馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

年の暮れ2017

2017-12-31 | 日常

今年は・・・・・

疝痛開腹手術は相変わらず多かった。多くが助かるようになっているが2回目以上の開腹やこじれる症例もある。まだ向上の余地もあるのだろう。

骨折治療では、仔馬の中足骨骨折を助けることができた。LCPはたしかに馬のボッキリ骨折治療を進歩させたと思う。Richardson教授が来日して講演してくれたのが2010年。香港でのAO course で学んだのが2015年。

子牛の骨折内固定の講習と実習にあちこち行った年だった。長野上川オホーツク十勝。去年の宮崎に続いて、本格的な実習を受けた牛の獣医さんも増えた。さて、プレート固定手術は牛の診療に定着するか?

外部の獣医さんがたくさん研修に来た年だった。10名ほど。あちこちから。ちがう地域や職域や団体の様子を聞けるのはわれわれにとっても刺激と勉強になる。われわれが求められていることでもある。うちではあくまで参加型研修なのだが、要望に応えられるようでありたい。

年齢による衰えをさらに自覚しただった。GWすぎから頚が痛くて不調だった。休むべきか鍛えなおすべきかわからなかったが、どちらでもなく衰えないように頑張るしかないのだとはっきりした。

今年は組合が合併し、職場の名称が変わり、いろいろな仕組みも変わった。

来年は、また大きな変化がある年になるだろうと思っている。

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そんな年末、29日は、

午前中、2歳馬のTieback&Cordectomy。

1歳のときから喉なりしていて、競馬デヴューさせたがダメだった。とのこと。

年内に手術して、来年あらたにガンバレ!

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午後は、当歳馬の大腿骨大腿滑車のOCDの関節鏡手術。

開腹手術で助かった馬で、放牧を始めたら左右の後膝が腫れて、跛行もある。

もっと時間をおいた方が良いかとも思ったが、けっこう跛行が強いようなので、年内に手術することにした。

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30日は、

土曜休日態勢。

ことし最後の血液検査業務。

土日休みで、正月5日まで休みの会社は、この年末年始は10連休なのだそうだ。

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私は年末年始の間に、症例のデータ整理をしたい。

その前に、学術雑誌への論文の審査をかたづけたい。

年明けの研修の準備もしたい。

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それでは、皆さん良い年をお迎えください。

 

 

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滑液腫の摘出

2017-12-26 | その他外科

腕節の関節鏡手術に来た競走馬。

熱発の経過があるので、胸を超音波スキャンしたら、輸送性肺炎があった。

まだ全身麻酔かけない方が良いと判断して手術延期。

聴診だけでは肺炎や胸膜炎を評価できない。

超音波装置を獣医師が一人一台持ち歩ける時代なのだから、超音波スキャンしてみれば良いのだ。

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発熱の経過があり、血液で強い急性炎症が続いていて、心雑音がある当歳馬の超音波検査。

はっきりした異常は確認できなかった。

心内膜炎を疑う経過ではあるのだが・・・・

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午後、腕節をぶつけて腫れが慢性化してしまった3歳休養馬。

超音波検査で皮下の広範囲にフィブリンを含んだ組織ができているのが確認され、摘出手術することになった。

袋状組織を摘出した。

かなり範囲は広かった。

一部橈側手根伸腱鞘に癒合していたので、破らざるをえなかった。

腱鞘は縫合して閉じた。

皮下織を死腔がないように縫い付ける。

皮膚はステント縫合と十字縫合を交互に使って閉じた。

30年前の成書に載っている古典的な手術なのだが、うまくできる技術と経験を持った獣医外科医は少ないのだろう。

切開したり、内部を搔爬したりして、大きな結合式の塊にして”治して”いることが多いように聞く。

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時間が空いたらそろそろ大掃除。

普段やらないような場所を、普段やらないような方法で掃除する。

ホームセンターで売っているこの埃払いはすぐれもの。

埃だらけの厩舎にはうってつけだ。

 

 

