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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

R.equiに対してmRNAワクチンは有効か?

2024-06-25 | 学問

2019年に始まり、その後、世界中を席巻したCOVID19。

当初の病原性の強いウィルス株から世界中の人を救ったのはmRNAワクチンだった。

子馬のR.equi感染症でもmRNAワクチンは研究されている。

Intramuscular but not nebulized administration of a mRNA vaccine against Rhodococcus equi stimulated humoral immune responses in neonatal foals

R.equiに対するmRNAワクチンの気管内噴霧ではなく筋肉内接種は、新生子馬に液性免疫応答を引き起こした

これもCohen先生が名を連ねている研究。

Am J Vet Res 2023, 85(2):ajvr.23.09.0208.

Abstract

Objective: Design and evaluate immune responses of neonatal foals to a mRNA vaccine expressing the virulence-associated protein A (VapA) of Rhodococcus equi.

Animals: Cultured primary equine respiratory tract cells; Serum, bronchoalveolar lavage fluid (BALF), and peripheral blood mononuclear cells (PBMCs) from 30 healthy Quarter Horse foals.

Methods: VapA expression was evaluated by western immunoblot in cultured equine bronchial cells transfected with 4 mRNA constructs encoding VapA. The mRNA construct with greatest expression was used to immunize foals at ages 2 and 21 days in 5 groups: (1) 300 μg nebulized mRNA (n = 6); (2) 600 μg nebulized mRNA (n = 4); (3) 300 μg mRNA administered intramuscularly (IM) (n = 5); (4) 300 μg VapA IM (positive controls; n = 6); or (5) nebulized water (negative controls; n = 6). Serum, BALF, and PBMCs were collected at ages 3, 22, and 35 days and tested for relative anti-VapA IgG1, IgG4/7, and IgA activities using ELISA and cell-mediated immunity by ELISpot.

Results: As formulated, nebulized mRNA was not immunogenic. However, a significant increase in anti-VapA IgG4/7 activity (P < .05) was noted exclusively in foals immunized IM with VapA mRNA by age 35 days. The proportion of foals with anti-VapA IgG1 activity > 30% of positive control differed significantly (P = .0441) between negative controls (50%; 3/6), IM mRNA foals (100%; 5/5), and IM VapA (100%; 6/6) groups. Natural exposure to virulent R equi was immunogenic in some negative control foals.

Clinical relevance: Further evaluation of the immunogenicity and efficacy of IM mRNA encoding VapA in foals is warranted.

                                            ー

VapAをコードしたmRNAワクチンは、気管内噴霧ではダメだったけど、筋肉内接種したら、VapAに対する免疫系応答を誘発した。

このワクチンの免疫原性と効果を子馬でさらに評価することが必要だ。と述べている。

期待したいところだが、R.equi肺炎発症牧場の子馬が感染するのはとても早い日齢だろうと考えられている。

それより前に、子馬にVapAに対する免疫をつけさせるのは、このmRNAワクチンでも難しいのではないだろうか・・・・・

           ーーー

COVID19から人々を守ったのはmRNAワクチンだけではなかった。

当初WHOも推奨しなかったマスク装着がとても予防効果を上げた。

手洗いと手指の消毒も有効だった。

街中を消毒して回っている光景がworld news で写っていたが、あれは無意味だっただろう。

隔離や人の行動制限をほとんどしなかった国では初期の死亡者が多かった。

やがて、流行するウィルス株の病原性が弱くなっていった。

そして、もう5年。

           ー

SDGsへの転換とか、CO2削減にとっては大きなチャンスだったかもしれないのに、CO2排出量はほとんど減らなかった。

それより経済の持続性が優先されたためだ。

命に関わらない産業の保護にも莫大な費用が使われた。

           ー

話がそれた;笑

新生子馬に直接ワクチンを投与してR.equi強毒株に対する免疫を賦活して子馬を守ろう、というのはmRNAワクチンを使っても厳しいのではないか、と私は思う。

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シャクナゲ

痙攣毒がある有毒植物だそうだ。


糞便中のVapAをPCRで定量したらR.equi感染子馬を早期発見できるか?

