今日は、
2歳馬の胸下の血腫切開の後にできた腫瘤の切除。
と思っていたのだが・・・・
胸下に血腫ができて、3週間経って切開したら血様漿液が出た。その後、1ヶ月経ったが、塊状に残っているので切除したい、との経過。
触られるのを嫌がるようなので、すぐに全身麻酔する。
吸入麻酔でなくて、プロポフォールによる静脈麻酔で維持できるだろう。
手術室ではなく、倒馬室でエアマットに仰臥位で乗せる。
触ると弾力があるので、まだ液が溜まっているかも?と思ったら、案の定、袋状組織になっていた。
皮膚は舟型に切除し、袋状組織は切り開いてしまったので、その船底にあたる部分を摘出する。
腕節や球節などの血腫形成のあとにできた滑液腫の摘出とかわらない。
関節のそばや、滑液嚢のそばだと、滑液腫と呼びたいところだが、胸の下なので、関節も滑液嚢もない。
血腫のあとの袋状結合織と言うしかないかもしれない。
内容は黄色く濁った液とフィブリンだった。(膿でなくてよかった!)
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続いて、前日から跛行している当歳馬の診察。
かなりの跛行だが、負重できる瞬間もある。
肘は落ちていない。
しかし、肩甲骨のあたりが腫れているように思える。
昨日は体温39℃、フルニキシン投与したのに今日は38.8℃、とのこと。
肩甲骨、上腕骨、肩関節を立位でX線撮影するが異常なし。
超音波で、肩甲骨、上腕三頭筋、腋下を観るが、骨折所見も、血腫も、ない。
肩関節の関節液も増量していない。
上腕二頭筋滑液嚢も滑液増量なし。
肘関節を観たら・・・関節液とは性状が違うが増量しているように見えた。
消毒して、穿刺したら血液が出てきた。部位を変えて刺しても血液が出てくる。
それで、肘関節をX線撮影したら、尺骨骨折が判明した。
何のことはない。最初から肘もX線撮影すれば良かったのだ。
尺骨骨折すると肘が落ちるような典型的な跛行を示すことが多い。
尺骨は上腕三頭筋で肘を引きあげるためのレバーの役目を果たす骨だからだ。
上腕三頭筋あたりが腫れて見えたのにもだまされた。
おそらく、上腕三頭筋を緊張させると痛いので、他の筋肉で腋を閉めて、上腕三頭筋は弛緩させているので、腫れて見えたのだ。
尺骨の骨折線は開いていないので、4-5日後に再度X線撮影してもらうことにした。
開いてこなければ保存療法で治癒する。
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それから、当歳馬の疝痛。
超音波画像診断装置で、小腸の完全な膨満が確認できた。
開腹手術したら空腸纏絡だった。
損傷部の末端で切断して、損傷部を廃液ホースに使って腸内容を捨てる。
健常部の末端で切断し、先に切断した回腸と端々吻合した。
あとは腸間膜を縫合して、腹腔内のサイトカインをいっぱい含んでいるだろう腹水をできるだけ洗って、閉腹する。
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今日は大雨で、午後に予定していた重種仔馬に蹄エクステンションを着ける処置は延期してもらった。
蹄が濡れて湿っていたのでは樹脂の接着が悪い。
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このブログには何度も書いてきた。
もう馬回虫をイベルメクチンで駆虫しようとするのは無理だ。
と言っても、牧場は薬剤名を覚えていないことが多いので、獣医師が牧場ごとにきちんと指導・指示してあげた方が良い。
「虫の居所が悪い」「腹の虫がおさまらない」などの言葉が残っているのは、昔の人も寄生虫が悪さをしているのを知っていたのだろう。
おそらく、具合が悪くなった人が、寄生虫を吐いたり、便に寄生虫が出てくることがあったのだろう。
この業界に獣医師が居る価値は、正しい情報を普及させることにもあると思う。