説でよく取り上げられてきた歴史の本筋から離れた史実も興味深い。

参勤交代は、江戸時代の経済と交通の発達を支えた一大公共事業だったんだね~

幕府と諸般の力関係で止めてしまったが、やめたら世の中の景気がどうなるか考えなかったのか?

それで浮いた費用を諸藩が何に使うか考えなかったのか?

いずれ、氏が本業で書いたそれらの小説も読んでみたくなった。

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今週、診療はslow。

それでも間違いなく、日は長くなり、仔馬は生まれている。

そのうちrushが来るだろう。

どうせなら、雪とけろ。

 

 

 

 


分娩3日目の結腸捻転

2018-02-20 | 急性腹症

分娩3日目の繁殖雌馬が疝痛で、フルニキシンが効かず、鎮静剤を投与して運びたい、との依頼。

来院したら、痛みは落ち着いたようにも見える。

血液検査でPCVは40台。

超音波画像検査で、

右肋部で結腸動脈が見えた。

周囲を含めて5cm以上あるから肥厚している。

結腸壁そのものは、さほど厚くはないものの、水腫感がある。

手術することにした。

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骨盤曲を切開し、内容を抜いたあとの大結腸の様子。

チアノーゼはないが、肥厚している。

水腫が一番ひどいのは結腸動脈周囲。

これが超音波で見えて、開腹手術する確証になったわけだ。

二晩入院して帰って行った。

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今年は雪豊富。

毎日おおあばれ。

 

 


牛の陰睾の去勢

2018-02-17 | 牛、ウシ、丑

牛にも陰睾はある。

5ヶ月齢の黒毛和牛。

右の精巣は普通に去勢できたが、左の精巣が陰嚢に落ちていなかった、そうだ。

それで右だけ摘出した、と言う。

去勢する時は、両側の精巣を確認してから去勢すべきだ。

去勢できる片側だけ摘出してはいけない。問題を複雑化させるだけだ。

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牛を連れて来た人は10年前にも陰睾の牛を経験したそうだ。

取れなかったので、そのまま肥育したが、行動は雄化したし、刺しの入りが悪かったとのこと。

きちんと去勢できていないと、肥育素牛としては二束三文になってしまう。

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うちでは、プロポフォールで麻酔して、手術室で手術台に乗せて、気管挿管もして陰睾の去勢をしている。

鼠径近くの傍正中切開で、腹腔内精巣が見つかった。

腹腔外へはほとんどひっぱり出せない。

何かが発育不良で短いから陰睾になるのだろう。

腎臓脇の脂肪に埋まっていた精巣があった、などという報告もある。

そういう症例は潜在精巣を去勢するのは厳しいかもしれないが、当たり前の腹腔陰睾なら摘出できると考えている。

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ん?