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この一年

2017-12-20 | 日常

今年ももう終わり。

春に、組合が広域合併した。

32年慣れ親しんできた職場の仕組みが変わった。

「サイボウズ」で連絡や管理がされるようになったが、慣れないせいもあり使い辛かった。

顔も知らない人とメールでやり取りして進めなければならなかった。

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外部の獣医さんの研修が多い年だった。

週休二日になり休みが増えたが、出勤日は忙しくなったように思う。

メールアドレスが変わって、読むメールの数が減った。

”産業動物獣医師不足”を認識させられた年だった。

秋から冬は、牛の骨折プレート固定の講習であちこちへ出かけた。牛の獣医さんとの交流は楽しかった。

晩秋まで手術が途切れない年だった。

職場に長期病欠者や退職予定者が出て、来年へ向けてまだまだ変化が続く。

さて、そんな年ももう終わり。

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忘年会。

暖炉があるロビー。

ツブ貝の焚き火アヒージョ。

真ダコのカルパッチョ。

カボチャとほうれん草のスープ。

真ダラのヴァプール。シイタケのクリームソース。

えりも産短角牛とエゾシカ肉のロティ。ハスカップソースとレギュームソース。

ロールケーキ、ハスカップジャム、シャーベット、ペパーミント。花びらは食べられません;笑

おいしゅうございました。

とても評価がたかいオーベルジュが近くにあるなんて、なんて幸せ。

なかなか行けないけど;笑

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しかし、わが職場の忘年会。

今年もまた緊急手術で3名参加できず。

お店が、別な日に3名御招待してくれるそうだ。

感謝。

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lag screw の打ち方

2017-12-14 | 整形外科

折れている骨は、

きちんと整復して、lag screw で仮固定して、それからプレート固定したい。

(中央部のプレートに刺さっていない2本のスクリューが、仮固定したLag screw)

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このlag screw はできるだけ骨折面に垂直に入れたい。

垂直に入れないと・・・・・・

締めることで、骨折部にずれる力を働かせてしまう。

というのが上の図。

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近位遠位方向でも、骨折面に垂直に入れるべきだ。

というのが上の図。

骨に垂直に入れないと、締めることで、近位と遠位方向へ骨折部をずらす力が働く。

ただし、馬の整形外科の成書には、骨に垂直に入れて良いんだ。と書いてある本もある。

動物が起立すると、骨は短くなる方向へ圧迫される。だから、lag screwがそれに逆らうように力をかけていても構わない。という考えだ。

私は、やはり骨折面に垂直に刺すべきだと考えている。

ただし、「原理的には」ということであって、必ず、正確に、垂直でなければならない、ということではない。

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手順は、

4.5mmドリルで骨折線までドリルを開けて、

その穴に、3.2mmドリルガイドを入れて、3.2mmドリルで対側皮質まで貫いて、

カウンターシンクして、

デプスゲージで必要なスクリューの長さを測って、

タップでネジ山を切って、

スクリューで締める。

この6ステップを覚えこむ必要がある。

実際やっていると、「あっカウンターシンクするの忘れた。」とか、

「あ~スクリューの長さ測ってなかった。」とか、なりがち。

しかし、タップでネジ山を切ったら、もうドリル穴に何も入れてはいけない。ネジ山を壊す恐れがあるからだ。

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しかし、子牛の骨折プレート固定では、カウンターシンクしないでも大丈夫だし、

タップでネジ山を切っていなくてもスクリューは入っていくし、しっかり効く。

皮質骨が薄くて、柔らかいからだ。

上の実際の症例のx線画像では、骨幹端部には6.5mm海綿骨スクリューを使っている。

黒毛和種の新生子牛などでは、骨幹端には6.5mm海綿骨スクリューを使うのが良いと、最近は考えている。

骨幹端は、とくに皮質骨が薄くて柔らかいからだ。

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4.5mmドリルでの穿孔と、3.2mmドリルでの穿孔は、順序が逆でも構わない。

3.2mmドリルで対側皮質まで貫いておいて、骨折線までを4.5mmドリルで太く(滑り穴)しておく。

この方法なら、ドリルガイドは要らないかもしれない。

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骨折を完全に整復し、lag screw で仮固定できたら、骨折プレート固定は半分うまくいったようなものだと感じている。

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新・小動物骨折内固定マニュアル―AO/ASIFテクニック
泉沢 康晴,種子島 貢司
メディカルサイエンス社