2024-06-24 | 馬内科学

R.equi感染子馬を早期に発見するために、糞便中のVapAをPCRで検出してはどうかという調査。

これもCohen先生が関係している。

Use of Serial Quantitative PCR of the vapA Gene of Rhodococcus equi in Feces for Early Detection of R. equi Pneumonia in Foals

子馬のR.equi肺炎の早期発見における糞便中のR.equi病原性関連タンパクA遺伝子の連続定量PCRの利用

J Vet Inter Med 2016 30(2):664-70 

Abstract

Background: Current screening tests for Rhodococcus equi pneumonia in foals lack adequate accuracy for clinical use. Real-time, quantitative PCR (qPCR) for virulent R. equi in feces has not been systematically evaluated as a screening test.

Objective: The objective of this study was to evaluate the accuracy of qPCR for vapA in serially collected fecal samples as a screening test for R. equi pneumonia in foals.

Animals: One hundred and twenty-five foals born in 2011 at a ranch in Texas.

Methods: Fecal samples were collected concurrently with thoracic ultrasonography (TUS) screening examinations at ages 3, 5, and 7 weeks. Affected (pneumonic) foals (n = 25) were matched by age and date-of-birth to unaffected (n = 25) and subclinical (ie, having thoracic TUS lesions but no clinical signs of pneumonia) foals (n = 75). DNA was extracted from feces using commercial kits and concentration of virulent R. equi in feces was determined by qPCR.

Results: Subsequently affected foals had significantly greater concentrations of vapA in feces than foals that did not develop pneumonia (unaffected and subclinical foals) at 5 and 7 weeks of age. Accuracy of fecal qPCR, however, was poor as a screening test to differentiate foals that would develop clinical signs of pneumonia from those that would remain free of clinical signs (including foals with subclinical pulmonary lesions attributed to R. equi) using receiver operating characteristic (ROC) methods.

Conclusions and clinical importance: In the population studied, serial qPCR on feces lacked adequate accuracy as a screening test for clinical R. equi foal pneumonia.

背景: 子馬のロドコッカス・エクイ肺炎の現在のスクリーニング検査は、臨床使用の適切な適切な精度を欠いている。糞便中の病原性R.equiのリアルタイム定量PCR(qPCR)は、スクリーニング検査として体系的に評価されていない。

目的: この研究の目的は、子馬のR.equi肺炎のスクリーニングテストとして、連続的に収集された糞便サンプル中のvapAのqPCRの精度を評価することであった。

動物: 2011年にテキサス州の牧場で生まれた125頭の子馬。

方法: 糞便サンプルは、3、5、および7週齢の胸部超音波検査(TUS)スクリーニング検査と同時に収集された。罹患した(肺)子馬(n = 25)を、罹患していない(n = 25)および無症候性(すなわち、胸部TUS病変を有するが肺炎の臨床徴候がない)子馬(n = 75)に年齢および生年月日で一致させた。市販のキットを使用して糞便からDNAを抽出し、糞便中の毒性R.equiの濃度をqPCRで測定した。

結果: その後、罹患した子馬は、5週齢および7週齢で肺炎を発症しなかった子馬(罹患していない無症候性の子馬)よりも、糞便中のvapA濃度が有意に高かった。しかし、糞便qPCRの精度は、肺炎の臨床徴候を発症する子馬と臨床徴候のない子馬(R. equiに起因する無症候性肺病変を有する子馬を含む)を、ROC法を用いて区別するためのスクリーニング検査としては不十分であった。

結論と臨床的重要性: 調査対象集団では、糞便に対する連続性qPCRは、臨床的R.equi子馬肺炎のスクリーニング検査として十分な精度を欠いていた。

                                         ー

R.equi肺炎を発症している子馬の糞便中にはR.equi強毒株の菌数が増えることが知られている。

それを3、5、7週齢の子馬で調べたらR.equi肺炎の子馬を早期に検出できないか?という研究。

R.equi肺炎に罹患した子馬は糞便中のR.equi強毒株菌量が多い傾向にあったが、感染子馬を検出する精度には欠けていた、という結論。

R.equi肺炎を発症している子馬の糞便中にR.equi強毒株が増えるのは喀痰を飲み込むからだろう。

ほとんど肺炎症状を示さず、静かに肺に膿瘍を作られてしまう子馬の糞便中ではR.equi強毒株は有意には増えない。

5週齢、7週齢になるとR.equi肺炎を発症してくる。その前、3週齢に感染を知ることができれば、早期発見、ということになるが、それは糞便中の菌量では判断できない、ということなのだろう。

