当歳馬の距骨外側滑車の離断性骨軟骨症病変を関節鏡で見たところ。
距骨外側滑車は、軟骨がめくれて海綿骨がむき出しになっている。
骨軟骨症の手術は、あまり早い月齢ではやらない方が良いと思っている。
しかし、骨軟骨片が遊離してしまって、関節がひどく腫れてしまうと、いつまでも手術を遅らせていてはすっかり関節包が緩んでしまうし、関節内の他の部位の軟骨 にも悪影響があるかもしれない。
それで、この当歳馬も手術することにした。
空気で関節を膨らませる方法で行った。
左は病変部を掻爬したところ。
気体で膨らませる方法では、血液を洗い流せないのでこうなってしまう。
左は、気体から灌流液に切り換えて、掻爬した病巣を見たところ。
骨軟骨症病変は掻爬し終わって、出血するほぼ健康な海綿骨が見えている。
後は、この部分に結合織性の軟骨が張るのを待つことになる。
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やはり、気体で関節を膨らませる方法で骨片を見つけ、つかみ出すための鉗子を入れたところ。
灌流液の中で見慣れていると、気体で膨らませた状態で見た関節の中は少し様子が違う。
しかし、良好な視界が得られれば、鉗子で骨片をつかんで取り出すのは、気体でやっていても液体でやっていても同じことだ。
骨片を取り出した後、気体から灌流液に切り換えて、関節の中を洗浄する。
関節を膨らませるのに液体を使っていると、このように関節滑膜の絨毛がひらひらして視界を妨げる。
この球節の背側では、絨毛はそれほど邪魔になっていないが、先日球節の足底側(後側)第一趾骨の骨片を摘出する関節鏡手術では、絨毛が非常に邪魔になった。
灌流液で手術していたのだが、途中で気体に切り換えようかと思ったほどだった。
狭い関節、絨毛が発達している部位、などの関節鏡手術では気体を用いる方法に利点があるかもしれない。
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球節の背側の小さな骨片は摘出しないまま競走している競走馬もいる。
しかし、骨折してすぐに診断がついたり、関節液が増量するなどの症状がある場合は手術して骨片を摘出したほうが、良いと考えている。
この馬も、関節軟骨に関節可動方向に走る傷があった(左)。
骨片がある馬には、このような軟骨の傷ができていることが多いように思う。
これはX線撮影では診断することができない。
このように軟骨が傷む状態のままで調教や競走を続ければ、やがては変形性関節症を起こすだろう。
だから、順調に調教や競走を続けている馬の球節にたまたま骨片が見つかったのではなく、骨折してすぐに骨片骨折だと診断がついたり、「腫れる」「痛い」などの症状がある場合は手術して骨片を摘出したほうが良いと考えている。
先週は関節鏡手術を8頭。
179頭やった去年よりペースは遅い。