図はこの本からお借りした。

日本語で牛の骨折内固定を一から学べる本はない。

この本は小動物向けなので、大動物にはそのままは使えない部分も多いが、

30-50kgの子牛だとレトリーヴァー、バーニーズマウンテンドッグ、セントバーナードなどと体重はかわらない。

手短に基本を知るには良いかも。

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馬の整形外科医は英語で最新の成書と文献で学ぶ必要がある。

馬の、とくにサラブレッドの骨折内固定はまだまだ難しく、challenging だからだ。

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月曜日は会議。

火曜は、午前も午後も腕節骨折の関節鏡手術。どちらも左右両方。

夕方は、1歳馬のDDSPの軟口蓋Laser焼灼。

水曜は、午前中4歳馬のTieback&Cordectomy。

午後は腕節骨折の関節鏡手術。

木曜と金曜は会議と講習会。

年末だ・・・・来週は忘年会だ・・・・大掃除をする暇はあるのか?

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う~ん、北北西。

どちらかというと、南北軸に沿っていることが多いような気もするけど、

まったくでたらめなこともある。

地軸を強く意識しているとは思えんね。

 

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早期の2回目の開腹手術

2017-12-09 | 学問

この秋は、子牛の骨折内固定の講習であちこちへ出かけて、すっかり意識がそちらへ行ってしまった。

本業に戻らないと (って馬の開腹か?;笑)

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腸管手術したのに、術後も疝痛を示すPOI (Post Operative Ileus 術後イレウス)は外科医の悪夢だ。

Florida大学のDavid E. Freeman教授のグループが、空腸絞扼の外科手術後の早期の再開腹について書いている。

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Response to early repeat celiotomy in horses after a surgical treatment of jejunal strangulation

空腸絞扼の外科手術後の馬における早期再開腹への反応

Veterinary Surgery, 2017; 46: 843-850

要約

目的: 空腸絞扼で手術された馬での早期の再開腹後の予後を求めること。

研究のデザイン: 回顧的症例調査。

動物: 空腸空腸吻合によって絞扼性の空腸病変を外科治療行った馬(n=14)と切除しなかった馬(n=8)で、術後の胃液逆流(POR;Postoperative Reflux)と術後疝痛(POC;Postoperative Colic)、あるいはそのどちらかにより再開腹した馬(n=22)。

方法: 再手術前の症状を示した時間、手術時の所見と治療内容、そして結果について診療記録を調べた。

長期間追跡は、電話での聴き取りで生存を記録した。

手術のタイミングへのPOCとPORの影響を分析した。

長期間の生存はKaplan-Meier分析により検定した。

結果: 最開腹は最初の手術後、中央値57時間で、症状の始まりから16.5時間で行われた。

そして、POCがあった馬は、PORがあった馬に比べてより早かった(P<.05)。

全部で22頭中3頭が麻酔中に安楽殺された。

1回目に空腸空腸吻合を行った11頭のうち全部で9頭が、吻合部の問題によって元の吻合部の切除を必要とした。

切除していなかった8頭では、2回目の手術は切除(4頭)あるいは減圧(4頭)であった。

再開腹は、PORを示した馬16頭中13頭で成功した。

再開腹でPOCは全頭(n=9)で取り除かれた。

全部で19頭が麻酔から覚醒し、全頭が生存して退院した。

2回の手術は同じ腹部正中切開で行われ、術創感染が17頭中13頭で診断され、ヘルニアが感染した術創13のうち4頭で起こった。

生存期間の中央値は90ヶ月であった。

結論: 再開腹によってPORかPOCあるいはその両方を取り除くことができる。

そして再手術はPORを悪化させることはないと思われた。

今回の調査での再開腹の判定基準は、空腸絞扼の術後のPOCとPORを治療するガイドラインとなりうる。

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私の経験と似通っていると思う。

1回目の開腹手術が終わる。

たいていはそれで疝痛が消えるが、術後も不快感が続くことがある。

あるいは、絶食中は順調だが、食べさせ始めると疝痛を起こしたりする。

蠕動を亢進させる薬を点滴したり、リドカインを投与して様子を観るが、駄目なら2回目の開腹を考えることになる。

最初の手術から57時間、これはちょっと遅いか。

症状開始から16.5時間、これは内科的対応とその反応を観ることを思えば早いか。

疝痛を示す症例POCで、逆流を示す症例PORより早いのはそうだろう。

逆流には胃カテで対応できるが、疝痛が続くなら早く開けなければならない。

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22頭のうち3頭は再手術中にあきらめて、残りの19頭は退院できた。

