馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

装蹄師会見学と講義

2018-07-26 | 蹄病学

きのうは、装蹄師会の生徒のみなさんが生産地研修の一箇所として来訪。

施設をお見せして、業務を紹介したあと、1時間ほどの講義。

装蹄師さんは、1年間みっちり馬の蹄について勉強して基本を身につける。

もちろん実習もある。

そして、競馬場、生産地、乗馬の世界などそれぞれ希望する業界へ就職する。

獣医師は、馬の蹄についても大きな権限を持っているのだが、さて、装蹄師さんたちと伍していける知識を持っているか?

せめて馬の獣医師になった人だけでも、蹄について真剣に勉強してもらいたい。

馬の蹄に問題があるとき、獣医師と装蹄師が協力して解決に当たることは必要不可欠なことだから。

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奥州平泉を訪ねた。

あまりに有名だが、行ったことがなかった。

金が獲れ、優秀な馬が育ったとは言え、まだ平安時代に京や鎌倉を驚かせるほど栄えたとは。

しかし、つわものどもがゆめのあと。

中央に潰されたとも言えるが、鎌倉幕府は平泉の寺社などを保護しようとしたらしい。

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山形銀山温泉へ。

台湾からのお客様でにぎわっていた。

「いわにしみいるせみのこえ」の山寺立石寺までは脚をのばさなかった。

芭蕉はよく歩いて旅したものだ。

さみだれを あつめてはやし もがみがわ

ほんとに川下りしたのだったか?

 

 

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重症のクラブフット

2018-05-18 | 蹄病学

ひどいクラブフットは、

こうなる。

装蹄師さんが蹄踵部を落として、装蹄してくれて、この状態。

踵が浮いてしまっている。

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立位で深屈腱を切断した。

とたんに蹄踵を着いて歩けるようになった。

そうなったら、もっと蹄踵を落として、蹄骨の底面を使って負重できるようにしたい。

運動させた方が良い。動かないでいると、深屈腱はたいして伸びないで癒合してしまう。

重症のクラブフットで競走馬にするのをあきらめたら、早いうちに深屈腱切断した方が良い。

蹄骨が先端が磨耗したり、蹄がひどく変形したり、蹄関節が固まってしまったら、

治療はより難しく、時間と手間がかかるようになる。

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のび~てゆるむことがたいせつ

 

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新生仔馬の蹄関節炎

2017-03-08 | 蹄病学

8日齢の子馬が跛行し、血液検査で感染像があった。

繋部分が腫れている、とのこと。

来院して、よく触ってみると蹄冠部分がブヨブヨ腫れている。

超音波検査で、蹄関節液が増量しているのが確認できた。

x線撮影では、骨折、骨髄炎などはなし。

仔馬の蹄関節は小さいので、まず20G注射針を刺して吸引した。

膿のような関節液が少量ぬけてきた。

その針に点滴管をつないで関節を膨らませた。

14G留置針を刺して、廃液しながら関節腔を洗浄した。

2回ほど、点滴管を付け替えて洗浄した。

洗浄を終えて、抗生物質を関節内に投与して終了。

子馬が跛行したら、まず感染を疑わなければならない。鉄則だ。

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こういう関節炎は日本語では細菌性関節炎、と呼ぶことが多い。

英語圏では、septic arthritis ; 敗血症性関節炎、だ。

septic の語感はすこしずれているような気がする。

「敗血症」とは古典的には血流中で菌が増殖している状態を呼ぶ、ということだったのだが、

最近、敗血症の定義が変更されたらしい。

感染によるSIRS(全身性炎症反応症候群)を敗血症と呼ぶことになったらしい。

う~ん、すると敗血症はそのへんにありふれているのかもしれない。

               

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X線準備室の粘土は何に使う?

2016-12-17 | 蹄病学

X線準備室にはタッパーに入れた粘土が置いてある。

 

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2ヶ月前、ひどい跛行になって、その後、徐々に良くなったが、完治しない、という当歳馬。

肩のX線撮影をして欲しいとの依頼。

どこも腫れたりしなかった、とのこと。

その朝、けっこう雪が積もって滑るので跛行診断は充分にできない。

走らせるのはあぶなそうだった。

しかし、私には左前肢の跛行に見えた。

肢を着けないほどの跛行だったのだから、飼い主さんはどの肢の跛行かわかっているはず・・・・・

聞くと右前だと言う。

担当の獣医師にも電話をかけて確認したら、右前肢の跛行だ、とのこと。

突発事故で肩を傷めたのなら、肩甲骨関節上結節の骨折を疑う。

立位でX線撮影するが異常なし。

蹄骨から、球節、腕節、肘、と撮影するが異常なし。

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おかしい・・・・

鎮静剤を投与してしまったが、外へ出して雪がないところで走らせてもらう。

「左前だね」

あらためて診療室へ入れて左肩を撮影する。異常なし。

蹄鉗子で蹄を鉗圧してみる。

外側よりに痛みあり。

蹄をX線撮影したら、蹄骨骨折かも!と思う線状の透過域があった。

しかし、蹄叉側溝が写るのでそれと間違わないようにしなければならない。

斜位で撮ってみるが、かえって”骨折線”は不鮮明で、やはり蹄底のくぼみが重なる。

それで、蹄底を粘土で埋めた。

こうして撮影すると、蹄叉側溝や、蹄底のくぼみが写らないので読影しやすい。

間違いない。

蹄骨骨折だ。

斜めに撮っても蹄のくぼみによる透過域はなくなり、読影しやすい。

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教訓。

・屋外での跛行診断は、天気と路面が良い日にやりましょう。

・粘土は蹄の撮影に役立ちます。

まあ、ほかにも教訓はあるけど、それは言うまい;笑

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神戸へ3日間行って戻ってきた。

メールと、電話と、書類と、カルテで混乱する。

 

 

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ひどい裂蹄のその後

2016-11-02 | 蹄病学

朝、シカに襲われた1歳馬が上腕骨骨折のようだ、ということで来院。

左胸に角で突かれた傷があり、肋骨も折れている。

そして、右前肢は負重不能。

X線撮影して上腕骨骨折を確認した。

斜骨折だが、粉砕しているようだ。

助ける術はない。

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ひどい裂蹄をおこし、蹄関節もひらいてしまった重種の仔馬。

ほぼ1ヶ月経って再来院。

歩きはとても良い。

前回の術後もほとんど痛みを見せなかった、とのこと。

Distal Limb Castをはずす。

傷の状態も素晴らしい。

もちろん蹄壁は癒合しない。しかし、軟部組織は癒合したようだ。

ただ、これから蹄球や蹄冠が開いてしまうと、そうなってからでは処置のしようがない。

せっかくうまく癒合しているので、またキャストを巻くことにした。

キャスト擦れもまったくない。

正直、ダメかな、と思うような怪我だったが、何が幸いしたのだろう。

発症してから時間が短かったこと、

徹底したデブリドメントと関節洗浄、

ワイヤーによる蹄壁の縫合、

キャストによる不動化、

これらは重要な要件だったように思う。

 

 

 

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