徐々に大きくなるので、取って欲しいとのこと。
すこし皮がめくれたところから、内部が真っ黒なのが見えるし、葦毛馬なので黒色腫が疑われる。
高齢の葦毛馬のメラノーマは外科的に切除することは推奨されない。
それを契機に臨床的な悪性度が増し、自潰したり、転移したり、増勢速度が増すことが多いらしい。
しかし、このような若い葦毛馬に見られる皮膚の腫瘍はおそらくメラノサイトーマと呼ばれて悪性黒色腫とは区別されるべきものだ。
できる部位も、高齢葦毛馬のメラノーマが、耳下腺周囲とか、会陰部に多いのに比べて、若い葦毛馬のメラノサイトーマは、肢などに単独でできていることが多いように思う。
今まで何度か切除してきたが、再発や転移の経験はない。
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この馬の場合、切除するのに麻酔をどうするか考えた。
なにせトレーニングしている若馬のこんな部位だ。
蹴りの威力や速さは空手の達人の比ではない。
全身麻酔せずにすますためには・・・・・枠場に入れて、鎮痛剤(ブトルファノール)を加えた鎮静剤(メデトミジン)投与をして、鼻捻子して、(塩酸プロカインで)尾椎硬膜外麻酔して、局所には塩酸プロカインで浸潤麻酔して・・・・・
尾椎硬膜外麻酔にはキシラジンを加えると鎮痛時間が増すが、切除はすぐ終わるので塩酸プロカインだけにした。
尾椎硬膜外麻酔のテクニックは、育成馬や競走馬や乗馬を専門に扱う馬獣医師にはなじみがないだろう。
繁殖関係で生殖器の外科処置を扱う生産地の獣医師には必須の手技だ。
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鉗子をはずしてもあまり出血しなかったが、モノフィラメント吸収糸で縫合しておいた。
汚れやすい場所だから縫合した。
抜糸するのが危ない場所だから、抜糸しないで良いようにモノフィラメント吸収糸で、埋没縫合した。
費用のかかる病理組織検査をしておく必要もないと判断した。
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腰萎の1歳馬のx線撮影。
今年は腰萎馬が多いと聞く。
X線撮影に来る馬は多いような気もするが、本当のところはわからない。
1歳馬の跛行診断。
2歳馬の去勢。
遠隔地の馬の症例の相談がいくつか。