これは良い成績だが、短期間に2回開腹すると癒着しやすいし、術創のトラブルも多くなる。

それでも、2回目であろうと、やらなければならないときはやらなければならない。

馬の腸管手術について、次々と成績をまとめておられるDavid E.Freeman先生に心から敬意を表する。

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この文献に紹介されている2回目の開腹をせざるを得なかった病変。

空腸局部的な緊縮。

腸間膜の裂孔で絞扼されていたのを整復した87時間後。

最初の手術ではこの緊縮の徴候はなかった。

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空腸空腸吻合部での通過障害。

A, 吻合部(矢印)の吻側が膨満している。

B, 同じ部位を開けると吻側の内容物と、反吻側の暗色になった粘膜(右側)が見える。

38時間前の最初の手術時はこの粘膜は正常だった。

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空腸の、血栓のできた静脈と、それに関連した赤と青に変色し水腫を起こしている梗塞部(白矢印)。

最初の手術から12時間後。

最初の吻合部は黒矢印で示されている。

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腸間膜の血腫による牽引のために、腸間膜が短くなって空腸空腸吻合部(矢印)が捻れた。

その血腫は33時間前の最初の手術時には創外へ出せたが、2回目の手術時には不可能だった(左が吻側)。

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2回目の開腹手術をしなければならなくなるいくつかのパターンがおわかりいただけただろうか。

最初の手術に問題がなくても、術後の腸閉塞が起こることは十分ありうるのだ。

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麻酔から覚醒した19頭のうち18頭で6ヶ月以上の追跡が可能だった。

18頭のうち17頭は6ヶ月後には生存していた。

1頭は手術から12ヶ月後に放牧地で死んでいるのが発見された。原因不明。

もう1頭は手術から18ヶ月後に疝痛の検査中に直腸損傷し安楽殺された。空腸空腸癒着が剖検で見つかった。

他の4頭の安楽殺の理由は、手術後6ヵ月後のひどい疝痛(1ヶ所の癒着が空腸10cmの絞扼した)、30ヶ月後のひどい疝痛(剖検なし)、72ヵ月後の事故、92ヶ月後の蹄葉炎とCushing病、であった。

残りの12頭は術後6-108ヶ月は生存しており、中央値は90ヶ月であった。

2頭の繁殖雌馬は手術時に妊娠5・6ヶ月であり、退院から1ヶ月以内に2頭とも流産した。

1頭は以前の活動(レベル4のドレッサージ)には戻らなかった。調教中の軽度の疝痛によるものであった。

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つまるところ、22頭再開腹し、3頭は術中にあきらめ、半年以上生存して”無事”だったのは12頭あまり。

(30ヶ月生きていたら、ひどい疝痛、おそらく癒着でもあったのだろうが、2年以上経っているから例えば繁殖雌馬なら仔馬を産めたかもしれないし、競走馬だって競馬できたかもしれない。)

(72ヶ月後の突発事故を2回の腸管手術と関連付けるのは無意味だろう。92ヶ月後の蹄葉炎による安楽殺も御同様。)

2回目の開腹をしなければならない場合、予後は当然1回ですんなり治った場合より厳しくなるが、必要ならやるしかない。

私の患畜は、繁殖雌馬が多く、たいていは妊娠中だ。

なんとか生き延びてお腹の子だけでも産ませることができれば、そしてできれば育ててくれれば、開腹手術で救命した価値があると考えている。

あとは牧場やオーナー側の判断だ。

よく「腹の子だいじょうぶだろうか?」と訊かれる。

母馬が生きる死ぬなのに腹の子を心配してどうする。やらなければ母子ともに死ぬ。

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おいで~って呼んで、

すぐに戻って来るなら、

もっと自由に散歩してやれるんだけどね。

 

 

 

 

 

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