negative data (否定的な結果) なのだが、興味深い研究であり結果だ。

そして、R.equi感染を早期に見つける難しさを示している。

             ーーー

土曜日、朝、3歳馬の中足骨内顆のunicortical fracture 単一皮質骨折。

最遠位部に限局した骨折のようだった。3.5 mm screw固定。

              ー

繁殖牝馬の疝痛の依頼も来ていたので、臍ヘルニアの予定は延期してもらった。

疝痛は結腸捻転だった。

結腸の色はかなり悪かったが、切開して内容を抜いたら色調は回復した。

減圧することの意義を強く感じる。

              ー

午後、”肩”跛行が3週間続く1歳馬。

蹄、球節、腕節、肘、肩、とX線撮影しても異常なし。

上腕三頭筋、棘上筋、棘下筋の萎縮が特徴的。

腕神経叢あたりを傷めたのだろう・・・・か

              ー

続いて、腕節骨折の関節鏡手術。

              ー

1歳馬の前肢球節の腫脹、跛行。4日目。発熱もある。

感染が本態なのだろう。RLPする。

              ー

1歳馬の腰萎のX線撮影。

頸椎C5-6にはっきりした狭窄が見つかって、そのままあきらめることになった。

              ー

後躯麻痺で起立不能になった乳母馬の剖検もしたのだった・・・・・

            ////////////

ハナショウブ・ピンクが咲いた。

 

 

 


子馬のR.equi感染を早期発見するためにSAAは有効か?

2024-06-21 | 学問

私たちは、1990年代に子馬のR.equi感染症の血清診断としてELISAが使えることを報告した。

その中で、30日齢から45日齢で発症する子馬が最も多く、子馬が生後1ヶ月以内に感染しているのであろうことを指摘した。

血清診断でR.equi感染を疑った子馬の多くからR.equi強毒株が採れてくることも報告した。

R.equi感染多発牧場で、30-45日齢の子馬の血液検査がR.equi感染の早期発見に役立つことを示した。

R.equi高度免疫血漿を作り、多発牧場の子馬に投与することでR.equi感染の予防に役立つことも示した。

気管洗浄液からのR.equiの分離が、R.equi肺炎の確定診断として使える可能性も示した。

            ー

それから30年。

日齢を決めた血液検査によるR.equi肺炎の早期発見は「ロドチェック」と呼ばれ、R.equi感染の抑制に役立ってきたと思っている。

急性炎症マーカーとしてSAAが使えるようになってからは、さらに検出感度が増したと思っているが、臨床のデータと突き合わせることができず、まとまった評価はしないままだ。

海外では、いくつか早期診断方法、スクリーング方法としてSAAを使った報告が行われている。

その環境とか、研究の目的とか動機とか、研究者がやるか臨床家がやるかとか、かなり異なった評価になっている・・・・・

           ー

Serum amyloid A (SAA) as an aid in the management of infectious disease in the foal: comparison with total leucocyte count, neutrophil count and fibrinogen

Equine Vet J. 2002, 34(7),693-698

権威あるEVJに載った報告で、入院した子馬のSAAを測ったら、感染症の子馬ではSAAが高かったよ。というだけの報告。

全体で25例だし、肺炎は6頭。

早期発見に使えるか、という話ではない。

ロド肺炎でSAAがよく動き、鋭敏な炎症マーカーのは今は生産地の獣医さんはよく知っている。

           ー

Rhodococcus equi pneumonia in foals: an assessment of the early diagnostic value of serum amyloid A and plasma fibrinogen concentrations in equine clinical practice

Vet J. 2015 203(2), 211-208

こちらは2015年になってのイタリアからの報告。

馬の臨床実践における、子馬のロドコッカス肺炎についての、SAAと血漿フィブリノーゲン濃度の早期診断法としての評価

毎週検査してもSAAはR.equi肺炎の早期診断のためのマーカーにならなかった。

しかし、R.equi肺炎の臨床徴候があったときには、SAAにより感染の進行と治療効果のリアルタイムの指標を臨床家は得ることができる。

併行して行ったのは胸部超音波検査。

静かに、(SAAが上昇するような)炎症も起こさずに肺膿瘍を作っている子馬がいる、ということだろうか。

1週齢から毎週SAAを測定しても肺膿瘍形成を検出できない、ということか・・・

            ー

Evaluation of serum concentration of acute-phase proteins (haptoglobin and serum amyloid A) in the affected Arabian foals with rhodococcosis

