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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

若い葦毛馬のメラノサイトーマ

2012-09-30 | その他外科

P9252920 2歳馬の陰部にできた腫瘍。

徐々に大きくなるので、取って欲しいとのこと。

すこし皮がめくれたところから、内部が真っ黒なのが見えるし、葦毛馬なので黒色腫が疑われる。

高齢の葦毛馬のメラノーマは外科的に切除することは推奨されない。

それを契機に臨床的な悪性度が増し、自潰したり、転移したり、増勢速度が増すことが多いらしい。

しかし、このような若い葦毛馬に見られる皮膚の腫瘍はおそらくメラノサイトーマと呼ばれて悪性黒色腫とは区別されるべきものだ。

できる部位も、高齢葦毛馬のメラノーマが、耳下腺周囲とか、会陰部に多いのに比べて、若い葦毛馬のメラノサイトーマは、肢などに単独でできていることが多いように思う。

今まで何度か切除してきたが、再発や転移の経験はない。

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この馬の場合、切除するのに麻酔をどうするか考えた。

なにせトレーニングしている若馬のこんな部位だ。

蹴りの威力や速さは空手の達人の比ではない。

全身麻酔せずにすますためには・・・・・枠場に入れて、鎮痛剤(ブトルファノール)を加えた鎮静剤(メデトミジン)投与をして、鼻捻子して、(塩酸プロカインで)尾椎硬膜外麻酔して、局所には塩酸プロカインで浸潤麻酔して・・・・・

尾椎硬膜外麻酔にはキシラジンを加えると鎮痛時間が増すが、切除はすぐ終わるので塩酸プロカインだけにした。

尾椎硬膜外麻酔のテクニックは、育成馬や競走馬や乗馬を専門に扱う馬獣医師にはなじみがないだろう。

繁殖関係で生殖器の外科処置を扱う生産地の獣医師には必須の手技だ。

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P9252921 で、鉗子で挿んでおいて、切除した。

鉗子をはずしてもあまり出血しなかったが、モノフィラメント吸収糸で縫合しておいた。

汚れやすい場所だから縫合した。

抜糸するのが危ない場所だから、抜糸しないで良いようにモノフィラメント吸収糸で、埋没縫合した。

P9252925 切除した”もの”は、内部は真っ黒。

費用のかかる病理組織検査をしておく必要もないと判断した。

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P9282961 週末は、

腰萎の1歳馬のx線撮影。

今年は腰萎馬が多いと聞く。

X線撮影に来る馬は多いような気もするが、本当のところはわからない。

1歳馬の跛行診断。

2歳馬の去勢。

遠隔地の馬の症例の相談がいくつか。


幼児性

2012-09-28 | How to 馬医者修行

「幼児性」、こどもっぽいなどとも言われるが、一般には決してほめ言葉ではあるまい。

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P9262928 子供の頃、おもちゃ屋やペットショップの前を通ると、覗かずにはいられなかった。

自分の欲しいものがそこにあるんじゃないかという思いを抑えられない。

相棒を見ていると、そういう子供の頃の自分を思い出す。

だからと言ってドブの中を走り回るのはやめてほしいんだけど。P9262929

そして、その好奇心とはちょっと違う欲求は、届いた獣医学雑誌をタイトルだけでも チェックしないと気が済まない気持ちと似通っているように思う。

別に、外国雑誌までチェックしておかなくても日々の診療はできる。

しかし、覗いてみないと気が済まない幼児性は失くしたくないものだ。

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昨夜は1歳馬の疝痛の来院。

腸炎のようだ。

持続点滴、抗生剤投与をして入院治療を開始する。

夜中に、輸液を交換し、2回目の抗生剤投与と消炎鎮痛剤の投与。                  

 P9282965                          -

若い繁殖雌馬が呼吸困難になったので、内視鏡検査をしたら軟口蓋に腫瘤があった。とても切除できるようなものではない。

ということだったので、永続的気管切開をするしかないと考えて準備していたが、

EE(喉頭蓋捕捉)だった。

立位枠場保定、鎮静剤と局所の麻酔薬噴霧、そして鼻捻子で、

EEカッターで切開する。

       

                         


朋遠方より来る

2012-09-26 | How to 馬医者修行

Thailand から獣医さんが来られて、この3日間よく話し、よく聞いた。

朋有り、遠方より来る。また楽しからずや

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USAのCornell大学で、馬の関節内へのステロイド注入の研究で博士号をとっておられる。

Thaiへ戻って自分のclinicを立ち上げ、馬の診療を始め、手術室もあり二次診療もしている。

小動物の病院も作り、今は首都バンコクと、そこから車で3時間ほどの馬が居る地域で診療している。

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Thaiの馬事情を知らなかったが、サラブレッドの生産もしているし、バンコクには2つ競馬場があり、地方には6つの競馬場があるそうだ。