Vet Med Sci. 2023, 9(1) 144-149

ロドコッカス症のアラビア子馬の急性相タンパク(ハプトグロブリンとSAA)の血清中濃度の評価

これは2023年のイランからの報告。

感染子馬のSAAは2715。これは良いとして、健康な子馬のSAAは1640。

気管洗浄もしていて、菌の検出はPCRも使っている。SAAの測定はELISA。

”健康”とされている子馬の状態が心配になる;笑

             ー

SAAは感染している子馬を”早期”に発見するためには役立たない、ということか・・・

”早期” early の定義が重要。

周囲に気管支肺炎がない小さい肺膿瘍、あるいは肉芽腫、それも生後3-4週目あたりで見つけられれば良いのだが。

長くなるので、続く、たぶん。

           /////////////

地元の住宅地の周りに出没していたクマは捕獲された。

箱ワナにかかったのかな。

”殺”処分されたのだろう。

去年生まれて親離れしたクマではないだろうか。

縄張りも持たず、自分より大きなクマに追われ、餌もない里に迷い込んだのだろう。

痩せていた、そうだ。

            ー

変わり葉ヤマボウシの”花”は大きく白くなった。

ホントは花じゃないんで、咲いてからも成長し色が変わるんだな。

 

 

 


R.equiの病原性関連タンパクAは酸化的殺菌を免れることで病原性を表す

2024-06-20 | 学問

病原性プラスミドを持ったR.equi強毒株だけが子馬に病巣を作る。

その病原性プラスミドによって作られているのは病原性関連タンパクA (Virulence-associated protein A)

では、そのVapA は、どういう働きをして病原性を発揮しているのか?

それを突き止めた、という報告も出ている。

            ー

Virulence-associated protein A from Rhodococcus equi is an intercompartmental pH-neutralising virulence factor

R.equiの毒力関連タンパクAはコンパートメント間のpHを中和する病原性因子である

Cell Microbiol. 2019, 21(1): e12958

    Abstract

    Professional phagocytic cells such as macrophages are a central part of innate immune defence. They ingest microorganisms into membrane-bound compartments (phagosomes), which acidify and eventually fuse with lysosomes, exposing their contents to a microbicidal environment. Gram-positive Rhodococcus equi can cause pneumonia in young foals and in immunocompromised humans. The possession of a virulence plasmid allows them to subvert host defence mechanisms and to multiply in macrophages. Here, we show that the plasmid-encoded and secreted virulence-associated protein A (VapA) participates in exclusion of the proton-pumping vacuolar-ATPase complex from phagosomes and causes membrane permeabilisation, thus contributing to a pH-neutral phagosome lumen. Using fluorescence and electron microscopy, we show that VapA is also transferred from phagosomes to lysosomes where it permeabilises the limiting membranes for small ions such as protons. This permeabilisation process is different from that of known membrane pore formers as revealed by experiments with artificial lipid bilayers. We demonstrate that, at 24 hr of infection, virulent R. equi is contained in a vacuole, which is enriched in lysosome material, yet possesses a pH of 7.2 whereas phagosomes containing a vapA deletion mutant have a pH of 5.8 and those with virulence plasmid-less sister strains have a pH of 5.2. Experimentally neutralising the macrophage endocytic system allows avirulent R. equi to multiply. This observation is mirrored in the fact that virulent and avirulent R. equi multiply well in extracts of purified lysosomes at pH 7.2 but not at pH 5.1. Together these data indicate that the major function of VapA is to generate a pH-neutral and hence growth-promoting intracellular niche. VapA represents a new type of Gram-positive virulence factor by trafficking from one subcellular compartment to another, affecting membrane permeability, excluding proton-pumping ATPase, and consequently disarming host defences.

    マクロファージなどの専門的な食細胞は、自然免を酸性化し最終的にリソソームと融合し、その内容物を殺菌環境に曝露する。グラム陽性のRhodococcus equiは、若い子馬や免疫不全のヒトに肺炎を引き起こす。病原性プラスミドを持つことで、宿主の防御機構を破壊し、マクロファージ内で増殖できる。本研究では、プラスミドにコードされ分泌される病原性関連プロテインA(VapA)が、プロトンポンプ液胞-ATPase複合体のファゴソームからの排除に関与し、膜透過化を引き起こし、pH中性のファゴソーム内腔に寄与することを示した。蛍光顕微鏡と電子顕微鏡を用いて、VapAがファゴソームからリソソームに移行し、そこでプロトンなどの小さなイオンの限界膜を透過化することを示した。この透過化プロセスは、人工脂質二重層を用いた実験で明らかになった既知の膜細孔形成剤の透過プロセスとは異なる。感染から24時間後、毒性の強いR.equiは、リソソーム物質を豊富に含む液胞に含まれており、pHは7.2であるのに対し、vapA欠失変異体を含むファゴソームのpHは5.8、病原性プラスミドを含まない姉妹株のpHは5.2であることを実証した。マクロファージのエンドサイトーシス系を実験的に中和することで、非病原性R.equiが増殖する。この観察結果は、病原性および病原性R.equiがpH 7.2で精製されたリソソームの抽出物でよく増殖するが、pH 5.1では増殖しないという事実に反映されている。これらのデータを総合すると、VapAの主な機能は、pH中性、したがって成長を促進する細胞内ニッチを生成することであることを示している。VapAは、ある細胞内区画から別の細胞内区画に輸送し、膜透過性に影響を与え、プロトンポンプATPアーゼを除外し、その結果、宿主の防御を武装解除することによる、新しいタイプのグラム陽性病原性因子である。