乗馬もかなり居て、ポロクラブもあるとのこと。

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診療と、社長業だけでもとても忙しいだろうに、Thai pony の保護や、馬の在来種や原種についての調査の活動もしている。

今回

JBVPの集まりに、WSAVAのブースを出すために来日した。

そして、WEVA(World Equine Veterinary Association)の意向で、Asia Equine Veterinary Association (アジア馬獣医師会)の設立を望んでいる。

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私のような一介の田舎馬医者には、何もかかわれることのないことだ。

ただ、話していて驚くほど考えていることは似通っていた。

それは例えば、ステロイドの関節内注射の弊害であったり、焼烙処置への抵抗であったりしたし、

どうやって欧米に遅れをとらずに馬の臨床をやっていくかであったり、

次の世代へどうやって継承していくかであったり、

サラブレッド以外の種類の馬への思いだったりした。

朋遠方より来る。また楽しからずや。

人知らずしてうらみず。

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今日は、3歳競走馬の球節の骨片骨折の関節鏡手術。

午後は、1歳馬の皮膚腫瘍?の生検を兼ねた切除手術。

競走馬の上顎の歯源性?腫瘍?の生検を兼ねた手術。

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ここのところ腫瘍切除続き。

P9262935


馬の消化管の分泌量・吸収量

2012-09-21 | 学問

私たちは、なんとなく,

たくさん水を飲めば、腸から吸収されてそれは尿になる。

吸収されない部分は便に含まれて出る。と思っている。なんとなく・・・

                        -

が、消化管の中へは唾液、胃液、膵液、胆汁、腸液が分泌されていて、それは私たちがなんとなく思っているよりはるかに多いようだ。

しかし、この分泌は消化・吸収と併行して行われるので、量の研究はとても難しいらしい。

そして、その仕組みも人の方でもまだまだわかっていない

体の水分や電解質のバランスは尿がつかさどっていて、それを調節する仕組みは解明されているが、実は消化管も水分や電解質のバランスに大きな役目を果たしている。

                        -

馬の消化管での水分の分泌と吸収は、1970年代にとある研究があって、最近の成書でもその文献が引用されている。

体重100kgのポニーを使って消化管の分泌と吸収の量を算出?推定?測定?している(右下)。

100kgのポニーと言われてもピンと来ないので、単純に5倍して500kgの馬だと考えてみると24時間中の分泌量と吸収量は・・

唾液 50?  P9202899

膵液 50?

胆汁 20?

胃液 不明

腸液 不明  小腸からの吸収 85?

盲腸での分泌 70?  盲腸からの吸収 45?

腹側結腸での分泌 18? 腹側結腸での吸収 32?

背側結腸での分泌 18? 背側結腸での吸収 15?

小結腸での吸収 8?

糞便としての排泄 6?

と、このような量らしい。

消化管内部への分泌量は200?を悠に越す。

それがまたそれぞれの箇所で吸収されているから認識されにくいのだが、すさまじい量だと思いませんか?

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P9212915 今日はようやっと涼しくなった。

空気の冷たさが心地よかった。

朝、4歳競走馬の腕節の関節鏡手術。

よそで2回手術を受けたそうだ。

午後は、不調の競走馬の診察。

夏バテ?

その後、2歳の跛行診断。

腫れて熱感がある関節があって、関節内を麻酔でブロックしたら跛行が楽になった。

夕方、繋に肉芽腫のできた1歳馬が来院。

P9212918


この夏の残暑。

2012-09-19 | 日常

土曜の夜から頭が痛くて、日曜日じゅう良くならず、月曜日はもっと痛くなった。

金曜、土曜と書き物をしたが、月曜は耐えかねて寝て、本を読んですごした。

どうやら夏風邪をひいていたようだ。

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今日は早朝から地元で人間ドックの受診。

まわりは後期高齢者の皆さんばかり。

この夏は救急車で運ばれる人も多かったそうだ。

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夏の暑さに慣れておらず、家のつくりやエアコンなど夏の暑さに備えていないこの地域。

この暑さ、おまけにこの時季まで続いては無理もない。

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「今年は(受診する人)少ないね」の声も聞こえた。

具合が悪くて病院で検査を受けたからドックには来ないのかもしれない。

私も先日、胃内視鏡検査を受けたばかりなのに胃のバリウム撮影を受けたが・・・・・

意味ないよね。

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はじめて北海道へ来た夏。

8月の末に帯広へ戻ってきて、夜の街へ繰り出したら、もうTシャツ1枚では寒かった。

故郷をまた離れた寂しさと、北海道の夏の短さを実感して、その寒さは身にしみた。

それが、ことしはこの残暑。

もう終わるそうだが・・・・扇風機買うかな;笑。

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今日は、1歳馬の球節の関節鏡手術。なんと4本とも。

午後は、2歳競走馬のTieback&Cordectomy.

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P9192894 日はすっかり短くなったというのに・・・・