                  

    ロドコッカスの病原性プラスミドが何をしているのか当初は知られていなかった。

    病原性関連プロテインAというタンパクを作るのだとわかっても、そのタンパクがどう働いて病原性を発揮するのかわかっていなかった。

    それが、食細胞の中で酸化的殺菌に耐えることで病原性につながっていることが、わかった。

    なにせ、このプラスミドとそのプラスミドによるVapAを持たないR.equiはマウスの実験でも病原性を持たず、

    野外の子馬の病巣からも採れてこない(子馬に病気を起こしていない)のだ。

                  ー

    しかし、R.equi強毒株と言えども子馬以外は病気を起こさない。※

    (※;わかりやすくシンプルにこう書いてしまうけど、R.equi高度免疫血漿を作るために成馬にR.equi強毒株を接種したことがあるが、接種部位はドロドロに化膿するし、発熱もする。やはり化膿菌であり、「日和見感染菌」とか、成馬には病原性がない、という印象ではなかった)

    先に紹介した研究も示すように、子馬も日齢によってR.equi強毒株に対しても抵抗性を発達させる。

    酸化的殺菌力が向上して、VapAを持ったR.equi強毒株が相手でもかなり殺せるようになるのだろうか。

    あるいは免疫の別な側面が向上することでR.equi強毒株にも抵抗できるようになるのかもしれないが、

    新生子馬でさえR.equi無毒株には抵抗できることを考えると、やはりR.equi強毒株に対する日齢による抵抗性はVapAの機能・作用そのものに抵抗できることによるのではないかと私は推測するのだが、どうだろう?

    そして、馬生産牧場でのR.equi感染症を制御するヒントがそこにあるのではないだろうか。

                /////////////

    朝、出勤したら、きのう夕方に疝痛で来た繁殖牝馬は結腸捻転で開腹し、入院している、とのこと。

    さらに、夜中に子馬の小腸捻転も来院し、入院している、とのこと。

    そして、結腸捻転の手術中。

                  ー

    通勤路の左右で、馬牧場で牧草作業が始まっているのを見る。

    今年は、6月中に牧草作業を終える牧場が多そうだ。

                 ーーー

    エゴノキ

    ピンクチャイムというピンクの花が咲く苗のはずだったのが、どういうわけか白花。

    なんということだ。

     

     

     


    子馬のR.equi感染実験における日齢による感受性 

    2024-06-17 | 学問

    子馬は生まれて1ヶ月以内、それもおそらく生後第1週や第2週にR.equi強毒株に曝露され感染している。

    30-45日齢に発症する子馬が最も多いことを、かつて私たちが報告した。

    感染実験では10-13日間の潜伏期間があることも確認した。

    感染実験では、challenge した実験子馬の多くが感染する菌量を投与しないと試験にならない。

    そういう菌量を気管内投与しても、発症まで10-13日間の潜伏期間がある。

    野外感染が成立するときに、子馬が暴露されているであろう菌量は、感染実験で使われている菌量より少ないと推察され、潜伏期間はもっと長いことも想像される。

    そして、野外症例の初期症状は、感染実験での初発症状よりマイルドなのだろう。

               ー

    そして、感染実験に使う子馬の日齢も、実験感染が成立するかどうかの大きな要因であることを確かめた報告。

    The effect of bacterial dose and foal age at challenge on Rhodococcus equi infection

    R.equi感染実験での菌量と子馬の日齢の影響

        Vet Microbiol. 2013, 167(3-4):623-31.

    Abstract

    While Rhodococcus equi remains the most common cause of subacute or chronic granulomatous bronchopneumonia in foals, development of a relevant model to study R. equi infection has proven difficult. The objective of this study was to identify a challenge dose of R. equi that resulted in slow progressive disease, spontaneous regression of lung lesions and age-dependent susceptibility. Foals less than one-week of age were challenged intratracheally using either 10(6), 10(5), 10(4), 10(3) or 10(2) cfu of R. equi. Two doses (10(3) cfu and 10(5) cfu) were used to challenge 2 and 3-week-old, and 3 and 6-week-old foals, respectively. Physical examination, thoracic ultrasound and blood work were performed. Foals were euthanized at the end of the study or when clinical signs of pneumonia developed. All foals were necropsied and their lung lesions scored. Foals challenged with low concentrations of R. equi developed slow progressive pneumonia and approximately 50% of the foals recovered spontaneously. Likewise, macroscopic (>1cm diameter) pyogranulomatous lesions were only observed when low doses of R. equi were used. Clinical pneumonia was not seen after low dose challenge in the 3-week-old foals or in the 6-week-old foals. This study demonstrates that the use of low doses of R. equi to challenge neonatal foals provides an improved model for studying this disease. Furthermore, susceptibility to R. equi infection was shown to diminish early in the foal's life, as has been reported in the field.

     

    Rhodococcus equiは、子馬の亜急性または慢性肉芽腫性気管支肺炎の最も一般的な原因であり続けているが、R. equi感染を研究するための関連モデルの開発は困難であることが証明されている。この研究の目的は、ゆっくりとした進行性疾患、肺病変の自然退縮、および年齢依存性感受性をもたらす R. equi の接種量を特定することであった。生後1週間未満の子馬は、R.equiの10(6)、10(5)、10(4)、10(3)、または10(2)cfuのいずれかを使用して気管内に接種した。2回投与(10(3)cfuと10(5)cfu)を使用して、それぞれ2週齢と3週齢の子馬、3週齢と6週齢の子馬に接種した。身体検査、胸部超音波検査、血液検査が行われた。子馬は、研究の終了時または肺炎の臨床徴候が現れたときに安楽死させられた。すべての子馬は剖検され、肺病変が記録された。低濃度のR. equiに暴露した子馬は、進行性の肺炎が緩慢に進行し、約50%の子馬が自然に回復した。同様に、肉眼的(直径>1cm)の化膿肉芽腫性病変は、低用量のR.equiが使用された場合にのみ観察された。臨床的肺炎は、3週齢の子馬または6週齢の子馬の低用量接種後には見られなかった。この研究は、新生子馬に接種するのに低用量のR.equiを使用することが、この病気を研究するための改善されたモデルを提供することを示している。さらに、R. equi 感染に対する感受性は、野外で報告されているように、子馬の生涯の早い段階で消失することが示された。

                  ー

    生まれて6週間の中でも、1週齢未満と3週齢と6週齢では子馬のR.equi感染の感受性に差があった、とする結論。

    これはサラブレッド生産牧場にとって希望ではないだろうか。

    重点的に守ってやるのは、生後早い時期の子馬に集中して良い。

    分娩馬房、新生子馬を放す小パドック、そして厩舎内の衛生に神経を注げば良い。

                  ー

    発症するのはそれより数週間あとになるので、30日齢以降の子馬は健康状態のチェックには十分注意しなければならない。

    野外症例の初発症状は、遅く、軽度なのだろう。

                  ー

    R.equiのように化膿巣を作る細菌なのに、潜伏期間が10-13日間もあるというのはとても興味深い。

    傷をして、そこが腫れて、熱を持ち、膿が出てくるのはもっと速いでしょう?

    R.equi は一旦貪食細胞に食べられて取り込まれ、しかしR.equi強毒株は貪食細胞の酸化的殺菌に抵抗して生き残るらしい。

    そして、殺されないものだからその場所で小さい膿の塊を作り、それが集まると膿瘍になり、発熱する。

    それに2週間近くかかる。野外例ならもっと長く。

    その間に、貪食細胞に食べられたままリンパ節に運ばれ、リンパ節を化膿させる。

                   ー

    ただ、一旦感染して病巣を作られてしまうと、週齢ごとに抵抗性を発達させていく子馬も、なかなか全頭が自然治癒するとはいかない。

    数ヶ月経って、大きな膿瘍を作って予後不良になる子馬が居るのはご存じのとおり。

    治療しているにも関わらず、だ。

                  ////////////

    ゴジュウカラ

    脳震盪から回復中。

    あまり人が構っているとカラスに気づかれて襲われるかも。

    ちょっとまだ目がいっちゃってる。